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Re:  米国債がデフォルトした場合、日本はどのような影響を受けるのか?
http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/576.html
投稿者 sci 日時 2011 年 7 月 30 日 18:52:49: 6WQSToHgoAVCQ
 

(回答先:  米国債がデフォルトした場合、日本はどのような影響を受けるのか? 投稿者 sci 日時 2011 年 7 月 26 日 00:31:18)

   Q:米国債がデフォルトした場合の日本への影響は?

   ◇回答

    □菊地正俊  :メリルリンチ日本証券 ストラテジスト
    □金井伸郎  :外資系運用会社 企画・営業部門勤務
    □北野一   :JPモルガン証券日本株ストラテジスト
    □三ツ谷誠  :評論家・IRコンサルタント

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■今回の質問【Q:1222】


 冷泉さんのレポートに詳細が紹介されていましたが、アメリカでは「財政再建問題」
を巡って、オバマの民主党と、共和党の対立が続いています。このまま対立が続き、
収拾不可能となり、「デフォルト」という事態になった場合、世界経済、および日本
経済はどのような影響を受けることになるのでしょうか。

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                                  村上龍
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 ■ 菊地正俊  :メリルリンチ日本証券 ストラテジスト

 バンクオブアメリカ・メリルリンチが7月27日に行った米国の債務上限引き上げ問
題を巡るグローバル・コンファレンスコールには、1,000人以上の世界中の投資家が
参加するほど関心が高いものがありました。円高にもかかわらず、最近、日本株は他
国を上回るパフォーマンスを示しています。政治混乱は続いていますが、地震以降の
民間企業の頑張りで、サプライチェーンは早期に修復されました。来年には大型三次
補正予算の執行が期待されますので、景気回復期待は根強いものがあります。足元は
消費も予想より底堅く、小売業では業績の上方修正が相次ぎました。但し、人口が減
少している日本は、米中経済への依存度を強めているため、米国経済やドルが大きく
揺らげば、悪影響は避けられません。

 弊社の米国エコノミストは、米国の実質GDP成長率予想を2011年2.3%→2012年2.9
%をメインシナリオとしながら、米国債がAAに格下げされれば2012年成長率を0.5ppt
下方修正、予想よりも1,000億ドル歳出削減額が大きくなれば0.7ppt下方修正が必要
になるとしています。市場のコンセンサス予想は2011年2.5%→2012年3.0%であるた
め、債務上限交渉が破談に終われば、米国経済予想の下方修正幅は弊社予想より大き
くなるでしょう。弊社日本エコノミストは、日本の実質GDP成長率予想を2011年-0.3
%→2012年3.6%と、V字型の景気回復を予想しています。2011年は地震の影響で落ち
込むものの、2012年は復興関連支出などで回復の確実性が高いことが、世界の投資家
から評価されています。

 弊社為替チームは円ドルレート予想を2011年末86円→2012年末95円と予想していま
すが、米国債務上限問題が解決されなければ、ドルの準備通貨としての地位がさらに
揺らいで、FEDはQE3を迫られ、ドル安が進むとしています。米国経済予想の下方修正
とドル安の進展は、日本経済予想の下方修正につながるでしょう。日本の米国向け輸
出や中国経由の間接輸出が減少したり、日本企業の米国売上の減少が予想されるため
です。弊社米国株ストラテジストは、今後12カ月のS&P500の目標値を1,400ポイント
としながらも(7月28日終値は1,300ポイント)、米国債がディフォルトすれば、S&P
500が1,100ポイントに下落するリスクがあると指摘しています。米国株が大きく下落
すれば、米国の消費マインドの悪化につながるほか、日本株の追随安も避けられない
でしょう。

