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債務問題を巡る「空想」と「現実」の衝突 米国とユーロ圏は恐ろしい過ちを犯そうとしている
2011.07.14(Thu) Financial Times
米上院ウェブサイトにハッキング、ハッカー集団が表明
08年のユーロ圏経済成長率、1.3%に下方修正 欧州委員会
同時進行する米国と欧州の債務危機。大きな事故を起こすことなく乗り切れるか?〔AFPBB News〕
ユーロ圏では、財政危機がイタリアの海岸に打ち寄せている。片や米国では、連邦債務の上限が引き上げられなければ来月初めにも資金が枯渇するとホワイトハウスが明言している。
公的セクターのデフォルト(債務不履行)が利益をもたらすと考えているヨーロッパ人は、そう考えている米国人よりもはるかに少ない。しかし欧州の要人たちは、米国の共和党支持者たちと同様に、デフォルトよりも悪い結末があると考えている。
他国の支援に消極的なヨーロッパ人は、ユーロ圏は「所得移転同盟」になってはならないと考えており、頑固な共和党支持者は、増税は絶対にダメだと考えている。
両者はともに「Fiat justitia, et pereat mundus(正義はなされよ、たとえ世界が滅びようとも)」をモットーとしているのだ。
信用バブルの後遺症、デレバレッジングが成長の足かせに
我々が目の当たりにしている財政危機は、欧米の民間セクターと公的セクターがここ数十年過大な借り入れを行ってきた結果にほかならない。
信用バブルの後遺症に関する報告書を昨年発表したマッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)がその改訂版*1で指摘しているように、これはいくつかの国で進行しているデレバレッジング(負債圧縮)という、痛みを伴うプロセスの初期段階だ。
同報告書の2010年版は、「過去の歴史が参考になるなら、一部の主要国では今後何年も、特定のセクターで債務の削減が進められることになる。そして、このプロセスは、国内総生産(GDP)伸び率の大きな足かせとなる」と記している。事態はまさにその通りになりつつあり、ほとんどの国や地域で失望が広がっている。
民間セクターの債務と公的セクターの債務の間には密接なつながりがある。ギリシャをはじめとする一部の国々では、金融緩和が公的セクターの借り入れ増大につながった。またイタリアをはじめとする他の国々では、金融緩和のために政府の債務削減への取り組みがおろそかになった。
*1=Debt and Deleveraging (update): http://www.mckinsey.com/mgi
イタリアでは通貨同盟参加前の1997年、プライマリーバランス(国債利払い前の基礎的財政収支)がGDP(国内総生産)比6%の黒字だったが、2005年にはこれが0.6%の黒字に縮小していた。
さらに、民間セクターの信用ブームが突然終わったために、政府の歳入が急減する一方で歳出が急増するという国もあった。米国、英国、スペイン、アイルランドがその代表例である。
財政赤字の急拡大は主に経済活動の急減速と歳入の減少の結果であり、銀行救済の結果ではない。だが、財政の弱体化は銀行の足元をぐらつかせる。銀行が国内の公債を大量に保有していること、その一方で財政支援も受けていることなどがその理由だ。
危機の原因は財政だけではない
民間セクターと公的セクターは互いに絡み合っている。米共和党のタカ派とドイツやオランダのタカ派はともに、危機の原因はもっぱら財政にあると考えているが、それは間違いだ。金融緩和が財政危機を招いたのだ。
衝撃的な証拠が米国にある。2008年度と2012年度の予算教書において2010〜2012年度の財政収支がどのように予想されていたかを比較してみよう。2008年度の予算教書はジョージ・ブッシュ前大統領が金融危機の直前に議会に提出したもので、2012年度のそれはバラク・オバマ大統領が金融危機のしばらく後に提出したものだ。
これによると、2008年度には2011年度の財政収支がわずか540億ドルの赤字(GDP比0.3%)にとどまると予想されていた。ところが2012年度の予算教書では、これが1兆6450億ドル(同10.9%)に上ると見込まれている。
この増加幅の58%は予想外の歳入減によるもので、支出増大によるものは残る42%にすぎない。いずれの変化も大部分は金融危機がもたらしたものであり、小規模な財政出動(GDPの約6%相当額)によるものではない。
