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★大飯原発再稼働の背景★ 原子力ムラに ばら撒かれる電気料金
(『科学的社会主義』2012年8月号 掲載)
● ばら撒かれるカネ
某原子炉メーカーの社員と話す機会があった。定年が近い中間管理職だそうだが、「原発を再稼働させてはいけない。私は反対だ」と話された。筆者の立場を承知していてのことだが、リップサービスの必要はないので本心なのだろう。この方もそうだが、最近は原発推進の立場にいた人の発言を聞く機会が多い。それも、悔い改めて転向したのか、その内容は、「反・脱原発」となる。
福島第二原発が立地する富岡町に暮らしていて、現在は他の自治体に避難している東電関連企業の社員がいる。今も原発で働きつづけるその人物は、同じ町から避難されている方に情報を提供し、東電の告発の手助けをしている。そのなかに次の件がある。「国が東京電力に自由に操られている。……東京電力が保安院に従わないのは明白です。経済産業省、関連国会議員に膨大な金をばら撒いているからだ」。というものだ。
この方はばら撒きの具体例までは示さないが、合法と非合法を併せて、原発推進のために膨大なカネが使われている。非合法の範疇に入ることは、立証しなければならないので厄介だが、合法の領域となれば難しくはない。問題があるのは、そのカネが巨額で複雑なルートをたどることだ。
政府と関西電力は、関西圏の住民と自治体、そして、国民の声を顧みずに大飯原発の再稼働を強行した。今や財界と官僚の下僕となった民主党政権は、儲けのために再稼働を求める財界の意のままだ。原発の輸出のためには、国内の原発の再稼働が必要だとして、福井県とおおい町に、補助金・交付金をエサに同意を取り付ける。県も町も拘るのは、原発に関わるカネ儲けのためで、決して電力不足が理由ではない。
関西圏の自治体の長が抵抗の姿勢を示したが、最後は腰砕けとなる。松井大阪府知事が、「私だけでなく、府のあらゆる部署に国の圧力が掛かった」と発言していた。テレビのニュースなのだが、メディアは「圧力」のフォローはしないが、想像をすることは簡単だ。政府官僚は交付金や国庫支出金を支配し、自治体の生殺与奪の権を握っている。さじ加減ひとつで減額したり、交付の時期を遅らせたりする。悔しくて、知事は思わず口を滑らしたようだ。
おおい町が原発の再稼働を求めるのは、関西の電力不足を懸念してではない。稼働することで多額のカネが転がり込むからだ。原発が立地するので固定資産税が入るが、原発事故の2011年4月1日に省令が改正され、稼働すればその税額が増える構図となっている。
政府は県と町の了承を得たとして、再稼働を決めたのだが、県知事も町長も、電力会社と深く結びついていて、旗振りは予想されていた。おおい町長は、大飯原発の取引企業の元経営者であり、現在は息子が経営を引き継いでいる。かなりわかりやすい。賛成した町議のほとんども原発関連企業とかかわりを持っているので、いずれもカネの問題となる。
福井県と電力会社の関係もわかりやすい。「若狭湾エネルギー研究センター」という財団法人がある。敦賀市に立地するこの財団の150億の豪華なビルの建設費用は、電源三法の交付金が120億で、残りは関電などの寄付によっている。基本財産は51億円だが、そのほとんどを関西電力などの電気事業者が出資し、県の負担は五千万円。これに加えて、研究費名目で毎年多額のカネがばら撒かれている。
カネとともに人的にも結びついている。財団の理事長は元副知事であり、専務理事は県から出向している現職職員だ。事務局長や数多いる幹部職員は、県職員の天下り先の指定席になっている。理事には関電、北陸電力、そして日本原子力発電の役員が名を連ねている。この財団法人は一つの例だが、自治体と電力会社のズブズブの関係を示している。
● 原発推進の原資は電気料金
原発に関わるカネは、税金と電気料金が原資となる。2012年度の原子力(原発)関連予算は、一般会計が1056億円、エネルギー対策特別会計(電源開発促進勘定)が2829億円、合わせて3894億円。これは原子力委員会が発表したもので、国会の提出資料では、電源開発促進勘定は3135億円となっている。