 8月2日に決まる米国の債務上限引き上げ問題や、8月1日のISM製造業指数、5日の雇
用統計によって、株価指数はどちらにでも転びやすいので、投資家はリスクを取りに
くい状況になっています。債務上限引き上げ問題は弊社エコノミストのメインシナリ
オを含めて、最終的には妥協するという見通しの方が多くなっています。実際にはク
リアカットな解決ではなく、ギリシャ問題同様に、先行き不安要因が残る妥協策にな
る可能性が高いでしょう。何らかの妥協がなされれば、株価指数とドルは一旦反発す
るでしょうが、その後も世界経済の減速懸念や不安定なドルの動きが株価指数の上値
を抑えるでしょう。世界の金融市場のストレス度合いを示す弊社Global Financial
Stress Indexは高止まりしているものの、ギリシャやイタリア危機に揺れた直近高値
よりは下にあるため、市場は極端なリスク回避姿勢を取っていないことを示唆します。
そのため、万が一米国の債務上限問題が破談に終われば、世界の金融市場に衝撃が走
るでしょう。

               メリルリンチ日本証券 ストラテジスト:菊地正俊

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 ■ 金井伸郎  :外資系運用会社 企画・営業部門勤務

 債券の評価を決める基準となる絶対的な2つの価値があります。1つは債券が支払
いを約束する利金と償還金の現在価値、2つ目は債券の発行者自身の持つ価値です。
後者は発行者の持つ資産を全て処分して得られる清算価値、あるいは発行者が企業で
あれば、事業が将来にわたって生み出すキャッシュ・フローの現在価値のいずれかと
なります。債券の評価は、この2つの価値の間の相対的な位置付けで決まります。

 その一方の基準点を事実上与えていた米国債が、形式的とはいえ「デフォルト」と
いう事態になった場合に債券市場全体に与える「困惑」、混乱とは言わないまでも、
は軽視できません。ここで「形式的」なデフォルトとしたのは、米国債の保有者が何
らかの直接的な負担を強いられることがない、という意味においてです。

 一方で焦点となっているギリシャの状況を見ますと、すでにギリシャ国債の保有者
は保有する債券の市場価格が半減させられている上に、償還を迎える債券については
市場実勢よりも不利な条件でのロール・オーバー=乗換えを「自発的」に受け入れさ
せられることで2割程度の損失を負担することになりそうです。既にこのような状況
の中で、欧州の政府・金融当局と格付け会社の間では、ギリシャの「デフォルト」認
定を巡って激しいやり取りがあったと報じられています。

 このように極端に状況の異なる米国債とギリシャ国債について、いずれも「デフォ
ルト」認定が焦点とされている背景には、それぞれを対象として取引されているクレ
ジット・デフォルト・スワップ(CDS)取引の清算のトリガーの問題があるようで
す。実際、欧州の政府・金融当局は、ギリシャ国債の「デフォルト」がCDS取引清
算のトリガーとなって、CDSの買い手=ギリシャ破綻に賭けている投機筋に多額の
精算金が渡ることに対しては、倫理的な問題を指摘しています。また、これまで多額
の公的支援を受けてきた金融機関がこうした金融取引で多額の損失を出し再度支援を
必要とするような状況となれば、政治的にとても耐えられるものではありません。

 しかし、現実にはさらに厄介な問題もあるように思います。むしろギリシャ国債や
米国債が「デフォルト」認定されるような状況でも、CDS取引の清算が行えない、
という事態を招くことで取引機能の不備が露呈し金融市場の混乱につながるリスクも
あると考えています。

 CDS取引は米国の社債市場を中心に発達してきました。そのため、米国の社債市
場のようにデフォルト条項が債券発行目論見書に明確に定義され、かつデフォルト後
の清算あるいは企業更生の手続きが短期間で高い透明性の下で執行される法制度が整
備された市場で機能するように設計されています。客観的な損害額の認定が迅速に行
えることでこそ、保険として機能できるというわけです。

 しかし、各国の政府が国内で発行する国債については、明確なデフォルトの定義は
ありません。さらに、今回のギリシャ国債の格付けについても一部の債券のみが債務
不履行となるSD=選択的デフォルトというステータスが適用されるといわれていま
す。これは、国債の場合には、社債のように一部の債務でも不履行が発生すれば全て
の債券を繰り上げ償還請求の対象とする条項を備えおらず、必ずしも一律に債務の再
編が行われるわけではないためです。

