http://www.asyura2.com/11/nihon30/msg/323.html
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名古屋高裁は2005年に、犯行に使われたとされる農薬はニッカリンTとされてきたが、じつはそうではなかったという合理的な疑いが生じたとして、名張毒葡萄酒事件の再審開始決定を出した。
ところが、検察の意義申し立てによって2006年、名古屋高裁(門野裁判長)は再審開始決定を取り消した。被告人が有罪である事に合理的な疑義を生じさせるだけでは不十分で、被告人が無罪を100%証明しない限り再審開始は認めないという、「疑わしきは被告人に有利に」という刑事裁判の原則を投げ捨てたひどいものだった。
弁護側の特別抗告を受けた最高裁はさすがに名古屋高裁のこの取り消し決定を認めず、「科学的知見に基づく検討をしたとは言えず、その推論過程に誤りがある疑いがある」として、名古屋高裁に差し戻した。
その差し戻し審において名古屋高裁はまたもこの5月25日、「疑わしきは被告人に有利に」という刑事裁判の原則をかなぐり捨て、再審開始を破棄したのだ!不当きわまりない暴挙と言うほかない!
弁護団は当然ながら最高裁にただちに特別抗告することに決めた。
毒ぶどう酒事件 再審認めず 投稿者 gataro-clone
時論公論 「“再審の壁” 名張毒ぶどう酒事件」 投稿者 gataro-clone
なお、5月26日のTBS「報道特集」が原則的立場で素晴らしい取材をしていたのだが、残念にも録画できなかった。
<参照>
クローズアップ現代 動画 「揺らぐ死刑判決 検証・名張毒ぶどう酒事件」
10年04月08日放送分
http://veohdownload.blog37.fc2.com/blog-entry-4889.html
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012052602000131.html
【社説】名張毒ぶどう酒事件 再審認めず “疑わしきは罰する”なのか
2012年5月26日
名張毒ぶどう酒事件の再審を認めなかった決定には、深い疑問が残る。証拠を並べてなお分からないのなら、推定無罪の原則に従うべきではないか。
奥西勝死刑囚を最初に裁いたのは津地裁だった。
裁判員になって法廷にのぞんだつもりで証拠を見てみると、こんなふうになる。
◆裁判員の目で見れば
▽ぶどう酒の王冠に付いた歯形は、鑑定では誰のものかはっきり分からない。
▽その王冠自体、事件当時のものとは違うらしい。
▽農薬を混入する機会は、奥西死刑囚以外の人にもあった。
▽「自白」はある。動機は妻と愛人の三角関係を清算するためという(その後、全面否認)。
▽自白にあった、農薬を入れてきた竹筒は見つかっていない。
証拠をこうしてずらりと並べてみると、裁判員はその中身の乏しさ、あいまいさに、もちろん気づくだろう。
いくら、捜査段階の詳細な「自白」があろうとも、有罪にはできまい。
合理性をもって、彼以外に真犯人はありえないとは言えない。ましてや、死刑事件でもある。一審の津地裁は、当然ながら無罪判決を下した。
捜査が甘かったのである。当時は、まだ自白が「証拠の女王」などと呼ばれていた。自白は極めて重視されていた。
だが、二審の名古屋高裁は一転、有罪とした。王冠について新たな鑑定をしたが決定的な知見はなく、一審とほぼ同じ証拠を見て、有罪とした。
迷走の始まりである。
死刑囚は判決の前の日、前祝いの赤飯を食べた。家庭で最後に口にした母親の手料理となった。
死刑囚はひとりぼっちで再審の請求を繰り返した。途中からは弁護団もでき、七度目に名古屋高裁は再審の開始を認めた。
毒物について、自供したニッカリンTではなかった疑いがあるとした。何と、凶器が違っていたかもしれない、ということだ。
裁判を見直す大きなチャンスだった。しかし、扉はまた閉じられた。同じ高裁の別の部が、同じ証拠を見て検察の異議を認めた。
◆冤罪生む自白の偏重
事件から四十六年もたって、裁判は最高裁にもちこまれた。だが自ら判断せず、農薬について「科学的な検討をしたとはいえない」と言って、高裁にさし戻した。
そして、再審を開始しないという昨日の決定となる。「毒物はニッカリンTでなかったとまでは言えない」とし、検察の主張を支持した。
死刑判決以降の裁判を振り返ると、検察側の物証を弁護側が何度崩そうとしても、裁判所は結局、有罪としてきた。頼りにしたのは、いつも「自白」である。
だが、自白の偏重が数々の冤罪(えんざい)を生んできたのは、苦い歴史の教えるところだ。
刑事裁判では、検察が有罪を証明できないかぎり、無罪となる。裁く立場からみれば、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則である。
昨日の高裁の決定は、弁護側が出した証拠では検察の主張を崩せないという論法である。検察が主張していないことまで裁判官が推論し、有罪とする根拠を補強している。
これでは、まるで「疑わしきは罰する」になってはいないか。
