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財政健全化とは、本来なすべき行政サービスを実現するために財源を確保するのが目的なのはずだが
利己的なリバタリアン系政治家が増えると、完全に優先順位を間違え、
自己利益の実現や、目先の損失の回避だけを目標とするようになる。
これでは、いくらFRBが金を撒こうとしても、どうにもならないが
他人ごととして笑えないのが世界の現状だ
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20110617/220837/?ST=print
日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>Money Globe- from NY(安井 明彦)
財政難の米国、災害復興もままならず 連邦も地方も無い袖は振れず
2011年6月23日 木曜日
安井 明彦
日本では東日本大震災の復興支援による財政への影響が心配されているが、太平洋を挟んだ米国でも災害復興に関する財政負担は頭の痛い問題だ。
今年の米国では、例年にも増して自然災害が猛威を振るっている。4月から5月にかけては各地で竜巻が大量に発生。4月の竜巻発生件数(875件)は史上最多を記録し、犠牲者数は361人にものぼった。このうち321人が4月25〜28日の大量発生の時期に集中している。
災害復興費用に年平均87億ドル
5月22日にミズーリ州のジョプリンを襲った竜巻では、これまでに150人を超える犠牲者が出たと言われ、米国で近代的な気象観測システムが整備された1950年以降では、最も犠牲者の多い単一の竜巻となった。このほか、5月にはミシシッピ川で大規模な洪水が発生しており、広範な地域で農地などへの被害が懸念されている。
地球温暖化問題との関連があるかどうかは別にして、最近の米国では大規模な自然災害が増加傾向にある。FEMA(米連邦緊急事態管理局)によれば、昨年連邦政府が指定した「激甚災害」は81件。同局に統計がある53年以来で最多となった。年平均で見た激甚災害数は81〜90年の25件から1991〜2000年の47件、さらには2001〜2010年の60件へと着実に増加している。
災害の増加に歩調を合わせるように、連邦政府の財政負担も膨らんでいる。2010年度に連邦政府が用意した災害復興費用は67億ドル(約5400億円)。2001〜2010年度の期間では、年平均で87億ドル(約7000億円)の災害復興費用が発生している。
ハリケーン・カトリーナの影響でFEMAの復興基金だけに限っても430億ドル(約3兆4000億円)という莫大な復興費用が必要となった2005年を除いても、この期間の年平均復興費用は47億ドル(約3800億円)。1991〜2000年度の年平均29億ドル(約2300億円)の1.6倍を記録している。
財政赤字の深刻化で聖域が崩れる
米国は災害復興費用を特別扱いする傾向があり、財政赤字の増加を度外視して補正予算が組まれる場合が多かった。しかし、ここにきての財政再建機運の高まりは、いわば「聖域」だった災害復興費用にも影響を与えている。
米国では財政再建に向けた議論が活発化している。国債に設けられている発行上限を引き上げるにあたって、今夏までに財政赤字削減策を策定する方向で議論が進んでいる。
こうした中、激甚災害に関する復興費用といえども厳しい目が向けられるようになっている。具体的にはほかの予算項目での歳出削減を並行して実施することによって、財政赤字の拡大を防ぐことが検討されている。手始めに下院で議論された10億ドル(約800億円)の復興費用の上積みは、2009年に成立した景気対策のうち未使用となっている次世代自動車の開発補助金を振り向けることを想定した。
財政再建機運の高まりによって、災害復興費用に関する論点はその安易な利用に対する批判から、機動的な運用が難しくなることへの懸念に重点が移っている。
これまで、復興費用に関する補正予算は財政規律を損ねる「抜け穴」として問題視されてきた。復興費用が聖域扱いされてきたために、安易に補正予算が組まれる傾向があったからだ。