一般会計の原子力関連費は、その9割以上が文部科学省の管轄で、日本原子力研究開発機構、放射線医学総合研究所、大学共同利用機関法人、そして文科省内局などへ、それぞれの経費として支出する。いわゆる原子力ムラの数多ある各種法人にばら撒かれている。
電源開発促進勘定の原資は、電気料金に併せて徴収される税金なのだが、こちらの税金が、原発立地とその周辺自治体に交付金として配られる。電源三法交付金と総称されるカネだが、三法とは、「電源開発促進税法」「特別会計に関する法律」(旧電源開発促進対策特別会計法)「発電用施設周辺地域整備法」という法律だ。これまでは火力発電も交付に関わっていたが、現在では水力と原子力に限定され、しかもそのほとんどが原発関連となっている。
交付金の主たる対象は自治体だ。日本原子力研究開発機構の運営費や施設整備費にも使われているが、電源立地地域対策交付金、電源立地等推進対策交付金などが、立地自治体を中心に交付されている。この交付金は周辺自治体も対象だが、立地している自治体は優遇されて厚くなっている。
交付金はこれまでは、使い勝手が悪いと評判が悪かった。ハコモノ建設や道路整備などのハード面に限られていたからだ。現在は、人件費などのソフト面にも使えるように変更された。新たな事業や、継続している事業の経費を算出し、そのための交付金を受けるということだ。
一方の固定資産税は、一般財源なので何に使っても自由であり、基金として積み立ててもいい。そして、その出所も違っている。交付金は電源開発促進勘定となる税金だが、固定資産税は、電気料金を原資として電力会社が支払うものだ。
原発を推進するためのカネは、一般税を原資とする一般会計、電気料金とともに徴収される電源開発促進税の特別会計、そして電気料金の三つの種類がある。一般会計と特別会計は、併せて年間数千億円という額だが、一方の電気料金は、10社で15〜16兆円の世界となり、桁が違っている。
一般会計も特別会計も税金なので、その詳細はともかくとして、国民の目には触れている。でも、電気料金となると、民間という壁が立ち塞がり、漠としてその姿は現さない。問題はこの電気料金だ。原発を推進するためのカネとなっていて、それも税金とは比較にはならない巨額で、しかもかなり自由に使えるからだ。
● 力の源泉は総括原価方式
電気料金は現在では珍しい「一物二値」となっている。自由化された50kWh以上の契約ならば、電力会社以外の電気の小売企業=PPS(Power Producer and Supplier)から自由に購入できる。その一方では、50kWh未満の契約、家庭やコンビニなどの場合は、電力会社以外からは購入できない。このため、50kWhを境に価格が違う。
電気料金の違いは、電力会社の利益構造にも違いをもたらす。東電の直近五年間の利益は、家庭向けの電気からは91%、企業向けからは9パーセントとなっている。一方の電力販売量は、家庭向けが38%で企業向けが62%だ。他の電力会社は東電ほどではないが、やはり利益の70%以上は家庭からとなっている。これらの数値が示していることは、弱い立場の個人の電気料金は高くして、自由競争下にある企業の電気は市場にまかせるため、比較的安価になるということだ。(『PPSのすすめ』七つ森書館・参照)
東電の企業向けの電気は、4月1日から値上げされてしまったが、こちらの料金は、電力会社の自由裁量となっているからだ。一方では、電力会社以外に選択肢のない家庭等の電気は、国(経産省)に値上げを申請して許可を得ることが必要だ。東電は10・28%の値上げを申請したが、これまでは、その申請額をそのまま認めていた。でも、今度ばかりは減額は必至だ。
電気料金の問題点は、自由化されていない家庭等の料金が、総括原価方式に基づくことだ。申請があれば、その内容を精査するのだが、それは、原価が正当なものかどうかをチェックする。総括原価方式なので、発電から送配電、そして販売にかかわるすべての経費を算出し、これに別に計算した電力会社の利益(3%程度)を加え、これらの総額に相当する金額を電気料金として徴収する。