 このようなCDS取引での米国債の保証料は10年物が足許で0.7%程度となってお
り、過去最高水準に上昇しているとの指摘もあります。しかし昨年末時点での水準が
0.6%程度であったことを考慮しますと、「財政再建問題」を巡る短期的な影響はそ
れほど大きなものとはいえません。同じ時期に、日本国債の保証料は10年物が足許で
1.25%程度と昨年末時点から0.2%程度上昇していますが、こちらも大震災や原発事故
の影響を考慮すれば、米国債のデフォルト問題が大きく影響しているとはいえないで
しょう。

 むしろ、リーマン・ショックの直前までは米国債と日本国債の保証料はともに0.2
%程度であったことを考慮しますと、リーマン・ショック以降の国際金融危機による
金融システム維持のための財政負担の増大や世界的な景気後退による税収の落ち込み
による財政悪化などもあり、特に先進国の公的部門のクレジットは低下傾向にあると
いえます。

 また、長期的かつ構造的な問題として、国の信用力の裏付けとなる徴税権の行使力
を弱体化させている要因もあります。今回の米国での「財政再建問題」を巡る政治的
な対立などもその一つですが、先進国では企業の他国籍化によって国内での法人課税
強化に対抗する回避行為も想定されますし、またユーロ圏などでは域内での移動の自
由化により財政難で所得税増税と行政サービス低下が進む地域からの住民の流出とい
う問題も懸念されます。このような自国企業や自国民の国の債務への支払いの意思の
低下が、結果的に国のクレジットの低下させる要因となっている面もあるのではない
でしょうか。

 逆説的になりますが、日本は大震災と原発事故という未曾有の災害による財政負担
(EUによるギリシャ救済の規模に匹敵)を負いながらも、CDS取引の保証料で見
れば小幅なクレジットの低下に留まっているのは、大震災を機に国民の一体感、特に
復興支援への負担を甘受する世論が盛り上がったことも要因となっているのではない
かと思います。復興財源については、国民世論の盛り上がりを受けて直ちに増税によ
り手当てすべきか、あるいは景気情勢を考慮して当面は税負担の増加を先送りするべ
きか、議論は分かれています。しかしながら、増税を含めた議論が冷静に行われる政
治環境が、日本のクレジットにとって重要なサポート要因になっているといえるので
はないでしょうか。

 ただし注意しなければならない点もあります。現在、5年物国債利回りは米国で約
1.5%、日本で約0.4%となっていますが、インフレ連動債の利回りを基にした実質金
利(期待インフレ率を差し引いた金利)では、米国が約マイナス0.6%、日本は約0.6
%となっています。これに対しては、日本の経済状況からしますと実質金利が高すぎ
るとの見方もあります。その要因としては、日本での期待インフレ率が低すぎるのか
(約マイナス0.2%)、期待インフレ率に対して国債利回りが高すぎるのか、という
問題があります。日本国債のCDS保証料が5年物でも約0.9%と相当高いことも考慮
しますと、一見した名目上の低金利とは裏腹に、日本はすでに過大な公的債務残高に
よるクレジット悪化のコストを負担しつつある、という可能性も否定できません。

                外資系運用会社 企画・営業部門勤務:金井伸郎

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 ■ 北野一   :JPモルガン証券日本株ストラテジスト

 米連邦債務の上限問題、私には、日本のメタボリックシンドロームの診断基準に見
えます。ウエスト85?以上は要注意、心筋梗塞や脳梗塞の危険性が高まるというあ
れです。現在の連邦債務の上限である14.3兆ドルは、このウエスト85?のようなもの
だと思います。債務を減らすために増税をするのか、歳出を削減するのか、というの
は、体重を減らすのに、運動をするか、食事を減らすかというのと同じでしょう。

 その議論がなかなか纏まらないので、逆に血圧が上がって卒倒しそうになっている
のが現在の市場です。ただ、85?に科学的な根拠があるのかないかを問わず、これが
一つの目安として認識され、その基準の達成に真面目に努力をしている様は、基本的
に不健康ではありません。それでも「デフォルト」になると何が起きるか分からない
ので、「手元資金厚く有事モードに」(7月29日の日本経済新聞)ということで、米
国のシティ・グループは「複数の対応策を練り、債務上限が引き上げられない場合の
シナリオも準備している」し、バンク・オブ・アメリカも「各種の危機管理計画を策
定中」だと報道されております。