米国では年度途中の補正予算で災害復興費用を賄うのが慣例である。行政府による年度当初の予算申請は、復興費用が5億ドル(約400億円)に満たない災害への対応を賄うのに十分な金額でしか行なわれない。2001〜2010年度の当初予算申請額は平均20億ドル(約1600億円)であり、単純に平均すると毎年67億ドル(約5400億円)、2005年度を除いても毎年27億ドル(約2200億円)の補正予算が組まれてきた計算になる。
ハリケーン・カトリーナの復興事業も中断
ところが財政再建の機運が高まるに連れて、災害復興費用といえども補正予算の編成が難しくなり、復興作業の遅れを招きかねないと危惧され始めている。
既に昨年の時点で年度途中での災害復興費用の払底が表面化している。ハリケーン・カトリーナで甚大な被害を受けたルイジアナ州を地元とするメアリー・ランドルー上議員議員によれば、昨年FEMAの復興費用が枯渇しそうになったために、一部の復興事業が5カ月にわたって中断されている。突発的な災害に備えるために、いまだに続いているハリケーン・カトリーナの復興など、緊急性の低い事業を一時的に見合わせざるを得なくなったのだ。
来年度のFEMAの災害復興事業に関する予算は、過去から続く復興事業への支払いなどのため、バラク・オバマ政権の当初申請だけでは30億ドル(2400億円)の不足が生ずるといわれている。今春の竜巻や洪水に関する費用を勘案しなかったとしてである。緊急事態への対応を優先すれば、それだけ長期的な事業は後回しにされかねない状況だ。
だからといって地方政府には頼れない。財政再建機運の高まりにもかかわらず、地方にいっそうの財政負担を求める声はかつてほど盛り上がっていない。
米国の災害復興は基本的には地方政府の責任とされている。連邦政府による復興援助は、地方政府が自前で対応できなくなった場合に限って実施されるのが原則である。まず州知事が財政支援を連邦政府に要請し、これに基づいて連邦政府が援助の有無を決定する流れになっている。
従来の議論は、地方政府が恒常的に連邦政府の復興援助を当てにするようになり、自らの責任であるはずの災害復興費用の準備を怠っている、というものだった。近年の連邦政府による復興費用負担の増加も、その一因は地方政府の準備不足にあると言われてきた。このため、経済力のある州については、連邦政府による復興費用の負担度合いを小さくするすることなどが提案されてきた。
連邦政府にも地方政府にも大きな重荷に
本来であれば、連邦政府で財政再建の機運が高まるにつれて、地方政府の財政負担を求める声が強まってもおかしくはない。ところが、現在の米国では、むしろ地方政府に災害復興費用の負担を求めることの限界が強く意識されている。連邦政府に負けず劣らず、地方政府も財政難が深刻だからだ。
多くの州政府は均衡財政を州憲法で義務づけており、連邦政府のように財政赤字覚悟で復興費用を賄うわけにはいかない。連邦政府が復興費用に関する財布の紐を締めれば、地方政府の財政難をさらに悪化させるか、さもなければ復興事業の遅れを招く展開が待っている。
連邦・地方政府ともに、財政の健全性の低下が災害復興費用の取り扱いを窮屈にしている。米国は夏のハリケーン・シーズンが始まったばかり。今年は平年よりも多い襲来が予想されている。財政規律を確保しつつ、いかに的確に復興事業を展開していくのか。米国政府の悩みはつきない。
このコラムについて
Money Globe- from NY(安井 明彦)
変わりゆく米国の姿を、ニューヨークから見た経済の現状と、ワシントンの政策・政治動向の両面をおさえながら描き出していく
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著者プロフィール
安井 明彦(やすい・あきひこ)
安井 明彦
みずほ総合研究所調査本部 ニューヨーク事務所長
1968年東京都生まれ。91年東京大学法学部卒業、富士総合研究所(当時)入社。在米日本大使館、みずほ総合研究所ニューヨーク事務所、同調査本部上席主任研究員などを経て、2007年より現職。著書に『ブッシュのアメリカ改造計画〜オーナーシップ社会の構想』(共著、日本経済新聞社)『ベーシックアメリカ経済』(共著、日経文庫)など
(写真:丸本 孝彦)
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