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(回答先: 政治の「不安定期」に突入した中国 方向を見失った「改革開放」政策 成長鈍る中国、地方政府が景気刺激 途上国で働く 投稿者 MR 日時 2012 年 7 月 30 日 12:35:43)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120717/234527/?ST=print
10年後には、人民元がドルやユーロに肩を並べる?貿易での人民元建て決済の拡大がけん引
2012年7月31日(火) 立澤 賢一
2007年から緩やかに始まった人民元国際化は、中国政府の第12次5カ年計画(2011年〜2015年)にも盛り込まれたことでいまや中国政府の最重要戦略の1つになった。人民元国際化の狙いは幾つかある。まず、国際基軸通貨であるドルおよびユーロの信任が揺らぎ、通貨価値の持続性について不透明性が高まったことである。今年3月末で3兆3000億ドルもの外貨準備高を保有する中国にとっては、せっかく稼いだ資産の価値を失うことにもなりかねない。また、国際基軸通貨が動揺していることは人民元を国際通貨に育て、国際金融システムの主導権を握る千歳一隅のチャンスと見ている節もある。
さらに、人民元が国際通貨になれば、オフショア金融センターとしての香港の地位を不動のものに出来るだけでなく、上海国際金融センター構想実現のための起爆剤にもなる。2011年夏には李克強副首相、今年7月の香港返還15周年には胡錦濤総書記がそれぞれ香港を訪問したことからも分かるとおり、中国にとって香港市場の重要性は不変であり、人民元の国際化を進めると公約した背景には香港市場の発展がある。
中国の人民元国際化戦略の巧みなところは、最近、HSBCが発表した「グローバル・コネクションズ・レポート」にあるとおり、2026年までに160%も拡大すると予想される中国の貿易取引(金額ベース)を、人民元建てにシフトさせることを戦略の柱に据えていることである。
まず、貿易決済として人民元の使用を促し、オフショアに蓄積した人民元をオフショア人民元債、対内直接投資(RQFII)や、ETFなどの形で投資させるという戦略である。投機的資本取引を排除しつつ、貿易という実需に基づいて人民元の国際化を進める戦略は成功する公算が極めて高い。10年後には人民元はドル、ユーロ、円と並ぶ国際通貨に成長するものと予想される。日本企業もこのチャンスを逃す手はない。オフショア人民元市場の位置づけはこのような流れの中で見ると良く分かる。
2050年には、中国経済は米国を10%超上回る
中国経済は2000年代における飛躍的な経済成長を受け、既に日本を抜いて世界第2位の経済大国になっている。今後も低所得層の中間所得層化などを背景に中長期的に高成長が続くとみられる。HSBCでは、2050年には中国経済はその規模で米国を10%超上回る世界一の経済大国になると予想している。
世界経済における存在感の上昇とともに、人民元国際化の推進の必要性も高まっているが、急激な国際化・自由化は、輸出競争力の低下、金融システムを先進国が既に構築したルールに適合させる必要などを通じて、中国経済に無視できない悪影響を及ぼすリスクを伴うため、中国当局は緩やかかつ秩序だった人民元の国際化を志向している。
しかし、以下で確認するように、人民元の国際化はむしろハイペースで進んでいる。中国にとって人民元国際化の推進は、輸出主導の高度成長から内需主導の安定成長への移行という構造調整を進めるうえでも重要な要素になる。
ハイペースで進む人民元の国際化
人民元国際化には、(1)貿易取引における利用度上昇(2)資本取引における利用度上昇(3)準備通貨としての地位向上、の3つの側面があるが、これまでは貿易・資本取引に関する規制緩和が進んでいる。
(1)については、2009年6月に人民元建て貿易決済スキームの国際化が暫定的にスタート、その後、その適用対象は順次拡大され、今年3月には全中国企業に適用されるに至っている。
(2)については、以下のようなプロセスを経て体制を整備してきた。
2010年7月:香港にオフショア人民元(CNH)市場創設
同8月:一部のオフショア機関投資家及び中銀に対してオンショア人民元(CNY)建て債券市場への参入を許可
2011年1月:中国国内企業の人民元建て対外投資を暫定的に認可
同年8月:中国国内企業の香港市場での人民元建て起債を認可
同年10月:人民元建て対内直接投資を正式認可
同年12月:適格外国機関投資家制度(QFII)創設、中国国内投信・証券会社の香港支社に対して適用
2012年4月:QFII枠を700億人民元に拡大
規制緩和の進展とともに人民元の利用拡大も急速に進んでおり、2011年の香港での人民元建て債券発行額は前年の3倍に当たる1079億元にまで増加している。
香港における人民元建て債券発行額