連邦政府の財政状況を見ていて驚かされるのは、2011年度の歳入がGDPの14.4%相当額にとどまると見込まれていることである。これは戦後の平均値(18%弱)を大幅に下回る値だ。また、個人所得税の税収に至っては同6.3%にしかならないと予想されている。
米国人でない筆者には、一体何を騒いでいるのか理解できない。何しろロナルド・レーガン大統領の任期の最終年に当たる1988年には、個人所得税のGDP比が18.2%あった。財政赤字を縮小するのであれば、税収を大幅に増やさねばならないだろう。
デフォルトを強く望む共和党の愚
といっても、米国の財政赤字に取り組むことは緊急の課題ではない。民間セクターがデレバレッジングを進める時期には、財政赤字は有用だ。
少数の冷静な人々が予測していたように、10年物米国債の利回りは3%近くにまで低下しており、米国政府は低利で資金を借りられるようになっている。財政問題は長期的な課題であり、喫緊の課題ではないのだ。
連邦議会で既に決定された事業に必要な資金を政府が借り入れることを認めないという決断は、馬鹿げている。財政の専門家であるブルース・バートレット氏が指摘しているように、連邦政府の追加借り入れに議会の承認が必要だという法律は違憲である可能性すらある。
しかし驚いたことに、債務上限の引き上げに反対している共和党員の多くは、連邦政府の歳出を抑えたいと思っているだけではなく、デフォルトすることを強く望んでいる。
彼らは、米国が合法的な契約によって借りた資金の返済を拒否したら同国の経済と社会にどれほど深刻な衝撃がもたらされるかということに全く考えが及ばない人々か、そうした結果には全く無頓着な空想的革命主義者のどちらかだ。
単一通貨という空想的プロジェクトにとらわれた欧州
欧州では幸いなことに、デフォルトが良いことだと思っている人はいない。ただ欧州は、単一通貨という空想的なプロジェクトにとらわれてしまっている。
ティーパーティー運動の面々が、自分たちが無価値だと見なす人々のために税金を払うことを嫌うように、支払い能力のあるヨーロッパ人たちは、自分たちが無責任だと見なした人々に所得を移転したがらないのだ。
悲しいかな、以前からあちこちで予測されていたように、通貨同盟がなかったらシンプルな通貨危機になっていたと思われる現在の事態は、通貨同盟による制約に縛られて、大変な痛みを伴う財政金融複合危機へと変形した。
さらに悪いことに、ドイツの10年物国債との利回り格差はスペイン国債で328ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)、イタリア国債で296bpに拡大してしまっている。
経済成長率が低く実質為替レートも過大評価されている国では、このような利回り格差は危険性を帯び始める。この格差が、例えば400bpに拡大して高止まりしたら、長期債務の実質金利は5%になる。そうすれば、こうした国々は管理可能な債務を抱えた良い均衡から、管理が不可能に近い債務を抱えた悪い均衡へとゆっくりシフトするだろう。
公的セクターの債務残高が世界で4番目に多いイタリアは恐らく、規模が大きすぎて救済できない。従ってイタリア国民は、財政の信頼回復に必要な断固たる対策を自ら講じなければならない。それには、大幅な財政支出削減と成長率引き上げ策の両方が必要だ。
果たしてこの2つを同時に実行できるのだろうか? かなり苦労することになる、というのがその答えになるだろう。
とてつもない過ちや危機が起きかねない危険な時代
今は危険な時代だ。米国は、世界史上最大かつ最も不必要だと言えそうな財政政策の過ちを犯す恐れがある。片やユーロ圏は、重要な国々の支払い能力だけでなく通貨同盟も、最悪の場合には欧州統合のプロジェクトの大半をご破算にしてしまう財政金融複合危機に陥る恐れがある。
こんな時代に求められるのは、政策当局者の知恵と勇気だ。米国では、右派の空想主義者たちが1930年代の大恐慌と第2次世界大戦をくぐり抜けた国をつぶそうとしている。欧州の政策当局者は、住民が感じられずにいる連帯感をある程度必要とする空想的なプロジェクトの結果と格闘している。
こうした空想と現実の衝突は、果たしてどのような結末を迎えるのだろうか? 筆者が夏休みを終えて戻ってくる8月下旬ごろには、少なくともその答えの一端が見えているかもしれない。
By Martin Wolf
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