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日銀は成長復活の特効薬ではない 政治が無策   米FRB規制案に意見書=金融政策への影響懸念
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/865.html
投稿者 MR 日時 2012 年 5 月 06 日 22:39:48: cT5Wxjlo3Xe3.
 

日銀は成長復活の特効薬ではない、政治が無策
2012.5.5 05:00
ペセック 
 日本の20年に及ぶ低迷がなおも続いている理由を知りたければ、日本銀行への先週の世間の注目ぶりを見れば、その手掛かりが見つかる。
経済成長が減速し、より積極的な措置を求める政治家の声が強まる中、日銀は4月27日の金融政策決定会合で、資産買い入れ等基金の長期国債購入を10兆円増額するなどの追加緩和策を決めた。円が買われる一方で成長は勢いに欠け、欧州債務危機は新たな局面が進行。日銀への圧力は強まりつつある。
それこそがまさに問題なのだ。皆の視線が注がれている先は日銀であって、景気刺激策を何ら講じていない日本の政治家に対してではない。
こうしたパターンは、日本の1980年代の資産バブル崩壊以降続いてきた。それが日本の成長を妨げている。紙幣を刷ることのみが再生の鍵であるなら、日本は中国よりも速いペースで成長しているだろう。日銀はこの10年余り、政策金利をゼロ近辺に維持している。各種の量的緩和や資産購入など金融政策の未知の領域にも踏み込んだ。2月には消費者物価(CPI)の前年比上昇率1%を目指すと発表した。
それでも日本の信用システムは壊れている。問題はマネーの供給でなく、その使い方だ。銀行は貸し出しを渋り、企業と家計はお金を借りようとしない。金融政策に効力を持たせる乗数効果は、日本では望みにくい。
野田政権の増税
欠けている要素は信頼感だ。企業幹部や消費者が、次の10年はこれまでの10年よりも繁栄すると考えるようになるまで、デフレは深刻化するだろう。政府は、雇用増加と所得引き上げのためのインセンティブを生み出す役割を果たすべきだ。
残念ながら野田佳彦政権は別の方面に重点を置いている。増税だ。確かに、消費税を向こう3年で10%に引き上げれば債務削減には寄与するだろう。しかし、それは消費に影響を及ぼし、日本が抱える悩みを深くするだけだ。
日本が必要としているのは、生産性を引き上げ、移民受け入れを増やし、各国との自由貿易協定(FTA)締結に真剣に取り組むことだ。コーポレートガバナンス(企業統治)を改善し、女性の労働力をもっとうまく活用し、起業家精神を促し、出生率引き上げに努めるべきだ。
だが、政治家は無策だった。一体何をしているのかといえば、またもや日銀に頼っている。残念ながら、それで活気に満ちた成長が近い将来に回復することはないだろう。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:The Bank of Japan: Not as Powerful as Tokyo Thinks(抜粋)
更新日時: 2012/05/01 11:14 JST
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120505/mca1205050502004-n2.htm
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M3BJXN6S972A01.html

米FRB規制案に意見書=金融政策への影響懸念―日銀
2012年5月4日(金)10:46
 【ワシントン時事】米連邦準備制度理事会(FRB)が策定した米大手金融機関の与信制限に関する規制案について、日銀がFRBに意見書を送り、日本の金融政策や米国外の金融システムに影響が及ぶなどと懸念を伝えていたことが明らかになった。金融規制担当のタルーロFRB理事宛ての4月28日付の書簡を、FRBが3日までにホームページ上に掲載した。

 同規制案は、金融危機の再発防止を目指し2010年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)に基づくもので、大手金融機関が特定の相手に過剰な与信を行わないよう制限を課す。

 意見書は、日銀が金融市場調節を行う相手には米大手金融機関も含まれており、規制案が適用されると、そうした金融機関が決済のため日銀に預けている当座預金の十分な残高を維持できなくなるかもしれず、その結果、「日銀の金融政策運営の効率を減ずる可能性がある」などと指摘。その上で「建設的な国際的対話を通じ、創造的かつ現実的な解決策がみつかると確信する」と、話し合いを求めた。 

[時事通信社]
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-120504X282.html

日銀
2012.5.2 03:08
 日銀人事(4月30日)退任(総務人事局)天野幸良(5月1日)調査統計局経済統計課長事務取扱 調査統計局審議役桜庭千尋▽総務人事局(欧州統括役ロンドン事務所長事務取扱)川添敬▽欧州統括役ロンドン事務所長事務取扱(企画局参事役兼政策委員会室参事役)長井滋人

 (11日)退任 総務人事局長織立敏博▽総務人事局長(総務人事局審議役)衛藤公洋▽総務人事局参事役(横浜支店長)山田泰弘▽前橋支店長(金融機構局上席考査役)相良雅幸▽横浜支店長(前橋支店長)竹沢秀樹
 

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コメント
 
01. 2012年5月09日 03:36:26 : 3CNLte9sGM
2012年5月
2011年度の金融市場調節
日本銀行金融市場局
本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融市場局までご相談ください。
転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。
1
1.概観............................................................
2
2.金融市場動向と金融市場調節運営..................................
3
(1)国際金融資本市場の動向........................................
3
(2)日本銀行の金融市場調節運営....................................
5
BOX1 米国連邦準備制度と欧州中央銀行の金融市場調節運営......
8
(3)国内資金・債券市場等の動向....................................
10
BOX2 補完当座預金制度と大量資金供給のもとでの翌日物金利....
11
BOX3 日米における短期国債利回り............................
13
BOX4 為替スワップ市場と米ドル資金供給オペ..................
18
(4)為替市場・国内株式市場の動向..................................
19
3.金融市場調節運営と日本銀行のバランスシート......................
21
(1)日本銀行のバランスシートの変化................................
21
(2)日銀当座預金残高の動向........................................
22
BOX5 業態別の日銀当座預金残高と翌日物金利..................
23
BOX6 コール市場の取引残高..................................
24
(3)資金過不足の動向..............................................
26
BOX7 オペの資金過不足への影響..............................
31
4.金融市場調節手段の運営状況......................................
33
(1) 資産買入等の基金の運営........................................
33
BOX8 固定金利方式での共通担保資金供給オペの応札倍率........
34
BOX9 資産買入等の基金による国債買入と成長通貨供給のための
国債買入オペ........................... ...............
36
BOX10 資産買入等の基金による国庫短期証券買入の状況..........
38
(2)通常のオペ手段................................................
41
BOX11 日本銀行の保有する長期国債残高の動向..................
42
BOX12 金利入札方式での共通担保資金供給オペの応札倍率........
45
(3)補完貸付制度..................................................
47
(4)成長支援資金供給..............................................
47
(5)被災地金融機関支援オペ........................................
48
(6)米ドル資金供給オペ............................................
48
BOX13 共通担保の受入状況....................................
49
5.金融市場調節運営に関するその他の事項............................
52
(1)成長支援資金供給の拡充........................................
52
(2)東日本大震災の被災地の復旧・復興に向けた金融面での支援........
52
(3)担保掛け目等の定例見直し......................................
54
(4)多角的スワップ取極の締結等....................................
54
(5)国債決済期間の短縮化に伴うオペタイムテーブルの変更............
55
参考計表・資料一覧..................................................
56
2
1.概観
本稿では、2011年度の金融市場調節運営について説明する。
2011年度において、日本銀行は、「包括的な金融緩和政策」(以下、包括緩和政策)のもとで強力な金融緩和を推進した。すなわち、実質的なゼロ金利政策を継続するとともに、2010年10月に導入した資産買入等の基金については、残高上限を2010年度末時点の40兆円程度から65兆円程度へ累次にわたって大幅に引き上げた。このほか、金融市場の安定確保の観点から、国内市場において潤沢な資金供給を行うとともに、外貨資金供給についても、主要中央銀行と協調し、米ドル資金供給オペの適用利率の引き下げなどを行った。また、成長基盤強化の支援の継続・拡充や、東日本大震災の被災地における金融機関の支援の実施など、中央銀行としての貢献を積極的に行った。
このもとでの金融市場調節についてみると、第1に、強力な金融緩和を推進するため、資産買入等の基金の運営として、固定金利方式での共通担保資金供給オペや、多様な金融資産(長期国債、国庫短期証券、コマーシャル・ペーパー(CP)等、社債等、指数連動型上場投資信託受益権(ETF)、不動産投資法人投資口(J−REIT))の買入れを着実に進めた。その結果、基金の残高は、2011年度中に+17.1兆円増加し、2011年度末には48.9兆円となった。
第2に、財政資金等の動きによる資金過不足に対しては、必要に応じ、金利入札方式による共通担保資金供給オペを実施した。上述の基金の運営と合わせて潤沢な資金供給のもとで、年度を通じて、市場では資金調達環境に対する安心感が拡がった。無担保コールレート(オーバーナイト物)は金融市場調節方針に沿って推移したほか、長めの金利も極めて低い水準まで低下した。
第3に、国際金融資本市場における緊張感の高まりを受けて、米ドル資金供給オペのオファーを継続した。また、11月には、国際短期金融市場における米ドル調達コストが大幅に上昇したことを踏まえ、カナダ銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度およびスイス国民銀行の5中央銀行と協調し、国際金融システムに対する流動性支援提供能力を拡充するため、米ドル資金供給オペの適用利率の引き下げや多角的スワップ取極の締結などを行った。こうしたもとで、年明け以降、為替スワップ市場を中心に米ドル調達コストは大きく低下した。
以下では、まず、金融市場動向と金融市場調節運営について説明する。次に、金融市場調節運営に伴う日本銀行のバランスシートの変化について述べる。最後に、個々の金融市場調節手段の運営状況などについて説明する。
3
2.金融市場動向と金融市場調節運営
2011 年度の金融市場動向と金融市場調節運営について、概観すると以下の通りで
ある。
(1)国際金融資本市場の動向
2011 年度の国際金融資本市場は、2010 年度からみられていた欧州債務問題への
懸念が一段と深刻化したことを主因に、緊張感が高まった。欧州債務問題を巡って
は、ギリシャの債務再編の行方に対する不安が強まるなか、2011 年7月に入って、
イタリアやスペインの国債利回りが急上昇するなど、その懸念は、相対的に規模の
大きな国々を含むユーロ圏各国に波及した(図表1)。欧州各国の国債価格の広範
な下落が、こうした債券を多く保有する欧州金融機関の格下げなどにつながったこ
ともあって、米ドル資金市場や為替スワップ市場を中心に、資金の出し手が、欧州
金融機関に対するカウンターパーティ・リスクなどを意識して資金放出姿勢を慎重
化させた。この間、ユーロ圏諸国による金融システムの安定化に向けた動きなども
みられたが、2011 年末にかけては、市場における先行き不安を払拭するには至らず、
米ドル調達コストは大きく上昇した(図表2)。
こうしたもとで、2011 年末にかけて、グローバルな投資家は、リスク性資産に対
する投資姿勢を全般的に後退させた。米欧の株価は、恐怖指数と呼ばれる米国株価
のインプライド・ボラティリティ(VIX)が上昇する神経質な地合いのもとで(図
表3)、欧州債務問題を巡る動きやその帰趨に対する思惑などから、大きく振れる
展開を辿った(図表4)。米欧の社債流通利回りの対国債スプレッドは、金融セク
ターを中心に、拡大した(図表5)。その一方で、米欧の長期金利は、米国連邦準
(図表1)欧州周縁国の国債利回りの
対独スプレッド(10 年)
(図表2)ドル調達プレミアム(3か月)
(注)ユーロ投(円投)ドル転コストは、ユーロLIBOR(円LIBOR)
でユーロ(円)を調達し、為替スワップ市場でドルに交換
した場合のドル調達コスト。
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
4,000
08/7 09/1 09/7 10/1 10/7 11/1 11/7 12/1
(bps)

ギリシャ
アイルランド
ポルトガル
スペイン
イタリア
-0.5
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
10/4 10/10 11/4 11/10
ユーロ投ドル転コスト−ドルLIBOR
円投ドル転コスト−ドルLIBOR

(%)
(注)ギリシャは、2012/3 月の債務再編により、大きく
縮小している。
4
備制度による金融緩和の推進や、安全資産を選好する投資家行動に加え、一度は楽
観的な見方も出ていた米国景気の先行きについて再び減速懸念が強まったことも
相まって、大きく低下し、2008 年のリーマン・ブラザーズ破綻直後を下回る歴史的
な低水準で推移した(図表6)。
2012 年入り後は、後述するように、日本銀行を含めた主要中央銀行が協調対応策
を打ち出したことや、欧州中央銀行が金額無制限の3年物オペ(BOX1を参照)に
よって潤沢な資金供給を行ったことなどが好感され、市場の緊張感は一頃に比べれば
和らいだ。米国経済の先行きについても、事前予想を上回る経済指標がみられたこと
などから、悲観的な見方が幾分後退した。これらを受けて、市場における米ドル調達
コストは大きく低下したほか、VIXは2011 年度初と同程度の水準での推移となる
など、投資家のリスク性資産に対する投資姿勢は回復方向の動きとなった。米欧株価
は上昇基調を辿り、米国ダウ平均株価は、リーマン・ブラザーズ破綻以降では初めて
となる13,000ドルを回復した。また、米欧の社債流通利回りの対国債スプレッドは、
縮小に転じた。この間、米欧の長期金利は、低水準での推移を続けた。
(図表3)米国株価のボラティリティ(VIX) (図表4)株価
(図表5)社債利回りの対国債スプレッド (図表6)長期金利(10年)
(注)S&P500 指数を原資産とする1 か月物ボラティリティ指数。
(注)対象は、残存3 年以上5 年未満かつAA 格の銘柄(格付
けはMoody's、S&P、Fitch による)。
10
20
30
40
50
60
10/4 10/10 11/4 11/10
(pts)

0.0
1.0
2.0
3.0
10/4 10/10 11/4 11/10
欧州
米国

(%)
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
08/4 09/4 10/4 11/4
米国
ドイツ
日本
(%)

150
200
250
300
350
6,000
8,000
10,000
12,000
14,000
10/4 10/10 11/4 11/10
米国(ダウ平均)
欧州(ユーロ・ストックス、右目盛)
日本(日経平均)
(円、ドル) (pts)

