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(回答先: 欧米コンビが演じる「自ら招いた危機」 投稿者 sci 日時 2011 年 7 月 28 日 08:49:33)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/16478
ベルギーはもはや国ではない
2011.07.27(Wed) (英エコノミスト誌 2011年7月25日号)
欧州の債務危機がベルギーの政治的行き詰まりの解決に寄与する可能性
内閣不在249日、ベルギーが世界最長記録を達成
ベルギーは今年2月、内閣不在期間がイラクを抜き、不名誉な世界最長記録を達成した(ベルギー・ゲントで、長期にわたる内閣不在状態に抗議し、デモに参加する人たち)〔AFPBB News〕
シュールレアリスムの画家、ルネ・マグリットを生んだベルギーだが、どんな芸術作品も、この国の政治のシュールさにはまずかなわない。ベルギーでは、正式な政府がない状態が400日以上も続いている。
今年に入って、国民は心配し始めた。
市民は連立を求める抗議活動を行った。ある議員は各政党の党首の配偶者に対し、連立政権が成立するまで党首とのセックスを拒否するよう求めた。ある俳優は、男性はひげを剃ることを拒もうと呼びかけた。すべてが無駄だった。
これまで以上にひげが伸び、愛を交わすこともなくなったかもしれないベルギーでは、ワロン人とフラマン人の対立が、泥と血にまみれた戦闘こそないものの、かつてフランドル(フランダース)地方に築かれた塹壕線と同じくらい不条理な膠着状態に陥っている。
7月21日の建国記念日の演説で、国王アルベール2世はこの窮状に遺憾の意を表明し、歩み寄りを促した。しかしベルギー国王はいまや「国なき君主」だ。あるメディアの論説委員は、マグリットが描いたパイプの絵にひっかけて、「Ceci n’est plus un pays(これはもはや国ではない)」と述べている。
7月21日、ちょうど国王がブリュッセルで軍のパレードを閲兵しようとしていた時、欧州連合(EU)の首脳はその近くでユーロ救済策を話し合う会合を開こうとしていた。この2つの危機には相通じる部分がある。ベルギーにとっても単一通貨ユーロにとっても、分裂はもはや考えられないことではないからだ。
EUの縮図か欧州の希望か
実際、ベルギーはEUの縮図と見なすこともできる。ゲルマン系のフラマン人が住む裕福な北部が、ラテン系のワロン人が住む貧しい南部を経済的に支えることにうんざりしているのだ。ベルギーほどの豊かな小国で内部対立を解決できないとしたら、EUの内部対立を解決できる可能性はどれほどあるのか、と問う声は多い。
だが、一部の向きにとっては、ベルギーは欧州の希望でもある。ベルギーは何とか機能している。ゴミ収集もほぼ正常通り行われている。暫定政府の閣僚は公共の場でブルカをかぶるのを禁止し、リビア空爆に参加するなど、議論を呼ぶ決定も下している。経済も好調だ。成長率はユーロ圏の平均より高く、財政赤字の削減も予測より速く進んでいる。
最も驚くべきことは、恐らく、腹が立つほど統治不能なベルギーが多くの人に、債務で身動きの取れないユーロ圏諸国の政府にとってのモデルとされていることだろう。
ベルギーはかつてEU最大の債務国で、国内総生産(GDP)に対する債務比率は最も高かった1993年に134%に達していた。だが、ベルギーは着々とこれを縮小し、2007年までに債務比率を84%に引き下げた。この期間の初期には、現在は欧州理事会議長(EU大統領)の職にあるヘルマン・ファンロンパイ氏が、ベルギーの予算相を務めていた。
ファンロンパイ氏は、ベルギーが債務を減らせたのだから、ギリシャもできると主張する。デフォルト(債務不履行)は必要なく、合理的な改革でうまくいくというのだ。
このような意見を口にするのは、数多くの否定的証拠があるにもかかわらず、ギリシャはまだ支払い能力があると信じたがる国際通貨基金(IMF)やEU機関の一部の人だ。
ギリシャに関する最新の欧州委員会の報告書も、ベルギーが捻出したプライマリーバランス(利払い前の財政収支)の黒字の大きさが、現在ギリシャに求められる規模とほぼ同じだという点を強調している。そのような調整は「野心的だが、実現可能であり、政治的にも社会的にも耐えられる」と、報告書は主張する。
頑なに妥協を拒む政治
