※本原稿は9月19日の午前中に執筆いたました。
先に行われた9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)について、2012年9月5日更新分の本欄で筆者は「普通に考えれば、相当に大胆な追加の金融緩和策が発動されることと思われますが...」と述べました。そして案の定、FOMCは決して"間違う"ことなく、期限を設けない住宅ローン担保証券(MBS)の購入を柱とした相当に大胆な追加緩和策の実施を決定しました。
米連邦準備制度理事会(FRB)の本気度はかなりのものです。そして、次は日銀の本気度を見せてもらわねばなりません。周知の通り、昨日から日銀では金融政策決定会合が開催されており、本稿が皆さんの目に留まる頃には、その結果が明らかになっていることでしょう。市場の一部では、今回の会合で日銀が追加の金融緩和策に大胆に踏み切ることが期待されています。なぜなら、それは今まさに日銀の対応が強く求められているからであり、また日銀は過去において適切に対応して行くことを約束しているからです。
2012年2月の会合において、日銀は「当面1%」という安定的な物価上昇率の目途(めど)を定め、その場で日銀総裁は「それが見通せるようになるまで、強力に金融緩和を推進して行く」との方針を世界中にメッセージとして伝えました。
ところがです。4月に公表された日銀の『展望レポート』には今後の物価上昇率の見通しとして「2012年度が0.3%、2013年度が0.7%」とありました。2013年度でもまだ0.7%とは、呆れてモノが言えません。
足元の状況はどうでしょう? 8月下旬に発表された7月の消費者物価指数は生鮮食品を除く「全国コアCPI」が前年比マイナス0.3%、食品およびエネルギーを除く「全国コアコアCPI」がマイナス0.6%となりました。つまり、なおもデフレ状態は続いています。デフレ下において満足な経済成長が果たされるはずもなく、9月10日に発表された4〜6月期の国内総生産(GDP)改定値は実質で前期比年率プラス0.7%、名目で前期比年率マイナス1.0%となりました。4―6月期と言えば、復興需要の底上げやエコカー補助金の消費押し上げ効果が期待された時期です。にも拘らず、名目でマイナス1.0%というのは相当に深刻であると言わざるを得ず、普通に考えれば当然、ここで日銀は相当に大胆な政策の発動を決定しなければなりません。
仮に、今回の会合で日銀が従前の政策を据え置いた場合、やはり市場は些か失望するでしょう。一時的にも再び円買い圧力が強まる可能性もあります。しかし、まだ諦める(?)ことはありません。次に日銀は10月4日―5日、そして10月30日にも会合を予定しています。そして何より、10月30日の会合ではあらためて『展望レポート』が公開されます。2012年7月25日更新分の本欄では、8月の会合から2人の審議委員が新たに政策論議に加わるという話題を取り上げました。結果、現在合計9名の政策決定会合メンバーは以下のような顔ぶれとなっています。
2012年4月に退任した2人は企業出身のメンバーでした。もちろん、企業出身であれば広くビジネスの現場には通じているものと思われますが、ことマクロ経済の情勢分析や金融政策の分野となると少々疎い部分もあることは否定できません。よって、各審議委員に一人ずつ付く日銀プロパーの「秘書役」から詳細な情報を収集することが専らとなり、どうしても判断や思考が日銀寄りになりやすいと言われたりもしてきました。
その点、新加入の木内・佐藤両氏は民間エコノミスト出身です。もともと「その道のプロ」ですから、各々が独自に持つ判断基準や論理的思考を政策論議に反映させることができるのではないかと期待されますし、両氏は以前から追加的な金融緩和の検討に対して前向きな見解をしていることで知られています。両氏の見解が政策論議に反映されることとなれば、まさか今年4月の『展望レポート』のような、無責任極まりない内容のレポートを私たちが目にすることはなくなることでしょう。
過去に本欄で述べたとおり、人々のデフレ予想がインフレ予想に変われば、それは円安や株高に結び付くことになるということは、過去のデータでも実証されているのです。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役
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