5
(2)日本銀行の金融市場調節運営
2011年度中、日本銀行は、次のような政策決定を行った。
日本銀行は、2010年10月以降、包括緩和政策を通じて、強力な金融緩和を推進している。具体的には、2010年10月の金融政策決定会合において、第1に、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標水準を「0〜0.1%程度」とし、実質的なゼロ金利政策を採用していることを明確にすること、第2に、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質的なゼロ金利政策を継続していく方針を明らかにすること、第3に、資産買入等の基金を創設し、多様な金融資産の買入れ等を進めることを決定した。また、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という点でも、必要な措置を講じてきた。
2011年度中は、これらの取り組みの継続に加えて、2011年8月4日、10月27日、および2012年2月13〜14日の金融政策決定会合において、金融緩和を一段と強化することを決定した。8月4日には、震災からの立ち直り局面から物価安定のもとでの持続的成長経路への移行をより確かなものとする観点から、資産買入等の基金を10兆円程度増額し、50兆円程度とした。また、10月27日には、資産買入等の基金を5兆円程度増額し、55兆円程度とした。2月13〜14日には、「中長期的な物価安定の目途」を示すなど、わが国経済のデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けた日本銀行の姿勢をより明確化するとともに、先行きの内外経済の不確実性がなお大きい中で、前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、わが国経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものとするため、資産買入等の基金を10兆円程度増額し、65兆円程度とした(図表7)。同基金については、2012 年12月末を目途に増額を完了することとした。
金融市場の安定確保の観点からは、2011年11月30日に、カナダ銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度およびスイス国民銀行の5中央銀行と協調し、国際短期金融市場における緊張の高まりへの対応として、国際金融システムに対する流動性支援を強化するため、米国連邦準備制度との間で締結している米ドル・スワップ取極、ならびに米ドル資金供給オペに適用される金利を0.5%引き下げた。すなわち、当初、米ドル・オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)・レートに1%を上乗せしたものとしていた適用利率を、米ドルOISレートに0.5%を上乗せしたものとした。
成長基盤強化を支援するための資金供給(以下、成長支援資金供給)については、金融機関の取り組みをさらに後押ししていくため、2011年6月13〜14日の金融政策決定会合では、出資や動産・債権担保融資(いわゆるABL)などを対象とした5,000億円の新たな貸付枠を設けたほか、2012年3月12〜13日の金融政策決定会合では、円貨および外貨の両面で拡充し、貸付額の総額を、それまでの3.5兆円か
6
ら5.5兆円に2兆円増額することを決定した。
また、東日本大震災の被災地の復旧・復興に向けた金融面での支援として、2011年4月28日の金融政策決定会合では、被災地金融機関を支援するための資金供給オペ(以下、被災地金融機関支援オペ)の導入等を行った。
こうした政策決定に基づいて、日本銀行は、具体的には以下のような金融市場調節運営を行った。
まず、資産買入等の基金について、残高上限の累次にわたる増額を踏まえながら、残高の積み上げを図った。固定金利方式での共通担保資金供給オペによって、0.1%の低金利で、期間3か月や期間6か月といった長めの資金を供給したほか、長期国債をはじめとする各種金融資産の買入れを進めた結果、2011年3月末時点で31.8兆円であった残高は、上限の65兆円程度に対して、2012年3月末までに48.9兆円に到達した(図表8)。
このうち、残高上限が30.0兆円程度から、2011年8月に35.0兆円程度まで増額された固定金利方式での共通担保資金供給オペは、過去に実施した分で返済期日を迎えたものについて再度同じ金額でオファーするとともに、新規のオファーを行って残高の積み上げを図った。その結果、2012年3月末の残高は34.6兆円と、前年同期比で+5.8兆円増加し、増額後の上限に概ね到達した。また、残高上限が2.0兆円程度から、2011年8月に4.0兆円程度、10月に9.0兆円程度、2012年2月には19.0兆円程度まで大幅に増額された長期国債の買入れでは、2011年4月から7月までは1回当たり1,000億円で月1回、8月から10月までは1回当たり1,500億円で月1〜2回、11月から2012年1月までは1回当たり2,500〜3,000億円で月
(図表7)資産買入等の基金の増額
(注)日本銀行は、資産買入等の基金とは別に、年間21.6兆円の長期国債の買入れを行っている。
35 40 50 55 65 48.9 5.0 10.0 ↑15.0 ↑20.0 ↑30.0 ↑14.3 長期国債1.5 2.0 ↑4.0 ↑9.0 ↑19.0 ↑6.3 国庫短期証券2.0 3.0 ↑4.5 ↑4.5 4.5 3.5 CP等0.5 2.0 ↑2.1 ↑2.1 2.1 1.6 社債等0.5 2.0 ↑2.9 ↑2.9 2.9 2.0 ETF0.450.9 ↑1.4 ↑1.4 1.4 0.8 J−REIT0.050.1 ↑0.11↑0.110.110.0730.0 30.0 35.0 ↑35.0 35.0 34.6 期間3か月20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 期間6か月10.0 10.0 15.0 ↑15.0 15.0 14.6 12/3月末残高(兆円)―12/12月末12/12月末12/12月末買入残高および貸付残高の上限(兆円程度)10/10月〜11/3月〜11/8月〜11/10月〜12/2月〜12/6月末 総額 資産の買入れ 固定金利方式 ・共通担保資金供給オペ 増額完了の目途11/12月末
7
2回程度、2012 年2月からは1回当たり5,000 億円で月3回程度と、残高上限の増
額に合わせて、買入ペースを大きく加速させた。2012 年3月末時点の残高は、前年
同期から+5.4 兆円増加し、6.3 兆円となった。このほか、国庫短期証券、CP等、
社債等といった各種金融資産の買入れについても、買入残高は、前年同期と比べて
大幅に増加した。
次に、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移する
よう促す」との誘導目標を実現するとともに、金融市場の安定を確保するため、主
に短期的な資金過不足を均すことを目的としたオペレーションとして、金利入札方
式による共通担保資金供給オペを活用し、潤沢な資金供給を行った。日銀当座預金
残高が前年度に比べて大幅に高い水準で推移するもとで、市場における資金余剰感が
強まり、金利入札方式による共通担保資金供給オペや、上述の基金の運営として行
った一部のオペにおいて、応札額がオファー額に届かない、いわゆる「札割れ」が
生じる場面もみられた。
また、金融市場の安定確保の観点から、米ドル資金市場や為替スワップ市場にお
ける緊張感の高まりや、それに伴う米ドル調達コストの上昇に対応して、米国連邦
準備制度との米ドル・スワップ取極に基づいて、1週間物および3か月物の米ドル
資金供給オペを継続的にオファーした。2011 年10 月までは応札はみられなかった
が、市場における緊張感が一段と高まり、為替スワップ取引による円投ドル転コス
トが大幅に上昇した11 月には、尐額の応札がみられた。また、11 月30 日に米ドル
資金供給オペの適用利率が引き下げられると、同オペへの応札は大幅に増加した。
この間、成長支援資金供給は3か月に1回、被災地金融機関支援オペについては
月1回のペースで、それぞれ実施した。
10/10 1/10 4/10 7/10 10/10 1/10
10
20
30
40
50
60
70
10/10 11/1 11/4 11/7 11/10 12/1
J-REIT ETF
社債等CP等
国庫短期証券長期国債
固定金利オペ
(兆円)

残高上限
(図表8)資産買入等の基金の残高
(注1)「固定金利オペ」は、固定金利方式での共通担保資金供給オペ。
(注2)基金創設(2010 年10 月28 日)以前は、固定金利オペ残高。
8
BOX1 米国連邦準備制度と欧州中央銀行の金融市場調節運営
上述のとおり、日本銀行は強力な金融緩和を推進したが、米国連邦準備制度およ
び欧州中央銀行も同様に、リーマン・ブラザーズが破綻した2008 年秋以降、政策
金利を極めて低い水準まで引き下げるとともに、流動性供給の拡大や資産買入れと
いった対応を講じてきた。2011 年度においても、それぞれの国・地域の金融市場の
機能度や経済・金融環境に応じた様々な金融緩和措置が採られた。
米国連邦準備制度は、2010 年11 月に導入した大規模資産買入プログラム(LS
AP2)によって、2011 年6月まで国債買入を進めた結果、米国連邦準備制度の資
産としては長期国債が、負債としては当座預金が、それぞれ増加した(図表9)。
新規買入の終了後は、保有証券にかかる償還金の中長期国債への再投資を継続した
ほか、9月21 日には、残存期間の長い国債を買入れる一方で残存期間の短い国債
を同額売却し、保有国債の長期化を行うこと(いわゆるオペレーション・ツイスト)
や、保有するエージェンシー債およびエージェンシーMBSの償還金をエージェン
シーMBSに再投資することを決定した。これらの措置は、売却・償還見合いで新
たな資産を買い入れるものであったため、米国連邦準備制度の資産の規模は、横ば
い圏内で推移した。なお、11 月30 日における米ドル資金供給オペの適用利率の引
き下げ以降は、同オペの利用が増加したことを受けて、海外中銀に対するドル供給
残高が増加した。
(図表9)米国連邦準備制度の資産・負債
(資産) (負債および純資産)
(注)SFP は、Supplementary Financing Program。
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
08/4 09/4 10/4 11/4 月
自己資本その他負債
リバースレポSFP
当座預金銀行券
(兆ドル)
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
08/4 09/4 10/4 11/4
その他資産短期オペ
海外中銀へのドル供給エージェンシーMBS
エージェンシー債短期国債
長期国債

(兆ドル)
9
欧州中央銀行は、欧州債務問題による国債市場の機能低下に対応するため、2011
年8月に、2010 年5月に導入した証券市場プログラム(SMP)による国債等の買
入れを再開した。また、2011 年10 月6日には、2010 年6月に終了していたカバー
ドボンド買入プログラムを再開した。なお、SMPによる国債等の買入れの増加に
伴って、それによって供給された資金を吸収するためのターム物預金の残高が増加
した(図表10)。
また、欧州中央銀行は、流動性供給を一層強化するため、長めのタームの資金を
金額無制限で、政策金利によって貸し出すオペレーション(LTRO)の拡充を行
った。すなわち、2011 年8月4日には、2010 年5月以降実施していなかった6か
月物、2011 年10 月6日には、2009 年12 月以降実施していなかった12 か月物の再
開を決定したほか、2011 年12 月8日には、新たに3年物を導入した。特に、3年
物LTROは、12 月21 日実施分で4,892 億ユーロ、2012 年2月29 日実施分で5,295
億ユーロと、多額の応札を集めた。その結果、資産サイドにおけるLTRO残高は
大幅に増加し、負債サイドでは、いわゆる超過準備に相当する預金ファシリティ残
高が大きく増加した。なお、2012 年1月18 日から、預金準備率が2%から1%に
引き下げられ、当座預金残高は減尐した。
(注1)欧州中央銀行およびユーロ圏各国中央銀行の資産・負債を統合したもの。
(注2)MRO,FTO,LTRO は、それぞれ、Main Refinancing Operations、Fine-tuning Operations、
Longer-term Refinancing Operations。
(図表10)欧州中央銀行の資産・負債
(資産) (負債および純資産)
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
08/4 09/4 10/4 11/4
その他その他証券
カバードボンド・国債等LTRO
MRO・FTO 金・外貨等
(兆ユーロ)

0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
08/4 09/4 10/4 11/4
(兆ユーロ)

自己資本その他負債
ターム物預金預金ファシリティ
当座預金銀行券
10
(3)国内資金・債券市場等の動向
こうした金融市場調節運営のもとで、国内の資金・債券の各市場や米ドル資金市場等は、次のような展開を辿った。
@ 翌日物市場
短期金融市場では、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、金融市場調節方針(「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す」)に沿って推移し、2011年度中は、0.1%を超えた日は皆無となった(図表11)。東日本大震災直後には、日本銀行のオペを用いて多額の資金を予備的に調達する動きがみられたが、先行き不透明感が後退し、短期金融市場が落ち着きを取り戻すにつれて、資金余剰感が強まった。このため、コール市場における資金調達需要は減退し、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、一時、0.06%程度まで低下した。その後は、震災直後に日本銀行のオペによって調達された資金が徐々に期落ちを迎えるなかで、レートは緩やかに上昇したが、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、2012年3月末にかけても、総じてみれば0.08%前後で、安定的に推移した。
GCレポレート(スポットネクスト物)は、東日本大震災を受けて予備的な資金が大量に供給された2011年4月や、多額の為替介入資金が流入した11月などで、一時的に0.1%を下回って低下する局面がみられた。もっとも、基本的には、補完当座預金制度の適用金利である0.1%、ないしは、それをごく小幅に上回る水準で、1年を通じて安定的に推移した。
(図表11)翌日物金利
(注1)約定日ベース。
(注2)シャドーは、金融市場調節方針における誘導目標水準(0〜0.1%)。
0.000.050.100.150.2011/411/711/1012/1GCレポレート(S/N物)無担保コールレート(O/N物)月(%)補完当座預金制度の適用利率
11
BOX2 補完当座預金制度と大量資金供給のもとでの翌日物金利 2011年度中の翌日物金利の動きをみると、各種金利が0.1%程度に収斂し、極めて安定的に推移した。こうした金利形成は、補完当座預金制度の存在によって金利が0.1%を大きくは下回らない一方、日本銀行による潤沢な資金供給を背景に0.1%を大きくは上回ることもない状況のもとで実現した。 補完当座預金制度は、日銀当座預金のうち、準備預金制度における所要準備額を超える金額(いわゆる超過準備)等に利息を付す制度で、2011年度中の適用利率は0.1%であった。補完当座預金制度のもとでは、市場金利が0.1%よりも低い場合、市場参加者は、市場で調達した資金を日銀当座預金に預け入れ、0.1%の利回りを受け取ることによって収益を得ることができる。逆に、こうした取引が行われることで、市場金利は0.1%まで上昇する。同制度は、このように市場金利に下限を画することで、潤沢な資金供給を行うなかでも市場取引のインセンティブを残し、短期金融市場の機能の維持に配慮しようとするものである。 東日本大震災後の短期金融市場では、震災直後に予備的に調達された資金が、市場の先行き不透明感の後退を受けて予備的需要が剥落するに従い、余剰資金化したため、レートに強い下押し圧力がかかった。もっとも、こうした場面では、無担保コール市場で、都市銀行などが、投資信託を始めとする補完当座預金制度の非適用先が放出する資金を0.06%前後の低いレートで調達し、それを日銀当座預金に預け入れて0.1%の利回りを得る裁定取引がみられた。レポ市場でも、同様の動きがみられた。こうした主体が存在していることで、補完当座預金制度の機能が発揮され、金利低下圧力が非常に強い局面であっても、無担保コールレートやGCレポレートの0.1%を下回る水準への低下は限定的なものにとどまった。 その後、震災直後に調達された資金が徐々に期落ちを迎え、著しい金利低下圧力は緩和されたが、レートは大きく上昇することなく、無担保コールレートは0.08%程度、GCレポレートは0.10%程度の水準で、安定的に推移した。なお、無担保コールレートは、GCレポレート対比やや低くなっているが、取引仲介手数料等を加味すれば両者を通じた調達コストはほぼ同程度と考えられるとの指摘が聞かれている。市場参加者は資金調達を行うに当たって最もコストの低い手段を選ぶが、それによって、調達手段間に裁定が働く。この間の金利形成は、日本銀行が市場の資金需要に対して十分に見合った資金供給を続け、短期資金供給オペの平均落札レートが全て貸付下限レートである0.10%となるもとで、無担保コールレートやGCレポレートが、オペでの調達利回りである0.10%に収斂した結果とみることができる(図表12)。
12
A ターム物市場
日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、翌日物金利が低い水準で落ち着いて推
移したことを背景に、市場参加者の間で、先行きの資金調達環境に対する安心感が
拡がったほか、金利の先高観は著しく後退した。また、資産買入等の基金の運営と
して、期間3か月や期間6か月の長めの資金を0.1%で供給する固定金利方式の共
通担保資金供給オペが行われたことから、そこで得た資金を長めのターム物資産へ
の投資に振り向ける動きもみられた。加えて、同じく基金の運営として国庫短期証
券買入も実施されるもとで、ターム物金利は、低下余地の残されていた長めのゾー
ンを中心に、一段と低下した。2011 年度中、国庫短期証券の1回当たり発行額は、
3か月物で、2011 年4月時点の4.8 兆円程度から2012 年3月時点の6.0 兆円程度
まで累次にわたって増額されたが(図表13)、投資家による投資需要は強く、国庫
短期証券利回りは低下基調となった(図表14)。2011 年8月以降は、1年物まで含
めた全てのタームで、補完当座預金制度の適用金利である0.1%に、ほぼ完全に収
斂した。
(図表12)GCレポレートと資金供給オペの落札レート
(図表13)国庫短期証券(3か月物)の
1回当たり発行額
(図表14)国庫短期証券の流通利回り
(注)ここでの資金供給オペは、金利入札方式の共通担保資金供給オペ。
(注)各入札日の発行予定額。
0.08
0.09
0.10
0.11
0.12
0.13
0.14
0.15
11/4 11/7 11/10 12/1
1年物
6か月物
3か月物
(%)

