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「地震は兵器だ!】(科学、岩波書店、2012年2月号)(2)
http://www.asyura2.com/11/jisin17/msg/860.html
投稿者 脳天気な 日時 2012 年 2 月 18 日 14:23:16: Md.C3hMjrAb3Q
 

(回答先: 「地震は兵器だ!】(科学、岩波書店、2012年2月号)(1) 投稿者 脳天気な 日時 2012 年 2 月 18 日 14:12:35)

http://blog.livedoor.jp/oibore_oobora/archives/51772599.html
ここで、問題となるのが「地球の運動」です。米国国防省の文書などではもっと露骨に【地殻】の運動といった表現があったように記憶します。いずれにしてもこうした決議は米国のイニシアティブで国連の場にのぼせるわけです。当時の米国国防省には「地震兵器」について危機感があったのだろうと想像しています。詳しくは、本ブログでも折に触れ書いてきました。その背景は以下の三つに整理されるようです:

(1)1970年代になって、プレート理論こそが地震発生を合理的に説明できるとの説が大方の研究者にうけいれられるようになった。本ブログでも度々引用してきた金森博雄博士(2011年2月2日記事http://blog.livedoor.jp/oibore_oobora/archives/51662338.html ) さらには今でこそVANで知られる上田誠也博士 (2011年6月3日記事)、
http://blog.livedoor.jp/oibore_oobora/archives/51713240.html など日本の地球科学者がその説の科学的裏付けに大きな貢献をしました。

(2)現在、御用地震学者あらざる正義の地震学者として知られる石橋克彦博士による「東海地震切迫説」が説得性を持って迎えられ、地震予知技術の実用化が現実的と受け取られるようになった(1976年)。

(3) デンヴァ(米国)での水注入による地震惹起現象(1962)などから、「地震制御」論、つまり地震発生を自在に操作できるのではとの構想が生まれた。上記の国連決議文第二条にあるmanipulationはまさにそれを強く意識して用いられた「用語」であろうと私は思っています。

 この三点セットが揃うならば、「プレート境界で、地震の切迫した場所を探します。そこでは少しのきっかけで地殻の大破壊を起こすことが分かっているので、そこに爆薬を仕掛ける、あるいは、破壊想定域内の摩擦緩和剤のようなものを注入する」ことで地震を兵器として使うことが可能になるとの発想が生じます。このことに米国国防省関係者が危機意識にとらわれたと私は想像しています。
 
 しかし、現実はどうでしょうか?地震予知は、現時点ではいまだ現実的でありません。又、地震破壊途上のアスペリティなる障害物の挙動の物理性状も定かでないので、よしんば摩擦緩和剤を注入せどもそれがしかるべく機能する保証はありません。
 然るに、起きてしまった地震については、世界中に張り巡らされた地震観測網が捕らえた地震波の精密解析からそこで起こった物理破壊過程がいまや詳細に分かります。しかし、地震制御するにしても、アスペリティなる地震大規模崩壊を妨げる(或いは促進する)力学的存在の物理像が未だ定かで無いのです(滑るのやら滑らないのやら、お笑いの世界の事ではありません)。かくして将来の地震についてはいまだ、分からず、日本ではあちこちで色々な地震学者があそこは危ない、ここは危ない、と論拠無く(一応尤もらしい観測そして分析結果に基づいてはいるようであるが)叫んでいるのが現状です。

 フランスの思想家ボルテール(その生地は、CERNによるヒッグス粒子探索のための陽子陽子衝突リングが埋設された地の真上にある田舎村フェルネです)は、1755年6万を超える人命を奪ったリスボン地震の惨状に大きな衝撃を受け一編の詩を詠んでいると植木氏は書きます。そこで、地震陰謀論が何故人の心を捕らえるのか、その心理をボルテールの詩を引用して次のように書きます:【自然災害を神の下(くだ)した天罰ないし予定調和と読み替えて納得しようとする】。私も同様の感想をかって、2011年4月4日のブログ記事で以下を書きました。
http://blog.livedoor.jp/oibore_oobora/archives/51692760.html 
「こうした無責任な「陰謀論」は、数万にも達すると思われるこの地震の犠牲者そしてそのご家族に対して誠に酷い「物言い」であると私は思います。今回の巨大な震災をすべて「闇勢力」に帰するならば、犠牲になられた方々の無念を思い、生き残った我々がこの災害から教訓を学び、この災難を繰り返させないための行動には、いかなる意味も無いことになります。何故なら、陰謀論に拠って立つ限りでは、無力な庶民には、それに抗う術がないと宣告しているも同然だからです。」
 