最高裁は再審でも「疑わしきは被告人の利益に」の原則があてはまると言っている(白鳥決定)。それなのに、反対の考え方で再審の扉を閉ざしたように映る。
裁判員裁判の時代である。取り調べの可視化や、全面的な証拠の開示の必要性が叫ばれている。それは、これまでの誤った裁判の反省から出ているものである。
今回の決定は、そうした時代の要請に逆行している。毒ぶどう酒事件から半世紀余。「自白」の偏重は一体いつまで続くのか。今の基準で考え直せないか。
弁護団は特別抗告する。最高裁は今度こそ自判すべきである。
死刑囚は八十六歳。冤罪が強く疑われた帝銀事件の平沢貞通画伯のように、獄中死させることがあってはならない。
◆司法も裁かれている
私たちメディアも反省すべきことがある。自白偏重の捜査取材に寄りかかった当時の犯罪報道だ。犯人視しない報道への努力は、不断に続けているが、奥西死刑囚を犯人視して報じたという事実は消せない。
奥西死刑囚の獄中生活は、確定囚で二番目に長い。もしも死刑判決が冤罪であったのなら、それは国家の犯罪というほかはない。奥西死刑囚だけでなく、司法もまた裁かれていると考える。
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●名張弁護団声明
弁護団声明
本日,名古屋高等裁判所刑事第2部は,請求人奥西勝氏に係る名張毒ぶどう酒事件第7次再審請求の差戻し異議審につき,不当にも,検察官の異議申立を容れ,2005年(平成17年)4月5日に同高裁刑事第1部が行った再審開始決定を取り消し,本件再審請求を棄却する旨の決定を行った。
2010年(平成22年)4月5日,特別抗告審である最高裁判所第三小法廷は,再審開始を取り消した異議審決定は「科学的知見に基づく検討をしたとはいえず,その推論過程に誤りがある疑いがあ」るとの理由で本件を名古屋高裁に差し戻した。
同最高裁決定は,本件で農薬が混入された飲み残しぶどう酒とその対照用に用意されたニッカリンT入りのぶどう酒のペーパークロマト試験の結果に相違が生じていることに疑問を呈し,その相違の原因を科学的に検討することを命じたものである。これに関し,検察官は,差戻し異議審において,それまでの異議審及び特別抗告審における主張を翻し,新たな主張を展開したが,ニッカリンTの再製及びその成分分析の結果,検察官の主張は否定され,逆に弁護団の従来からの主張が裏付けられることとなった。そして,結局,本件毒物がニッカリンTであるとすれば,上記ペーパークロマト試験の結果の相違は科学的に説明できない状況に至った。この審理結果からすれば,奥西氏が当時所持していたニッカリンTを本件犯行に使用したとの確定判決の認定に合理的疑いがあることは明らかである。
ところが,本日の決定は,検察官さえ主張していない,何ら科学的根拠に基づかない推論により再審開始決定を取り消した。これは,最高裁から指摘された科学的知見に基づく検討を放棄するものであると共に,「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則も無視する不当極まりないものである。弁護団は,到底,かかる決定を受け容れることはできない。
奥西氏は,第1審において無罪判決を受けたにもかかわらず,控訴審において思いがけなく死刑判決を受け,その後,死の恐怖と孤独に耐えながら長きにわたり再審の闘いを続けてきた。そして,7年前に再審開始の決定を受け,ようやく雪冤を果たすことができると大きな期待を抱いたにもかかわらず,異議審によってこれが取り消されて大きく失望し,さらに,最高裁の差戻決定によって再度の希望を抱いたにもかかわらず,本日,再び再審開始決定が取り消されるという憂き目に遭わされている。この51年間に及ぶ審理経過は,まさに,司法が奥西氏の人生を弄んでいるとしか形容のしようがないものである。奥西氏の心中を思いやると筆舌に尽くしがたいやりきれなさと激しい怒りを禁じ得ない。
奥西氏は86歳という高齢であり,その冤罪を晴らすには1日の猶予も許されない。弁護団は,奥西氏の無実を確信するものであり,命あるうちに奥西氏を死刑台から奪還すべく,直ちに特別抗告を行い,さらなる奮闘と努力を続けることをここに誓うものである。
市民の皆様には,今後一層の御支援をお願いする次第である。
2012年(平成24年)5月25日
名張毒ぶどう酒事件弁護団
団 長 鈴 木 泉
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●日弁連HP
名張毒ぶどう酒事件第7次再審請求差戻し異議審決定についての会長声明
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2012/120525_2.html
●【名張毒ぶどう酒 名古屋高裁決定要旨】
http://www.chunichi.co.jp/ee/feature/nabari/index.html
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