4
5
6
7
11/4 11/7 11/10 12/1
(兆円)

0.06
0.08
0.10
0.12
0.14
0.16
10/4 10/10 11/4 11/10
(%)

資金供給オペの平均落札レート
GCレポレート(S/N物)
13
BOX3 日米における短期国債利回り
わが国の短期国債(国庫短期証券)利回りは、総じてみれば補完当座預金制度の
適用利率である0.1%近傍で推移した。この間、やや仔細にみると、例えば2011 年
8〜9月頃には、国庫短期証券の発行入札において、0.1%を下回る利回りで落札
される場面がみられた(図表15)。この時期は、欧州債務問題や米国連邦政府債務
の上限引上げ問題の深刻化を受けて、グローバルに投資家の間でいわゆる「質への
逃避」の動きが強まったことなどから、補完当座預金制度の対象とならない海外投
資家がわが国の国庫短期証券への投資を積極化させていた(図表16)。このため、
同制度による下限金利を画す機能が一時、十分に働かなかったものと考えられる。
もっとも、0.1%を下回る水準への金利低下の動きは、総じて一時的かつ小幅なも
のにとどまった。また、国庫短期証券を保有するための資金調達手段や、国庫短期
証券の代替的な投資手段として用いられるGCレポ取引の利回りも、補完当座預金
制度適用利率である0.10%近傍で推移した(BOX2を参照)。
金融機関の準備預金(所要準備および超過準備)に対して0.25%の利息を付す準
備預金付利制度を設けている米国をみると、わが国と同様、欧州債務問題が深刻化
したタイミングで、投資家による「質への逃避」が起こり、わが国の国庫短期証券
利回りに相当する財務省短期証券利回りに強い低下圧力がかかった。このとき、わ
が国とは異なり、これらの利回りが準備預金への付利金利である0.25%を大きく下
回り、0%近傍で推移する期間が、ある程度長く継続した(図表17)。GCレポレ
ートも、0.25%を大きく下回って推移した。
(図表15)国庫短期証券の発行利回り(3か月物) (図表16)非居住者による短期債投資額
(注)短期債(国庫短期証券を始めとする、満期ま
での期間が1 年以下の証券)のネット取得額の
累積。2011 年4 月3 日週初=0 としたもの。
0.08
0.09
0.10
0.11
0.12
11/4 11/7 11/10 12/1
流通利回り
入札時の募入最高利回り
入札時の募入平均利回り
(%)

-4
0
4
8
12
16
20
11/4 11/7 11/10 12/1
(兆円)

14
日米におけるこうした違いについては、さまざまな要因が影響していると考えられるが、その背景として、以下のような点を挙げることができる。 まず、日本では、GCレポ市場や短期国債市場における資金の出し手・投資家として、都市銀行を始めとする補完当座預金制度の適用先のプレゼンスが大きいことが特徴である。市場においてリスク回避的な動きが強まる場合でも、これらの投資家は、日銀当座預金を「安全資産」とみなして資金の待避先とすることで0.1%の運用利回りを得ることができるため、基本的には、GCレポや短期国債の利回りは0.1%以上となる。また、GCレポ市場では、補完当座預金制度の適用利率との間で、都市銀行や、同じく補完当座預金制度の適用先である証券会社などによる裁定取引がみられており、こうしたことも0.1%を下回る水準への金利低下を抑制した。 一方、米国のGCレポ市場や短期国債市場では、マネー・マーケット・ミューチュアル・ファンド(MMMF)など、準備預金付利制度の非適用先のプレゼンスが相応に大きい(図表18)。このため、準備預金付利金利である0.25%を下回るレートでも、多くの資金放出が行われる。さらに、MMMFは、市場における緊張感が高まり、欧州金融機関に対するカウンターパーティ・リスクが意識された場面で、それまで欧州金融機関が発行する米ドル建てのCPやCDなどで運用していた資金を、「安全資産」としてのGCレポや短期国債による運用にシフトさせた。このため、GCレポ市場や短期国債市場では、0.25%を下回るレートでの資金放出が一段と増加した。
(図表17)米国におけるGCレポレートと
財務省短期証券利回り
-0.050.000.050.100.150.200.250.3010/410/1011/411/10(%)月GCレポレート(O/N物、後方5日移動平均)財務省短期証券利回り(3か月物)準備預金付利金利
15
こうした状況にあっても、米国商業銀行を始めとする準備預金付利制度の適用先によって、GCレポ市場で0.25%よりも低いレートで資金調達を行い、準備預金に預け入れて0.25%の利回りを得る裁定取引が行われれば、市場金利は0.25%に鞘寄せされるはずである。実際、2010年頃のGCレポレートをみると、0.15%程度での推移が続いており、0.25%からさほど大きくは乖離していなかった。もっとも、2011年4月からは、預金保険制度が変更され、米国商業銀行が短期金融市場において資金調達を行う場合に一定の保険料が課せられるようになった。すなわち、米国商業銀行が上述のような裁定取引を行うに当たって追加的なコストがかかるようになったことから、こうした取引は行われにくくなり、GCレポレートも0.25%から乖離しやすくなった。また、米国では、準備預金制度の対象とならないマネー・ブローカーやディーラーには準備預金付利制度も適用されないため、短資会社や証券会社が補完当座預金制度の適用先となっているわが国とは異なり、これらの先によって、準備預金付利金利の水準を意識した取引が行われることもない(図表19)。 このように、米国では、準備預金付利制度の非適用先の市場プレゼンスが大きいことや、同制度の適用先による裁定行動が行われにくくなっていることなどを背景に、局面によって、GCレポレートや財務省短期証券利回りが準備預金付利金利の0.25%を大きく下回りやすくなっているものと考えられる。
(図表18)米国の短期金融市場(2011年末時点)
(注)フェデラルファンド市場およびレポ市場。なお、*を付した項目およびその他の一部は、ネットベースの計数。
外国銀行在米拠点* 3,156米国商業銀行* 2,734ブローカー・ディーラー* 2,131REIT 2,100不突合1,726ミューチュアル・ファンドマネー・マーケット・ミューチュアル・ファンド4,840GSE*州政府等1,665資金の出し手資金の取り手(億ドル)その他1,903その他1,5381,1041,151
16
B 国債市場
期間1年までのイールドカーブが0.1%の水準で完全にフラットとなる中、金利
低下圧力は、2年物国債利回りに波及した。日本銀行による包括緩和政策の枠組み
のもとで、いわゆる「時間軸効果」が働いたと考えられるほか、資産買入等の基金
の運営として行う残存期間1年以上2年以下の国債の買入れは、市場参加者に対し
て国債の大口かつ安定した売却先を提供した形となり、2年物国債への投資に対す
る安心感を与えた。2年物国債利回りは、2011 年度入り後の時点では0.20%程度
であったが、一段と水準を切り下げた(図表20)。2011 年10 月に資産買入等の基
金による国債買入の買入上限が9.0 兆円程度に増額されて以降は、概ね0.12〜
0.13%程度で、2012 年2月に買入上限が19.0 兆円程度に増額されて以降は、一段
と低下して0.11%程度で、極めて安定的に推移した。
また、5年物や10 年物の国債利回りも、2003 年のいわゆるVaRショックの直
前期を除けば、2002 年から2006 年までの量的緩和期を総じて下回る水準まで低下
し、株価が回復に転じた2012 年入り後も、低い水準で横ばい圏内の推移を続けた
(図表21)。この間、欧州債務問題が深刻化する中で、多額の累積債務を抱えるわ
が国の財政状況や、消費税率の引き上げを巡る議論の帰趨への関心が高まった。
(図表20)2年物国債利回り
(図表19)主な補完当座預金制度適用先(日本)と
準備預金付利制度適用先(米国)
(図表21)5年物・10 年物国債利回り
0.0
0.4
0.8
1.2
1.6
2.0
00 02 04 06 08 10 12
10年物
5年物
(%)

0.00
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
11/4 11/7 11/10 12/1
2年物国債
国庫短期証券(1年物)
国庫短期証券(3か月物)
(%)

日本米国
○ ○
短資会社・証券会社(ブローカー・ディーラー)等○ ×
投資信託(マネー・マーケット・ミューチュアル・ファンド) × ×
生命保険会社等× ×
非居住者× ×
準備預金制度適用先(銀行等)
       準備預金制度非適用先
17
C CP・社債市場
CP発行金利や社債流通利回りといったクレジット物の利回りも、一部社債銘柄
の格下げによる影響を除けば、低い水準で安定的に推移した(図表22、23)。グロ
ーバルに投資家のリスク回避姿勢が強まるもとで、米欧では社債の信用スプレッド
が拡大する動きがみられたが、わが国への影響は総じて限定的なものにとどまった。
この間、日本銀行が資産買入等の基金の運営として行うCP等買入や社債等買入は、
日本銀行が安定的な買い手となることで市場に安心感を与え、リスク・プレミアム
の低位安定に寄与した。
D 米ドル資金市場・為替スワップ市場
米ドル資金の調達利回りは、2011 年末にかけて、欧州債務問題を巡る緊張感が高
まるもとで、大きく上昇した。米ドル銀行間取引金利(LIBOR)は、一時、2009
年7月以来の水準まで上昇したほか、為替スワップ市場における円投ドル転コスト
も、2011 年11 月末にかけては1.2%台まで上昇した(図表24)。もっとも、11 月
30 日に日本銀行を含む6中央銀行によって協調対応策が示され、その後、懸念され
ていた2011 年末を越えてからは、市場における緊張感が後退した。米ドルLIB
OR、円投ドル転コストとも、明確な低下に転じ、2012 年3月末にかけては、米ド
ル資金供給オペの適用利率を下回って推移した。
(図表22)CP発行金利 (図表23)社債利回りの対国債スプレッド
(注)事業法人による発行分。 (注)残存年数は5 年。ただし、社債は残存3 年以上
7 年未満の銘柄から平均利回りを算出。格付けは
格付投資情報センターによる。なお、2011/4 月
および2011/10 月に大きく変動しているのは、
一部銘柄の格下げによる影響が大きい。
0.0
0.5
1.0
1.5
11/4 11/7 11/10 12/1
A格
AA格

(%)
0.00
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
11/4 11/7 11/10 12/1
3か月物
1か月物

(%)
18
BOX4 為替スワップ市場と米ドル資金供給オペ 欧州債務問題の深刻化は、欧州各国の国債を多く保有している欧州金融機関の経営状況に対する懸念の高まりを引き起こしたことから、国際金融資本市場では、欧州金融機関に対するカウンターパーティ・リスクへの警戒感が強まった。特に、米ドル資金市場や為替スワップ市場では、2011年夏から年末にかけて、資金の出し手が慎重化し、無担保取引だけでなく、為替スワップ取引による円投ドル転コストも大幅に上昇した。 わが国の金融機関についてみると、米ドル資金調達環境は欧州金融機関に比べて良好であったが、2011年末越えの資金繰りに万全を期すため、為替スワップ市場での円投ドル転によっても、やや厚めに予備的な米ドル資金調達を進めた。2011年末にかけては、資金の出し手が全般的に慎重化するもとで、本来の米ドル資金需要にこうした予備的な需要も加わって、市場における円投ドル転コストは大幅に上昇した。この間、11月までの米ドル資金供給オペは、適用利率を米ドルOISレートに1%を上乗せしたものとしていたため、市場における円投ドル転コスト対比での有利性が限定的であったこともあって、実際の利用は尐額にとどまった(図表25)。もっとも、市場では、同オペが非常時のバックストップとして安心感を与えているとの声が多く聞かれた。 その後、米ドル資金供給オペの適用利率は、11月30日の6中央銀行の協調対応策により、米ドルOISレートに0.5%を上乗せしたものに引き下げられた。これによって、日本銀行の米ドル資金供給オペへの応札額が大幅に増加するとともに、高止まりしていた市場での円投ドル転コストにも低下圧力がかかった。2012年入り後は、当初、2011年度末越えを意識してオペを積極的に活用する動きがみられたが、その後は、警戒されていた年末を無事に越えて米国投資家の米ドル資金の放出姿勢
(注)円投ドル転コストについては、図表2の注を参照。
(図表24)米ドルLIBORと
円投ドル転コスト(3か月)
0.0 0.3 0.6 0.9 1.2 1.5 09/409/1010/410/1011/411/10米ドル資金供給オペの適用利率円投ドル転コスト米ドルLIBOR月(%)
19
が積極化し、市場での円投ドル転コストが大幅に低下したことを受けて、オペに対
する応札額は大きく減尐した。
なお、各中央銀行の米ドル資金供給オペ残高は、その大部分を欧州中央銀行が占
めた(図表26)。2012 年3月末においては、欧州中央銀行が330 億ドルで全体の7
割強、日本銀行は135 億ドルで全体の3割弱となった。
(4)為替市場・国内株式市場の動向
この間、相対的に海外投資家のプレゼンスが高いとみられる為替市場や国内株式
市場は、国際金融資本市場の動向による大きな影響がみられるなかで、次のような
展開となった。
ドル/円相場は、米国の景気減速懸念が強まるもとで、2011 年8月に米国連邦準
備制度が、経済・物価情勢が見通しどおりに展開したという条件のもとでの低金利
(図表26)米ドル資金供給オペの残高
(図表25)米ドル資金供給オペの応札額
(注1)円投ドル転コスト(3 か月)については、図表2 の注を参照。
(注2)応札額およびオペの適用利率は、それぞれ、米ドル資金供給オペ
(3 か月物)の応札額および適用利率。
(注)イングランド銀行および11/4〜7 月の各中央銀行の残高はなし。
0
30
60
90
120
150
-0.9
-0.6
-0.3
0.0
0.3
0.6
11/4 11/7 11/10 12/1 月
(%) (億ドル)
円投ドル転コストと
オペの適用利率の差
応札額
(右目盛)
0
200
400
600
800
1,000
1,200
11/8 11/10 11/12 12/2 月
(億ドル)
欧州中央銀行
スイス国民銀行
日本銀行
20
政策の継続期間について明示したことなどから、一段と円高が進行し、2011 年末に
かけては70 円台後半での推移が続いた(図表27)。こうした状況を受けて、政府は、
2011 年8月および10〜11 月にドル買い・円売りの外国為替平衡操作(為替介入)
を実施した。介入額は、8月4日は4.5 兆円、10 月31 日は8.1 兆円と、1日の介
入額としての過去最高を大幅に更新する大規模なものとなった。
また、株価は、投資家のリスク回避姿勢の強まりやグローバルな景気減速懸念の
高まりを背景に、2011 年末にかけて下落基調を続けた(図表28)。2011 年末までの
わが国の株価は、東日本大震災やタイの洪水の影響に加え、ドル/円相場が歴史的
な円高水準での推移を続けたことが重石となり、米国の株価と比べても低調なパフ
ォーマンスとなった。日経平均株価は、東日本大震災後の安値(2011 年3月15 日)
を下回って推移する場面もみられた。
2012 年に入ると、欧州債務問題を巡る緊張感の高まりが一服し、投資家のリスク・
テイク姿勢が徐々に回復するとともに、米国経済の先行きに対する悲観的な見方が幾
分後退するなか、米国の2年物国債利回りが上昇した一方、上述のようにわが国の2
年物国債利回りは低水準の推移を続けたことから、日米金利差は幾分拡大した。加え
て、わが国の貿易赤字が主として海外投資家に意識されたことも相まって、ドル/円
相場は円安方向に戻し、3月末にかけては82〜83 円前後で推移した。また、日経平
均株価は、米国株価の上昇や為替円安を背景に上昇し、3月には一時、東日本大震災
以降の高値を更新する水準まで回復した。
(図表27)2年物国債の日米金利差と (図表28)ドル/円レートと株価
ドル/円レート
72
76
80
84
88
92
96
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
10/4 10/10 11/4 11/10
ドル/円レート(右目盛)
日米金利差
(%)

