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躓く英国経済:二番底入り
2012.05.02(水)
The Economist
本格的な成長は遠い先の話になりそうだが、英国が景気後退に逆戻りしたというニュースは危機感よりも落胆を呼んでいる。
この4月、失策続きのデビッド・キャメロン政権にとって最悪の1カ月は、第4週に入ってさらに悪い方向へと転じた。英国経済が結局、景気後退から完全に抜け出せていないことが明らかになったのだ。
4月25日に発表された速報値によると、2012年第1四半期、英国の国内総生産(GDP)は2011年第4四半期の0.3%減に続き、0.2%(年率換算で0.8%)縮小した。2009年に英国が金融危機による深刻な景気後退から浮上した時には、財政赤字への対策が進む中でも、経済には緩やかな回復を続けるだけの勢いがあると期待されていた。
1970年代以来、初めての二番底
ところが2010年第4四半期を境に、それまでも決して力強いとは言えなかった経済成長が、もたつき始めた(下図の左参照)。今や成長は停滞し、GDPは2010年末を下回っている。
奇跡を期待していた人はいなかったが、この数字は驚くほど悪かった。大方のアナリストは先行する調査統計に基づき、総生産の4分の3を担うサービス部門がもっと良い数字を残し、GDP成長率をプラス領域にとどめてくれるものと予想していた。
この見込みは間違っていた。第1四半期のサービス部門の成長率は前期比でわずか0.1%にとどまった。製造部門は0.1%、建設部門は3%縮小した。速報値は今後改訂されるが、上方修正されるのと同じくらい下方修正される可能性がある。休日が多い第2四半期の見通しが明るくなるとは考えにくい。
キャメロン首相は今回の統計について、「極めて残念な内容だ」とコメントした。野党を率いるエド・ミリバンド党首はこれに対し、景気後退の責任は政府の「破滅的な」政策にあると応じた。さすがにこれは言い過ぎだ。英国経済は基本的に、まだ底のあたりをさまよっている状態だ。
しかし、テクニカルな定義では、英国景気は二番底に陥った*1。二番底入りは1970年代以来の事態だ。過去の景気後退局面の後と比べても、回復の速度は遅く(上図の右参照)、例えば米国と比べても力強さに欠ける。なぜか?
*1=一般に2四半期連続のマイナス成長をもって景気後退と見なされる
GDPを押し上げる支出には主に4種類あり、そのすべてが停滞している。支出の半分を占める家計消費は、2011年の1年間で1.2%減少した。(幸運にも職がある人でも)賃金上昇率は極めて低く、そのため支出に使える金額はほとんど増えなかった。燃料価格の上昇などもあって、インフレ率は依然、3.5%という高水準にとどまっている。
通貨ポンドの下落と付加価値税の引き上げによる過去の物価上昇が、いまだに消費を冷え込ませている。そして何より、多額の負債を抱える消費者は、薄型テレビに大金をつぎ込むより、借金の返済に関心があるようだ。
イングランド銀行金融政策委員会の委員を務めるアダム・ポーゼン氏は、2009年以降、英国経済が米国ほどさえない主因の1つは、家計が支出を控えていることだと考えている。
緊縮財政を進める英国では政府支出にも期待できない〔AFPBB News〕
政府による支出は通常、支出全体の5分の1程度を占める。国が何かを購入すれば、企業やその従業員にカネが流れて消費を促すため、政府支出はこの割合が示唆する以上の効果をもたらすことができる。
しかし、この部門も縮小している。緊縮策により、この1年でGDPは0.7%縮小した。投資銀行モルガン・スタンレーの試算によれば、計画中の様々な政策変更が、今後12カ月についても概ね同等の影響を及ぼすと考えられるという。
輸出と設備投資にも期待できず
また、金融危機の前と比べて、ポンドの実効為替レートが20%下がったにもかかわらず、貿易が好転してGDPを底から救い出すこともなかった。ユーロ危機は企業にこれ以上ないほどの悪影響を及ぼしている。英国の輸出はユーロ圏向けが約半分を占めており、ここにきて景気が浮上している米国や、急成長を遂げる新興市場向けよりも比重が高い。
欧州大陸への輸出が伸びるかと言えば、こちらの見込みは明るくない。工業生産に関する最近の指標は、大陸向け輸出の減速を示唆している。
GDPの最後の原動力が設備投資だ。そしてこれは、英国の景気回復があまりにも遅い主因として、ポーゼン氏が挙げるもう1つの要素でもある。2008年の水準に達することは一度もなかったとはいえ、設備投資は2011年のほとんどの期間を通じて多少持ち直していた。
