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2011年7月29日 (金)
「原点への回帰」を強調した小沢一郎民主党元代表
民主党の小沢一郎元代表が7月27日、自由報道協会主催の記者会見に出席した。記者会見に先立って、オランダの政治学者であるカレル・ヴァン・ウォルフレン氏との対談も公開中継された。
ウォルフレン氏は本ブログでも何度も取り上げている政治学者で、日本政治の深層を鋭く抉り出してきた気鋭の学者である。
“Character Assassination”と表現される「人物破壊工作」が、欧米では政敵を攻撃するために用いられることを指摘し、日本では小沢一郎元代表に対して、異常に激しい人物破壊工作が徹底して長期間継続して実行されてきたことを著書で明らかにされている。
菅直人氏が内閣不信任決議案可決の瀬戸際に追い込まれたのが6月2日である。間もなく2ヵ月の時間が過ぎ去ろうとしている。菅直人氏はこの決議案上程に際して、民主党代議士会で辞意を表明したが、不信任決議案が否決されると態度を一変させ、いまも総理の椅子にしがみついている。
菅直人氏は手を変え品を変え、総理の椅子にしがみつくための小手先の策を弄しているが、主権者国民は菅直人氏の言動を冷ややかな視線で見つめている。
主権者国民の多数は「脱原発」に賛成の考えを有しているが、菅直人氏に対する支持は皆無に近い状態になっている。本当に「脱原発」を推進しようとするなら、少なくとも電力会社には、原子力損害賠償法の規定に沿って、応分の責任を求めなくてはならない。
東京電力が法律の規定に沿って応分の責任を負うことになると、東電は100%破たんする。東電を法的整理しなければならなくなる。菅政権は法律の規定だからこれを遵守するのではなく、東電を守らねばならないから法律を変えてしまい、過去の事案に改正した法律で対応するという、法治国家の根幹を揺るがす行動を平然と取り続けている。
電力会社は、今回のような事故を引き起こせば会社が破たんする現実を突き付けられれば、原発事業に対して、少しはまともな対応を示すことになる。事故を発生した際の責任が重ければ、巨大リスクを伴う原発事業から撤退するとの判断も生まれて来るのである。
このような当然の施策も取らずに、「脱原発」を叫んでみたところで、誰も信用しないのだ。
菅直人氏は退陣の3条件を掲げた。この条件が整えば、首相を辞任する以外に道はない。憲法に保障された権利だとして解散権を主張しているが、この期に及んでの解散は政治の私物化以外の何者でもない。
小沢元代表は、菅内閣に対する内閣不信任決議案の再提出はあり得るとの見解を示したが、これは西岡武夫参議院議長の見解とも一致する。菅直人氏がこれ以上、総理の椅子にしがみつく場合には、内閣主信任決議案を再提出することが強く求められる。
主権者国民はポスト菅体制を真剣に考察しなければならない。
岡田克也氏はこの政局を党内政局に利用する姑息な姿勢を示している。天下の大道、正道を踏み外し、ひたすら自己の政治的な利害だけを優先して行動するこの人物が民主党幹事長職に留まっていることが、日本政治を腐らせているひとつの原因になっている。
菅直人氏の退陣問題と民主党マニフェストを絡ませるべきでない。野党との交渉においては、赤字国債法案と首相辞任を交換条件にすればよいわけで、赤字国債法案と民主党マニフェストの放棄とは交換条件にならない。
なぜなら、民主党マニフェストは、主権者である国民が2009年8月総選挙において、今後の日本政治の基本方針として採用したという、極めて重大な意味を有しているからである。2009年8月の主権者国民の選択はいまも効力を有しており、それを一介の幹事長が葬り去ることは明らかな越権行為である。
与党が首相辞任を確約し、それでも野党がマニフェストを放棄しないなら赤字国債法案を通さないと主張するなら、そのまま放置すればよいのだ。赤字国債法案が可決されなければ政府機能はマヒする。そのとき、マヒの原因が国民から政権を委ねられていない野党が、与党がマニフェストを放棄しないから赤字国債法案を通さないことにあると主権者国民が知れば、非難の矛先は必ず野党である自民党と公明党に向かう。
与野党協議では、筋の通った正統性のある対応を示すべきであるのに、岡田克也氏は正道を踏み外し、個利個略で動く。幹事長職にもっともふさわしくない人物である。
小沢元代表は民主党代表選について、「原点回帰」を強く主張した。6月16日に開かれた「小沢一郎議員を支援する会」と「日本一新の会」が主催するシンポジウム「小沢一郎と新しい日本の政治」に講演者の一人として出席させていただいた際、私は「日本の新しい政治の考え方」と題して「原点回帰」の重要性を強く訴えた。
その内容は、本ブログ6月18日付記事
「シンポジウム「小沢一郎と新しい日本の政治」開催」
に記述しているので、ぜひご高覧賜りたい。
その際、私は三つの原点回帰を提示した。民主主義の原点への回帰、政権公約の原点への回帰、そして、日本政治構造刷新の重要課題への原点回帰である。
民主主義の原点への回帰とは、主権者国民からの信託のない政権に正統性はないということだ。この点は菅直人氏も認識はしているはずだ。だからこそ、2010年7月参院選を政権への信託を問う選挙と位置付けたのだ。結果は、「不信任」だった。したがって、この時点で菅直人氏は辞任しなければならなかったのだ。このことは本人が一番よく知っていることだろう。
政権公約の原点への回帰も重要である。民主党政権は、天下りなどの政府支出の無駄を排除して国民の生活を第一とする政策を公約として掲げた。子ども手当、高校授業料無償化、高速道路料金無料化、農家個別所得補償などだ。これらの政策方針を主権者国民は支持している。
十分でなかったのは天下り根絶などの政府支出の無駄排除である。
この公約の原点に立ち帰ることが重要である。
日本政治構造刷新の重要課題への原点回帰とは、米官業政電の利権複合体=悪徳ペンタゴンが支配する日本政治構造を刷新することだ。
@米国の言いなりになる政治
A官僚が支配する政治
B大資本と政治屋が癒着する政治
を根絶し、
主権者国民が支配する政治=国民の生活が第一の政治
を確立することこそ、政権交代の実現によって達成すべき目標である。
政権交代は手段であって目標ではない。政権交代の実現によって、日本政治の構造を変革することが目標なのだ。
こうした視点に立って、ポスト菅体制を考察しなければならない。
ネット上の世論調査では、次期首相候補ナンバーワンは小沢一郎氏である。主権者国民は小沢一郎政権の実現を待望している。だが、直ちに小沢一郎氏が前面に登場するのかどうかは、小沢元代表の戦術、戦力に依るものであるから、慎重に状況を見守る必要がある。
何よりも重要なことは、民主党の実権を「正統民主党」が「悪徳民主党」から奪還することである。そのためには、民主党内の小沢一郎氏グループと鳩山由紀夫氏グループが結束し、「正統民主党」が民主党の過半数を掌握することである。
不正な代表選が行われないように、代表選前に民主党執行部を交代することが強く求められる。両院議員総会を開催して、代表選の前に党執行部を交代させ、公正な代表選を行うことが求められている。
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