(円)
75
80
85
90
95
8,000
9,000
10,000
11,000
12,000
10/4 10/10 11/4 11/10
(円)

日経平均株価
ドル/円レート
(右目盛)
(円)
21
(兆円、かっこ内は前年同期差)
( -2.7)
被災地金融機関支援オペ0.5 ( +0.5)
その他21.6 ( +2.5)
資産合計139.6 ( -2.7) 負債および純資産合計139.6
成長支援資金供給3.1 ( +0.9)
補完貸付0.0 ( -0.0)
ETF買入0.8 ( +0.7)
J−REIT買入0.1 ( +0.1)
CP等買入1.6 ( +1.3)
社債等買入2.0 ( +1.8)
国庫短期証券買入3.5 ( +2.1)
国債買入6.3 ( +5.4)
共通担保資金供給34.6 ( +5.8)
資産買入等の基金48.9 (+17.1)
その他の短期資金供給オペ0.8 (-25.0)
( +3.7)
短期資金供給オペ1.2 (-29.9) 当座預金34.4 ( -6.3)
国庫短期証券買入オペ0.4 ( -5.0) その他24.4
資産負債および純資産
長期国債64.4 ( +6.2) 銀行券80.8 ( -0.1)
3.金融市場調節運営と日本銀行のバランスシート
(1)日本銀行のバランスシートの変化
日本銀行のバランスシートの規模は、金融市場調節運営の結果も反映し、2012 年
3月末には、139.6 兆円となった(図表29)。
2011 年3月末対比での増減をみると、長期国債は+6.2 兆円となった。また、包
括緩和政策のもとでの強力な金融緩和の推進によって、資産買入等の基金は+17.1
兆円となったほか、成長支援資金供給で+0.9 兆円、被災地金融機関支援オペで+
0.5 兆円の増加となった。
一方、短期資金供給オペとして行う国庫短期証券買入オペで−5.0 兆円、その他の
短期資金供給オペで−25.0 兆円の減尐となった。国庫短期証券は、資産買入等の基
金による買入残高が増加した一方で、短期資金供給オペとしての買入残高は減尐した。
また、その他の短期資金供給オペの減尐は、主に金利入札方式による共通担保資金供
給オペの残高減尐を反映したものである。同オペの減尐には、資産買入等の基金によ
る資金供給や資産買入れによって資金需要が満たされる度合いが高まったことや、東
日本大震災直後に予備的に調達され、2011 年3月末時点で残存していたオペ残高の
(図表29)日本銀行のバランスシート(2012 年3月末)
(注1)計数は速報値。
(注2)「長期国債」および「国庫短期証券買入オペ」は、基金による買入分を含まない。
(注3)「その他の短期資金供給オペ」は、金利入札方式の共通担保資金供給オペ、国債買現先オペ、CP 等買現先
オペの合計。
22
増加分が、その後、市場の先行き不透明感の後退を受けて剥落したことが影響した(図
表30)。
(2)日銀当座預金残高の動向
2011 年度中の日本銀行のバランスシートをみると、資産サイドが高水準で推移す
るもとで、負債サイドでは、日銀当座預金残高が、振れを伴いながら、総じて20
兆円台半ばから30 兆円台半ばで推移した(図表31)。2012 年3月末の日銀当座預
金残高は34.4 兆円となった。東日本大震災を受けて、多額の資金を予備的に調達
する動きが広範に拡がっていた前年同期との比較では、−6.3 兆円の減尐となった
ものの、2011 年度を通してみれば、2010 年度の水準対比、大幅に高い水準で推移
した。
(図表31)日銀当座預金残高
(図表30)短期資金供給オペ等の種類別残高
(注)基金創設(2010 年10 月28 日)以前の「(基金)固定金利方式・共通担保資金供給オペ」は、
固定金利方式での共通担保資金供給オペ。
0
10
20
30
40
50
60
70
09/4 09/10 10/4 10/10 11/4 11/10 月
国庫短期証券買入オペ
金利入札方式・共通担保資金供給オペ(本店貸付)
金利入札方式・共通担保資金供給オペ(全店貸付)
国債買現先オペ
CP買現先オペ
企業金融支援特別オペ
(基金)固定金利方式・共通担保資金供給オペ
(兆円)
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
10/4 10/10 11/4 11/10
(兆円)

23
BOX5 業態別の日銀当座預金残高と翌日物金利
2011 年度の日銀当座預金残高は、2010 年度と比べ、局面ごとの振れ幅が大きく
なったが、こうした動きを業態別にみると、以下のような特徴がある。
まず、2011 年6月積み期、9月積み期、12 月積み期、2012 年3月積み期には、
日銀当座預金残高は大幅に増加した。これには、6月、9月、12 月、3月の各月
20 日前後に行われる国債の大量償還に加え、3月積み期については、各種の財政資
金の支払いも影響している。業態別にみると、6月積み期、9月積み期、12 月積み
期では、国債の償還金が多く流入した「その他準備預金制度適用先」(その他準預
先)の当座預金残高が、大きく増加した(図表32、33)。年度を通してみても、こ
うした一部業態の日銀当座預金残高の動きが、全体の日銀当座預金残高の増減とな
って表れた。
また、10 月積み期では、日銀当座預金残高全体は高水準で推移したが、その内訳
をみると、その他準預先で減尐した一方、都市銀行や外国銀行では大幅に増加した。
これには、為替介入に伴う一連の資金の動きが大きく寄与した。政府によるドル買
い・円売り介入が行われると、その資金決済のため、市場には外国為替資金特別会
計から円資金が支払われる。それを受けて、市場参加者は各々のポジション調整な
どを目的にさまざまな市場取引を行うが、こうした過程で、外国為替取引を多く行
う都市銀行や外国銀行などの日銀当座預金に、多額の円資金が流入した。
日銀当座預金残高と無担保コールレートやGCレポレートといった翌日物金利
の関係をみると、国債の大量償還によって日銀当座預金残高が大幅に増加した局面
では、翌日物金利は必ずしも目立った低下圧力を受けなかった(図表34)。これは、
国債の償還金が、すぐには市場に放出されず、一部先に超過準備として滞留したた
(図表32)業態別の日銀当座預金残高 (図表33)日銀当座預金残高増減の業態別内訳
(注1)各積み期の平均残高。
(注2)「その他準預先」は他の業態に含まれない
準備預金制度適用先。「非準預先」は準備
預金制度非適用の日銀当座預金取引先。
(注)各積み期の平均残高の前期差。図表32 の注を
参照。
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
11/4 11/7 11/10 12/1
非準預先その他準預先外国銀行
信託銀行地銀・地銀2 都市銀行
(兆円)
月積み期
-10
-5
0
5
10
11/4 11/7 11/10 12/1
その他準預先
その他準預先以外の日銀当座預金取引先
日銀当座預金全体
(兆円)
月積み期
24
めと考えられる。一方、為替介入によって日銀当座預金残高が増加した局面では、
余剰資金を抱えた都市銀行や外国銀行がGCレポ市場などで積極的な資金運用を
図ったことから、金利低下圧力が速やかに顕現化した。このように、日銀当座預金
残高の増減が翌日物金利に及ぼす影響は、その増減の背景や、どのような主体が超
過準備を保有しているかによって異なりうる。
BOX6 コール市場の取引残高
日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、市場参加者が多額の超過準備を保有し
た裏返しとして、各金融機関において日々の日銀当座預金残高を精緻に調整する必
要性は薄れ、資金繰りの最終調整を行う場であるコール市場の取引残高は、引き続
き低水準となった(図表35)。こうした傾向は、2002〜2006 年の量的緩和政策時に
おいても観察された。
0
5
10
15
20
25
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
有担保コール
無担保コール
(兆円)

(図表34)日銀当座預金残高と翌日物金利
(図表35)コール市場残高
(注)いずれも短資会社経由分(月中平均残高)。
(注)各積み期の平均。
0.06
0.07
0.08
0.09
0.10
0.11
0.12
10
15
20
25
30
35
40
11/4 11/7 11/10 12/1
(%)
月積み期
GCレポレート(S/N物、右目盛)
無担保コールレート(O/N物、右目盛)
日銀当座預金残高
(兆円)
25
このうち、短資会社を経由した無担保コール取引の市場残高は、緩やかな減尐傾
向が続き、概ね3〜5兆円台で推移した。業態別にみると、無担保コールレート(オ
ーバーナイト物)が0.1%を下回って推移するもとで、2010 年度と同様、資金運用
サイドは信託銀行(主として投資信託分)や生命保険会社などによる、補完当座預
金制度の適用利率(0.1%)を下回るレートでの運用が大宗を占め、資金調達サイ
ドは都市銀行や地方銀行などが中心となった(図表36)。無担保コールの取引量の
減尐を背景に、日本銀行が誘導目標を定めている無担保コール(オーバーナイト物)
の加重平均レートは、一部先による資金調達訓練などの個別要因の影響を受けやす
くなっており、取引実勢からやや乖離して振れる場面がみられた。
一方、有担保コール市場の残高は、振れを伴いながらも、2010 年度対比で幾分増
加した。業態別にみると、資金運用サイドでは地方銀行、資金調達サイドでは短資
会社のシェアが拡大した(図表37)。地方銀行のなかにはGCレポ市場に直接参加
していない先が多いが、そうした先の保有する余剰資金が有担保コール市場を介し
て短資会社に渡り、短資会社によってGCレポ市場に放出されるといった形で、市
場間を跨いだ資金の流れにつながった(図表38)。
0
5
10
15
20
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
その他証券等
外国銀行地銀・地銀2
都銀等

(兆円)
(図表36)業態別の無担保コール市場残高
(資金調達サイド) (資金運用サイド)
(注1) いずれも短資会社経由分(月中平均残高)。
(注2) 「都銀等」は都市銀行・新生銀行・あおぞら銀行。「証券等」は金融商品取引法上の有価証券関連業を
行う第一種金融商品取引業者および証券金融会社。
0
5
10
15
20
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
その他信託銀行
証券等外国銀行
地銀・地銀2 都銀等

(兆円)
26
(3)資金過不足の動向
日銀当座預金残高は、金融市場調節だけでなく、金融機関と日本銀行・政府との
間で行われる銀行券や財政資金の受払い等によっても増減する。これは、資金過不
足とよばれる。具体的には、銀行券については、@金融機関が銀行券を日銀当座預
金から引き出せば(銀行券の発行)、日銀当座預金の減尐要因となる一方、A金融
機関が手持ちの銀行券を日銀当座預金に預け入れれば(銀行券の還収)、日銀当座
預金の増加要因となる。また、財政資金については、@国債発行や租税納付等によ
り、金融機関の日銀当座預金から政府預金への払込みが発生すると(財政資金の受
け)、日銀当座預金の減尐要因となる一方、A国債償還や年金払いといった財政支
出等により、政府預金から金融機関の日銀当座預金への支払いが発生すると(財政
資金の払い)、日銀当座預金の増加要因となる。
0
5
10
15
20
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
その他信託銀行
証券等外国銀行
地銀・地銀2 都銀等
(兆円)

0
5
10
15
20
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
その他短資
証券等外国銀行
地銀・地銀2 都銀等

(兆円)
(図表37)業態別の有担保コール市場残高
(資金調達サイド) (資金運用サイド)
(図表38)市場間を跨いだ資金の流れの一例
(注)図表36 の注を参照。
地方
銀行
短資
会社
証券
会社
GCレポ市場
での資金放出
有担保コール市場
での資金放出
GCレポ市場
GCレポ市場に直接参加
する地方銀行は尐ない
27
日本銀行では、金融市場調節を行うに当たって、銀行券や財政資金の受払い等に
伴う日々の日銀当座預金の増減、すなわち、資金過不足をみながらオペを実施して
いる。したがって、資金過不足は、日本銀行が金融市場調節を行う前提となる重要
な要素である。なお、日銀当座預金の増減と資金過不足の間には、次の関係が成り
立つ。
日銀当座預金増減=金融市場調節+資金過不足
資金過不足=銀行券要因+財政等要因
2011 年度は、2010 年度と同様、金融市場調節が日銀当座預金残高を増加させる
方向に働いた一方、資金過不足は、財政等要因を主因として、日銀当座預金残高を
減尐させる方向に働いた(図表39、40)。もっとも、その資金不足幅は25.3 兆円と、
2010 年度の37.9 兆円に比べて大幅に縮小した(図表41)。
(図表39)資金過不足と金融市場調節 (図表40)銀行券要因と財政等要因
(図表41)資金過不足の内訳
(注)+は日銀当座預金増加・資金余剰要因、−は日銀当座預金減尐・資金不足要因。
銀行券要因では、還収超が資金余剰、発行超が資金不足に対応。また、財政等要因
では、払超が資金余剰、受超が資金不足に対応する。
-15
-10
-5
0
5
10
11/4 5 6 7 8 9 10 11 12 12/1 2 3
資金過不足
金融市場調節
(兆円) 日銀当座預金増減

資金余剰
資金不足
-15
-10
-5
0
5
10
11/4 5 6 7 8 9 10 11 12 12/1 2 3
銀行券要因
財政等要因
資金過不足
(兆円)

