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入学式や卒業式で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱するよう、教職員に求めた東京都教育委員会の通達は、合理性があり、合憲である――。
東京高裁はそう判断し、「通達は違憲」とした1審・東京地裁判決を取り消した。
日の丸・君が代は国旗・国歌として、多くの国民に定着している。自国はもとより、他国の国旗や国歌に敬意を表すのは、国際社会で当然のマナーである。高裁判決は妥当な司法判断と言えよう。
この訴訟で、原告の都立高校の教師らは「懲戒処分までして、日の丸・君が代を強制するのは、憲法で保障された思想・良心の自由を侵害する」と主張した。
2006年の1審判決は「教職員に起立や斉唱の義務はなく、拒否しても処分されるべきでない」と、原告の訴えを認めていた。
これに対し高裁判決は、「国旗に対して起立することは、特定の思想を外部に表明する行為ではないから、それを命じても、思想・良心の自由を侵害することにはならない」と指摘した。
理由の一つに、国旗掲揚や国歌斉唱が、学校の入学式や卒業式だけでなく、スポーツ観戦でも一般に行われている事実を挙げた。納得する人は多いのではないか。
学習指導要領は、教師に対し、国旗の掲揚と国歌の斉唱を指導するよう定めている。しかし、それが学校で十分に守られていなかったために出されたのが、都教委の通達だった。
教師が個人的に様々な歴史観や世界観を持つのは構わない。だが、指導要領に反してもいいということにはなるまい。
国旗・国歌を巡っては、君が代のピアノ伴奏を拒否した教師が懲戒処分の取り消しを求めた訴訟で、最高裁が07年に「伴奏を命じる校長の職務命令は、特定の思想を強制するものではない」と、合憲の判断を示している。
今回の高裁判決も同じ流れにあると言えるだろう。最高裁判決以降、同種の訴訟では、教師側の敗訴が続いている。
かつて、一部の教職員組合がイデオロギー的立場に基づいて、「反国旗・国歌」運動を繰り広げ、教育現場は混乱した。
だが、国旗・国歌法が制定され、今やすべての公立学校で、国旗が掲揚され、国歌が斉唱されている。起立や斉唱を拒否する教師の数も年々、減少傾向にある。
子どもの手本となるべき教師が、入学・卒業式を厳粛な雰囲気で行うのは当たり前のことだ。
(2011年1月29日02時04分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110128-OYT1T01044.htm
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