08. 2012年2月23日 18:24:24
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http://takumiuna.makusta.jp/e167422.html 震災がれき広域処理は問題の山 環境総合研・池田副所長に聞く============================================================= 野田政権が復興庁の発足を機に、宮城、岩手両県で発生した震災がれきの 広域処理キャンペーンを一段と強力に推進し始めた。旗振り役の環境省は 「がれきは安全」「復興の足かせになっている」と受け入れを迫るが、ほか に選択肢はないのだろうか。「広域処理は必要性、妥当性、正当性の観点 から問題」と主張する環境専門シンクタンク「環境総合研究所」(東京) の池田こみち副所長に聞いた。
野田佳彦首相は、復興庁がスタートした10日の記者会見で、今後の復旧 復興の重要課題として (1)住宅再建・高台移転 (2)がれきの広域処理 (3)雇用の確保 (4)被災者の孤立防止と心のケア (5)原発事故避難者の帰還支援−の5項目を挙げた。 がれきについては「安全ながれきを全国で分かち合って処理する広域処理が不可欠だ」 と力を込めた。 池田氏は真っ先に、政府の言う「復興の足かせ論」に疑問を投げかける。 「被災地に何度も足を運んでいるが、『がれきがあるから復興が進まない』 という話は聞かない。被災地では、住宅再建や雇用の確保、原発事故の補償を 求める声が圧倒的だ。がれきは津波被害を受けた沿岸部に積まれるケースが 多いが、そこに街を再建するかはまだ決まっていない。高台移転には、沿岸部 のがれきは全く障害にならない。がれきが復興の妨げになっているかのような 論調は、国民に情緒的な圧力を加えているだけだ」 次に広域処理の妥当性だ。池田氏は環境・安全面と、経済的、社会的な観点 からの議論を促す。 環境・安全面は住民が最も心配している点だ。環境省の広域処理ガイドラインでは、 被災地からの搬出から受け入れまでに複数回、放射線量を測定することになっているが、 いずれもサンプル調査。その精度については、同省も「サンプルを採取しなかった 部分で、放射線量が高いところがないとは言えない」(適正処理・不法投棄対策室) と認めざるを得ない。 「測定を繰り返して安全性を強調しているが、実は非科学的だ。がれきを全部測る ことができないのは分かるが、公表されているデータでは、がれきのボリューム、 採取方法、なぜサンプルが全体の線量を代表できるかの根拠などが不明だ」 焼却炉の排ガス測定もサンプル調査だ。 「環境省は、4時間程度採取した排ガスを測定する方法を示しているが、サンプル量 が少なすぎるのではないか。サンプル量を増やして定量下限値を下げ、実際に どれくらい出ているかを把握しないと、汚染の程度は分からない」 池田氏は、焼却灰の埋め立て処分にも首をかしげる。放射性セシウムが1キロ当たり 8000ベクレル以下であれば「管理型最終処分場」に埋め立てる計画だ。 「管理型の浸出水処理施設ではセシウムは除去できない。灰を普通のごみと同じように 埋め立てる基準が8000ベクレルでは高すぎる。どうしても埋め立てるのであれば、 コンクリート製の仕切りで厳重に管理する『遮断型最終処分場』で保管するしかない」 問題は放射性物質に限らない。池田氏は津波の影響にも警鐘を鳴らす。 「津波によって流されたがれきは、油類や農薬類などの有害物質を吸収している。 日本の焼却炉における排ガス規制は、ヨーロッパに比べて非常に甘い。規制されて いるのは窒素酸化物、ダイオキシン類など5項目にすぎず、重金属などは野放しだ。 こうした未規制の物質が拡散する恐れがある」 池田氏は「経済的妥当性も検討されていない」とあきれ顔だ。 「放射性レベルが低いというのであれば、がれき処理専用の仮設焼却炉を現地に 作って処理するのが最も効率的だ。雇用も生まれる。高い輸送費をかけて 西日本まで持って行くのは、ばかげている」 「東京都が既に協力しているが、問題は山積している。都心部で新たに処分場を 確保するのは困難。焼却炉の維持管理や更新にもコストがかかる。できるだけ 延命されなければならないのに、震災がれきを燃やしたり、埋め立てたりすれば、 焼却炉や最終処分場の寿命は確実に縮まる」 妥当性の3点目が社会的側面だ。広域処理をめぐっては、被災地と被災地以外で “対立構図”ができつつある。 「被災地の人たちは、普段の生活ではがれきのことをあまり気に掛けていなく ても、全国で『受け入れる、受け入れない』という騒ぎになれば、反対する 住民への不信感が募るだろう。受け入れを迫られる住民たちも、本当は被災地を サポートしたいのに信頼できる情報もない中で心の余裕を失う。こうした対立 構図をつくっているのは国だ」 意思決定、政策立案プロセスの正当性はどうか。 環境省は関係省庁との検討を経て、昨年4月8日には、宮城、岩手、福島の 被災3県と沖縄県を除く各都道府県に受け入れの協力を要請している。同省の 有識者会議「災害廃棄物安全評価検討会」は一連の非公開会合で、広域処理の 方針にお墨付きを与えてきた。 「『広域処理』ありきの進め方だ。環境省は自治体や国民を蚊帳の外に置いた まま、一方的にものごとを決めている。とても正当な手続きとは言えない」 では、どうするか。 首相は、冒頭に紹介した会見の中で「被災地の処理能力には限界がある。 岩手県では通常の11年分、宮城県では19年分だ」と述べている。がれきの量は、 宮城県が約1569万トン、岩手県が約476万トン。2009年度の年間量で 割れば、首相が言う通りの数字になる。 だが、実際に広域処理される量はずっと少ない。現段階で県が把握しているのは、 宮城が4年分の約344万トン、岩手が1・2年分の57万トン。 しかも、宮城県の広域処理分には、仙台市は含まれていない。同市が市内 3カ所に仮設焼却炉を設置し、4年分の約135万トンを13年夏までに自前で 処理するからだ。環境省と岩手、宮城両県が処分目標に据える14年3月末より も半年以上も早い。 池田氏はこう提言する。 「現地で処理する場合、焼却しない場合などそれぞれの事情に応じて選択できる 多様な代替案を早急に検討すべきだ。汚染が少なく分別が徹底されていれば、 木材などはチップにして燃料にすることもできる。広域処理する場合でも期間は 1年のみとし、輸送距離の短い範囲でしっかりした施設を持つところに限定する。 その間にリサイクルを促進したり、専用の仮設焼却炉を増設したりすることが 考えられる」 =================================================== |