資金余剰
資金不足
(兆円)
2010年度2011年度
前年度差
銀行券要因-3.6 +0.1 +3.7
財政等要因-34.3 -25.4 +8.9
一般財政+32.3 +34.8 +2.4
国債(1年超) -60.6 -44.3 +16.3
国庫短期証券-9.2 -26.4 -17.3
外為+2.5 +9.7 +7.2
その他+0.7 +0.9 +0.3
資金過不足-37.9 -25.3 +12.6
(参考)
銀行券末残80.9 80.8
28
銀行券要因、財政等要因について、個別にみると以下のとおりである。
@ 銀行券要因
2011 年度の銀行券要因は、東日本大震災直後に銀行券需要の高まりがみられた
2010 年度の3.6 兆円の発行超から、還収超に転じ、0.1 兆円の日銀当座預金増加・
資金余剰要因となった。
2011 年度初からの銀行券要因累計額の動きをみると、2010 年度末にかけて大幅
な発行超となっていた銀行券が、2011 年度初にはその需要の剥落によって一部が還
収されたことから、2010 年度対比ではやや資金余剰方向にシフトして推移した。そ
の後の季節的な動きは2010 年度とほぼ並行したものとなり、2011 年12 月末にかけ
て、資金不足幅は3.1 兆円まで大きく拡大した後、年明け後は再び資金余剰に転じ
た(図表42)。銀行券発行残高は、2011 年12 月末に84.0 兆円(前年同期比+2.0%)、
2012 年3月末に80.8 兆円(同−0.1%)となった(図表43)。
銀行券発行残高について、やや長い目でみると、以前はほぼ一定の水準で推移し
ていた対名目GDP比率は、1990 年代半ば頃から明確な上昇傾向を続けている(図
表44)。また、残高自体を季節調整済みの計数でみると、ここ数年、概ね一定のト
レンドをもって増加してきた(図表45)。2010 年度末にかけては、東日本大震災直
後に高まった予備的な銀行券需要を背景に、そのトレンドから大きく乖離して増加
したが、2011 年度入り後は、そうした需要が剥落し、銀行券発行残高は一旦減尐に
転じた。もっとも、震災前のトレンドの水準までは戻らず、トレンドから上方に乖
離したまま、2011 年6月頃には再び増加基調となった。また、このような銀行券発
行残高の堅調な動きを反映して、その対名目GDP比率も一段と上昇した。
(図表42)銀行券要因の年度初からの累計額 (図表43)銀行券発行残高
70
72
74
76
78
80
82
84
09/4 09/10 10/4 10/10 11/4 11/10
(兆円)

-6
-4
-2
0
2
4
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3
2010年度
2011年度

資金余剰
資金不足
(兆円)
29
A 財政等要因
2011 年度の財政等要因は、2010 年度と同様、一般財政や外為の払超(日銀当座
預金増加・資金余剰要因)を、国債・国庫短期証券の受超(日銀当座預金減尐・資
金不足要因)が上回り、受超となった。もっとも、その受超幅は、2010 年度(34.3
兆円)から大幅に縮小し、25.4 兆円となった。
年度初からの財政等要因累計額の動きをみると、資金不足幅は、国債の大量償還
や年金定時払い、2011 年8月および11 月の為替介入資金の支払いなどを背景とし
た資金余剰方向への振れを伴いながらも、全体としては拡大傾向を辿り、2012 年3
月初には40.6 兆円の資金不足となった(図表46)。3月末にかけては、国債の大量
償還や一般財政の支払い等を受けて、年度を通じた財政等要因の資金不足幅は幾分
縮小し、25.4 兆円となった。
内訳をみると、2011 年6月、9月、12 月および2012 年3月は、「国債(1年超)」
が大量償還を主因に大きく資金余剰方向に振れた(図表47)。また、為替介入の実
施に関連して、8月および11 月には、介入資金の民間部門への支払いから「外為」
が大幅な資金余剰要因となったが、年度後半にかけては、増額発行された「国庫短
期証券」が資金不足要因となった。
(図表44)銀行券発行残高の対名目GDP比率 (図表45)銀行券発行残高(季節調整済)
72
74
76
78
80
82
06/1 07/1 08/1 09/1 10/1 11/1 12/1
(兆円)

06/1月〜10/12月のトレンド
0
5
10
15
20
50 60 70 80 90 00 10
(%)
年度
(注1)銀行券発行残高は各年度末時点。
(注2)2012 年1-3 月期の名目GDP は、2011 年10-12 月期
から横ばいと仮定。
(注)月中平均残高。
30
a. 一般財政
「一般財政」は、財政資金の受払いから国債(1年超)、国庫短期証券および外
為に関するものを除いた概念である。本項目には、財政資金の受けとして、租税(法
人税(毎月初)、源泉所得税(毎月中旪))、年金保険料の受入れ(毎月初)等が、
他方、財政資金の払いとして、年金定時払い(偶数月の中旪)、地方交付税交付金
支払い(4、6、9、11 月初)、公共事業費支払い(3月)等が含まれる。
2011年度の「一般財政」は、34.8兆円の払超となった。東日本大震災関連の支払
増加等を主因として、2010年度(32.3兆円)に比べて払超幅が拡大した。
b. 国債(1年超)
「国債(1年超)」には、長期国債の発行・償還が計上される。
2011年度の「国債(1年超)」は、償還額の前年比増加幅が発行額の前年比増加
幅を上回ったことから、44.3兆円の受超と、2010年度(60.6兆円)に比べて受超幅
が大幅に縮小した。発行額は、126.0兆円と、2010年度(121.6兆円)に比べて増加
した。償還額は、2001年度に実施された財政投融資改革に伴って、同年度から発行
が開始された財投債(10年物)が償還を迎えたことなどから、81.7兆円と、2010年
度(60.9兆円)に比べて大幅に増加した。
c. 国庫短期証券
「国庫短期証券」には、国庫短期証券の発行・償還が計上される。
2011 年度の「国庫短期証券」は、発行額の前年比増加幅が償還額の前年比増加幅
を上回ったことから、26.4 兆円の受超と、2010 年度(9.2 兆円)に比べて受超幅が
大幅に拡大した。発行額は、3か月物で増額発行が行われたことなどを映じて、
373.6 兆円と、2010 年度(347.9 兆円)に比べて大幅に増加した。償還額は、347.1
兆円と、2010 年度(338.7 兆円)に比べて増加した。
(図表46)財政等要因の年度初からの累計額 (図表47)財政等要因の内訳
-60
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3
(兆円)
2010年度
2011年度

資金余剰
資金不足
-20
-15
-10
-5
0
5
10
15
20
11/4 5 6 7 8 9 10 11 12 12/1 2 3
その他外為
国庫短期証券国債(1年超)
一般財政財政等要因
資金不足
資金余剰
(兆円)

31
d. 外為
「外為」には、為替介入の実施や、国際協力銀行がドル資金の調達を行う際に外国為替資金特別会計との間で行う円とドルの交換に伴う円資金の受け等が計上される。
2011年度の「外為」は、8月および11月にドル買い・円売りの為替介入に伴う円資金の支払いが計上されたことを主因に、9.7兆円の払超と、2010年度(2.5兆円)に比べて払超幅が大幅に拡大した。
e. その他
「その他」には、外国中央銀行等および国際機関が日本銀行に開設している円預金勘定(海外預り金)と金融機関の間の資金の受払いや、日本銀行による信用秩序維持に資するための資金供給(日本銀行法38条に定める資金の貸付け(いわゆる特融)、預金保険機構向け貸付け等)に伴う資金の受払い等が計上される。これらは、財政資金の受払い(「財政要因」)とともに、財政等要因の中に含める扱いとしている(「等」に該当する)。例えば、日銀当座預金との振替等に伴って、海外預り金が増加すると日銀当座預金が減尐する一方、海外預り金が減尐すると日銀当座預金は増加する。
2011年度の「その他」は、0.9兆円の払超と、2010年度(0.7兆円)並みの払超となった。
BOX7 オペの資金過不足への影響 資金過不足における財政等要因は、原則として国庫における財政資金の受払いによって決定される。もっとも、このうち「国債(1年超)」および「国庫短期証券」については、日本銀行によるオペの実施自体によっても変動する。これは、日本銀行が金融機関から買入れた国債および国庫短期証券について、政府から満期償還を受けると、それらの証券を金融機関が保有し続けていれば日銀当座預金に払込まれていたはずの償還金が日本銀行に支払われ、財政資金の日銀当座預金に対する払いが減尐するためである。財政等要因は、本来、受けと払いが概ね見合うはずのものであるが、このような償還金の扱いによって大幅な受超(資金不足)となる。実際、「国債買入オペ等を通じて保有する国債や、国庫短期証券買入オペで買入れた国庫短期証券の償還金が、日本銀行ではなく金融機関に支払われた」と仮定した場合の計数(オペ調整後計数)を試算すると、2011年度の資金不足幅は、調整前の25.3兆円に対して1.7兆円と、大幅に縮小する(図表48)。
32
また、オペの影響を調整する前の計数では、2011 年度の資金不足幅(25.3 兆円)
は、2010 年度(37.9 兆円)対比、大幅に縮小した姿となっていた。この点を、オ
ペの影響を調整した後の計数でみると、2011 年度の資金不足幅は1.7 兆円と、2010
年度の5.4 兆円と比べて縮小はしているが、その差は、調整前の計数における差よ
りも小さい。これは、2011 年度のオペ調整前の資金不足幅が2010 年度対比で大幅
に縮小した一因が、日本銀行が保有する国債や国庫短期証券にかかる償還金が減尐
し、民間部門への償還額が増加したことであったことを示している。なお、このよ
うに2011 年度において日本銀行への償還金が減尐したのは、短期資金供給オペと
して従来から行われていた国庫短期証券買入オペの実施額が減尐したことの結果
として、日本銀行に対する国庫短期証券の償還額が減尐したことによるものであ
る。
-25.3
-1.7
-60
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3
(兆円)

オペ調整前
資金余剰
資金不足
オペ調整後
11/ 12/
(図表48)資金過不足の年度初からの累計額
(2010 年度) (2011 年度)
-37.9
-5.4
-60
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3
(兆円)

オペ調整前
オペ調整後
資金余剰
資金不足
10/ 11/
33
4.金融市場調節手段の運営状況
以下では、2011年度における個々の金融市場調節手段の運営状況について説明する。
(1)資産買入等の基金の運営
資産買入等の基金は、2010年10月に、短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促すことを目的に創設され、バランスシート上に分別管理されている。その残高上限は、2011年度中には、2011年8月4日、10月27日、さらに2012年2月13〜14日の金融政策決定会合において増額され、65兆円程度となった。このもとで、固定金利方式での共通担保資金供給オペのオファーを行うとともに、多様な金融資産の買入れを行い、基金の残高の積み上げに努めた。2011年3月末に31.8兆円であった基金の残高は、2012年3月末に48.9兆円まで増加した(図表49)。
なお、こうした資金供給や買入れが進捗するにつれ、日本銀行による金融緩和の効果が市場に浸透し、長めの市場金利が大きく低下するなかで、一部のオペでは札割れとなる事例もみられた。
@ 固定金利方式での共通担保資金供給オペ(貸付残高の上限:35.0兆円程度)
期間3か月物については、1回当たり8,000億円のオファーを、基本的に週2回の頻度で実施した。期落ち分について再度同じ金額をオファーすることにより、残高を20兆円程度に維持した。期間6か月物についても、1回当たり8,000億円のオファーとした。2011年7月までは、期落ち分について再度同じ金額をオファーするとともに新規オファーを2回実施し、2011年7月末の残高は期間6か月物で10.4兆円、期間3か月物との合計では30.4兆円となり、当時の上限である30兆円程度に到達した。8月4日の金融政策決定会合で、上限が35兆円程度に増額された後は、引き続き期落ち分について再度同じ金額をオファーするとともに、増額された
(図表49)資産買入等の基金の運営状況
指数連動型不動産計長期国債CP等社債等上場投資投資信託信託(ETF)(J-REIT)2012/3月末48.9兆円34.6兆円14.3兆円6.3兆円3.5兆円1.6兆円2.0兆円0.8兆円0.07兆円2011/3月末31.8兆円28.8兆円2.9兆円0.9兆円1.3兆円0.3兆円0.2兆円0.2兆円0.02兆円65兆円35.0兆円30.0兆円19.0兆円4.5兆円2.1兆円2.9兆円1.4兆円0.11兆円程度程度程度程度程度程度程度程度程度残  高多様な金融資産の買入れ残高上限(2012/3月末)国庫短期証券固定金利方式共通担保資金   供給オペ計
34
期間6か月物の5兆円分について、1回8,000億円ずつで計6回、新規にオファーした。その結果、2012年3月末の残高は期間6か月物で14.6兆円、期間3か月物との合計では34.6兆円まで増加し、増額後の残高上限に概ね到達した。
応札倍率は、2011年7月までは、期間3か月物で総じて2〜3倍台、期間6か月物で総じて3〜4倍台と、高い水準で推移した。もっとも、8月以降、国庫短期証券利回りなどの短期ゾーンにおける市場金利が0.10%に収斂し、長めのタームの資金調達を0.1%という固定金利で行うことの有利性は大きく低下した。また、資金余剰感の強い状況が続き、先行きの資金調達環境に対する不安感が払拭されたもとで、長めのタームでの資金調達そのものの必要性が意識されにくくなった。そのため、応札倍率は、基本的に低下傾向となった。特に、期間6か月物の応札倍率は大幅な低下となり、2012年2〜3月には札割れもみられた(図表50)。
BOX8 固定金利方式での共通担保資金供給オペの応札倍率 2011年度の固定金利方式での共通担保資金供給オペの応札倍率は、短期ゾーンにおける市場金利の低下などに伴って、低下基調となった。 やや仔細にみると、3か月物や6か月物の国庫短期証券利回りが0.1%を幾分上回って推移し、短期ゾーンのイールドカーブが順イールドとなっていた2011年7月頃までは、応札倍率は総じて2〜4倍台を維持していた。また、利回りの相対的な有利さから、期間6か月物の応札倍率は、期間3か月物と比べて高い傾向があった。その後、1年物までの国庫短期証券利回りが0.1%まで低下し、イールドカーブがフラットとなった8月以降は、応札倍率は明確に低下した。特に、期間6か月物は、6か月間の安定的な資金調達手段としての需要を除けば、期間3か月物に対
(図表50)固定金利方式・共通担保資金供給
オペの応札倍率
0.090.100.110.120.130.140.15012345611/111/411/711/1012/13か月物の応札倍率(右目盛)6か月物の応札倍率(右目盛)国庫短期証券(6か月物)の流通利回り(倍)月(%)札割れ
35
する金利面での優位性が失われるとともに、期間が長いため資金過不足の一時的な
変化に対応し難いといったデメリットも意識され始めた。そのため、期間6か月物
の応札倍率は、期間3か月物を下回り、総じて1倍台ないしは札割れとなる水準ま
で急激に低下した。言い換えると、こうした応札倍率の低下は、6か月物までの市
場金利が0.1%まで十分に低下し、今後6か月間の資金調達環境に対する不安が払
拭された状況に至った結果といえる。
この間、期間3か月物は、期間6か月物対比では総じて底堅い応札がみられた。
資産買入等の基金の残高の積み上がりに伴って、全体として資金需要が満たされる
度合いが高まり、金利入札方式での共通担保資金供給オペのオファーが減尐したこ
ともあって、その代替として、一時的な資金需給の調整などを目的に期間3か月物
が利用された面もあった。このため、市場において資金需要がやや高まった2011
年10 月や2012 年1月には、金利入札方式での共通担保資金供給オペの応札倍率と
ともに、期間3か月物の応札倍率も幾分上昇する傾向がみられた(図表51)。
A 国債買入(買入残高の上限:19.0 兆円程度)
当初は、残存期間1年以上2年以下の2年債、5年債および10 年債のうち、各
発行年限で残存期間の長い2銘柄、計6銘柄を指定してオファーする運営を継続し
た。その後、2012 年2月13〜14 日の金融政策決定会合において、買入上限が19.0
兆円程度に増額された2月以降は、買入対象銘柄を拡大し、最終的には、残存期間
1年以上2年以下の全ての2年債、5年債、10 年債および20 年債を対象としてオ
ファーする運営とした。
買入残高の上限が2.0 兆円程度とされていた2011 年7月までは、1回当たり
0
1
2
3
4
5
11/1 11/4 11/7 11/10 12/1
固定金利方式(6か月物)
固定金利方式(3か月物)
金利入札方式
(倍)

