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(回答先: キンドルバーガー第3回:自由貿易の利益は普遍ではなく「その国にとってプラスかどうかは状況に依存する」 投稿者 あっしら 日時 2011 年 11 月 18 日 00:45:34)
1929年ウォール街株式暴落を契機として始まった「大恐慌」は、意図的に引き起こされたものだが、意図的であれそのメカニズムの研究は重要だと考える。
より重要なのは、「大恐慌」の過程で進んだ工業から農業まであらゆる分野の“産業の再編”であり、国際的経済政策の当否であり、第二次世界大戦という“国家総力戦”に入ることでしか脱却できなかった経済論理の探求であろう。
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やさしい経済学
危機・先人に学ぶ:キンドルバーガー
(4)研究の第2世代
慶応義塾大学教授 竹森 俊平
20世紀の一時期を選択して経済史を執筆する企画が提供された時に、自分の青春時代にあたる1930年代をためらわずに選んだ。それが20年にもわたる経済危機の研究の始まりになった――。キンドルバーガーは自伝でこう語っている。
大恐慌に関する彼の著書は、米国の金融政策の失敗を唯一の原因とする、1963年に発表されたミルトン・フリードマンとアンナ・シュワルツ氏の研究に異議を唱えた。彼らの見解はあまりに単純で、恐慌に対して29年の米国株式市場の暴落が果たした役割も、当時の複雑な国際金融関係の影響も見落としている。
他方、彼は「ニューヨーク連邦準備銀行の総数だったベンジャミン・ストロングの死(28年)が鍵」とするフリードマンの異論の多い主張には賛同する。リーダーシップ欠如は確かに問題だった。ただ米国内ではなく、国際的なリーダーシップの欠如が真の問題だったというのが彼の読みだ。
戦後の大恐慌研究のうち、フリードマンらの研究を第1世代として整理するなら、キンドルバーガーは第2世代に属する。これに続く第3世代にはベン・バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長やバリー・アイケングリーン米カリフォルニア大学バークレー校教授らがいるが、第1世代と同じように「貨幣的要因(国内金融政策)」に恐慌の原因を求める特徴を持つ。
ただし第3世代は、金融政策の選択範囲を拘束するレジーム(制度)という新概念を導入する。恐慌が深刻化したのは各国の金融政策が積極性を欠いたためだが、その理由は金融政策が金本位制というレジームに拘束されたことで、金本位制の放棄で大恐慌脱出が可能になったという主張だ。
ただ第3世代の中でバーナンキ氏の立場は微妙だ。有名な1983年の論文は「金融危機の波及における“非貨幣的”要因」と銘打たれ、第2世代の認識に近い。同論文は株価暴落による企業の自己資本減少で貸し出しが停滞する借用収縮メカニズムを指摘した。
2007年から10年秋まで彼が行った金融政策は住宅抵当証券など取引が消滅した証券を大量にFRBが購入し、借用創造を復活させることに向けられた。第2世代の思想への回帰といえるかもしれない。
[日経新聞11月17日朝刊P.29]
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