ところが第4四半期に入り、国内需要が浮上せず、欧州の見通しが悪化する中で、投資は再び下降に転じた。経済が憂慮すべき新たな信用収縮局面に入りつつあることから、今後の見通しも暗い。
一部の大企業は現金の山の上に座っているような状況だ。しかし、銀行による融資も重要であり、こちらが干上がりつつある。
財政引き締めの影響を相殺できなくなった金融緩和
ユーロ危機へのエクスポージャー(投融資残高)に対する市場の懸念が募る中で、銀行自体の資金調達コストも上昇している。2月上旬以来、英国の大手銀行の資金調達コストは40%もアップした。そして今、銀行では貸出金利の引き上げという形で、自らの調達コストを顧客に転嫁し始めている。
イングランド銀行は量的緩和で経済を支えているが、財政引き締めの影響を相殺できなくなった〔AFPBB News〕
信用収縮が起きる前、銀行による企業への融資は年間15%ほど増加していた。過去3カ月の傾向から計算すると、2012年は8%減少する可能性もある。
これは特に憂慮すべき事態だ。というのも、イングランド銀行は自らの政策金利については記録的に低いレベルを維持し、量的緩和によって経済に資金を供給しているにもかかわらず、金融緩和でタイトな財政政策の影響を相殺できなくなっているのだ。
ジョージ・オズボーン財務相が主導する緊縮政策はまずまず順調に進んでいる。成長を促すことは、それよりはるかに難しいことがはっきりするだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35116
Financial Times
ユーロ危機、緊縮財政に代わる策なし公共支出では根本的な問題を解決できない
2012.05.02(水)
Financial Times:プロフィール
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(2012年5月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
スペインでは失業率が25%に近づいている。ギリシャでは自殺率が上昇しており、英国の景気は二番底に入った。こうした痛みから上がる悲鳴は大きくなる一方だ。欧州の財政緊縮策は危険だ、誰かがこの愚行に歯止めをかけなければならない――。
そこに登場するのが、来るフランス大統領選挙の本命候補であるフランソワ・オランド氏だ。同氏は、緊縮財政を主張するドイツの有力者たちに立ち向かうという公約を掲げて選挙戦を展開している。
「緊縮をやめて成長促進を」の大合唱
決選投票を5月6日に控え、フランソワ・オランド氏は支出拡大による成長促進を訴えている〔AFPBB News〕
オランド氏の主張は、欧州のみならず米国でも共感を呼んでいる。米国ではラリー・サマーズ氏からポール・クルーグマン氏に至るまで、経済学の大御所たちが口をそろえ、欧州に財政緊縮策をやめるよう呼びかけている。
クルーグマン氏は例の調子でさらりと、この緊縮策を「狂気の沙汰」だと形容している。
オランド氏は、緊縮財政の代わりに経済成長を目指すと述べている。どうしてそれを誰も思いつかなかったのかという気もするが、残念なことに、中身のないスローガンは効果のない提案によって支えられている。
オランド氏のプログラムは、規模が小さく的も外した公共支出の拡大に重点を置く一方、持続可能な経済成長に至る唯一の道である構造改革については、ほとんど無視しているのだ。
もちろん、インフラ整備支出――米国のバラク・オバマ大統領はこれを「パワーショベルを動かす準備ができている」プロジェクトと呼んだことがある――は、景気後退のスパイラルに陥った経済にケインズ経済学が示す標準的な解決策だ。普通の状況であれば、この支出は名案かもしれない。
インフラ建設で繁栄するなら、ギリシャとスペインは好況に沸いている
しかし今の欧州には、これに懐疑的になる理由がたくさんある。もし立派な道路や鉄道を建設することが持続的な繁栄につながるのであれば、ギリシャとスペインは好況に沸いているはずだ。両国ではこの30年間、多額の資金がインフラ整備支出に惜しみなく使われてきた。欧州連合(EU)がスポンサーだったことも少なくなかった。
アテネの地下鉄は素晴らしいし、スペインの高速鉄道AVEも見事としか言いようがない。ところが、この種の支出は、両国が抱える根本的な問題、特に若年層の失業の解決にはほとんど貢献してこなかった。