 このXデー(8月2日)を前にした緊張感は、なんとなく西暦2000年を前にし
たY2K騒動を彷彿とさせます。Y2Kとは、コンピューターが年数を扱う際に、下
二桁のみで行っている場合、西暦2000年になると、これを判断できずに誤作動す
る可能性があると大騒ぎになった問題です。当時は、万が一に備えて、FRBは潤沢
に資金を供給しておりました。その頃、ITバブルの真っ最中であったわけですが、
Y2K問題を警戒して供給された資金が火に油を注ぐことになったと言われたもので
す。

 結果的に、Y2Kでは、何事も起きませんでした。あらかじめ、準備していたせい
もあるでしょう。一方、ほんの小さな「デフォルト」が、大規模な市場の麻痺をもた
らしたこともあります。1997年10月31日の日本の短期金融市場、三洋証券は
ぎりぎりの資金不足を補うために、10億円を無担保コール翌日物で調達しました。
一方、債券貸借市場でも三洋証券は83億円を調達しました。

 これらに無担保で信用を供与したのは、群馬中央信用金庫と都城農協でした。あわ
せて93億円。

 これが三洋証券の会社更生法の手続き開始によって返済不能になりました。史上初
のデフォルトの発生をうけ、短期金融市場では資金の出し手がいなくなりました。そ
の結果、北海道拓殖銀行の資金繰りが一気に悪化し、破綻を余儀なくされました。そ
の当時は、93億円のデフォルトから、大手銀行が資金繰り破綻に追い込まれるとい
う事態を想像できませんでした。

 逆に、1998年に日本長期信用銀行が破綻する前には、大手銀行の連鎖破綻が懸
念されておりました。デリバティブの想定元本が大手18行で2千2百兆円に達して
いたからです。ただ、結局、特に連鎖破綻は発生せず、逆に、長銀破綻後に、株価は
上昇に転じましたし、景気も回復に向かいました。最近では、2009年10月、ギ
リシャで政権交代が行われ、旧政権下での財政赤字の隠蔽が明らかになりました。そ
の時に、菅首相は、まさか、ギリシャは対岸の火事ではないという大騒ぎのもと、半
年後に自分が首相になるとは思わなかったでしょう。

 なかなか、将来に起きることを想像するのは難しいものです。どこに何が隠れてい
るのかも分かりません。風が吹けば桶屋が儲かる以上のアクロバチックな因果関係の
連続が起きたりもします。以上から、二つ経験則をあげるなら、「蟻の一穴」あるい
は「大山鳴動鼠一匹」です。ただ、分からないなりに、ある事象が引き起こすであろ
う出来事を想像するのは、とても大切なことです。その際に重要なことは、他の条件
は一定ではないので、たった一筋の因果関係の連鎖だけにとらわれないようにするこ
とです。

                 JPモルガン証券日本株ストラテジスト:北野一

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 ■ 三ツ谷誠  :評論家・IRコンサルタント

「弱者のための国家」

 国家の本質をどのように考えるのか、そこには様々な視点が成立しうるのだと思い
ますが、基本的にはそれは支配?被支配の関係に還元され、支配されるものは逆にそ
の事によって安全を確保される、或いは生そのものを担保される、そのような構造を
持つ関係性の表象である事は間違いないでしょう。そしてその支配?被支配の根源を
支えるものは暴力に他なりません。

 最も強い者が群れを支配し、逆に群れに集う者を餓えや外敵から守る、それが国家
の本質なのだと思います。

 また暴力を広義に解釈すれば、呪術の支配する世界では「例のあの人」ヴォルデモ
ートではありませんが(笑)、マジカルな意味でも高い霊威を持つ者が王であるでし
ょうし、合理性が支配する世界では科学が作り上げた核兵器や空母が王を王たらしめ
る要素となるでしょう。