しかし、このモデルの適用は、それほど容易ではないかもしれない。ギリシャの債務はGDPの160%に上り、その比率はベルギーのかつての最大値よりも高い。当時のベルギー経済は安定成長を謳歌していたが、ギリシャは不況に陥っている。1990年代は、ベルギーにも独自の通貨と中央銀行があった。
ユーロ圏の国々は新興国のようなものだと、ルーヴァン・カトリック大学のポール デ・グラウウェ教授は指摘する。自国で金融政策をコントロールできない「外貨」で借り入れをしなければならず、それゆえデフォルトに追い込まれやすいというのだ。
さらに、ベルギーは多額な国内貯蓄から資金を調達しているのに対し、ギリシャは外国から巨額の借り入れをしなければならない。
ブリュッセルにある欧州政策研究センターのダニエル・グロス所長は、これが大きな違いを生むと指摘する。国内の債権者には税金を課すことができるため、自国民への借金は、外国に巨額の返済をするより楽に返せるからだ。
いずれにせよ、ベルギー自身も危機を脱したとはとても言えない。ベルギーはギリシャではないかもしれないが、次のイタリアになる可能性は十分にある。実際問題、イタリアも高い貯蓄率を誇り、プライマリーバランスが黒字なのにもかかわらず、市場における不信の感染から逃れられなかった。
ベルギーの債務はいまだに巨額だ。ベルギー国債とドイツ国債のスプレッド(利回り格差)は広がっている。暫定政府は恐らく大きな財政出動政策を立てることはできないが、かといって、どうしても必要な労働市場の改革もできない。
一部の格付け会社は、政治の膠着状態が解決されなければベルギー国債の格付けを引き下げるかもしれないとほのめかしている。
カギを握る新フランドル同盟(N-VA)
ベルギー下院選、独立派が第1党に 連邦制見直し訴え
2010年6月のベルギー下院選挙で歴史的な大勝を収めた新フランドル同盟(N-VA)のバルト・デウェーフェル党首〔AFPBB News〕
にもかかわらず、ベルギーの政治家は果てしない堂々巡りの議論にはまりこんでいる。
最大の障害は、2010年の選挙で最大の勝者となって皆を驚かせた民族主義政党、新フランドル同盟(N-VA)のバルト・デウェーフェル党首だ。
歴史学者でキケロを愛するビール腹のデウェーフェル党首は尊敬すべきタイプの分離独立派だ。即時分離は求めておらず、ベルギーの連邦政府の枠組みが徐々にEUに溶け込んでなくなることを望んでいると同氏は言う。
同氏の抱えるビジョンにはフランドル地方の政治的解放だけでなく、経済的な自由も含まれている。つまり、フランドルには、ワロン地域が要求する社会的移転の負担を軽くした自由主義的な経済を構築する権利があるという主張だ。
デウェーフェル党首はこれまでのところ、すべての歩み寄り案を拒絶している。この頑なさは、その人気を一層高めているようだ。
同党を排除して政府をつくることもできるが、かつて圧倒的多数を占めたキリスト教民主フランドル党(CD&V)は不利な立場に追い込まれることを恐れて、N-VAを排除する案を実行に移せずにいる。
国外では、デウェーフェル党首は注目を集めている。最近ではロンドンに招かれ、英国のデビッド・キャメロン首相と会談している。
現在の麻痺状態が長引くほど、ベルギー人は国の離婚と言うべき分離を思い描くのが容易になるかもしれない。
不幸な結婚も離婚よりはまし?
ベルギーの言語対立政治にも影響、空より高い言葉の壁
北部のフラマン人の多くは分離を望んでいる〔AFPBB News〕
だが、この不幸な結婚を続ける大きな理由がある。離婚した場合、どちらがブリュッセルの「親権」を得るのか? ブリュッセルはオランダ語(フラマン語)を話すフランドル地域に囲まれたフランス語圏で、とりわけEUの機関が所在することで、全国民に富を生み出している。
また、ベルギーの巨額の債務は、どちらが引き継ぐのだろうか?
こうした事情を見ると、実際、欧州の債務危機はベルギーに突破口を与えてくれるのかもしれない。現在のユーロ圏の不安定さは、国の分離のリスクを高めている。市場の不信がベルギーに波及することを恐れ、CD&Vは本腰を入れて真剣な話し合いに入るかもしれない。
市場がベルギーに目をつけたなら、フランドル地方の中産階級はデウェーフェル党首を信念の人、あるいは無鉄砲、どちらと見るだろうか? もしかしたら、アルベール2世が失敗したことに、市場が成功するかもしれない。これぞシュールだ。
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