★阿修羅♪ > 自然災害17 > 779.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
桜島の防災対策 -火山学的視点から-
http://www.asyura2.com/11/jisin17/msg/779.html
投稿者 taked4700 日時 2012 年 2 月 01 日 11:25:11: 9XFNe/BiX575U
 

(回答先: 巨大噴火の前兆か。鹿児島・桜島の爆発的噴火回数が観測史上最速レベルに 投稿者 ピノキ 日時 2012 年 1 月 31 日 19:33:36)

http://www.bousaihaku.com/cgi-bin/hp/index2.cgi?ac1=B414&ac2=B41403&ac3=3256&Page=hpd2_view

2. 桜島の防災対策 -火山学的視点から-

京都大学防災研究所
教授 石 原 和 弘
1.はじめに

 桜島は2万数千年前の巨大噴火でできた直径約20qのくぼ地,姶良カルデラの南の縁で成長した活火山である(図1)。溶岩流出のたびにその面積を拡大し,現在,その直径は約10q,面積は約80kuである。20世紀初頭には2万2千人が住んでいたが,1914年の大正大噴火により主要な集落が溶岩流に埋没したため約半数が島外に移住し,現在の人口は6千名余である。

図1

 桜島の火山対策は1973年に制定された「活火山対策特別措置法」により,避難施設や防災情報設備の整備,各種降灰対策や土石流対策が着実に実施されてきた。また,山腹噴火時の全員退去を想定した避難訓練など,住民と行政が一体となった取り組みもなされてきた。爆発対策として,火口から2q以内の常時立入り禁止の措置がとられている。国土庁の「火山噴火災害危険区域予測図作成指針」にしたがって,1993年度に大正噴火クラスを想定した桜島の火山ハザードマップが作成・公表され,地域防災計画の見直しもなされた。一方,1974年に開始された「火山噴火予知計画」により噴火予知研究が進展し,噴火のメカニズムの理解と火山監視能力が向上した。本稿では,火山学的な視点から桜島の活動の特質や噴火予知の現状を解説し,今後の火山対策についてコメントする。

2.桜島の火山活動の特質

 歴史時代の噴火活動は数百年に1回の割合で発生する山腹噴火とその間に発生する山頂噴火に大別できて,災害を惹起する現象と影響範囲に違いがある。山頂噴火と山腹噴火に分けて,災害要因(脅威)について表1にまとめた。
 歴史上最初の大規模山腹噴火は奈良時代の噴火である。その後,文明,安永および大正の3つの大噴火が発生している。昭和の噴火と併せて,これらの噴火の概要を表2に示した。これらは3つの大噴火は,両山腹に新たに火口を形成,溶岩・軽石合わせて,1〜2km ^(3) を噴出している。各噴火の噴出物量は,富士山の貞観噴火や宝永噴火の噴出量をはるかに上回っている。桜島のみならず,広域的に多大な被害を生じたことは言うまでもない。大正噴火の特記すべき災害として,噴火開始当日夕方に発生したM7.1の地震がある。死者・行方不明55名のうち,鹿児島市側での地震による犠牲者が29名,大隈半島側の洪水などによる犠牲者11名となっている。また,一度に多量のマグマが噴出する山腹噴火では,広範囲にわたり地盤の低下を生じる。大正噴火では,鹿児島港で約50pの潮位上昇が観測され,安永噴火後は,大潮時には鹿児島城下が冠水した。また,安永噴火では海底噴火が発生して津波による犠牲者が出た。また,約千戸が被害を受け,石垣や土手が破損した。鹿児島市などで都市化やウォーターフロント開発が進んだ現在,山腹噴火の周辺域に対する影響は,以前に比べて甚大である。今後のハザードマップや防災対策では,広域的な視点も考慮する必要があろう。

 山頂噴火の主な被害は,火山弾・レキ・火山灰等のほか,降雨時の土石流および日常的な火山ガス放出により引き起こされている。火山弾の落下範囲は最大3qであり,桜島南部の集落が射程範囲に入っている。二酸化硫黄の放出率は,1日あたり1000〜5000トンである。また,1978年から20年間の降灰量は,1uあたり,桜島海岸部で210〜880s(堆積厚:約20〜80p),鹿児島市街地は10〜80sである。降灰総量は約2億トン,その3〜4割が桜島内に降下したと推定される。桜島における山頂噴火の影響は甚大・深刻である。一方,周辺地域では,火山灰とレキにより,交通障害や降灰除去作業などにより市民生活は迷惑を蒙ってきた。山頂噴火による被害として,噴煙による航空機の被災が挙げられる。桜島の噴煙を通過した航空機の操縦席の窓ガラスにひびが入る事態がいくつか報告されている。現在は,航空会社等の努力により被災回避の工夫がなされているが,最悪の場合不特定多数の命が一時に失われる危険性があり,全国的・世界的な対策が必要である。