(図表51)共通担保資金供給オペの応札倍率
(注)各月にオファーされたオペについて、応札倍率の
単純平均をとったもの。
36
1,000億円で、月1回のペースでオファーした。8月4日の金融政策決定会合において上限が4.0兆円程度に増額された後は、1回当たり1,500億円で月1〜2回のペース、10月27日の金融政策決定会合において上限が9.0兆円程度に増額された後は、1回当たり2,500億円または3,000億円で月2回のペース、さらに2012年2月13〜14日の金融政策決定会合において上限が19.0兆円程度に増額された後は、1回当たり5,000億円で月3回のペースでオファーした。その結果、2012年3月末の買入残高は、上限の19.0兆円程度に対して、6.3兆円となった。なお、基金の運営による国債買入については、その残高は、銀行券発行残高を上限とする成長通貨供給のための長期国債の買入残高とは区別し、異なる取り扱いとしている。
2011年度中は、オペへの応札は安定してみられ、応札倍率は2〜5倍台と、高めの水準で推移した。
BOX9 資産買入等の基金による国債買入と成長通貨供給のための国債買入オペ 日本銀行は、長期国債の買入れを、資産買入等の基金の運営として行う国債買入と、成長通貨の供給のために行う国債買入オペという、2つの異なる枠組みのなかで実施している(BOX11参照)。 両者の買入方式の違いに着目すると、資産買入等の基金の運営として行う国債買入は、買入下限利回りを0.1%に設定し、買入下限利回りとの較差を入札に付すことによって行っている(図表52@)。資産買入等の基金は、より長めのタームの金利低下を促すことを目的の一つとしているが、こうした買入方式のもとでは、市場金利が順イールドとなっている限り、残存期間の長い銘柄が相対的に落札されやすく、金利低下圧力も残存期間の長い銘柄に働きやすい。なお、資産買入等の基金では、国庫短期証券買入、CP等買入、社債等買入についても、同様の買入方式を採用している。 一方、成長通貨供給のための国債買入オペ(後掲4.(2)@を参照)は、市場における銘柄間の価格形成の中立性を重視し、日本証券業協会による前営業日発表の銘柄毎の売買参考統計値を基準利回りとした上で、その利回りとの較差を入札に付している(図表52A)。また、買入国債の残存期間が極端に短期化または長期化することを避ける観点から、買入れにおける残存期間等による区分を、「1年以下」、「1年超10年以下」、「10年超30年以下」、「変動利付債」、「物価連動債」の5区分としている。そのため、各区分で実際にどの程度の残存期間の銘柄が持ち込まれるかは、あくまで市場参加者のニーズを反映したものであり、当日の銘柄毎の金利変化や売却希望状況に応じて変動する。なお、短期の資金供給オペとして行う国庫短
37
期証券買入オペ(後掲4.(2)Aを参照)についても、同様である。
B 国庫短期証券買入(買入残高の上限:4.5 兆円程度)
6か月物のうち直近発行2銘柄および1年物のうち残存期間6か月以上の銘柄
を指定してオファーする運営を継続した。買入残高の上限が3.0 兆円程度とされて
いた2011 年7月までは、1回当たり1,500 億円で、月2回のペースでオファーし
た。8月4日の金融政策決定会合において上限が4.5 兆円程度に増額された後は、
1回当たりのオファー額を2,000 億円とし、基本的には月2回のペースでオファー
する運営とした。もっとも、0.10%を買入下限利回りとする基金による買入れが困
難と判断された局面では、オファーを見送ることもあった。また、オファーした場
合でも、2012 年1月20 日オファー分では、応札額は323 億円と、オファー額であ
る2,000 億円に届かず、札割れとなった。
こうした状況を踏まえ、2月以降は、それまでの札割れなども加味した実際の買
入れの進捗度合いとともに、既に買入れた銘柄の償還期日も考慮しながら、1回当
たりのオファー額を3,000 億円に増額し、月によっては3回のオファーを行った。
買入れが可能と判断される局面では、このように柔軟に買入ペースを加速させ、買
入残高の積み上げに努めた。こうしたもとで、3月末の買入残高は、上限の4.5 兆
円程度に対して、3.5 兆円となった。
(図表52)資産買入等の基金による国債買入と
成長通貨供給のための国債買入オペの買入方式
@ 資産買入等の基金による国債買入 A 成長通貨供給のための国債買入オペ
(注)日本証券業協会が前営業日に発表する、銘柄毎の
売買参考統計値。
入札に付される利回較差
市場利回りの高い
銘柄ほど落札され
やすい
残存期間
買入下限利回り(基準利回り):0.1%
利回り
市場利回り曲線
買入における落札決定利回り
利回り
残存期間
前営業日の市場利回り曲線(注)
(基準利回り)
入札に付される
利回較差
買入における
落札決定利回り
38
BOX10 資産買入等の基金による国庫短期証券買入の状況 資産買入等の基金の運営として行う国庫短期証券買入では、同じく基金の運営として行う国債買入の買入方式と同様の方法を採用しており、買入下限利回りを0.1%に設定し、買入下限利回りとの較差を入札に付している(BOX9を参照)。この結果、市場金利が順イールドとなっている限りは、残存期間の長い銘柄、すなわち、直近発行の1年物国庫短期証券が相対的には落札されやすい。 2011年度中は、8月半ばから10月半ば、12月半ばから1月半ばでは、基金による買入れが困難と判断して、オファーを見送った。そうした時期を、1年物の国庫短期証券利回りの推移と照らし合わせると、同利回りが、基金による買入れの最低利回りである0.1%に収斂した局面と一致する(図表53)。日本銀行の買入れに対する応札額は、市場金利だけでなく、オファー時点における市場参加者の保有状況にも依存するが、1年物国庫短期証券の利回りまで0.1%に収斂するなかで、日本銀行に対して国庫短期証券を売却するインセンティブが低下したものと考えられる。 また、1年物利回りまで0.1%に収斂し、イールドカーブが完全にフラットとなると、6か月物と1年物の金利面での差異は失われる。このため、こうした局面でオファーを行った場合には、必ずしも残存期間の長い1年物が多く落札されるとは限らない。実際、2011年8月や2011年12月以降のオファー分では、6か月物など、より残存期間の短い銘柄が買入れられる割合が増加した(図表54)。 なお、こうしたオファーの見送りによる買入れの進捗遅れや、買入銘柄の短期化に対しては、1回当たりオファー額の増額や買入実施頻度の引き上げなどを柔軟に行い、残高の積み上げに極力遅れが生じないような運営を行った。
(図表53)基金による国庫短期証券買入の応札倍率
01234560.090.100.110.120.130.140.1511/411/711/1012/1(%)(倍)月国庫短期証券(1年物)流通利回り応札倍率(右目盛)オファー見送りオファー見送り札割れ
39
C CP等買入(買入残高の上限:2.1 兆円程度)
基本的には1回当たり3,000 億円とし、市場情勢や買入残高の動向も勘案しなが
ら、月に2〜3回オファーする運営とした。なお、買入残高は、それまでに買入れ
た銘柄の償還期日に依存しながら、ある程度の振れを伴って推移した。上限の2.1
兆円程度に対して、2011 年12 月末には一旦、1.9 兆円まで増加し、2012 年3月末
には1.6 兆円となった。
応札倍率は、2011 年6月に、一時1倍台前半まで低下する場面がみられたが、C
Pの発行残高が総じて前年を上回って推移するもとで(図表55)、7月以降は、1
倍台後半〜2倍台で安定的に推移した(図表56)。CPは、例えば社債と比べ、発
行されてから投資信託などの投資家に保有されるまで相応の期間にわたって都市
銀行や短資会社などの引受ディーラーに保有されることが多く、こうした過程で日
本銀行の買入れが利用されやすいことも、応札倍率の堅調さの背景の一つとなった。
0
1
2
3
4
5
6
10/12 11/3 11/6 11/9 11/12 12/3
0.09
0.10
0.11
0.12
0.13
0.14
0.15
(%)

(倍)
応札倍率(右目盛)
落札決定利回り
札割れ
(図表55)CP発行残高の前年比
(図表54)基金による国庫短期証券買入での買入銘柄
(図表56)CP等買入の応札倍率と落札利回り
(注)事業会社発行CP およびABCP の合計。
-15
-10
-5
0
5
10
15
10/10 11/1 11/4 11/7 11/10 12/1
(%)
月末
(注)落札決定利回りは、同利回較差+0.1%。
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
10/11 11/2 11/5 11/8 11/11 12/2 月
1年物のうち、当月、前月、前々月に発行された銘柄
その他の銘柄
(億円)
40
D 社債等買入(買入残高の上限:2.9 兆円程度)
買入上限が2.0 兆円程度であった2011 年7月までは、1回当たり1,500 億円で、
月1回のペースでオファーした。8月4日の金融政策決定会合において買入上限が
2.9 兆円程度に増額された後は、引き続き月1回のペースでオファーしたが、1回
当たりのオファー額については、既に買入れた銘柄の償還期日なども勘案しながら、
2,000 億円に増額する月を設ける運営とした。具体的には、2011 年12 月および2012
年3月に2,000 億円オファーした。
応札倍率は、投資家の社債投資に対する需要が総じて強いもとで低下基調となり、
2011 年11 月、12 月のオファー分では札割れとなった。2012 年1月以降では、札割
れは生じなかったものの、応札倍率は低水準にとどまったほか、落札決定レートは、
買入下限レートである0.1%近傍での推移が続いた(図表57)。わが国の社債市場
では、従来から、基本的に長期保有することを前提として社債投資を行う投資家が
多く、流通市場における取引量は大きくないとの指摘が多い。そうしたうえに、2011
年度については、東日本大震災後の原発問題を受けた電力債の発行の困難化もあっ
て、社債需給がタイトとなり、保有社債の売却後の再投資先が限られる状況となっ
たことから、投資家による保有社債の売却意欲は一段と後退した。
もっとも、こうしたなかでも日本銀行が社債等買入の継続的なオファーを行った
ことは、投資家に対して、社債投資に対する強い安心感を醸成した。なお、2012 年
3月末の残高は、上限の2.9 兆円程度に対して、2.0 兆円となった。
E ETF買入(買入残高の上限:1.4 兆円程度)
2012 年3月末の残高は、買入上限が0.9 兆円程度であった2011 年3月末の0.2
兆円から増加し、上限の1.4 兆円程度に対して、0.8 兆円となった。
(図表57)社債等買入の応札倍率と落札利回り
0
1
2
3
4
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
10/12 11/3 11/6 11/9 11/12 12/3
(%)

