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米景気、変化の胎動を見逃すな バーナンキがもくろむ「脱日本化」計画
http://www.asyura2.com/12/hasan77/msg/675.html
投稿者 MR 日時 2012 年 9 月 20 日 01:05:31: cT5Wxjlo3Xe3.
 

(回答先: QE3は何の効果もなく、世界経済を混乱させる 投稿者 MR 日時 2012 年 9 月 20 日 00:48:36)

米景気、変化の胎動を見逃すな

バーナンキがもくろむ「脱日本化」計画

2012年9月20日(木)  太田 智之

 ベン・バーナンキFRB(米連邦準備理事会)議長の決意は実を結ぶのか。

 さえない結果に終わった米雇用統計を受けて、どのような追加緩和策が打ち出されるかが注目された9月の連邦公開市場委員会(FOMC)。メンバーが出した結論は、超低金利政策の継続期間を、従来の2014年終盤から2015年半ばまで延長するとともに、新たな資産の買い取り、いわゆるQE3を開始するというものだった。

雇用回復に不退転の決意を示したFRB

 買い取り対象は、MBSといわれる住宅ローンを担保とした証券で、毎月400億ドルのペースで購入する。短期の国債を売って、中長期の国債に乗り換えるオペレーション・ツイストなど、現在進行中の政策と合わせると、年末までのFRBによる長期資産の購入額は850億ドルに達する計算だ。

 また、今回の決定のもう1つの特徴は、過去2回の資産購入と異なり、買い取り期間を定めず、雇用の回復ペースが力強さを増すまで購入を続けると、事実上のopen-end(無制限)を宣言したことである。さらに、必要とあらば、買い取り規模の増額やMBS以外の資産購入など、一層の緩和策に踏み出す用意があることもあらためて言明した。

バーナンキ議長が重視する資産市場への波及効果

 雇用改善のためには、金融政策を総動員することも厭わない姿勢を明確にしたFRBだが、量的緩和をはじめとした非伝統的手法に関しては、その効果に疑問を呈する専門家も少なくない。

 2009年以降、既にFRBは、長期国債や住宅ローン担保証券など、2兆3000億ドルもの資産を購入しており、新たに積み増したところで、更なる景気刺激余地は乏しいとの見立てだ。また、直接、雇用市場に影響を及ぼす公共投資などと違い、金融政策だけで、雇用改善をはかるのは、そもそも限界があるとの指摘もある。

 こうした懐疑的な見方に対し、バーナンキ議長はFOMC後の記者会見で、「追加の金融緩和は、様々なメカニズムを通じて経済成長を加速させる」と反論した。その中で、金利の低下とともに、彼が重視するのが、住宅や株式など資産市場への波及効果である。

 FOMCを控えた8月末の米ワイオミング州ジャクソンホールの講演でも、バーナンキ議長は、大規模な資産購入が株価や住宅市場(=住宅価格)に与えるプラスの影響を指摘していたが、FOMC後の記者会見では、「住宅価格が上昇すれば、人々は消費を増やし、また住宅も購入する。住宅価格の上昇は景気回復の1つのけん引役だ」とまで言い切った。

 事実、米S&P500種株価指数の推移をみると、株価は、既にピーク対比9割超の水準まで値を戻しており、回復ぶりが鮮明だ(図1)。また、危機の震源地である住宅市場についても、販売・着工の持ち直しを受けて、足元で価格は上昇に転じている(図2)。これは、バブル崩壊以降、資産価格が低迷し続けた日本と明らかに異なる動きといえるだろう。


 それでもなお、バーナンキ議長の主張には懐疑的な受け止め方が根強い。世論は、日米の相違点よりも、類似点に注目する見方が優勢となっている。

 いわゆる「日本化」の議論である。景気回復局面に入って3年以上が経過したにもかかわらず、未だ脆弱な回復にとどまり、高失業率に苦しむアメリカ経済の姿は、バブル崩壊後の日本を髣髴とさせるためだ。

住宅バブル崩壊から5年半、芽吹く変化の兆し

 確かに、投資や採用を抑制し、現預金を積み上げる企業、目ぼしい貸し先がなく、安全資産での運用を余儀なくされている銀行の状況は、失われた10年でみられた日本の企業や銀行そのものである。

 また、当の金融政策自体、名目金利ゼロの壁に直面し、バランスシート拡大による量的緩和や、低金利政策維持へのコミットという政策に至った経緯は、日本の後追いであり、まさに「日本化」が進行しつつある証左ともいえる。

 これだけの状況証拠が並ぶ中では、バーナンキ議長が量的緩和の成果として主張する資産価格の回復は、例外の1つに過ぎないかもしれない。

 しかし、忘れてはならないことが1つある。米国経済では、日本経済以上に、資産価格の動向が重要な意味をもつことだ。それは、米国が資産価格の持続的な上昇を前提とした成長モデルを体現してきたことに由来する。

 そう考えると、住宅バブル崩壊から5年半の年月を経て、漸く芽吹き始めた変化の胎動を、単なる例外と判断するのは、先行きを見誤る恐れがあるのではないか。これが「脱日本化」に向けた動きの一助となるのかどうか、しばらくその動向を注視する必要があると考えている。


太田 智之(おおた・ともゆき)
みずほ総合研究所調査本部ニューヨーク事務所長

1969年京都府生まれ。95年京都大学大学院農学研究科修了。富士総合研究所(当時)入社。経済調査部、日本経済研究センター、財務省財務総合政策研究所等を経て、2012年7月より現職。主に米国マクロ経済、経済政策の分析を担当。著書に『デフレ不況の実証分析』(2002)東洋経済新報社、『日本経済の明日を読む』(2008)東洋経済新報社、『中国の台頭と東アジアの金融市場』(2006)日本評論社(いずれも共著)等。テレビ東京ワールド・ビジネス・サテライトのワールド・マーケットに出演中。


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変わりゆく米国の姿を、ニューヨークから見た経済の現状と、ワシントンの政策・政治動向の両面をおさえながら描き出していく

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