http://www.asyura2.com/11/hasan74/msg/798.html
Tweet |
(回答先: The Economist 中国:繁栄のパラドックス 投稿者 ts 日時 2012 年 1 月 31 日 00:32:50)
http://diamond.jp/articles/-/15924
2012年の論点を読む【第15回】 2012年1月31日 【テーマ14】
中国ニューリーダーの誕生は日本に何をもたらすか?大国の次世代戦略と日本がとるべき対中政策の要諦
――朱 建栄・東洋学園大学人文学部教授
日本にとって、世界第2位の経済大国となった中国の重要性は高まる一方だ。しかし日中 間には、尖閣諸島などを巡る複雑な政治問題も横たわっている。そんな中国では、今年新たなリーダーが決まる。指導者の交代によって、日中関係にはどんな変 化が生じるのだろうか。絆が深まるのか、それとも緊張感が高まるのか――。中国の政治情勢に詳しい東洋学園大学人文学部の朱建栄教授に、中国の新たな指導 者たちが目指す国家戦略と、日本がとるべき対中政策について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)
2012年に決まる大国の新リーダー
指導者選びの「2つのルール」とは?
しゅ・ けんえい/東洋学園大学人文学部教授、学習院大学で政治学博士号を取得。専門分野は中国の政治外交史。1957年生まれ。中国上海市出身。華東師範大学卒 業後に来日し、東京大学非常勤講師、東洋女子短期大学助教授を経て、現職。 主な著書に『毛沢東の朝鮮戦争――中国が鴨緑江を渡るまで』『江沢民の中国――内側から見た「ポストケ小平」時代』『胡錦濤対日戦略の本音――ナショナリ ズムの苦悩』『中国で尊敬される日本人たち:「井戸を掘った人」のことは忘れない』など。
――2012年、中国では新たなリーダーが決まる。そもそも中国のリーダーは、どうやって決められているのか。
2012年は、世界的な政治の季節。米国、ロシア、フランス、韓国、台湾、そして中国で指導者が交代する。特に中国は、10年に1度の指導者交代となる。
今、中国共産党と国家の指導者選びに関しては、政権内で2つのルールができている。
1つは「年齢制限」だ。おおむね68歳を超えると最高指導部(党中央政治局常務委員会)には入れない。そこに入れなければ、当然指導者にもなれない。
2つ目は「三選禁止」。指導部では、「党や政府の役職は1期5年、長くて2期10年まで」という取り決めが、ほぼ確立されている。胡錦濤氏は02年に主席となり、今年10月で任期満了を迎えるため、続投はもうない。
これらのルールに従って、今回はおそらく建国以来初めてとなる大幅な指導部の入れ替えが行なわれるだろう。それは、党中央政治局の9名の常務委員 のうち、7名の年齢が来年で68歳を超えるからだ。胡錦濤氏を含めて7名が交代となり、残る2名の中から新しいリーダーが決まることになる。
――ニューリーダーとして確実視されている候補者は誰か。
新しい指導者となるのは、国家副主席の習近平氏だ。メディアでも言われているように、習氏がポスト胡錦濤として党や国家のトップに就くことは、ほぼ既定路線だ。
次のページ>> 習近平は既定路線だが、首相候補の李克強にはライバルも
習近平氏とともに、5年前の党大会で最高指導部のメンバーに選出されている第一副首相の李克強氏は、温家宝氏の後任として首相に就任する可能性が高い。中国の首相は主に経済運営や地方の管理を担当するポストだ。
ただし、首相候補の李氏に関しては、有力なライバルもいる。金融担当の副首相を務めている王岐山氏と、広東省の省委書記を務める汪洋氏だ。
王氏は08年の金融危機で手腕を見せ、欧米からの信頼も厚い国際派。汪氏は、中国経済の先端を走る広東省のトップとして、経済発展への前向きなビジョンを提示し、実行してきた行動力が注目されている。
それに対して李氏は、有能ではあるものの、これまで国有企業の改革に伴う人員整理や不満対応など、どちらかと言えば後ろ向きな仕事をしてきた。健康状態もいまひとつだという噂がある。首相候補として李氏が有利な状況は変わらないが、他の2人にもまだ可能性がある。
新しい経済発展モデルの確立と
国内格差の是正が2大目標に
――指導者の交代に際して、人事が難航することはありそうか。