(倍)
応札倍率(右目盛)
落札決定利回り
札割れ
(注)落札決定利回りは、同利回較差+0.1%。
41
F J−REIT買入(買入残高の上限:0.11兆円程度)
2012年3月末の残高は、買入上限が0.1兆円程度であった2011年3月末の0.02兆円から増加し、上限の0.11兆円程度に対して、0.07兆円となった。
(2)通常のオペ手段
@ 資金供給オペ・長期オペ・アウトライト
(国債買入オペ)
2011年度中は、2010年度に引き続き、年21.6兆円(月1.8兆円)のペースで買入れを実施した。具体的には、月4回の頻度で、残存期間等による区分、すなわち、「1年以下」、「1年超10年以下」、「10年超30年以下」、「変動利付債」、「物価連動債」の5区分から、毎回2区分について買入れをオファーした。
基金による買入分を除いた長期国債の保有残高の動向をみると、2011年度中には、年間21.6兆円の買入れを行うもとで、2012年3月末の残高は64.4兆円と、2011年3月末時点の58.2兆円対比、+6.2兆円増加した。日本銀行では、基金による買入分を除いた長期国債の保有残高を銀行券発行残高の範囲内とする運営を行っている。銀行券発行残高は、2012年3月末時点で80.8兆円と、2011年3月末時点の80.9兆円対比、−0.1兆円の減尐となり、長期国債の保有残高との差は縮小傾向を続けた(図表58)。
また、基金による買入分を除く長期国債の平均残存期間(フロー)をみると、残存期間等による区分別の買入れを開始した2009年2月以降、平均すれば4年弱程度となっているが、2011年度については、3.3年となった(BOX9を参照、図表
(図表58)長期国債保有残高と
銀行券発行残高
(注)長期国債保有残高は資産買入等の基金による買入分を除く。
010203040506070809008/409/410/411/4(兆円)月末長期国債保有残高銀行券発行残高
42
59)。また、2012年3月末の基金による買入分を除く保有長期国債の平均残存期間(ストック)をみると、4.6年となった。
フロー (年度中)
ストック (年度末)
2008年度
2.2年
5.2年
2009年度
3.9年
5.2年
2010年度
3.8年
4.9年
2011年度
3.3年
4.6年
BOX11 日本銀行の保有する長期国債残高の動向 日本銀行は、長期国債の買入れを、既にみたような2つの異なる枠組みで実施している(BOX9を参照)。 銀行券発行残高は、季節的な要因によって増減するが、長い目でみれば、経済の動きに合わせて緩やかに増加している。これを日本銀行のバランスシートの観点からみると、負債である銀行券の発行残高に対応して、長期の資産である長期国債を保有することが合理的である。このため、国債買入オペは、「成長通貨オペ」と呼ばれることがある。 やや長い目でみると、その時々の金融経済情勢に応じた円滑な金融市場調節を行うためには、当座預金残高を機動的にコントロールできるよう、バランスシートの資産サイドの柔軟性を確保しておく必要性がある。こうした観点からすると、日本銀行が保有する長期国債の残高と銀行券発行残高との関係如何では、当座預金残高を機動的にコントロールするために、例えば長期国債の売買を頻繁に行うこと等が必要となる可能性があるが、このような金融市場調節運営は、市場金利を大きく変動させるなど市場に撹乱的な影響を与える惧れがある。このため、国債買入オペにより買入れた長期国債については、その残高を銀行券発行残高の範囲内とする運営を行っている。併せて、こうした運営方針は、長期国債の買入れが、国債価格の買支えや財政ファイナンスを目的とするものではないとの趣旨を明確にする意味も有している。 国債買入残高は、買入金額と買入れた国債の残存期間によって決定される。日本銀行では、こうした観点から国債買入の制度設計を行っており、2009年1月に残存期間別の買入方式を導入したところである。 一方、基金の運営として行う長期国債の買入れは、上述の国債買入オペとは異なり、長めの金利への働きかけを行う目的のもとで、臨時の措置として行うものである。このため、基金により買入れた長期国債は、分別管理を行ったうえで、銀行券
(図表59)買入国債の平均残存期間
(注)資産買入等の基金による買入分を除く。
43
発行残高を上限とする運営の対象外としている。 日本銀行は、現在、趨勢的な銀行券需要に対応する国債買入オペを、月間1.8兆円のペースで行っている。また、基金の運営として行う国債買入については、2012年3月末時点で19.0兆円程度としていた買入上限を、2012年4月27日の金融政策決定会合において10兆円程度増額した。これに伴い、2012年末までに24.0兆円程度、2013年6月末までに29.0兆円程度への増額が完了するよう、2012年末までの間、月当たり約2.1兆円、2013年入り後、基金の増額が完了する6月末までの間、月当たり約1.0兆円のペースで買入れを行うこととなる。こうした2つの長期国債の買入れは、その目的や枠組みが異なるものであるが、これらを合わせてみると、日本銀行は、2012年末までの間、月当たり約3.9兆円、2013年入り後、6月末までの間、月当たり約2.8兆円のペースで長期国債を買入れていくこととなる。 また、同様に、これらの長期国債の保有残高を合計してみると、2012年3月末には、70.7兆円(うち基金分6.3兆円)となった(図表60)。国債買入オペで買入れる長期国債が、2012年中は2011年度実績と同様の残存期間となり、その後、2013年入り後は、残高が2012年末と同様の水準となった場合、2012年末の合計額は、約92兆円(うち基金分24兆円)、2013年6月末の合計額は、約97兆円(うち基金分29兆円)となる見込みである。この間、銀行券発行残高(月中平均)は、直近3か月の平均的な伸び率(前年比+2.3%)で増加するとの仮定のもとでは、2012年12月に約83兆円、2013年6月に約82兆円となる見込みである。 基金の運営として行う長期国債の買入れは、上記の通り、あくまで金融政策の観点から買入規模を決定しており、銀行券発行残高を上限とする運営の対象外ではあるが、これだけ大量の国債を保有することが財政ファイナンスと受け止められないよう、これまで以上に細心の注意を払っていく必要がある。
(図表60)長期国債保有残高
(注1)長期国債残高は月末残高。
(注2)2012/12月、2013/6月の銀行券発行残高見込みの算出に用いた直近 3か月の前年比伸び率は、前年の震災による影響の大きい2012/3月を 除いた2011/12月〜2012/2月の前年比伸び率。
47 43 50 59719297010203040506070809010011008/309/310/311/312/312/1213/6長期国債(基金分)残高長期国債(除く基金分)残高(兆円)(見込み)月↑銀行券発行残高(月中平均)
44
A 資金供給オペ・短期オペ・アウトライト
(国庫短期証券買入オペ)
2011年度中は、6月までは、1回当たりのオファー額を3,000億円とし、月2回程度のペースでオファーした。もっとも、その後は、オペの実施に対する需要の低下を踏まえて、2011年6月16日を最後にオファーを実施しなかった。2011年3月末に5.4兆円あった買入残高は、2011年6月までに買入れた銘柄が徐々に償還を迎えるにつれて減尐し、2012年3月末では0.4兆円となった。
B 資金供給オペ・短期オペ・期限付き
(金利入札方式での共通担保資金供給オペ)
2011年度中は、資産買入等の基金による固定金利方式での共通担保資金供給オペの期間が3か月程度または6か月程度であることを踏まえて、総じて本店貸付オペは3週間程度、全店貸付オペは1か月程度の期間でオファーした。なお、2週間程度、あるいはより短い期間でのオファーの割合は、2010年度と比べて大幅に低下した(図表61)。
また、2010年度には必要に応じて実施していたT+4(オファー日の4営業日後スタート)やT+1(オファー日の翌営業日スタート)のオペはほとんどオファーせず、基本的には、T+2(オファー日の2営業日後スタート)でのオペを中心とした(図表62)。この背景としては、本行による潤沢な資金供給のもとで、市場が落ち着いた状況が維持されたことから、資金需給上の大幅不足日等に早めに対応し
(図表61)短期資金供給オペ等のオファー数(期間別)
(注1)オファー日ベース。
(注2)金利入札方式での共通担保資金供給オペ、固定金利方式での共通担保資金供給オペ(いわゆる固定金利オペ)、
国債買現先オペ、CP等買現先オペ、企業金融支援特別オペの合計。
(2010年度)
(2009年度)
(2011年度)
0501001502002503004-6月7-9月10-12月1-3月2か月〜(除く固定金利オペ)1か月3週間〜2週間固定金利オペ(3か月・6か月)年度平均(本)0501001502002503004-6月7-9月10-12月1-3月(本)0501001502002503004-6月7-9月10-12月1-3月(本)
45
たり、市場における緊張感の高まりを受けて追加的に対応したりといった必要性が、2010年度までと比べて大幅に低下したことなどが指摘できる。また、同様に、T+0(オファー日の当日スタート)である即日資金供給オペや、期末日の資金需要の高まりに対応した期末日スタート・翌期初日エンドのいわゆる末初物オペも実施しなかった。
2011年度中は、資産買入等の基金の残高が一段と増加するなかで、基金による資金供給や資産買入れによって資金需要が満たされる度合いが高まった。また、東日本大震災直後に高まった予備的な資金需要も、市場の先行き不透明感が払拭される下で後退した。こうしたもとで、2012年3月末の残高は、震災直後であった前年同期の25.8兆円と比べると−25.0兆円減尐し、0.8兆円となった。
(国債買現先オペ、CP等買現先オペ)
2011年度中は、レポ市場、CP市場ともに安定的に推移したことから、オファーを見送った。
BOX12 金利入札方式での共通担保資金供給オペの応札倍率 2011年度の金利入札方式による共通担保資金供給オペ(いわゆる金利入札オペ)の応札状況をみると、市場での資金余剰感の強まりを反映して、応札額がオファー額に満たない札割れが、2011年1〜3月期に続いて頻発した(図表63)。例えば、2011年4〜6月期には、オファーした金利入札オペ55本のうち48本(87%)が札割れとなった。
(図表62)短期資金供給オペ等のオファー数(スタート別)
(2010年度)
(2009年度)
(2011年度)
(注)図表61の注を参照。
0501001502002503004-6月7-9月10-12月1-3月T+4〜T+3T+2(除く固定金利オペ)T+1即日固定金利オペ(T+2)年度平均(本)0501001502002503004-6月7-9月10-12月1-3月(本)0501001502002503004-6月7-9月10-12月1-3月(本)
46
2011 年9月頃からは、札割れとならなかった場合に、応札倍率が大幅に上昇する
ケースがみられた。例えば、10 月12 日オファーの本店貸付オペでは、0.8 兆円の
オファーに対して、4.6 兆円の応札が集まり、応札倍率は5.72 倍に上った。もっと
も、そうした場合でも、落札決定レートや落札平均レートはいずれも0.10%を維持
しており、資金を取り上がる動きはみられなかった(図表64、65)。
このように、資金を取り上がる動きがないにもかかわらず、応札倍率が大きく膨
れたのは、次のような市場参加者の行動を反映したものであった。すなわち、資金
供給オペに参加する市場参加者は、オペが札割れにならないことを予想すると、そ
の際の応札倍率を予想する。そして、その応札倍率の見込みに応じ、応札額を実際
の要調達額以上に膨らませて応札することによって、要調達額を確保しようとす
る。多くの市場参加者が同様の応札行動をとれば、いわば自己実現的に、応札額の
合計は実際の要調達額以上に膨らんでいく。こうしたことを踏まえると、オペの応
札倍率の高さは、必ずしも資金需要の強さには比例しない面があることに留意が必
要である。
(図表63)金利入札オペの札割れの状況
(注)オファー日ベース。札割れ率は、全オファー数に占める
札割れ回数の割合。
(図表64)金利入札オペの応札倍率
(注)オファー日ベース。
(図表65)金利入札オペの平均落札レート
(注)オファー日ベース。
0
20
40
60
80
100
0
10
20
30
40
50
10/1 10/7 11/1 11/7 12/1
札割れ回数
札割れ率(右目盛)
(回) (%)

0.095
0.100
0.105
0.110
0.115
0.120
10/10 11/1 11/4 11/7 11/10 12/1
(%)

0
1
2
3
4
5
6
7
8
10/10 11/1 11/4 11/7 11/10 12/1
(倍)

札割れ
47
C 資金吸収オペ
2011年度中は、包括緩和政策のもとで、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標水準が「0〜0.1%程度」とされたことから、2010年度に引き続き、資金吸収オペは実施しなかった。
D その他のオペ
(国債補完供給)
2011年度中は、国債補完供給を計14回実施した。これは、2010年度の計17回と比べると減尐した。対象銘柄としては、物価連動債が多かった。物価連動債については、2008年8月以降、新規発行が停止されているもとで、国債整理基金の買入消却および日本銀行の国債買入オペによる買入れが継続していることもあって、市場規模が縮小しており、市場流動性やSCレポ市場の機能度が低下した状況が続いている。
(3)補完貸付制度
2011年度中は、日本銀行による潤沢な資金供給を背景に、2010年度に引き続き、極めて低水準の利用となった。
(4)成長支援資金供給
2011年度中は、2010年6月に導入した貸付枠(本則)に基づく資金供給として、四半期に1回のペースで、計4回の貸付けを実施した。第5回以降は、貸付総額の上限(これらの貸付けの実施時点では3兆円)との関係で、新規に貸付けが可能な金額を上回る借入希望があったため、按分処理を行った(図表66)。
また、2011年6月に導入を決定した、出資やABLなどを対象とする新たな貸付枠(ABL特則(後掲5.(1)参照))に基づく資金供給として、8月以降、本則分と同じタイミングで、計3回の貸付けを実施した。
2012年3月末の残高は、本則分が、上記貸付けの実施時点における貸付総額の上限と一致する3.0兆円、ABL特則分が、上限の0.5兆円に対して0.09兆円となった。
48
(5)被災地金融機関支援オペ
2011 年4月に導入を決定した、被災地金融機関支援オペについては(後掲5.(2)
参照)、5月以降、月1回のペースで、計11 回の貸付けを実施した(図表67)。
2012 年3月末の残高は、上限の1兆円に対して、0.5 兆円となった。
(6)米ドル資金供給オペ
2011 年度中は、予め公表した日程に従って、1週間物を週1回、3か月物を概ね
4週間に1回のペースでオファーした。これらは全て、固定金利を提示して、各金
融機関が日本銀行に差入れている適格担保の範囲内であれば、金額に制限を設けず
に供給する方式により実施した。適用利率は、ニューヨーク連邦準備銀行が貸付期
間に応じた米ドルOIS市場における実勢金利を勘案して指定する利率とした。具
(図表66)成長支援資金供給の実施結果
(図表67)被災地金融機関支援オペの実施結果
(注)かっこ内は、貸付実施の通知日。
(注)かっこ内は、貸付実施の通知日。
(本則分)
(億円) 
第4回
(5/31日)
第5回
(8/31日)
第6回
(11/30日)
第7回
(2/29日)
12/3月末残高
大手行2,125 228 305 221 13,002.6
地域金融機関4,551 945 1,050 1,030 13,768.4
その他1,620 222 274 218 3,226.5
合計8,296 1,395 1,629 1,469 29,997.5
(ABL特則分)
(億円) 
第1期
(8/31日)
第2期
(11/30日)
第3期
(2/29日)
12/3月末残高
大手行185 131 213 505.5
地域金融機関等196 44 167 385.6
合計381 175 380 891.1
(億円)
第1回
(5/17日)
第2回
(6/21日)
第3回
(7/20日)
第4回
(8/23日)
第5回
(9/21日)
第6回
(10/18日)
第7回
(11/21日)
第8回
(12/16日)
第9回
(1/17日)
第10回
(2/21日)
第11回
(3/22日)
12/3月末残高
大手行86 135 14 10 225 47 12 52 15 3 1 600
地域金融機関等655 1,158 1,272 126 808 343 0 0 50 50 0 4,462
合計741 1,293 1,286 136 1,033 390 12 52 65 53 1 5,062
(注)回号にかかる( )内は、貸付実施の通知日。
49
体的には、当初は、米ドルOISレートに1%を加えた金利、2011年11月30日の6中央銀行の協調行動によるオペ適用利率の引き下げ以降は、米ドルOISレートに0.5%を加えた金利とした。
応札額は、2011年11月までは、本オペの適用利率が市場金利対比で割高となる状況が続くもとで、全て1億ドル以下と、尐額にとどまっていた。もっとも、11月30日の協調行動によってオペの適用利率が引き下げられると、応札額は大幅に増加した。具体的には、1週間物では、年末越えとなる12月20日オファー分で90.35億ドルとなったほか、3か月物では、適用利率を引き下げてから初めてのオファーとなった12月13日オファー分で47.56億ドル、翌回の1月10日オファー分で125.56億ドルとなった。その後は、米ドル資金調達環境が徐々に落ち着きを取り戻すなかで、1週間物、3か月物とも応札額は大幅に減尐し、2月14日オファーの1週間物では、約3か月ぶりに応札がゼロとなった。オペ残高でみると、2011年度中のピークは2012年1月12〜19日の205億ドル、その後減尐し、2012年3月末の残高は135億ドルとなった。
BOX13 共通担保の受入状況 日本銀行では、国債をはじめとする公的債務に加えて、社債・CPといった幅広い民間企業債務等を、担保として適格な金融資産として選定している(適格担保)。金融機関は、適格担保を「共通担保」として差し入れることにより、日本銀行から、その担保価額の範囲内で、共通担保資金供給オペ、補完貸付制度、日中当座貸越等の諸取引に基づく与信を受けることができる。共通担保方式のもとで、金融機関は、@事前に適格担保を差し入れておくことにより、必要な時に迅速かつ確実に日本銀行与信を利用可能となるほか、Aその資産保有状況等に応じて、差し入れる担保種類の選択や差替えを行うことができる。このように、共通担保の枠組みは、金融機関にとっても利便性が高いものであり、金融市場調節の円滑な実施を支える基盤として機能している。 2007年度以降の共通担保の受入状況をみると、まず、受入担保残高は、特に2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻以降ほぼ一貫して増加しており、2007年4月末の69.7兆円に対して、2011年3月末には、東日本大震災直後に、予備的な資金需要の高まりを受けて金融機関が保守的に担保差入額を増加させたこともあって、143.8兆円に達した(図表68)。2011年度中も、125兆円前後の高水準で推移した。 これに対して、受入担保使用率(月末残ベース)は、30〜40%程度で概ね安定的に推移している。これは、金融機関が、日中流動性の管理も含めて、自らの担保使
50
用率や担保余裕額をみつつ、日本銀行に差し入れる担保の量を調整していることによるものと考えられる。2011年度においても、受入担保使用率は35%前後で推移した。 受入担保の種類別内訳をみると、国債が7割程度と大宗を占めている(図表69)。また、2007年度以降の受入担保残高の増加も国債が中心となっており、金融機関では、発行残高が大きく、担保差入・返戻事務の簡便な国債によって、前述の差入担保量の調整を行っていることが窺われる。その他の公的債務の構成比は2割強であり、政府向けや政府保証付の証書貸付債権の差入れが多い。これに対して、民間企業債務等の構成比は、1割以下にとどまっている。もっとも、その受入残高は、2008年12月の企業金融支援特別オペ(裏付けとする担保を民間企業債務に限定)の導入を契機として、それまでの3〜5兆円から、一旦11兆円強まで大きく増加した。2010年3月末に同オペが終了した後も、受入残高の減尐は小幅にとどまっており、2011年度中も、8〜9兆円程度で推移した。
(図表68)受入担保残高と受入担保使用率
020406080100030609012015007/408/409/410/411/4国債その他の本邦公的債務民間企業債務等受入担保使用率(右目盛)(兆円)(%)月末
51
(図表69)共通担保の受入残高
(注1)変動利付国債、物価連動国債および分離国債を含む。
(注2)外国政府債券、国際金融機関債券および外貨建外国債券を含む。
(注3)社債、資産担保債券および不動産投資法人債。
(注4)短期社債(保証付短期外債、資産担保短期債券および短期不動産投資法人債を含む)
およびCP(ABCPおよび不動産投資法人CPを含む)。
(注5)企業(地方公共団体出資法人を含む)向け証貸および不動産投資法人向け証貸。
(兆円)担保価額比率担保価額比率総 計143.8100.0%126.2100.0%国 債107.975.0%88.870.4%うち利付国債等(注1)81.856.9%76.260.4%うち国庫短期証券26.118.2%12.610.0%その他の本邦公的債務27.819.3%29.623.5%うち政府保証付債券2.61.8%2.31.8%うち地方債2.61.8%2.72.1%うち財投機関等債券0.90.6%1.10.9%うち政府向け証貸・政府保証付証貸21.615.0%23.418.5%うち地方公共団体向け証貸0.10.1%0.10.1%民間企業債務等(注2)8.05.6%7.86.2%うち社債等(注3)1.41.0%1.31.0%うちCP等(注4)1.91.3%1.51.2%うち一般手形0.30.2%0.30.2%うち企業向け証貸等(注5)4.43.1%4.73.7%11/3月末12/3月末担 保 種 類
52
5.金融市場調節運営に関するその他の事項
(1)成長支援資金供給の拡充
2011年6月13〜14日の金融政策決定会合において、出資やABLなどを対象とした新たな貸付枠であるABL特則を設けることを決定した。これは、成長基盤強化に向けた金融機関の自主的な取り組みをさらに後押ししていく観点から、資本性資金の供給や従来型の担保・保証に依存しない融資に着目し、今後、これを支援していくことが適当との判断に基づくものである。
ABL特則は、出資やABLなどの残高の範囲内で、適格担保を見合いに0.1%の固定金利により貸付けを行うものである。金融機関が長期的な観点から取り組めるよう、当初貸付期間を本則の2倍の2年とし、1回の借換えを可能とした(最長4年)。ABL特則による貸付枠は5,000億円とし、貸付対象先毎の貸付限度額は500億円とした。
さらに、2012年3月12〜13日の金融政策決定会合では、成長支援資金供給について、円貨および外貨の両面で拡充し、貸付額の総額を、それまでの3.5兆円から5.5兆円に2兆円増額することを決定した。具体的な措置は、次の4点である。
第1に、本則では対象としていない小口の投融資(1件当たり100万円以上1,000万円未満の投融資)を対象に、新たに5,000億円の貸付枠(小口特則)を導入した。
第2に、成長に資する外貨建て投融資を対象に、日本銀行が保有する米ドル資金を用いて新たに1兆円相当の貸付枠(米ドル特則)を導入することとし、これに関する骨子素案を取りまとめ、公表した。
第3に、本則について、新規貸付の受付期限を2014年3月末まで2年延長するとともに、貸付枠を3兆円から3兆5,000億円に5,000億円増額した。
第4に、ABL特則について、現行5,000億円の貸付枠のもとで、新規貸付の受付期限を2014年3月末まで2年延長することとした。
(2)東日本大震災の被災地の復旧・復興に向けた金融面での支援
2011年4月28日の金融政策決定会合において、被災地金融機関支援オペの実施および被災地企業等債務にかかる担保適格要件の緩和を決定した。
(被災地金融機関支援オペ)
復旧・復興に向けた資金需要への対応を支援する観点から、被災地に貸出業務を行う営業所等を有する金融機関や当該金融機関を会員としている系統中央機関に対して、適格担保の範囲内で0.1%の固定金利により貸付けを行うものである。長めの資金ニーズに対応するため、貸付期間は1年とした。貸付総額の上限は1兆円であり、貸付対象先毎の貸付限度額は、1,500億円を上限として、被災地に所在す
53
る営業所等の貸出金残高(系統中央機関は、自己および会員分の合計)を勘案して定めた。
(被災地企業等債務にかかる担保適格要件緩和)
被災地に貸出業務を行う営業所等を有する金融機関の資金調達余力を確保する観点から、被災地企業等の債務を対象として、担保適格要件の緩和を行った。
具体的には、@被災地に事業所等を有する企業の社債、手形および証書貸付債権、A被災地の地方公共団体向けの証書貸付債権、ならびに、B被災地の地方公共団体が全額出資する被災地所在の法人向けの証書貸付債権について、信用力の基準や格付その他の要件を緩和することとした(図表70)。その際には、日本銀行の財務の健全性を確保する観点から、併せて、保守的な掛け目を設定する等の措置を講じた。
被災地に事業所等を有する企業
被災地の地方公共団体
被災地の地方公共団体が 全額出資する被災地所在の法人
社 債
格付要件の緩和(A格相当以上→BBB格相当以上)


