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(回答先: 欧州危機、債務激増を招きかねない財政条約 投稿者 ts 日時 2012 年 1 月 31 日 00:38:15)
欧州一体で悪循環脱出を
ソロス・ファンド・マネジメント会長 ジョージ・ソロス氏
欧州財政危機では、債権者が運転席に座っており、ドイツが政策を仕切ってきた。しかしドイツがユーロ導入国に求めた緊縮政策は欧州を「債務のワナ」に陥れようとしている。賃金・企業収益とも落ち込み、経済は縮み、税収は減る。債務負担は増え、さらなる赤字削減を迫られる悪循環になる。
ドイツに悪意はないと思うが、不可能なことを求めているのだ。逆効果の政策を強要すれば政治的に危うい状況になる。欧州連合(EU)の結束を傷つける内輪もめを引き起こすだろう。
ユーロはもともと不完全な通貨である。これは創設時から認識されていた。マーストリヒト条約で政治同盟のないまま通貨同盟をつくった。中央銀行はできたが、共通の財務省はない。しかも想定外の欠陥があった。各国政府が発行する債券はリスクがないとみなし、保有する銀行にリスクに対応して自己資本を積むよう求めなかったことだ。
転換点はギリシャの巨額の財政赤字が明らかになった時で、同条約の重大な欠陥をさらけ出した。改善を強制する手段も、ユーロを脱退する仕組みもなく、各国が通貨増発に頼ることもできない。欧州中央銀行(ECB)は個別の国に融資することが禁じられており、各国政府がギリシャを救うしかなかった。
不幸なことに欧州の当局者は金融市場がどう反応するか知識がなかった。金融市場は印象と感情に支配され、不透明さを嫌う。金融危機を止めるには強い指導力と十分な資金力が必要だったが、ドイツは債務国の後ろ盾になりたがらなかった。
欧州の対応は常に「トゥーリトル・トゥーレイト(小さすぎて遅すぎ)」で、ギリシャ危機は雪だるま式に悪化。ほかの財政赤字が大きい国、その国債を保有する欧州銀行に波及した。当局が欧州銀に資本増強を求めたことがとどめの一撃となった。資産圧縮のため融資の返済を求め、リスクの高い国債を売却した。貸し渋りが実体経済にも悪影響を及ぼしている。
このまま各国の思惑で解決しようとすると破滅的な状況になる。欧州が一体となって解決することが必要だ。車がスリップした時は、まず滑った方向へハンドルを切り、制御できたら戻す。ユーロ危機では、最初は財政規律強化や構造改革に取り組むべきだが、その次は景気刺激策が必要だ。構造改革だけでは経済が収縮する悪循環から抜け出せないからだ。
景気刺激策はEUが手助けすべきだ。ユーロ共同債も必要だろう。重要なのは早く解決策を示すことだ。明確なゲームのプランがなければ、欧州は経済が落ち込み政治が分裂する悪循環に陥ったままだろう。((C)Project Syndicate)
George SOROS 米国の著名投資家。1992年の英ポンド空売りなどで知られ、97年のアジア通貨危機では“仕掛け人”ともいわれた。30年ハンガリー生まれ。
<記者の見方>独自の解決策も提案
「イタリアやスペインが低コストで国債を借り換えられる枠組みを欧州当局が整えるべきだ」。ソロス氏は29日閉幕した世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で独自の危機解決策を披露した。足元の金融市場が落ち着いているのは欧州中央銀行(ECB)による資金供給の一時的な効果にすぎないと映る。だからこその抜本策の提案だ。危機対応のまずさを批判されたドイツのメルケル首相は同会議で「ユーロを守る」と繰り返したが、ソロス氏が納得したはずはない。
(ダボス〈スイス東部〉=上杉素直)
[日経新聞1月30日朝刊P.5]
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