その可能性はまずない。なぜなら、中国ではケ小平時代以降、政権が発足するときに、予め次期リーダー候補を政権内に入れるという慣例があるから だ。今回は、習氏と李氏がその2人となる。初めから次期ナンバー1になる候補者がほぼ決まっているわけだから、他者が異論を挟む余地はない。
もちろん、最高指導部の残り7名の枠を巡る駆け引きはあるだろうが、トップが決まっている以上、人事が大きく難航することはないだろう。
――気になるのは、新しい指導者たちがどんな国家戦略をとるか だ。日本経済にとって中国の重要性は高まる一方だが、日中間には尖閣諸島などを巡る複雑な政治問題も横たわっている。指導者の交代によって、日中関係に大 きな変化が生じるのではないかと見る向きも多い。とりわけ、世界経済を左右する経済政策の行方を、どう分析しているか。
次のページ>> 中国ビジネスの主力は、いまや富裕層ではなく「中間層」に
中国では経済モデルの大改革が始まろうとしている。中国はこれまで、安い人件費を背景にした大量生産・大量輸出という労働集約的な経済発展を続け てきたが、そのモデルはもう通用しなくなりつつある。金融危機後、中国自身の変化もあって、沿海部では賃金が上昇し、不況に喘ぐ先進国への輸出も頭打ちに なっているからだ。
そこで、2011年から始まった第12次5ヵ年計画では、産業構造を高度化し、国民の賃金を上げて購買力を増やし、国内市場を本格的に育成するこ とを目標に掲げている。新指導部はこの目標に従い、基本的には現在の路線を踏襲しつつも、新しい経済発展モデルの確立と国内格差の是正を2大目標にしてい くだろう。
富裕層ばかりに目を向けるべからず
中国ビジネスの主力はいまや「中間層」
――格差が是正されて国内需要が増えれば、中国相手にビジネスを行なう日本企業にとっても、新たなチャンスが訪れそうだ。
中国でビジネスを行なう日本企業の多くは、「中国人の大半は貧困、ごく一部が富裕層」というステレオタイプのイメージを持っているようだ。しかし、実は中国では2000年以降、中間層が目に見えて増えている。
たとえば、2010年2月に中国社会科学院が発表した調査結果によると、「自分は社会の中クラスに属する」と答えた国民が、全体の4割に達した。 また、一昨年の調査では、年収6万〜90万元、夫婦に子ども1人、ローンを組んで家を持っている、株式投資などを行ない20万元以上の金融資産を持ってい るといった中産階級の定義に当てはまる国民が、全体の23%に及んでいる。
この数字は年率1%ずつ増えていくので、中産階級は足もとで25%、3億人にまで増えている。生活に必ずしも余裕がなくても、「意識は中間層」と いう国民も増えているようだ。日本企業は中国と言えば富裕層に注目するが、本当の大金持ちは1000万人くらいしかない。今後は富裕層ではなく、中間層に 目を向けていくべきだ。
――新体制になって、中国国内の民主化がどの程度進むかも、日本が中国ビジネスを拡大していく上で、重要な判断材料となる。国内政策の行方をどう見るか。
台頭する中間層は、生活に余裕が出てきて教育水準が高い。インターネットを利用して情報を入手するノウハウにも長けている。
次のページ>> 中国は強硬路線でなく、対外協調路線をとり続けるしかない
中国国内では、これまで多くの政府批判や抗議活動が起きているが、実はこれらを先導して来たのは、格差に怒る低所得層ではなく、主に中間層だった。誤解されがちだが、低所得層は生活していくのが精一杯で、デモを主導するほどの余裕がない。
そのため、新政権にとって、今後も発言力を強める中間層の「権利意識」にどう対応し、社会の民主化と政治の民主化を実現していくかが、国内政策における最大の課題となる。
政治の民主化は選挙制度の整備などを指すが、早急に進めるべきは、社会の民主化のほうだ。社会の民主化は、富を公平に分配する仕組み、公正な裁 判、政策決定の透明化、情報を知る権利の整備など、法治国家としての基盤をつくることに直結する。これは、もはや避けて通れない課題だ。
日本の「中国脅威論」は行き過ぎた懸念
中国は対外協調路線をとり続けるしかない
――これまで中国政府は、そうした国内の不満をそらすために、諸外国に対して強硬路線をとってきたと言われる。社会の民主化が進むにつれて、中国の対外政策はどのように変わっていくだろうか。
日本や欧米諸国では、大きくなり過ぎた中国に対して「脅威論」が募っている。だが、そうした見方では、中国の現状を正確に捉えられない。