 以上が「科学」誌での植木氏の論説紹介です。ところで、「検証 大震災の予言・陰謀論】(文芸社、2011年11月)なる本が出版されています。著者はASIOSを名乗る複数の方々です。Association for Skeptical Investigation of Supernatural だそうで HP はhttp://asios.org/ とのことです。概ね妥当な記述です。例えば、陰謀愛好論者が好んで引用する、地震発生当日に、科学技術庁海洋研究機構の調査船「地球」号が、まさに震源域で「作業」していたことを指摘し、「爆薬」を海底に設置したのではないかと疑っています。これについて、この本は、この調査船に乗船していた研究者への長時間インタヴュをして、当該調査船の当日の行動を明るみにしています。しかし、こうしたインタヴュ記事も陰謀愛好論者は「泥棒に、自らは泥棒していない】と、語らせるに等しいと言うのでしょう。しかし、私は愛好論者に、こうした、自らの考えに真っ向から反する主張をきちんと読んで、それへの科学的反論をして欲しいと、思っています。

 さて、この書は、この後思いがけ無い展開となります。なんと、陰謀論者を一刀のもとに切り捨てる返す刀で「小出裕章氏が反骨学者であるが故に未だに助教(昔の助手)であること」に異論を呈します。研究者、とりわけ自然科学分野では論文をどれほど多く書こうとも、或いはどれほど多くの本を出版しようとも、それはどうでも良いのです。論文掲載誌のレベルを問うのです。論文掲載に当たって、その掲載誌が論文の質を問う審査システムを有しているのか、そして件の研究者はそのシステムをクリアして論文掲載に至ったかを問うわけです。これを「査読」制と呼びます。上に例として紹介した「科学」、「ニュートン」などにはそうした査読制度は在りませんから、雑誌編集者の意向で掲載諾否が決まります。さて、小出氏には、こうした査読制度を持つ学術誌への論文掲載が極めて少ないのであるから「助教」待遇は仕方がない。一部マスコミが「反骨研究者」であるが故に小出氏が六十歳過ぎても京都大学「助教」であると書くが、それは間違っている。助教たる地位は当然であって、それを【差別」と書くのは正しくないと書きます。

 これで一つ思い出すことがあります。上に引用した非御用地震学者、石橋克彦氏です。氏はかって、「科学」に原子力発電が「原発震災」を引き起こす可能性を論じた論考を掲載しました(1997年10月号)。この論考を重く受け止めた静岡県は専門家である静岡県原子力対策アドバイザ4名および、経産省、科学技術庁(当時)に、この論考に関する見解聴取を行っています。複数の地震工学、原子力工学、放射線医学の専門家の回答に「石橋氏には、この分野での査読制度を持った学術雑誌での論文がない」とわざわざ断った上で、石橋論考に反論しています(「科学」2011年7月号)。石橋氏に査読制度がある学術誌への論文掲載が多いのか少ないのかは知りません。しかし、研究者の世界では、研究者の発言の重みを、こうしたことに求めるのは仕方が無いのかもしれません。何故なら、一般大衆誌への投稿・記事が多くTVなどへの出演も多いが故に国民への露出度が高い研究者が即、優秀であるとは断じがたいからです。

 2009年末にClimate GateとよばれるIPCC絡みのスキャンダルが起こりました。その際、問題になったのが、「地球温暖化」に異議を唱える論文が「論文査読制度付き」学術雑誌に殆ど掲載されていないのであるから、彼らの主張は信頼するに足りないとの見解が公になったりしました。

 研究者の研究レヴェル評価はさておくとしても、研究者が社会に向けて発信する見解の評価は、結局は受け取る側が当該研究者の主張に納得するのか否かであるということです。外界のお墨付で判断してはいけないと言う事です。
 

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