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<小中高副読本>こりない文科省/原発事故後も “放射線は安全”
「しんぶん赤旗・日曜版」 2012年1月29日号 11面
福島第1原発事故への反省もないまま、文部科学省は新たな教材を作りました。「放射線はもともと身近にあるものだから安全だ」−。そんな誤った認識を児童・生徒に与えかねない内容です。一方、原発の負の側面を教える記述へと改める教科書会社も出ています。 本吉真希記者
問題の教材は文科省発行の「放射線等に関する副読本」。小中高校それぞれに対応した生徒用の教材と教師用の「解説編」が作られています。
文科省はこれまで原子力発電の「安全神話」をふりまく副読本を小中学校で使わせていました。しかし昨年4月、日本共産党の宮本岳志衆院議員に指摘され、高木義明文科相(当時)が「見直し」を約束していました。
ところが、昨年10月に発行された新しい副読本作成の委託先は、前回の副読本を普及していた日本原子力文化振興財団。同財団は、原子力業界団体が1969年につくった広報団体で、理事長は日本経団連の資源・エネルギー対策委員会の元委員長、秋元勇巳氏。副理事長は中部電力顧問の伊藤隆彦氏、理事には東京電力社長の西沢俊夫氏(いずれも2011年10月5日現在)が名を連ねるなど、電力業界と深くつながっています。
新しい副読本の委託先について問われた中川正春文科相(当時)は「委託先は適当ではなかった」(11年12月9日)と釈明したものの、使用を継続する考えを示しています。一方、原発事故後、多くの教科書会社が今年4月から使われる小中高校の教科書記述について、訂正申請を文科省に提出。「『安全神話』は覆された」などと加筆される教科書もあります。(表)
このように、原発の危険性を伝えようとする流れが生まれている中で、新たな副読本は「放射線は身近にあるもの」と繰り返し、内部被ばくなどの危険性を過小評価する異質な内容です。
例えば、小学生版−。「放射線は、宇宙や地面、空気、そして食べ物からも出ています」「光と同じように、放射線も身の回りにあります」と記載。教師用解説編では、食べ物に含まれるカリウムには放射性物質であるカリウム40が含まれ、「カリウムは、人間の体にも必要不可欠なもの」だと補足しています。
中学生版では「ココがポイント」の項目で「人類は、放射線が存在する中で生まれ、進化してきました。私たちは日常生活でも放射線を受けています」と説きます。
高校生版のコラムでは「リスク(危険)を完全に無くしてベネフィット(便益)だけを得ることは不可能です」とした上で、医療分野での放射線の危険と便益の関係性を引き合いに出しています。
「教材は原発事故の反省がまるで感じられない」と批判する野口邦和・福島大学客員教授。「人体が受ける放射線はできるだけ低くするのが、人体を守る原則です。自然界の放射線は避けられないし、健康を守るために医療で使用する最低限の被ばくもやむを得ないことです。しかし、これと原発事故による放射線は全く違い、不要で有害な放射線は低くするのが鉄則です」と指摘します。
各地で批判
新しい副読本をもとに横浜市がリーフレット、福島県が指導資料を作成。佐賀や栃木など各県で教師の研修会を実施しています。これに対し、各地で保護者や教職員が教育委員会に申し入れを行うなど、副読本を授業で使わないよう求める取り組みが始まっています。
副読本について「先も見えず不安な中で生活している私たちには、あり得ない話」だと怒りをあらわにする福島県二本松市の山田美子さん(32)。3人の子がいます。「『放射線は身近にあるものだから安全』だといわれたら、『危険だから』と友達が福島を離れている現実との差に子どもは混乱すると思います。放射線のリスクをきちんと伝え、事故を風化させないものを作ってほしい」
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教科書 現実踏まえ加筆も
●A社 高校現代社会
「原子力発電の『安全神話』は根底から覆された」などと加筆
●B社 中学公民
「いちど事故がおこれば大きな被害が生じる危険性がある」を「いちど事故がおこればとり返しのつかない大きな被害が生じる」に変更
●C社 中学技術・家庭
「原子炉は、コンクリートなどでできた何重もの厚い壁で守られています」を削除
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<参照>
宮本議員(共産)がただす:小中学校に政府が副読本/子どもに原発“安全神話”/「大津波でも大丈夫」
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