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(回答先: 現在のグローバル経済は無秩序で国富論を曲解した経済政策、国富論を遵守せよ 投稿者 heiwatarou 日時 2011 年 12 月 08 日 20:41:14)
Heiwatarouさん、こんんちは。
同主旨の投稿を前にも拝読しました。
気になる見解もあるので、少しコメントさせていただきます。
アダム・スミスの真骨頂は労働価値説にあり、重商主義批判もそれをベースに行われていると考えています。
物品をあっちからこっちへと動かすことで貨幣(金)的利益を得ること、それを国家までが国策をもって推進することに、道徳家でもあったアダム・スミスは我慢がならなかったはずです。
端的に言えば、国民経済における商人的利益と産業的利益の違いにこだわったと思っています。
しかし、現実を見ればわかるように、産業家は、モノをつくることで利益を得るという発想から(つくった・手に入れた)モノを売ることで利益を得る発想に“進化”し、商人的価値観にどっぷり浸るようになっていきました。
モノをつくることをカネ儲けの手段としてしか考えない企業経営者が増えたとが、この間とりわけ目立つ詐欺とも言える企業のデタラメ商法の背景にあると思っています。
そうは言いながらも、産業資本が成長を遂げるためには、自己目的ではない重商主義的な国策が必要です。
閉じた国内市場で産業資本が成長を遂げることはできないからです。
貿易収支が黒字かどうかは直接関係ありませんが、生産したモノを外に出し得たカネを手に入れる輸出が増大することでのみ産業は成長でき、それを通じての連関的波及効果で国民経済全体も拡大を遂げることができます。
昨今そしてこれからの日本を先進諸国は、モノを動かして利益を得る商人的経済主体から、カネでより多くのカネを得る金融家的経済主体がはびこり、それがさらに跋扈するようになるはずです。
前置きはこの程度にして、気になる点に少し触れたいと思います。
【引用】
「▼アダム・スミスが批判した重商主義
要約すれば、輸出で外貨を稼いでも国富にならない、国民は豊かにならないとして、重商主義を批判した。
「輸出超過国は賃金を上げ輸出を減らすべき」これが重商主義批判に答える具体策だと理解しても良いと思う。」
【コメント】
「輸出で外貨を稼いでも国富にならない」わけではありません。
貿易収支の黒字化=金(金属貨幣)の蓄積を目的とした国策(経済政策)を批判したのが反重商主義であり、輸出を増大させること自体に異を唱えているわけではありません。
「「輸出超過国は賃金を上げ輸出を減らすべき」これが重商主義批判に答える具体策だと理解しても良いと思う。」については、経済活動の順調さを是とする立場なら、あまり理に叶う考えでないと思います。
“輸出超過国は、余剰資金で自国の賃金水準を引き上げるとともに、直接投資や金融で新興国の経済(市場)拡大を支援し、新興国が生産したモノを輸入する相互主義的関係を通じて自身の経済的利益=輸出拡大も実現すべき”と考えるほうが理に叶っています。
【引用】
「▼輸出超過国は植民地と同じ
輸出超過国は安賃金で貢ぐ植民地と同じで国民は豊かになれないはず、
輸出競争力に見合う賃金を払えば輸出超過にはならない、これは経済の原則、賃金は原価だから当然のこと。
政治家もエコノミストも勿論国民も気付くべきです。」
【コメント】
「輸出超過国は安賃金で貢ぐ植民地と同じで国民は豊かになれないはず」というのは誤りで、輸出を拡大させていくなかで達成した高度成長期からバブル崩壊までの日本経済を顧みればわかるように、善し悪しはともかく、日本人は総じて物質的な豊かさを手に入れました。
「輸出競争力に見合う賃金を払えば輸出超過にはならない、これは経済の原則、賃金は原価だから当然のこと」も、金本位制的国際決済条件であればそう言える面もありますが、変動為替制ではそうは言いきれません。
賃金上昇=可処分所得増大で貿易収支黒字国のインフレ率が他の国より高くなれば、その国の通貨のレートが下がるからです。
ですから、言えるのは、“賃金を切り下げてコスト低下=輸出増加に励むことには、一企業の短期的対応としてはそこそこ意味があるが、中長期的には国民経済を縮小・疲弊させ、個々の企業にとっても利益にならない”という話です。
【引用】
「▼バイ・アメリカンは国富論からも妥当(海外からの非難もあるが)と思う
米国は「輸入超過大国なので米国には輸出しないでくれ」と要望している、
このことは重商主義批判と同じで単に米国自国のみでなく輸出超過は国民の利益にならないとして輸出超過国への警鐘にもなっている。
すなわち輸出超過国は輸出競争力に見合う賃金を払わないからで賃金上げて輸出を減らすべきとの提言だとも思う。 」
【コメント】
「バイ・アメリカンは国富論からも妥当」ではなく、バイ・アメリカンは重商主義政策の一つである保護主義ですから、国富論的には否定される政策です。
米国支配層も、労働者を中心とした国民向けの政治的ポーズとしてバイ・アメリカンを言っている側面が強く、米国のグローバル企業や金融家のためには、国債基軸通貨ドルの優越的地位を利用した国際交易政策を推進したいと考えています。
最後の結論的部分は、上述の内容を参照してください。
【引用】
「▼アダム・スミスの重商主義批判に答えるには
「輸出額=輸入額」をルールにする、輸出超過国は賃金上げて輸出を減らす。
(輸出超過で積み立てた対外純資産を考慮すれば経常収支ゼロが妥当ですね)
※比較優位は、この条件があって始めて意義があると思う。
※TPPもこの条件が必要だが「輸出額=輸入額」があればTPPは必要ないとも思う。」
【コメント】
「「輸出額=輸入額」をルールにする」と、善し悪しは別として、世界経済は縮小していくことになります。
「輸出超過国は賃金上げて輸出を減らす」というのも、短期はともかく、賃金アップ=輸出減少ではありませんし、黒字国が輸出を減らすことが、近代経済的基準に照らしたとき、世界にとっていいことでもありません。
「(輸出超過で積み立てた対外純資産を考慮すれば経常収支ゼロが妥当ですね)」の部分は、外貨準備のことなのか、対外投資のことなのかなどが不明ですのでコメントしません。
手短な説明でわかりにくい点も多いとは思いますが、ご参考にしていただければ幸いです。
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