さらに悪いことに、EUがインフラ整備の資金を出したことが問題を生み出した面もある。ギリシャでは、EUから補助金を引き出すこと自体が1つの産業になっていた。また、起業家としての才能を発揮するよりも政治的なコネを作る方が、富を手に入れる確実な方法だった。
イタリアとスペインは、自国経済をメチャメチャにしたいと思って予算を減らしているわけではない。市場が両国の借り入れに持続不可能な高金利を要求しているという事実に対応して、緊縮財政を進めているのだ。市場の態度が突然変わり、財政赤字が拡大する南欧諸国に資金をもっと貸す気になることは考えられない。
緊縮反対派の屁理屈
「緊縮財政を今すぐやめよ」と叫ぶ人たちは、欧州でも数が減りつつあるトリプルA格の国々に矛先を向け、これらの国には、消費ブームを継続し、近隣諸国を苦境から救い出す責任があると主張する。
しかし、オランダが先週、予算案で合意できなかった際に市場が見せた反応から分かるように、オランダとドイツの信用力は無尽蔵だという想定には説得力がない。
緊縮財政反対の中心地であるフランスにおいてさえ、国が十分にカネを使わないのが問題なのだと主張することは難しい。フランスでは既に政府部門が国内総生産(GDP)の56%を消費しており、政府は1970年代半ばから財政を均衡させたことがない。一部の税の税率は世界最高水準に達している。
大統領候補のオランド氏も馬鹿ではないから、このあたりの事情をすべて承知している。緊縮財政をやめようという心地いいレトリックの裏側にある、細かい字で書かれた注意書きがそれほど面白くないのはそのためだ。実際、社会党から立候補している同氏が掲げている公約は、現職のニコラ・サルコジ大統領の計画よりも1年遅く財政を均衡させるというものだ。
欧州では左派でさえ、赤字財政支出を永遠に続けられるというふりをできなくなっている。そのため、政府による歳出削減は「大幅すぎるし早すぎる」(英国の影の財務相エド・ボールズ氏が口にした表現)という主張をせざるを得なくなっている。こんなものは、重要な教義にかかわる議論という仮面をかぶった屁理屈でしかない。
ドイツ人の言い分に理
というのも、ドイツ人は果てしない緊縮を提唱する愚か者として描かれることが多いが、彼らの真意はもっと巧みで、説得力がある。つまり、欧州域内で予算を均衡させる取り組みは、民間部門の雇用創出を促す改革とセットにしなければならない、ということだ。
こうした改革の余地はとてつもなく大きい。フランスでは、労働者の雇用にかかる税金が非常に高い。オランド氏は称賛すべきことに、若者を採用する雇用主への減税措置を約束している。だが、それよりは単に、雇用にかかる税金を一律カットした方がいい。これは、雇用創出により本当に財源を捻出できる可能性がある減税策だ。
また、欧州の企業はお役所仕事にも苦しめられている。筆者が最近気に入った例は、ニューヨーク・タイムズ紙が取り上げたあるギリシャの起業家の話だ。インターネットビジネスを立ち上げようとしたところ、膨大な量の書類を申請する作業に直面し、ついには役人から検便まで迫られたのだという。
スペインやイタリアなどの高い若年失業率は、正規雇用の労働者に対する過剰な保護策および手当と密接に関係している。そのせいで雇用主は新規採用に慎重になるからだ。あるスペインのビジネスマンが最近こぼしたように、「この国では、従業員を1人解雇するより、妻と離婚する方が簡単」なのだ。
公共支出で増えるのは「どこにもつながらない橋」だけ
労働市場改革の断行は難しく、時に危険でさえある。イタリアでは近年、労働市場改革について政府に助言していたエコノミストが2人暗殺された。だが、そうした改革は長期的には、雇用創出を拡大する唯一の道だ。
対照的に、欧州は支出拡大により債務から抜け出すべきだという意見は幻想だ。もちろん、財政赤字削減のペースに関しては議論の余地がある。しかし、欧州のように多額の税金を課され、厳しく規制され、多大な債務を背負った大陸では、国費による公共事業は、どこにもつながらない橋を建設するだけだ。
By Gideon Rachman
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35121
# Econonomistoは、やや反緊縮 FTは緊縮支持
ポジション的にはわかりやすい
いずれにせよ中銀や当局の頑張りにもかかわらず、
バブル崩壊後の先進国経済が日本化しているのは間違いない
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