(2)マグマ供給系と噴火の長期予測
 桜島のマグマ溜りは,地下深部から上昇してきたマグマを蓄える姶良カルデラ中央部の地下約10qの溜りと,そこからマグマの補給を受ける桜島直下3〜5qの溜りの二つが存在すると考えられている(図1)。前述のように,大噴火が発生するとの場合は周辺の地盤は沈降する。大正噴火直後には,カルデラ中心部に近い鹿児島湾西岸や桜島北部では1〜2m沈降し,その後の静穏期には1〜2pの割合で隆起してきた。1955年以降の山頂噴火活動期には,年間に1〜3千万トンの火山灰が噴出すると隆起が停止し,それを下回ると隆起に転じている。以上のことから,姶良カルデラ地下には1年あたり約1千万m ^(3) の割合でマグマが上昇している推定される。100年の休止期間があれば,約1km ^(3) の過剰なマグマが蓄積され,山腹噴火の可能性が高くなる。将来にわたって桜島の噴火は免れ得ない現実であることを銘記すべきである。現時点は,大正噴火で消費したマグマの7〜8割を回復した段階である。

(3)噴火の前兆
 (準備過程) 桜島の噴火開始に先立ち,カルデラ地下から桜島へのマグマの移動が生じると予想される(図1)。実際,1974年からの山頂噴火の激化に先立ち,桜島が約8p隆起したことが観測され,大正大噴火の数ヶ月前には桜島各所の井戸の水位が目に見えて低下したことが報告されている。桜島での地盤変動や水位・潮位観測により,桜島直下のマグマの蓄積の度合いを評価できる。
 (山腹噴火の前兆) 多量のマグマが一時に噴出しようとすると,2000年の有珠山や三宅島の例のように,地殻の破壊,すなわち地震が多発する。過去の山腹噴火をみると,いずれも数日前から有感地震が多発している。また,昭和の噴火では,有感地震の発生はなかったが,無感地震が多発した。地震観測により,山腹噴火の発生時期の直前予測は可能であろう。ただし,有感地震発生は必ずしも山腹噴火の前兆とは限らない。的確な予測には,地殻変動等他の観測が不可欠である。
 (山頂噴火の前兆) 山頂噴火の発生予測は難問である。三宅島の例でもわかるように,いったん出口(火口)ができると,明確な前兆なしに噴火が発生する。桜島では山頂噴火活動の高まる前に,火口直下の3qより浅い火道でM1以下の低周波地震(B型地震)が群発する例が多く,群発発生のたびに臨時火山情報が出されてきた。B型地震の多発は溶岩の火口底への上昇に対応すると考えられ,以後,数日〜数週間爆発が多発する傾向がある。個々の噴火の前兆は極めて微小であり,現在のところ,観測坑道など地下での精密な地殻変動観測によってのみ捕捉可能である。噴出火山灰が10万トンを超えるような中規模以上の山頂噴火に対しては,数十分〜数時間前から山頂部が0.1〜1o隆起したことを示す変化が捉えられていて,直前予測が可能な段階にある。しかし,小噴火の発生や火山弾の飛散範囲の予測は今のところ困難である。火山弾の飛散範囲の予測を実現するには,精密な地震,地殻変動観測と併せて,火口底や火山ガスの観測が不可欠である。

3.その他の課題

 より効果的に桜島の火山対策を進めるには,危険度に応じた土地の利用規制や用途指定が必要であろう。既に「国立公園法」による規制があり,これに準じた方策が取れないであろうか?用途指定の合意が得られれば,同額の経費でも,住民の生活と安全確保に重点をおいた効率的な火山対策が推進できるのではないだろうか?
 当面の課題として,火山情報の改善がある。現在の火山情報は,緊急火山情報,臨時火山情報等4種あるが,桜島などでは,天気予報と同じように,火山活動度を常に数段階のレベルで評価して公表する準備が進んでいる(火山情報のレベル化)。その実効を挙げるには,現在のハザードマップや地域防災計画では不備な点がある。例えば,火山弾が集落近くに落下するような山頂噴火に対する対応が明確ではなく,火山情報のレベル化実施にあたって,情報を出す側と受けて側で齟齬を生じる可能性がある。気象庁と関係自治体等との協議・調整を期待したい。  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. taked4700 2012年2月01日 11:47:28 : 9XFNe/BiX575U : G0GGaLsPPQ
上の記事は2002年秋のものです。

  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
 重複コメントは全部削除と投稿禁止設定  ずるいアクセスアップ手法は全削除と投稿禁止設定 削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告」をお願いします。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

このページに返信するときは、このボタンを押してください。投稿フォームが開きます。

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 自然災害17掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 自然災害17掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