 そのような考察からすれば、国家は最後にはその本質である暴力を使って債務を打
ち消す事が可能になります。それが、国民に向けられた場合は最後には税という形で
償還原資、利払い原資を得る事に繋がりますし、国民が含まれるという意味で複雑さ
はあったにせよ、借金を踏み倒すという暴力を発動させる事も、国家という機構は選
択する事ができるでしょう。

 一方で近代が作り上げた資本主義の世界は、暴力とはまた別の世界を成立させる論
理・生理を持っていて、それは「信用」ではないかと考えています。誰かが誰かを信
じ、その無限の信じ信じられるという感情の連鎖の中で、価格をシグナルに、貨幣を
媒体として資本の世界はその運動を続けているのでしょう。それは無限に細分化され
た(こうしている現在も細分化された)分業を生理として生み出し、その分業の広さ
と深さこそが、この豊かさの源泉になっています。

 信用、信じ信じられる、という関係は、結局、債権者と債務者を発生させますが、
それは原罪という負債を「あらかじめ負ってしまっている」と考え、その(神への)
負債から自由になり救いの確証を得たいがため労働に従事するというエトスを持つ人
々には極めて親和性の高い行動原則の世界なので、それがこの世界を拡大させていっ
たと考える事は可能でしょう。

 また、御恩という債務に奉公で報いるという論理、エトスとしての武士道がおそら
くは商業の世界にまで浸透していた江戸期の日本人にもそれは親和性の高い世界であ
ったとも言えると思います。

 デフォルトは当然、信用という資本の世界の根源を成す原理の否定であって、その
原理が崩れる事の動揺は激しいものがあると思いますが、たまたま資本の世界にプレ
イヤーとして登場している国家であっても、国家は国家なので、暴力を持たず、常に
提供する財やサービスが人々に需要され貨幣が還流しないと債権の償還原資、利払い
原資を持つことのできない企業というプレイヤーに比べ、最後には増税という手段を
持つ国家は、まあ、最後には何とかなると考えていいような気がします。少なくとも
相対的に恵まれている原理の違うプレイヤーです。また、増税という形で搾り取る国
民さえ不足している国家であっても、複雑な政治の力学が働いて、他の国家が支援し
てくれる可能性も十分にあります。

 資本の世界、信用の世界を最後に司るのは金融になりますので、その世界の住人
(大手の金融機関や大手投資家)からすれば、増税してでも相互融通してでも金融秩
序を乱さないでくれ、というのが希望になりますが、最近のあきらかな傾向として、
国家が増税というカードを切れなくなっている現実については深い考察が必要でしょ
う。

 日本の場合それは、弱者からこれ以上を搾り取るのはやめてくれ、という論調での
増税忌避、それがそのまま選挙を不利にする、という解釈が多いと思うのですが、本
当に考えるべきは、富裕層や法人から税金を取ってそれを弱者救済に使う原資にする
のはやめてくれ、というティーパーティの主張にこそあるような気がします。

 国家が相互扶助組織であり、そのために被支配者は支配者にその身を委ねるのだと
すれば、国家が牙を剥く対象は、寧ろ社会的強者や違う原則に実は依拠する資本の世
界の擬制的な人格であり、逆に社会的弱者は、その国家の本質をどう戦略的に使うか
をこそ構想すべきでしょう。イタリアにせよ、フランスにせよ、アメリカにせよ、ポ
ピュリズムが世界を覆うのは、弱者のためにこそ国家は存在する、という事実が浮き
彫りになりつつある事の顕れだと思います。

 万国のプロレタリアートよ、団結せよ、団結し、資本の世界はそのままにして、そ
の豊かさを享受するために、まずは国家を乗っ取れ、とでもいう話しでしょうか。

                    評論家・IRコンサルタント:三ツ谷誠

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ●○○JMMホームページにて、過去のすべてのアーカイブが見られます。○○●
          ( http://ryumurakami.jmm.co.jp/ )
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JMM [Japan Mail Media]                No.646 Monday Edition-2  

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