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日経新聞で11日朝刊から連載が始まった竹森 俊平慶応大教授の「やさしい経済学」の第1回目は、故キンドルバーガー元MIT教授を紹介したものである。
不勉強でキンドルバーガー氏は名前を知っている程度だが、竹森氏は、経済学の論戦を歴史的に捉え直した論考を読んだことがあり、東大大学院教授の伊藤元重氏よりも優れた学者だと受け止めている。
ここで書かれている通り、ちょっと叩けばホコリが出るようなモデルで行ったマクロ予測を、もっともらしく取り上げ“現実”であるかのように語る経済学には違和感があったので転載させていただいた。
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やさしい経済学
危機・先人に学ぶ:キンドルバーガー
(1)古典で「今」を読む
慶応義塾大学教授 竹森 俊平
先の読めない時代になった。小国ギリシャで発生した財政危機が、なぜユーロの崩壊につながりかねないのか。なぜ世界経済がここまで追い詰められるのか。仮にそれを「説明」することばできても、1年前にこうなると「予測」するのは、今のマクロ経済モデルでは不可能だっただろう。
かつてフリードリヒ・ハイエクは経済学に量的予測は不可能で、パターン予想、つまり特定の出来事の説明ができるだけだと述べた。ハイエクとケインズというと正反対の経済思想家とされるが、両者は互いに尊敬し数式による明示的な経済モデルを提示しなかった点でも共通する。おそらくケインズもハイエクと同様、量的予測への懐疑を抱いていた。ハイパーインフレも深刻なデフレもあった両大戦間の経済を実見すれば、単純な仮定に基づく数理経済モデルなど子供の遊びに等しく思われただろう。
先の見えない経済危機は異常事態だが、病気の研究で身体機能の認識が深まるように、経済危機の研究も経済を深く知るために必要な作業だ。大恐慌を経験したハイエク、ケインズなど先人が不透明な今を読む手助けとなるのはこのためだが、バブル、恐慌など経済の病理現象の観察に傾注した、米マサチューセッツ工科大学(MIT)教授のチャールズ・キンドルバーガー(1910〜2003)の研究も今こそ役立つ。
MIT教授としてはるか後輩のリカルド・カバレロは最近の論文、「危機後のマクロ経済学―今こそ知ったかぶり(Pretense of Knowledge)を改めよ」で、量的予測を可能にするため非現実な仮定を便宜上用いたことを忘れ、自らの「標準的理論モデル」が現実に適合すると誇大宣伝したマクロ経済学の「中核」の傾向を批判した。今こそ経済学は知ったかぶりをやめ、自己の予測能力の限界を認め、特定の出来事を説明する「周辺」の研究に集中すべきだと主張する。今後経済学がそう発展するなら、キンドルバーガーは先駆者として再評価されるだろう。
たけもり・しゅんぺい 56年生まれ。ロチェスクー大博士。専門は国際経済学
[日経新聞11月11日朝刊P.27]
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