中国は、内陸部と沿海部でそれぞれ独自の発展を遂げ、深刻な格差問題も抱えている。国家が主導する対外強硬路線で国内の不満を完全に抑え込むことができるようなレベルでは、もはやなくなっている。昨年起きたデモの件数は、わかっているだけでも10万件を超えていた。
また、新政権は今後、国内経済の改革や社会の民主化を重視する可能性が高いため、外へ拡張していく余裕はないと思う。むしろ、対外協調路線をとらなければやっていけなくなるだろう。
ただ、中産階級の権利意識が米国や日本に対する批判を強め、国内でナショナリズムが台頭しているのは事実。政府にとって、対外協調と民意とのバランスをいかにとるかが、難しい課題であることは確かだ。
次のページ>> 江沢民のイメージとダブる習近平だが、実はかなりの親日家
――とはいえ、中国はトップが交代すると政策も大きく変わるというイメージが強い。次期最高権力者と目される習氏についても、一部で「国家主義的な思考が強い」と報道されているようだが。
トップが代わって、個人のカラーが政策に色濃く反映されたのは、建国世代がトップを務めた時代まで。先にも述べた通り、政府の人事制度は、今や最高権力者の一存では簡単に左右されないよう、整備されている。
国自体は共産党の独裁体制だが、総書記1人には決定権がない。政治局常務委員会の9名が、普段は根回しをしながらコンセンサスを見出すが、意見の集合ができない場合は多数決で政策を決めている。
実は習近平はかなりの親日家
江沢民とイメージがだぶっている
また習氏は、私が知る限り、とても義理人情を重んじる性格で、家族ぐるみでかなりの親日家だ。
本人は、中国のリーダーの中でも異色の経歴を持ち、工場や農村の仕事を幅広く体験してきた。かつて福建省、浙江省、上海などの地方指導者を務めた 際、現地の経済発展を牽引していた日系企業と、太いパイプを持っていた。当時現地を訪れ、アドバイスを行なった長崎県知事とは、その後も友人付き合いをし ており、一昨年末に来日して天皇と会談した際にも、忙しいスケジュールの合間を縫って、知事と会食をしたほどだ。
習氏の夫人も、80年代から何度も来日している中国のトップ歌手。習氏と前後して来日公演をした際は、学習院大学の講堂で皇太子を前に登壇して、四季の歌を日本の歌手と一緒に歌うなど、日中の文化交流に熱心だ。
一部で習氏が「国家主義的な思考が強い」と言われている背景には、日本に厳しいと言われた江沢民・元国家主席に抜擢されて政府中枢に入り、江氏と イメージがだぶっているためと考えられるが、習氏に目を付け、その出世コースに軌道を敷いたのは実は江氏ではなく、人事担当の中央組織部長だった曾慶紅氏 と福建省の党書記だった賈慶林氏(今の政治局常務委員)であった。後継者を選考する最終段階で、江沢民氏も習近平氏がいいと発言した。
次のページ>> 周辺国の懸念を払拭できない中国自身の対応にも、課題は残る
その江氏も、1998年の訪日では対日姿勢が厳しかったが、その後、内外の批判を受けて軌道修正し、中国と日本の連携を重視する発言を数多く行なっている。だが、それらは日本のメディアであまり紹介されていない。
周辺国の懸念を払拭できない
中国自身の対応にも課題は残る
――日本をはじめ周辺諸国は、中国情勢に関して過度なリスクを感じ過ぎているということか。
そういう側面もあると思う。もちろん、諸外国に対する中国自身の対応にも、課題はある。
第一に、周辺諸国の懸念に対して、それを払拭するための対応が、不十分だったことだ。たとえば、増大する軍事費の内訳や目的について、丁寧な説明を行なってこなかったことが、諸外国に脅威を感じさせる原因となった。
第二に、国が大きくなりすぎて、個々の外交問題に対処し切れなくなっていること。よい例が尖閣問題だ。当時、島の周辺12カイリ以内(中国は所有 権を主張するが、日本による実効支配を黙認)に侵入してきた漁船の乗組員は軍人であり、中国政府が関与しているのではないかという憶測も流れたが、そうで ないのは明らか。あれは漁船の船長が個人的に起こした騒動で、本人は今福建省の自宅に軟禁されている。
このときも、日本側は民主党の代表選挙を控え、政府内の意思疎通など対応に問題があったが、中国側は、日本政府との間に緊急連絡網を構築するな ど、柔軟な体制もつくっていなかった。途中からいきなり日本に対して厳しい姿勢を取ったため、日本国民からの理解が得られなかった。このように、たとえ中 国に対外拡張の意思がなくても、「そうではないか」と誤解される背景には、中国自身の課題もあると思う。
――日本はそんな中国と、どのように付き合っていけばいよいのか。