手 形
正常先債務を適格とする(注)


証書貸付債権
格付要件の緩和(A格相当以上→BBB格相当以上)
債務者要件(公募地方債の発行)および貸付条件の決定にかかる要件(金利競争入札の実施)を撤廃
正常先債務を適格とする(注)
正常先債務を適格とする(注)
これらの支援策については、2011年10月6〜7日の金融政策決定会合において、被災地金融機関支援オペの未実行の貸付枠を活用することにより、引き続き、被災地金融機関における復旧・復興に向けた資金需要への対応を支援するとともに、被災地金融機関の資金調達余力を確保する観点から、6か月延長することを決定した。具体的には、被災地金融機関支援オペの貸付受付期限を、2012年4月末まで、被災地企業等債務にかかる担保適格要件緩和の適用期限を、2013年4月末まで、それぞれ延長した。
さらに、2012年3月12〜13日の金融政策決定会合では、金融機関等の要望等も踏まえて、支援措置を1年延長することを決定した。具体的には、被災地金融機関
(図表70)被災地企業等債務にかかる担保適格要件緩和の概要
(注)民間企業債務の債務者である企業について、被災地金融機関の自己査定で正常先に区分されていれば、
信用力に問題ないものとして取り扱うこととした。正常先債務として適格とする場合には、格付要件の
緩和により適格とするものよりも一層保守的な掛け目を設定するとともに、担保差入額の限度(各金融
機関の担保価額の総額の一定割合以下)を設けた。
54
支援オペについて、現行1兆円の貸付枠のもとで、貸付受付期限を2013年4月末まで延長するとともに、被災地企業等債務にかかる担保適格要件緩和の適用期限を、2014年4月末まで延長した。
(3)担保掛け目等の定例見直し
適格担保の担保掛け目等(@適格担保の担保掛け目、A国債現先オペにおける売買対象国債の時価売買価格比率およびマージン調整担保国債の担保掛け目、ならびに、B国債補完供給における売却対象国債の時価売却価格比率等)については、2005年度以降、原則として年1回程度の頻度で、金融市場の情勢等を踏まえた検証を行い、その結果に基づき必要な見直しを行う扱いとしている。
2011年度は、2011年10月6〜7日の金融政策決定会合において見直しを行った。
(4)多角的スワップ取極の締結等
2011年11月30日の臨時の金融政策決定会合において、国際短期金融市場の状況と、これが円の金融市場の流動性に及ぼし得る影響に鑑み、米国連邦準備制度との間で締結している米ドル・スワップ取極、およびこれを原資とする米ドル資金供給オペの期限を、2013年2月1日まで延長することを決定した。
さらに、カナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度およびスイス国民銀行は、不測の事態への対応措置として、市場の状況によって必要とされる場合に、各国・地域において、各中央銀行がいずれの通貨でも流動性供給を行えるよう、中央銀行間スワップ取極の対象を、従来の米ドル・各通貨間のみから、米ドル、カナダドル、英国ポンド、円、ユーロおよびスイスフラン相互に拡大し、6中央銀行間で2013年2月1日を期限とするスワップ取極を締結することに合意した。
これを受けて、2011年12月20〜21日の金融政策決定会合では、@日本銀行と4中央銀行(カナダ銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行およびスイス国民銀行)との間の外貨の調達にかかる為替スワップ取極要綱、4外国通貨(カナダドル、英ポンド、ユーロおよびスイスフラン)の資金供給オペレーション基本要領および資金供給オペレーションにおける貸付対象先選定基本要領の制定、ならびに、A日本銀行と5中央銀行(カナダ銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度およびスイス国民銀行)との間の円資金の供給にかかる為替スワップ取極要綱の制定、について決定した。@により、日本銀行が必要とする場合に、既存の米ドルに加えて4外国通貨での流動性を供給することが、Aにより、5中央銀行が必要とする場合に、円資金での流動性を供給することが、それぞれ可能となった。
なお、2011年度中は、米ドル以外の通貨での流動性供給が必要とされる状況が生
55
じなかったことから、日本銀行による米ドル以外の外貨資金供給は行わなかった。
(5)国債決済期間の短縮化に伴うオペタイムテーブルの変更
2012年4月23日より、国債の決済期間が短縮され、流通市場および発行市場におけるアウトライト取引が、原則として、それまでの約定日・入札日(T日)の3営業日後(T+3)の決済から、約定日・入札日の2営業日後(T+2)の決済に変更された。また、国債アウトライト取引の結果を受けて行われることの多いGCレポ取引も、それまでのT+2決済中心からT+1決済中心へと、市場慣行が改められた。
これを受けて、日本銀行は、オペレーション運営上、国債売買オペ(アウトライトおよび現先)については、市中における決済慣行に合わせて、決済期間を1営業日短縮することとした。また、共通担保資金供給オペのうち、@金利入札方式でのオペについては、現行のT+2スタート物に加え、国債アウトライト取引による資金ポジションの変化を受けた資金調達ニーズに対応するため、T+1スタート物を併用することとした。なお、T+1スタート物については、午前10時10分にオファーする本店貸付方式のオペが中心となる(図表71)。Aこの間、資産買入等の基金の運営として行う固定金利方式のオペについては、既に実行したオペの期落ちに対して再度同じ金額をオファーする運営としていることから、T+2スタート物としてのオファーを継続することとした。
オファー時刻
応募締切
時刻
オファーバック
時刻
オファー日からスタート日
までの日数
共通担保資金供給オペ(金利入札方式、本店)
10:10
10:40
10:55頃
T+1
以 上
(図表71)T+1スタートの共通担保資金供給オペ(午前オファー分)のタイムテーブル
56
「2011年度の金融市場調節」
参考計表・資料一覧
(図表 1) Bloomberg
(図表 2) Bloomberg
(図表 3) Bloomberg
(図表 4) Bloomberg
(図表 5) Bloomberg、BofAメリルリンチ
(図表 6) Bloomberg、日本相互証券
(図表 7) 日本銀行「営業毎旪報告」
(図表 8) 日本銀行「営業毎旪報告」
(図表 9) 米国連邦準備制度「Factors Affecting Reserve Balances」
(図表 10) 欧州中央銀行「Minimum Reserves and Liquidity」
(図表 11) 日本銀行「無担保コールO/N物レート」「東京レポ・レート」
(図表 12) 日本銀行「東京レポ・レート」「金融調節実績(オペレーション)」
(図表 13) 財務省
(図表 14) 日本相互証券
(図表 15) 日本相互証券、財務省
(図表 16) 財務省「対外及び対内証券売買契約等の状況」
(図表 17) Bloomberg
(図表 18) 米国連邦準備制度「Flow of Funds Accounts of the United States」
(図表 20) 日本相互証券
(図表 21) 日本相互証券
(図表 22) 証券保管振替機構
(図表 23) 日本証券業協会
(図表 24) Bloomberg
(図表 25) Bloomberg、日本銀行「金融調節実績(オペレーション)」
(図表 26) イングランド銀行、欧州中央銀行、スイス国民銀行、
日本銀行「金融調節実績(オペレーション)」
(図表 27) Bloomberg、日本相互証券
(図表 28) Bloomberg
(図表 29) 日本銀行「事業年度財務諸表等」「マネタリーベースと日本銀行の取引」
「営業毎旪報告」
(図表 30) 日本銀行「金融調節実績(オペレーション)」
(図表 31) 日本銀行「日銀当座預金増減要因と金融調節(毎営業日更新)」
(図表 32) 日本銀行「業態別の日銀当座預金残高」
(図表 33) 日本銀行「業態別の日銀当座預金残高」
57
(図表 34) 日本銀行「業態別の日銀当座預金残高」「無担保コールO/N物レート」
「東京レポ・レート」
(図表 35) 日本銀行「コール市場残高」
(図表 36) 日本銀行「コール市場残高」
(図表 37) 日本銀行「コール市場残高」
(図表 39) 日本銀行「日銀当座預金増減要因と金融調節(実績)」
(図表 40) 日本銀行「日銀当座預金増減要因と金融調節(実績)」
(図表 41) 日本銀行「日銀当座預金増減要因と金融調節(実績)」
(図表 42) 日本銀行「日銀当座預金増減要因と金融調節(毎営業日更新)」
(図表 43) 日本銀行「営業毎旪報告」
(図表 44) 内閣府、日本銀行「営業毎旪報告」
(図表 45) 日本銀行「通貨流通高」
(図表 46) 日本銀行「日銀当座預金増減要因と金融調節(毎営業日更新)」
(図表 47) 日本銀行「日銀当座預金増減要因と金融調節(実績)」
(図表 48) 日本銀行「日銀当座預金増減要因と金融調節(毎営業日更新)」「日本銀行に
よる国庫短期証券の銘柄別買入額」「日本銀行が保有する国債の銘柄別残高」
(図表 49) 日本銀行「営業毎旪報告」
(図表 50) 日本相互証券、日本銀行「金融調節実績(オペレーション)」
(図表 51) 日本銀行「金融調節実績(オペレーション)」
(図表 53) 日本相互証券、日本銀行「金融調節実績(オペレーション)」
(図表 54) 日本銀行「日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額」
(図表 55) 証券保管振替機構
(図表 56) 日本銀行「金融調節実績(オペレーション)」
(図表 57) 日本銀行「金融調節実績(オペレーション)」
(図表 58) 日本銀行「マネタリーベースと日本銀行の取引」
(図表 59) 日本銀行
(図表 60) 日本銀行「営業毎旪報告」「マネタリーベース」
(図表 61) 日本銀行「金融調節実績(オペレーション)」
(図表 62) 日本銀行「金融調節実績(オペレーション)」
(図表 63) 日本銀行「金融調節実績(オペレーション)」
(図表 64) 日本銀行「金融調節実績(オペレーション)」
(図表 65) 日本銀行「金融調節実績(オペレーション)」
(図表 66) 日本銀行「成長基盤強化を支援するための資金供給の実施結果」
(図表 67) 日本銀行「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーションの実施
結果」
(図表 68) 日本銀行「日本銀行が受入れている担保の残高」
(図表 69) 日本銀行「日本銀行が受入れている担保の残高」

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