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『月刊日本』7月号
亡国に至るを知らざれば、これ即ち亡国(下)
本誌主幹 南丘喜八郎
「亡国に至るを知らざれば、これ即ち亡国」 本誌主幹 南丘喜八郎 『月刊日本』7月号
http://www.asyura2.com/11/senkyo116/msg/692.html より続く……
この頃、娘の身売りも日常茶飯事になり、『日本農業年報』(昭和六年)には「山形県下で借金で首が廻らず、娘を人身御供に奉って金に換える者が四、五百人。最上郡西小国村では十五歳以上二十四歳未満の娘が合計四百六十七名の内、売られていった者は百十名の二十三パーセント、みな借金の犠牲だ」と記されている。
一君万民、君民共治の国家改造を志した皇道派青年将校は、五・一五事件や二・二六事件で決起したが、彼らの部下には、凶作に苦しむ東北農民の兵が多数いた。青年将校は娘を身売りせざるを得ない東北の惨状を深く憂えた。
「白河以北一山百文」と蔑まれた東北地方に、明治維新後初めて光を当てたのは平民宰相原敬だった。東北に複数の旧制高校を設置し、鉄道を開設するなど、社会資本を積極的に投下した。だが暗殺され、東北再生の夢は断たれた。
敗戦後、我が国は驚異的な経済復興を成し遂げた。それは、独立国家としての矜持を忘却して、外交・安全保障を米国に委ね、経済一辺倒に徹した結果だった。昭和三十年代からほぼ二十年間、欧米を上回る経済成長を続け、一気に国民生産高世界第二の経済大国に躍り出た。
この戦後の高度成長を支えたのも、東北地方から集団就職で都会に就職した農家出身の若い労働力だった。
「金の卵」と持て囃されたが、就職先は下請けの零細企業か、大企業の臨時工だった。こうした高度成長の陰で農業の担い手を失った農家は衰退の一途を辿り、農村共同体は決定的を崩壊の時を迎えた。建設ラッシュに沸く大都会で、ビルや高速道路建設の下請けで働く出稼ぎ労働者は主に東北出身の農業従事者だったのだ。
こうして東北地方は日本が近代化を実現する過程で、資源、人材を供給し続けてきた。また福島は戊辰戦争で官軍から残酷な仕打ちを受けたが、福島原発は経済成長に必要な膨大な電力を提供してきたことも、想起する必要がある。
独立自尊の衿持を棄てて獲得した経済大国の地位
発災以来三箇月余が経過したが、政府は迅速・有効・的確な対策を講ずること能わず、拱手傍観を続けている。
これは単に、時の総理の政治家としての資質の問題ではない。国家機能が決定的に衰退したことに起因する。
原因の一つは、戦前戦後を通じて、薩長に源流を持つ政治家・官僚が、人材面でも社会的インフラの面でも、東北地方を終始犠牲にし続けた結果、国土の均衡ある発展が阻害され、国家機能が脆弱化していった。
もう一つは、戦後半世紀余の間、米国による巧妙な日本弱体化政策が功を奏し、日本人が国家意識を忘却、自らの欲望充足だけを目的とする、単なる欲望主体に堕してしまったことだ。独立自尊の拾拝をかなぐり棄て、国家の安全保障を他国に委ね、只管、経済成長に突き進んだ。そこには独立国家としての矜持も誇りも見出だすことは出来ない。
「国家」より「社会」、「公」より「私」を重んじた我が国の戦後思想は、国家的危機に際して、如何に無力であるかを、今回の東日本大震災は如実に示した。
ここで想起すべきは、戦後、米国が占領政策の第一に掲げた、我が国の徹底的弱体化である。占領政策の究極の目的は「日本国ガ再ビ米国ノ脅威トナリ又ハ世界ノ平和及ビ安全ノ脅威トナラザルコトヲ確実ニスルコト」である。
今日に至るも後生大事に戴いている「日本国憲法」「日米安保条約」は、この米国の究極の目的を達成する手段にすぎないこと、もう我々は気づいてもいい筈である。
大震災を大胆な国家改造の契機にせよ
今回の大震災は、こうした我が国の近代化そのものに鉄鎚を下した。我々は、今回の大震災を我が国の内なる敵との
「近代化百年戦争」における決定的な敗北と受け止めるべきではないのか。
我が国は肇国(ちょうこく)以来、こうした敗戦のショックを真正面から受け止め、国家体制の抜本的な変革の契機としてきた。
六六三年の唐・新羅の連合軍に惨敗した白村江の戦い、幕末の黒船来航、大東亜戦争の敗北などを想起すればよい。
我々の先人たちは敗戦に際し、容赦なく自らの欠陥を秩挟し、大胆不敵に国家改造を成し遂げてきた。白村江の敗北を契機に、唐の律令制度を導入、中央集権国家を作り上げた。幕末の黒船来航を契機に鎖国政策を大胆に切換え、米欧の先進文化を積極果敢に取り入れた。その結果、列強の植民地化を阻止し、世界五大国の一角を占める地位を獲得した。
この東日本大震災という近代化戦争の敗北を契機に、我々は戦後体制を大胆に変革すべきである。誇りある独立国家として日本国憲法を大胆に改廃し、安易な米欧化を峻拒して、日本国を再興しなければならない。加えて、国家機能を強化するため、崩壊の危機に直面する共同体・社稷の再建を図らねばならない。
「亡国に至るを知らざれば、これ即ち亡国」なのである。
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