国家レベルで言えば、日本はあまりにもトップが目まぐるしく変わりすぎて、中国との間に真の協力関係や対話の仕組みができていない。
次のページ>> 日中国交正常化40周年の節目に、国家戦略を語り合うべき
そのため、日本とは異なる発展段階にある中国が、「今、何を考えているのか」「将来、どんな国を目指しているのか」というビジョンを理解することができず、中国の「虚像」に怯えている側面もある。
日中国交正常化40周年の節目に
国家戦略を互いに語り合うべき
今年9月には、日中国交正常化40周年を迎える。この節目の年に、政府レベルでそれぞれの国の国家戦略を互いに語り合い、理解できる関係をつくれ るように、努力すべきだ。観光客の誘致や留学生の受け入れなどを行ない、国民レベルで理解を深められるよう援助することも重要だ。
民間企業も、これまで以上に中国企業と連携しながら、ビジネスの新しい可能性に着目していくべきだ。個人所得が伸びて内需が拡大すれば、中国企業 の生産技術も上がっていく。そうなれば日本企業は、中国企業と協力しながらクオリティの高い製品やサービスを現地で生産し、一大市場を攻めることができ る。
中国はもう、日本にとって単なるコストの安い生産拠点ではない。一大市場に発展しつつあることを、忘れてはならない。
――成長が続く中国では、沿海部などにおいて、すでに資本主義国 に負けないほどの経済発展を遂げている都市もある。今後は社会の民主化も一層求められていくだろう。その意味では、中国がこれまでのように共産党の一党独 裁を続ける動機はないように思える。今後、新体制の下で、民主化が一気に進む可能性はないだろうか。
エリート層をはじめ中国の大半の国民は、政治に不満を持ちながらも、大きな混乱は避けたいと思っている。共産党のコントロールを止めて一気に民主化を行なうと、今の中国は崩壊するということに、気づいているからだ。
それは、かつて民主化を進めて失敗したラテンアメリカ諸国の例を見てもわかる。60〜70年代に今の中国と似た状況にあったブラジル、メキシコ、 アルゼンチンなどは、民主化を進めた結果、都市部の半分近くがスラム街となり、長らく停滞を続けた経験がある。それは「中等収入諸国の罠」に陥ったから だ。
次のページ>> 民主化は重要課題だが、一気に進めると国が崩壊する不安も
国民1人当たりの所得が1000ドル以下なら、「開発独裁」の体制(政治は独裁、経済は自由化)でも国はすぐに発展する。ところが、4500〜5000ドル程度の段階まで発展すると、「一部の特権階級に大多数の低所得層」という社会状況が出現し易い。
ここで富の分配を適切に行なうシステムを構築できなければ、むしろ成長を停滞させてしまうリスクが高い。そのバランスが、なかなか難しい。
民主化を一気に進めると国が崩壊
「真の変化」は若い世代が担い手に
今の中国でも、一種の戸籍制度はあるが、民主主義国家と比べて完全なものではない。たとえば農村出身者は、北京や上海に出稼ぎには行けても、そこで正式に戸籍を取得することは簡単にできないようになっている。
それを許すと、一気に数千万人もの低所得者が流入し、スラム街が乱立して、都市機能が麻痺してしまうと恐れられるからだ。人口が多い中国が抱える民主化リスクは、ラテンアメリカ諸国の比ではない。
そのため現時点では、共産党の指導の下で、あと10〜20年ほどは「秩序ある発展」を続けることが必要になる。かつて毛沢東時代に行なわれた文化大革命も、見方によっては一種の民主化だったが、それに伴う混乱のせいで、中国の発展は大きく遅れてしまった。
その意味でも、中国の真の担い手である50代以上の「文革世代」は、むしろ徹底した民主化を求めない傾向がある。あと10年ほどで、中国経済の骨格はある程度できあがり、格差はある程度是正されるだろう。
総人口の過半数も中流意識を持ち、政治に参加する権利を本気に主張していく。そうなってから初めて、若い世代を中心に、本格的な民主化が国家レベルで議論されるようになるのではないか。
質問1 新しい中国の指導部と、日本はうまくやっていけると思う?
50%
思う
50%
どちらとも言えない
思わない
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
- 日本を訪れる中国人観光客数が大幅回復 過去最高 ts 2012/1/31 02:21:28
(0)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。