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[FT]危機の解決策を示せなかったEU首脳会議(社説)
2011/12/12 14:00
(2011年12月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
先週の欧州連合(EU)首脳会議は「欧州スリラー」のクライマックスとなるはずだった。信頼回復に向けた力強い政策を一斉に打ち出し、欧州債務危機を吹き飛ばすと思われていた。ところが、英国の新条約不参加はさておき、同会議の結論はその要領を得ない点においてまったくありきたりのものだった。
■合意された策は危機を解決しない
公平のために言えば、欧州の財政統合に向けてささやかな一歩を踏み出したことは評価できる。しかし、いくつかの新しいルールとは対照的に、ユーロの信頼回復に必要な真の包括的な財政統合への道筋は見えてこない。
より緊急なことを言えば、今回の首脳会議で合意された取り決めは、差し迫った危機をなんら解決するものではない。国際通貨基金(IMF)を強化したり、欧州の2つの金融安定化の仕組みを来年に向けて拡充することを検討しても、市場の信頼が回復するまで関係国の債務を支援するという巨大な仕事を前にしては、そうした策は十分でも機動的でもない。
巨大なバズーカ砲のような解決策が存在すると期待するのは、見当違いだったことが分かった。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は8日、EUの規則を盾に、ECBが重債務国の国債を無制限に買い入れるのではないかとの見方を明確に否定した。
■銀行に資金提供する案はごまかし
代わって、(債務国にではなく)欧州の銀行に対して巨額の支援を実施するという狡猾な計画をECBが計画しているとの見方が出てきた。ECBが欧州の銀行に極めて低利の資金を提供し、その資金を使って各銀行が自国の国債を購入するというスキームだ。
この議論自体は注目に値する。首脳会議は9日、債務国の債務をこれ以上削減することはないと宣言した。それならば、各銀行がECBから金利1%の資金を3年間借り受け、それで金利6%のイタリア国債を購入するとすれば、各行は一見リスクフリーの利ざやを稼ぎ、一方で債務国は借り入れコストを削減することができる。これならEUの規則に違反せず、銀行と重債務国の双方の利益にもなる。ただ国債が不履行となれば、損害は銀行が直接かぶる。
しかしこのスキームには多くの理由から注意が必要だ。実質的にはECBが欧州の銀行を通じて国債を購入することになり、EU条約の精神に合致するものではない。第2に銀行の株主は、関係国の国債を処分してきた銀行が突然、国債を買い始めることに疑問を抱くだろう。これまで長期にわたり(国債の利回り差に基づく)さや取りの機会があったにもかかわらずだ。さらに最も重要なことは、現在の危機が債務危機と銀行危機の関連から引き起こされたものとすれば、その関連をさらに強めることは理にかなうのだろうか。現在のところ、ユーロを救うほかの手段は存在しないかもしれない。しかし、これは単なるごまかしにすぎない。信頼回復に向けて、政策の明快さと政策当局者の覚悟がなによりも必要な現在の危機においては。
(c) The Financial Times Limited 2011. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819584E3E0E2E2E38DE3E0E3E0E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2
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