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「40歳以上の日本人男性はいらない」イオン人事担当者の本音とドジョウの進む道
2011年9月8日 木曜日
小平 和良
「40代以上の日本人男性社員はもういらないんですよ」
新幹線の車内で話を聞いたイオンの人事担当者ははっきりとこう言い切った。ここ最近の取材で聞いた言葉の中でも、強く印象に残ったものの1つだ。
日本企業各社が外国人の採用を増やし、新興国を中心に海外シフトを強めているのは、日頃の取材や報道を通じて分かっていた。それでも、内需型産業の典型でもある流通業の人間から、しかも取材の中でこのような率直な言葉が出てきたことに驚いた。
全国に100以上の大型ショッピングセンターを作り、規模を拡大してきたイオンは昨年秋に発表した経営計画で戦略を大きく転換した。他の多くの企業と同様に、海外により多くの経営資源を投じて成長を目指す方針を打ち出したのだ。
これまでも同社は中国やマレーシアなどでスーパーやショッピングセンターを運営してきたが、経営の基盤はあくまでも国内にあった。岡田元也社長は米国への留学経験もあり、社長就任当初からグローバル企業への変身を訴えてきた。しかし、その掛け声とは裏腹に、イオンは内需中心の事業構造であり続けた。様々な課題はあっても、国内中心で十分に成長できる余裕がまだあった。
世界各地で人材採用を始めたイオン
だが、ここへきていよいよ海外展開に本腰を入れ始めた。背景には、2007年に施行された改正まちづくり3法によってイオンが得意としてきた郊外型の大型ショッピングセンターが作りにくくなってきたこともある。なにより、人口減と過疎化の影響がはっきりと現れ始め、国内での成長シナリオが描きにくくなった。
イオンが今年から3年間で海外に投資する額は過去3年間の3倍弱になる計画だ。日本のほか中国と東南アジアにそれぞれ、地域を統括する本社機能を置く「3本社制」を敷く段取りも今年に入って進めている。イオンの連結売上高は現在約5兆円。これをアジアでの出店加速などによって、2020年には10兆円台の後半に持っていこうとしている。これは売上高が約30兆円超の米ウォルマート・ストアーズには及ばないものの、英国のテスコなどを上回る規模で、文字通りグローバル企業の仲間入りをしようという壮大な構想だ。
海外での事業拡大計画に伴って、人材採用の面でも大きな変化が出てきた。現在のイオンの従業員数は全世界でざっと30万人。仮に2020年の構想を実現するとなると、100万人規模の従業員が必要になるという。増える人員の多くは当然、日本以外の国で働くことになる。
そのため、イオンは今年から海外での採用活動を本格的にスタートさせた。この秋から中国の北京や上海、香港のほかマレーシアやベトナム、米国の西海岸でも採用活動をする。夏にはロンドンでクレジットカードなど金融事業に関わる人材を募集したところ、想定を上回る応募があった。
外国人の従業員が増えるのに合わせて、人事制度にも手を入れる。報酬や福利厚生、研修などを順次、変えていく考えだという。
冒頭の発言はこのような人材採用や人事制度の改革について話をうかがっていた時に出てきたものだ。他の多くの日本企業と同様に、イオンの正社員は日本人男性が大半を占める。経営陣に外国人や女性もいるものの、やはり多くは日本人男性である。しかし、この人事担当者は言う。
「日本のお店で育ってきた日本人社員は使いようがなくなるだろう。同じ小売りの店だから共通するものがあるという考え方もあるが、経済規模や文化が違う地域では日本の考え方がそのまま通用するかはわからない。例えば、日本の店ではレジに多くの従業員を割いているが、アジアの国々の労務コストや文化などを考えた場合に、それが正しいかどうか。日本の店での経験が邪魔になることもあり得る」
ここまではっきりとした物言いをするのは、日本人の従業員に奮起を促す狙いもあるのだろう。その一方で、国内にしがみついているだけの人材ばかりでは、企業として生き残っていけないという危機感が透けて見える。
「日本の企業であることはあきらめた」
9月5日号の日経ビジネスでは「“出稼ぎのススメ” 空洞化が日本を潤す」という特集記事を組んだ。「企業や人材の海外進出が国内の空洞化をまねく」という単純な悪玉論ではなく、グローバルに活躍する企業や人材が増えることが日本の成長には不可欠である、という問題意識から生まれた特集だ。筆者自身はこの特集記事の制作に直接関わってはいないが、この問題意識には共感する。
グローバルな人材を増やすことがそれほど簡単でないことは理解できる。自分がグローバルな人材かと問われれば、「ごめんなさい」とあやまるしかない。それでも変わることでしか、この閉塞を打ち破る方法はないのではないか。
イオンの人事担当者は取材の中で、こんな言葉も口にした。
「我々は日の丸を背負っている。でも、日本の企業であることはある意味であきらめた。現在の日本の政治では企業は守れない」
企業の理念や考え方には日本の文化が残るものの、事業や会社の機能は日本からは離れたものになっていくということだろう。こうした企業の動きを是とする考え方がどこまで広がるかに、この国の未来がかかっていると言ってもいい。
今月2日、野田佳彦氏を首相とする新しい内閣が発足した。野田首相は民主党代表選の演説で自らをドジョウに例えて、泥臭い仕事ぶりでこの国の難題に当たることをアピールした。
確かに詩人の相田みつを氏の作品を引用した「ドジョウ演説」は面白かったと思う。でも、ドジョウだからといっていつまでも泥の中にいてもらっては、企業はますます窮するばかりだ。 「空洞化=悪」という類型的な考えにとらわれていては、日本はいつまでも成長できない。ドジョウといえども大海原に出ていく気概を持って、新しい日本の姿を描くことが、企業にとって何よりの助けになる。
このコラムについて
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
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著者プロフィール
小平 和良(こだいら・かずよし)
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