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(回答先: 「今こそ知ったかぶりを改めよ」:非現実的モデルによる量的予測におぼれる経済学者に対する戒め 投稿者 あっしら 日時 2011 年 11 月 12 日 18:27:52)
やさしい経済学
危機・先人に学ぶ:キンドルバーガー
(2)鋭い理論的洞察
慶応義塾大学教授 竹森 俊平
学者としてのキンドルバーガーは、経済学の理論的成果を重視しながらも、現実の出来事の慎重な観察に基づいて結論を引き出すボトムアップ的アプローチで研究に臨んだと表現できよう。米マサチューセッツ工科大学(MIT)で同僚だったロバート・ソロー教授によると、それがどんな立場であれ、都合の悪い事実を無視してある理論的立場の正しさを主張し続けることほど危険なことはないと彼は考えていたという。
ここで、前回紹介したマクロ経済学は知ったかぶりをやめ、謙虚になるべきだというR・カバレロMIT教授の議論を再度取り上げる。謙虚になるということは数学を用いた理論モデルを放棄して、ひたすら実務家の意見に耳を傾けることではないと彼は述べる。
「危機の連鎖」といった問題への有効な政策を模索するためには、その問題が発生する仕組みをモデル化することが役立つからだ。
また、量的予測を最終の目的にする「中核」の標準理論モデルに、特定の出来事の説明を目的とする「周辺」の洞察を総合する試みはうまくいかないだろうとも主張する。なぜなら「危機の連鎖」が起こる原因を究明していけば、いずれは「経済行動の合理性」という標準理論モデルの柱である前提と衝突するからだ。
カバレロの指摘は、20年以上も経済危機を研究したキンドルバーガーの業績を評する上でも参考になる。著作に数式が出てくることはまれだが、彼の研究を「実務家の洞察」と片付けることはできない。そこにはいつも理論の裏付けか理論の模索があるからだ。
1930年代の大恐慌が英国から米国へとリーダー国が転換する過程で起きたため深刻化したという彼の有名な主張を考えよう。この主張が出された60年代にはこれを数式による理論モデルとして表すのは困難だったが、今なら可能だ。つまり彼は、将来ならモデル化が可能な「理論的に正しい洞察」を提示したのだ。
また彼は「合理的期待」のように人間の予測能力を極端に高く見る立場を否定したが、議論の出発点として「合理性」を置く有用性は認めた。しかし本当に興味をもったのは、合理性が満たされないために経済危機が発生する仕組みを探求することだったのである。
[日経新聞11月15日朝刊P.27]
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