http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/111.html
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規制緩和だけでは投資の増加は小さく、増税と歳出削減を前倒しするなら、かなり失業が増加することになる。
バラマキ公共事業は確かにまずいし、高齢者向けの社会保障の削減(効率化)は不可欠だが、
長期的な政策と短期的な政策のバランスを考え、
短期的には人的公共投資を増やしたり、長期失業世帯向けの迅速な生活保護を行うなどの対策がなければ、
生存権や最低限度の文化的な生活を憲法に規定してある福祉国家としては失格だろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/20734
野田首相は「日本化」する世界に手本を示せるか 経済政策にフリーランチはない 2011.09.01(木) 池田 信夫
野田佳彦新首相は8月15日のブログ記事で、Economist誌の「日本化する欧米諸国」という記事に「衝撃を受けました」と書いている。この記事を紹介したあと、彼はこう決意を表明する。
<わが国に対する海外メディアの厳しい視線を強く感じました。そして、「やるべき事をやっていない」と、多くの国民の方々こそが思っているのではないでしょうか。 今、日本の国政に最も求められているのは、危機に際して「やるべき事」を実行することです。>
「やるべき事を実行する」というのは同語反復で、問題は何が「やるべき事」かである。Economist誌も指摘するように、それは明白だ。政府および民間の過剰債務を減らし、成長分野への投資を増やすことである。
増税から逃げて日銀を叩く政治家たち
ところが先週末の民主党代表選挙では、政府債務の削減について言葉を濁す候補が多かった。増税に言及したのは野田氏だけで、あとの候補は「今は増税の時期ではない」とか「景気がよくなってから」とか、問題を先送りする発言が目立った。
確かに歳出削減もしないで増税が先行すると、税率を上げてもGDP(国内総生産)が下がったら税収も下がるおそれがある。したがってGDPを上げることが重要だが、そのために財政支出を増やすと財政赤字はさらに悪化する、というジレンマに陥ってしまう。
財政赤字を増やさないでGDPを上げる方法は金融政策しかない――というわけで、国債の日銀引き受けとか量的緩和を唱える候補が多かった。要するに、国民のいやがる増税から逃げて、日銀をスケープゴートにしているわけだ。
お札をどんどん印刷すればデフレも円高も終わるなら、これほど簡単なことはない。日銀はそんなことも知らないほどバカなのだろうか?
失敗に終わったアメリカの金融緩和
残念ながら、経済政策にそんなフリーランチはない。それを実証したのが、最近のFRB(米連邦準備制度理事会)の政策である。ベン・バーナンキ議 長は、かつてプリンストン大学教授だった時、日銀のデフレ対策を批判して「通貨供給を際限なく増やせば、いつかはインフレが起こる」と主張した。
そしてFRB議長に就任したあと、彼は大規模な量的緩和(QE)を2度にわたって行い、FRBのバランスシートを3倍以上に膨らませた。彼の主張が正しければ、それによってインフレが起こり、不況から脱却できるはずだが、その結果は最近の世界同時株安だ。
これに対してFRBが3度目の量的緩和を行うかどうかが注目されたが、先週のジャクソンホール講演でバーナンキはQE3を打ち出さず、「アメリカ経済の長期的な回復」のための財政政策が必要だと提言した。
多くのエコノミストは、この決定を当然と受け止めている。QE2によってインフレは起こらず、政策金利は事実上ゼロに張り付いたままだ。アメリカはかつての日本と同じ状況になりつつある、とポール・クルーグマンは批判している。
彼も指摘しているように、FRBが通貨供給(マネタリーベース)を爆発的に増やしたにもかかわらず、物価にも金利にもほとんど影響はなかった。
これは日本の状況とまったく同じである。以下の図のように日銀も2002年以降、マネタリーベースを最大36%も増やしたが、デフレは脱却できなかった。
「やるべき事」は財政再建と規制改革
このように欧米諸国が「日本化」しているのは、その不況が過剰債務という共通の原因で起こっているからだ。欧米では住宅バブルで民間の債務が増え、その破綻による銀行救済や景気対策で政府支出を増やしたため、政府債務も史上空前の規模になっている。
その結果、企業部門が過剰債務を返済するため、借り入れより返済のほうが多くなっている。つまり資金需要がマイナスになっているため、金利がゼロに張り付いてしまうのだ。
この状況では、いくら中央銀行が通貨供給を増やしても資金需要がないので、市中に流通する資金(マネーストック)は増えず、したがってインフレにはならない。
為替レートについても同じである。「日銀が通貨をどんどん発行すれば円安になる」などということはありえない。他の条件が同じなら、為替レートは 物価上昇率の違いで決まるが、ゼロ金利で通貨をいくら発行してもインフレにならない以上、円安にもならないのだ(ドル安になったのは債務危機でドルへの信 認が低下したためだ)。
もちろん財務省が介入してドルを買えば、円は下がる。これは財政政策であり、それによって為替差損が発生した場合には納税者の負担になる。
景気対策も同じで、政府が財政支出を増やせばGDPは必ず増えるが、財政赤字も増える。やはり財政と景気のジレンマは残るのだ。
この点はバーナンキも認め、「長期における頑健な経済成長を支える経済政策のほとんどは中央銀行の所管外にある」と財政政策に下駄を預けている。 ただ彼の言う財政政策とは、バラマキ公共事業でGDPを増やすことではなく、長期的には財政が健全化するという見通しをはっきりさせることによって企業の 投資や家計の消費を促進することもできる。
この点で「財政タカ派」の野田氏が首相になったことは必ずしも悪くないが、必要なのは増税だけではなく、年金などの社会保障支出を大幅に削減して政府債務を削減し、労働市場などの規制改革によって企業の投資を促進することだ。
選挙で負けることを恐れてそういう「やるべき事」を先送りしていると、日本は欧米諸国に抜かれて置き去りになるかもしれない。
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