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アジア
韓国総選挙、与野党とも現職にNO!
政界でも進む猛烈な世代交代
2012.03.19(月)
玉置 直司:プロフィール
2012年の韓国は「政治の年」である。韓国の大統領は任期が5年、国会議員は任期が4年だが、今年はこの2つの大きな選挙が同じ年に実施されるからだ。20年に1度の「政治決戦」の年だが、4月11日の総選挙に向けて政党間争いの前に、党内での熾烈な公認争いが続いている。キーワードは「現職外し」だ。
若返りと世代交代が急速に進む韓国社会
1997年のIMF危機と呼ばれた通貨・経済危機を機に、韓国社会は猛烈なむき出しの競争社会になった。同時に、若返りと世代交代が企業でも公務員社会でも急速に進んだ。
若くてエネルギーに満ち、アイデアも豊富な若手をどんどん登用して、猛烈に働かせる。エネルギーが切れたら次の世代と交代させる。残酷でもあり、効率的でもある人材登用が、韓国経済のダイナミズムの源泉の1つであることは否定できない。
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与党セヌリ党は「現職議員25%交代」を基本方針として決めた(写真は韓国国会の本会議の様子)〔AFPBB News〕
同じことが政界でも起きている。「現職議員を、どんどん交代させる」というのが与野党共通の大方針になっているのだ。
与党のセヌリ党(旧党名ハンナラ党)は、「現職議員25%交代」を基本方針として決めた。
出馬意向を持つ現職議員を、当選可能性などいくつかの指標で順位付けし、下位4分の1に入った議員は自動的に公認から外すという方針を打ち出した。
党内に設置した公認審査委員会が強大な力を持ち、次から次へと有力現職議員を公認から外している。
誰がどう見ても再選の可能性が高い重鎮議員もおかまいなしだ。
確実に勝てそうな重鎮議員でも公認されない!
李明博(イ・ミョンバク)大統領の実兄で6選議員である李相得(イ・サンドク)氏(76)は、自ら次期選挙への不出馬を決めた。党内で多選批判が強まっていたことに加え、側近の秘書の不正資金疑惑などが出て、党内審査を受けても通過できない可能性が出ていた。
選挙区での強さは盤石で、出馬すれば当選可能性が極めて高いが、党内の関門を突破できないのだ。
野党の民主統合党も状況は同じだ。「公認が得られない」と見て早々に出馬を断念する現職議員も多い。
有力紙「中央日報」(3月15日付)によると、与党セヌリ党の地方区選出現職議員は144人だが、このうち不出馬を決めた13人を含めて58人が公認を受けられない見通しだという。現職議員の「脱落率」は、基本方針の25%どころか40%を超え、過去最高になるという。
激戦区のソウルになだれ込むベテラン議員
だから、ベテラン議員も必死だ。
現代財閥創業者の6男で韓国サッカー協会会長としてワールドカップ大会日韓共催を実現させたことで知られる鄭夢準(チョン・モンジュン)議員(60)。6選議員で党代表も務め、選挙区は自分がオーナーである現代重工業の企業城下町とも言える韓国東南部の蔚山(ウルサン)ということで、「安泰の重鎮議員」のはずだが、多選批判を受けてこの選挙区での出馬を断念した。結局、今回は一転して激戦のソウルでの出馬を決めた。
なにしろ、現職議員10人のうち4人は公認さえ受けられない。このくらいの超大物政治家でも、「戦う姿勢」を見せないと生き残れないのだ。
野党でも事情は同じだ。前回の野党大統領候補である鄭東泳(チョン・ドンヨン)議員(58)や、元党首の丁世均(チョン・セギュン)議員(61)といった大物政治家も、「絶対的な支持組織を持つ地元選挙区」を放棄させられ、2人ともソウルでの出馬に切り替えて何とか公認を得た。
両氏とも当選は微妙だが、地元で公認を得られる可能性が低く、やむを得ず首都決戦での勝負に出た。
60%を超えたこともある新人議員比率
野党民主党でも現職議員の脱落率は30%を超えることが確実だ。「地方選挙区での安住」など許されないのだ。というのも、1人の候補がある選挙区でずっと当選しても、全国的には「地方の大物議員を放置している」という印象がマイナスになるからだ。
韓国はもともと、国会議員の新陳代謝が激しい。現職議員の最多当選者は7選議員(1人)で6選(4人)、5選(6人)、4選(20人)など。新人議員が143人で全体の40%以上を占める。
大手有力紙デスクは「今回の選挙では新人議員の比率が50%を超えるのは確実だ。8年前の選挙では60%を超えたこともあるが、今回もそうなる」と見る。
日本ではちょっと前まで当選5回で大臣などと言われたが、韓国では5選以上の議員は11人だけなのだ。
なぜ、こんな「現職外し」が定着したのか。
大量入れ替えに世論の圧倒的支持
1つは、圧倒的な世論の支持があるからだ。
「国会議員をどんどん交代させる」ことには強い世論の支持がある。
ある与党関係者は「どの選挙区に行っても、『あの議員はもう2回も当選したから、新しい人に代えるべきだ』との声が圧倒的だ」と言う。
実際、周辺にいる韓国人のだれに聞いても「国会議員は2〜3回もやれば十分。有能な政治家志望者はいくらでもいるから、どんどん入れ替えるべきだ」という声ばかり。
企業や公務員社会で若返りが急速に進んでいるため、「政治家だけは別」などという雰囲気はまったくないのだ。
また、若くて優秀な政治家志望者があとを絶たないという背景もある。候補者はいくらでも代替が利くのだ。
さらに、大統領制で5年に1度大きな権力交代があることも大きな理由だ。今回の総選挙でも、与党内で任期が1年を切った李明博大統領の側近議員が次々と公認漏れとなっている。
弊害があっても淀んだ政治よりはまし
与党も野党も公認審査は厳格だというが、もちろん、首をかしげるような候補が現職を押しのけて公認を得る例も少なくない。
公認外しに怒り狂う現職議員も多い。審査委員会を提訴したり、無所属での出馬などを宣言する議員もいるが、なにせ投票日まで1カ月の時点で後任が決まるので、大半が「時間切れ」。結局、党の方針に従って政界から離れる議員が圧倒的だ。
国会議員の大量入れ替えについては、韓国ではおおむね肯定的な評価が多い。
「政治家はもともと大きな権力を握っており、国民がチェックしてどんどん入れ替えるべし」(大学教授)という意見だ。
専門的知識を持ち、選挙結果に左右されないステーツマン型議員が育たないとの指摘もあるが、「長く居座って既得権に凝り固まった政治家が大量に残るよりはまし」(韓国紙デスク)という声にかき消されている。
日本では考えられないダイナミズム
韓国の国会議員の定数は、地方区と比例選出を合わせて299議席(先日定員の1人増が決まった)。現在の勢力図は、与党セヌリ党173人、第1野党の民主統合党89人、忠清道に基盤を置く自由先進党15人、左派政党の統合進歩党7人などだ。
今回の選挙戦の最大の注目点は、もちろん年末の大統領選挙を前に、与野党どちらが勝利するかだが、「新人議員の比率」にも注目してはどうだろう。日本では考えられないダイナミズムでもある。
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