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野田佳彦首相は9月13日の衆参両院の本会議で所信表明演説を行った。その冒頭、勝海舟の語録「氷川清話」から引用して「正心誠意」という言葉を使った。
最初から「正心誠意」が感じられない
「政治に求められるのは、いつの世も『正心誠意』の4文字があるのみです。意を誠にして、心を正す。私は国民のみなさまの声に耳を傾けながら、自らの心を正し、政治家としての良心に忠実に、大震災がもたらした国難に立ち向かう重責を全力で果たしていく決意です」
こう語り、さらに「連立与党である国民新党始め、各党、各会派、そして国民のみなさまのご理解とご協力を切にお願い申し上げます」と続けた。
ところが、「正心誠意」で理解を求めたいと所信表明しながら、臨時国会は衆議院2日、参議院2日とあまりにも短い会期を提示した。これは「正心誠意」を明らかに裏切っているのではないか。
なぜこんなに短いのか。それは野田内閣には「すねに傷を持つ」閣僚が少なくないからだ。野党からの責任追及を逃れるため、臨時国会の会期を短くしたとしか考えられない。
どじょうは危険を感じるとただちに泥の中に潜るというが、正心誠意に反して、臨時国会の短い会期は「どじょう首相」の本心の表れではないか。
当然のことながら野党からは強い反発があり、結局、臨時国会の会期は9月30日まで14日間延長することになった。
野田首相は見事に何も述べていない
所信表明演説の全文を改めて読んで、何よりも驚いたのは「野田首相は見事に何も述べていない」ということだ。
2009年に政権交代を果たした民主党の鳩山由紀夫氏は、同年10月に行った所信表明演説で民主党初の所信を力強く述べた。「戦後行政の大掃除」を掲げて行政の組織や事業の見直し、税金の無駄遣いを徹底的に排除するとした。また、2020年には1990年比で温室効果ガスを25%削減すると述べ、後に「普天間の米軍基地を最低でも県外へ移設」と語ったように沖縄の負担軽減についても言及した。鳩山氏は多くの夢を語った。だが、その夢はすべて裏切られた。
菅直人氏は、自らの内閣を「奇兵隊内閣」と呼んだ。幕末の志士・高杉晋作の奇兵隊になぞらえ、自民党内閣ではとてもできなかった思い切った改革を実行するという強い夢を示した。だが、菅氏も結果的には何もできなかった。
それに対して野田首相は、何の抱負も述べていない。たとえば、現在の重大な問題の一つは産業の空洞化をどう克服し、日本経済をどう回復させるかであるが、それについて何一つ具体的な政策を示していない。
原発問題についても、「『脱原発』と『推進』という二項対立で捉えるのは不毛です」とうたっている。この指摘自体は間違っていないが、では原子力発電をどこへ導くのか、具体的には何も語っていない。いったい野田首相は原子力発電をどうしようとしているのか。
ただ一つ明快なのは「増税する」こと
日米関係をぎくしゃくさせている最大の課題は米軍普天間基地の移設問題である。これについても、所信表明演説を読むとだれもが戸惑いや怒りを覚えるのではないかと思えるほど曖昧な内容だ。しかも、次のようにほんのわずかしか語っていない。
「普天間飛行場の移設問題については、日米合意を踏まえつつ、普天間飛行場の固定化を回避し沖縄の負担軽減を図るべく、沖縄のみなさまに誠実に説明し理解を求めながら、全力で取り組みます。また、沖縄の振興についても、積極的に取り組みます」
いったい野田首相は、米軍普天間基地を日米合意の通り名護市辺野古へ移設するのか、それとも県外へ移設するのか。おそらく普天間基地問題については、野田首相は十分に理解できていないのではないか。
この所信表明演説で、ただ一つ明快なのは次の箇所である。
「復旧・復興のための財源は、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担を分かち合うことが基本です。まずは歳出の削減、国有財産の売却、公務員人件費の見直しなどで財源を捻出する努力を行います。その上で時限的な税制措置について、現下の経済状況を十分に見極めつつ、具体的な税目や期間、年度ごとの規模などについての複数の選択肢を多角的に検討します」
つまり、東日本大震災からの復旧・復興のために「増税する」と言っているのである。
所信表明演説は「官僚が書いたガラス細工」
東日本大震災の復旧・復興のためには、当初5年間でおよそ19兆円の財源が必要だとされている。当然ながら、この19兆円の多くは復興債に依存することになるはずだが、その復興債についてはひと言も触れていない。
おそらく、この文面を考えたのは財務省官僚であろう。財務官僚は増税について一生懸命に書くあまり、復興債のことをつい忘れてしまったのではないか。
これでは、野田首相は「財務省べったり」と言われても仕方がない。
もともと所信表明というのは、各省庁の官僚が書いた原稿をつなぎ合わせたものである。私はかつて橋本龍太郎元首相に所信表明演説の原稿を事前に見せられて感想を聞かれたことがある。
私は「官僚用語ばかりで、きわめてわかりにくい。こんな回りくどい内容ではなく、橋本首相がどんどん朱を入れたほうがいい」と助言した。
しかし、橋本首相は「これは各省庁の官僚が書いた、いわばガラス細工だ。そこへ私が思い切って朱を入れようものなら、無惨にも壊れてしまう。そういうものです」と答えた。
だから、おそらく野田首相も、官僚の書いた原稿には朱を入れていないだろう。それより何より、野田首相は所信表明演説をする前にきちんと原稿を読んだのだろうか。それさえも疑わしく思えてくる。
こんな所信表明を聞くのは初めて
もし原稿をきちんと読んでいれば、「こういうことをやりたい」「こういうことも言いたい」という自分の意いが出てくるはずだ。それが何もないのである。へたな文章でもよい。自分の言葉で書くべきなのである。
鳩山・菅両内閣は、はっきり言って、失敗した。その失敗を、野田首相はどのように乗り越えようとしているのか。そして、この国をどのように導こうとしているのか。どこを変えようとしているのか。所信表明の中には、それらがまったく示されていない。
こんなに見事に首相の抱負や意志や趣旨が抜け落ちた所信表明を聞くのは初めてである。何もメッセージがないのだから、期待のしようがない。
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