電力会社の利益・事業報酬は、自己資本の比率や総資産が意味を持ってくる。そのため、算出にあたっては力関係がものをいう。電力会社の力が強く、原子力安全・保安院が電力会社の言いなりになっていることが暴露されている。これと同じで、自己資本の比率をどう利益に組み込むか、そして、資産をどこまで認めるかの決定権は、監督官庁である経産省ではなく、電力会社が持っている。そのため、社会通念に反する利益を生み出している。
この原価といわれるものが正当なものかどうかとなる。危惧するのは、原価が膨らむことが電気料金の引き上げとなるからだ。政府に設置された「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議」が、2012年3月に「報告書」をまとめた。この中には、これまでは原価に参入していたが、相応しくないので除外するべきだと、改善すべき項目を列記している。
企業の宣伝広告費ランキング(日経広告研究所2010年調べ)によれば、東電は年額269億円で10位にランクされている。原発事故前の数値だが、これに他の電力会社と、電気事業連合会を加えると、1位のパナソニックの734億円を抜き去るはずだ。
電気が電力会社の唯一の商品(サービス)なのだが、どう考えても消費を促進していいものではない。むしろ消費を減少させるべきだ。そのため、宣伝効果を期待しない宣伝費となるので、これほどの好条件のスポンサーは他にはない。マスメディアの原発報道が批判にさらされているが、それは電力会社の顔色を伺っているからだ。
新聞は広告ほしさに、企業・業界の「よいしょ」ではなく、反対の「バッシング」をするようだ。編集委員で職を辞した某大新聞の記者が、運賃値上げで私鉄をバッシングしたが、それは不動産部門の広告がほしかったからだと明かしている。この種のことは枚挙に暇がないが、宣伝効果を期待しない広告なので、反・脱原発であれば何でも許される。
電力会社の社員の給与が高すぎるとして、その減額をするべきだと指摘されている。否定するつもりはないが、その前にするべきことがあるはずだ。猪瀬副知事が東電病院をやり玉にあげたが、これに類することは他にもある。民間企業が利益をどう使おうとも、道義的なことは別にすれば、合法的に行なわれるなら許容の範囲だ。でも、電力会社となるとそうはならない。それらの経費がすべて、原価として電気料金に反映されてしまうからだ。
● 電気料金でつくった企業群
マスメディアへの広告宣伝費のばら撒きが、スポンサーの顔色をうかがうメディアの常として、電力会社に都合の悪い報道は敬遠され、結果として原発推進対策費となっている。原価として参入されている原発推進費としては、他には自治体や個人への寄付金というものがある。交付金でもなく、固定資産税でもないこのカネほど、自治体に都合のいいものはない。
自治体の歳入の項目には個人と団体(企業)の寄付金がある。福祉関係に遣ってほしいと、個人の遺産を寄付することなどがあるが、企業の場合も同様に、寄付をする。その際、匿名を条件として、電力会社の寄付だとわからないようにすることも可能だ。
多額の寄付金を原発立地自治体に支出していたと、広告宣伝費をもらわないNHKが報道していた。他産業ならば、企業利益のなかから寄付をする。賄賂性がなければ問題はないが、電力会社の場合は、これらの寄付も原価に参入され、電気料金を嵩上げすることに結びつく。
もうひとつ、子会社の問題がある。東京都が被災地の瓦礫処理を強行したが、処理業務を受注したのが、「東京臨海リサイクルパワー」で、東電が95・5%を出資する。瓦礫処理経費は全額国費で、130億円で受注して都が1億円の手数料を取るが、東電に国税が流れ込むシステムだ。このような東電の子会社、関連会社などのグループ会社は、公表されているだけで100社を超えている。業種は本体の電気事業をはじめ、情報通信、住宅、サービス業など多種にわたり、一大コンツェルンとなっている。