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120717/234527/graph001.jpg
また香港所在金融機関の預金残高に占める人民元建て預金のシェアもここ数年10%近くまで上昇している。
香港所在金融機関の人民元建て預金残高と総預金に占める割合
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120717/234527/graph002.jpg
国際決済銀行(BIS)によれば、仮に人民元取引が完全自由化された場合、人民元は円を抜いて米ドル、ユーロに続く世界第3位の取引通貨になると予想されている。(3)については、現時点では期待が現実に先行している状態だが、投資・ファイナンス・決済目的や外貨準備・介入通貨としての利用増大を背景に10年単位での着実な拡大が見込まれている。
人民元と円の直接取引開始
こうした流れのなか、6月1日から人民元と日本円の直接取引が開始された。日本側では、東京外国為替市場における民間市場参加者間での円−人民元(オフショア人民元)の直接取引が本格的に開始され、中国側では、上海外国為替取引センターにおける円−人民元直接取引促進のため、邦銀の現地法人を含む新たなマーケット・メーカー制度が導入された。
国際的な通貨取引では、基軸通貨であるドルを介した取引が一般的で、これまで元と円の取引もそのほとんどがドル−元、ドル−円という2つの取引として行われてきた。今後、円−人民元直接取引量の増加やそれに伴う取引コストの低減効果、金融機関にとっての決済リスク低減効果などが期待されている。今回の円と人民元の直接取引開始は、「日中両国間の拡大する経済・金融関係を支えるため、両国の金融市場における相互協力を強化し、両国間の金融取引を促進する」ことを趣旨とした昨年12月の日中金融協力合意の一項目である。日本側としては中国の成長を我が国経済の活力として取り込む狙いが、中国側としては人民元の国際化を推進する狙いがある。
日本企業の人民元利用も急速に進む見込み
本邦財務省は今後における重点分野として、(1)円・人民元の直接交換市場の更なる発展を促す方策の検討(2)日中間の円建て・人民元建て貿易・資本取引の活性化を促す方策の検討(3)両国発行体による債券発行を通じた両国債券市場の更なる発展(4)日中両国の金融機関の相手国での拠点展開・業務拡大等の更なる促進(5)両国市場における円建て・人民元建て金融商品サービスの更なる発展(6)両国中央銀行間の円・人民元スワップ取極見直しの検討、を挙げている。
中長期的に中国ビジネスの重要性が高まり続けること、その間、人民元が基調として増価を続ける可能性があることは、日本企業の人民元取引、人民元での資産運用ニーズ等が今後ますます増大していくことを意味する。HSBCは2009年6月に香港で外資系銀行として初めて人民元建て債券を機関投資家向けに発行した後も、2010年10月に日本初の中国人民元建て社債を発行するなど、人民元の国際化プロセスにおいて一貫して重要な役割を果たし続けている。
注:本記事は、HSBCグループ会社の役職員が、一般に公表されたデータやHSBCグローバルリサーチのレポート等を基に作成したものです。本記事により、HSBCグループとして、または執筆者個人として、金融商品への投資を行うことも、または行わないことも、勧めるものではありません。
立澤 賢一(たつざわ・けんいち) HSBC証券社長
1985年、住友銀行(現 三井住友銀行)入行。支店及び国際部を経てロンドン証券現地法人にて債券トレーディング部長、リスク管理部長を務める。93年、メリルリンチ日本証券会社に外国債券部ディレクターとして入社し、95年に同社マネージング・ダイレクターとして法人営業本部長に就任。2000年より同社ロンドン支店にてアジアデスク及び円貨債券部門の責任者となる。
2001年、バンクオブアメリカ証券グローバルマーケッツグループに経営会議メンバーとして入社。同東京支店常務取締役資金債券金融商品本部長に就任。債券、デリバティブトレーディング、営業、引受、資金為替マネーマーケット部門を統括する。2005年、HSBC証券東京支店入社。グローバル・マーケッツ債券営業本部長を経て2008年10月よりグローバル・マーケッツ統括本部長に就任、日本における債券、株式、引受部門の責任者を務める。また、香港上海銀行在日支店為替資金本部の掌握を兼任する。2009年1月より同社取締役、2010年1月より現職。
エマージングエコノミーの鳥瞰図
世界経済が揺れ動く中、新興国への関心が高まっている。成長への期待も強いが、その反面脆弱性も残る。専門家の目を通じて新興国経済の現状とこれからを俯瞰していく。これからの成長センターと期待される国々の実力を見ていく。
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