電力会社とその子会社の関係は、原発推進の原資を生み出す格好の隠れ蓑になる。電気料金の原価は、燃料費や人件費とともに、修繕費、設備関係費、委託費などにも分類されるが、ここに子会社(孫会社以下も)が介在する。民間一般では、それらの調達価格はシビアに査定するが、電力会社と子会社では、ユルユルの関係となる。総括原価方式なので、電力会社は調達価格には拘りがないからだ。有識者会議の報告書では、「複数の調達先があるものについては、入札等を行うことを原則とし」と、指摘する。原発推進費は、ここからも流出する。
● カネの力と政治の力
原発推進の主たる資金源は電気料金なのだが、公共料金なので各種の規制がある。でも、社会一般の規制とは様相が違っている。社会的な規制を取りはずにことが自由化だと解するが、電力の規制は、原発を推進するためにあるようだ。その結果、規制を取り外す電力の自由化は、原発推進にくさびを打つことになる。
他に競争者がいない営業地域の独占、発電と送配電の一体所有、そして、総括原価方式に守られた電気料金制度が、それらの規制となるだろう。それは、世界有数の高い電気料金に結びつき、電力会社に原発推進のために資金を与え、原子力ムラに還流させるカネ生み出すことになる。
金曜日の夕刻となると、首相官邸前には「再稼働反対」の声が響きわたり、回を追うごとに参加者が増えている。あまりの人数のためか、統制がとれないことを恐れた主催者が、「10万人集まっても原発は止められない」という発言をした。そうなのだろうか。官邸前は言葉だけの抗議だが、大飯原発の現地では、少し様相が違っている。
団体の動員ではないひとり一人が、地元の福井県、そして全国から集い、非暴力の果敢な直接行動を展開した。地元の会社員、尼寺の副住職、商店の主人、そして漁民など、これまで運動にほとんどかかわらなかった人たちが、ひとりまたひとりと加わりはじめている。官邸前も同じだ。子どもの手を引いた親子ずれ、若いカップル、勤め帰りのサラリーマン、商店の親父さん、工場労働者など、これまでは考えられなかったひとたちが、その環に加わっている。社会運動をつづけてこられた方も、政党関係者の姿もそこにある。
注目すべきは、これらの運動がどう政治と結びつくかになる。今秋から冬には国会が解散されるようだが、来年秋には衆議院議員の任期が切れるので必ず選挙がある。それに同じく来年七月には参議院選挙もある。でも、国民の意思の行方が、選挙となるとどうなるのか、心配の種は尽きない。
目ざとい政治勢力は、消費増税反対を掲げるとともに、再稼働反対も言い出している。政治家(候補者)の個別の発言もそうだが、マニュフェストなるものもメッキがはげた。主張を額面どおりには信じないはずだ。それに、原子力ムラの住民の根幹となる官僚はしたたかで、選挙結果はどこ吹く風だ。マスメディアを先兵として、国民の意思をさっさと変えてしまう。
原発推進、再稼働を強行するのは、そこにカネが介在するからで、このカネを断ち切ることが意味を持つはずだ。原発推進者とどう対峙するかが重要となる。地域住民が原発の稼働を容認するのは、もっぱら雇用の確保と、原発労働者が落とすカネに期待するからだ。
あまり述べたくないのだが、これからは「廃炉ビジネス」が意味を持つだろう。「除染ビジネス」はメッキが剥がれてきたが、こちらのビジネスはこれからだ。気の遠くなるような年月と、これも想像を超えるカネが必要となる。廃炉作業従事者の被曝が憂慮されるが、「除染ビジネス」よりは歓迎されていいはずだ。
原発の再稼働を阻止し、原発推進政策を改めさせるには、国民の力による政治の変革ととともに、原子力ムラに還流するカネの根を断ち切ることにある。それは、電気料金制度を白日の下に晒し、総括原価方式を廃止させることが第一歩となるはずだ。
2012年10月24日(水)08時13分 この記事のURL 未分類
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