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(回答先: ギリシャ、ユーロ離脱の可能性について 1年経過したギリシャ問題 投稿者 sci 日時 2011 年 5 月 09 日 17:50:17)
ユーロ圏の危機の本質は政治だ
秘密のはずの財務相緊急会議が漏れた理由
2011.05.10(Tue) Financial Times
(2011年5月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
08年のユーロ圏経済成長率、1.3%に下方修正 欧州委員会
ユーロ圏が再び大きく揺らぎ始めた〔AFPBB News〕
秘密会議の1つも満足に開けない人たちに債務危機を解決することなど果たしてできるのだろうか?
今月6日金曜日の夜にルクセンブルクで開催された、それほど秘密ではない財務相会談の失策は、ユーロ圏の危機解決に取り組む政治がどのようにつまずきつつあるかを具体的に示すこととなった。
この協議の開催はドイツのニュースサイト「シュピーゲル・オンライン」への情報リークで明らかになった。
シュピーゲルの記事は、ギリシャはユーロ圏からの離脱を検討しており、財務相たちがその問題を話し合うために秘密裏に集まると報じた。またこの記事には、ドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相のかばんの中に、ギリシャ離脱のコストは恐ろしく高いものになると警告する内容の報告書が入っていたという興味深い話も書かれている。
ギリシャのユーロ圏離脱を議論する秘密会議の顛末
6日夕方の早い時間に、ルクセンブルクのジャン・クロード・ユンカー首相兼財務相の報道官は、協議の開催そのものをきっぱり否定していた。明らかにこれは真実ではなかった。
そしてこの協議は同日夜、ギリシャのユーロ圏離脱やギリシャの債務再編に関する議論は行われなかったと発表して終了した。筆者はこの発表も――いや、ユーロ圏危機に関する公的な発表はいずれも――真実を語っていないのではないかと強く疑っている。
6日の協議、そしてそれ以前に開催された数多くの会議では、ありとあらゆる選択肢が検討されており、当然ながらギリシャの債務再編も議論されたと筆者は理解している。しかし、選択肢を議論することとその実行を追求することとは別の話だ。
ギリシャはユーロ圏離脱の準備などしておらず、欧州連合(EU)も不本意な債務再編を却下していると筆者は確信している。今のところは、の話だが。
ではなぜ、このように慌ただしい外交活動が展開されるのか。それは、ギリシャ債務危機に対する容易な策が出尽くしつつあるからだ。提案された解決策は、いずれも強力な反論にさらされている。
例えば、「ユーロ圏離脱はリスクが大きすぎる」「ヘアカット(債権者の負担により債務元本を削減すること)を実施すればギリシャの銀行システムは破壊され、欧州中央銀行(ECB)も1000億ユーロ近い損失を被ることになる」「自発的な債務再編では、ギリシャ政府が抱える債務の正味現在価値(NPV)を持続可能な水準に引き下げるには至らないだろう」といった具合だ。
担保付きの貸し付け――既発のギリシャ国債をそれより少ない額面の新しい担保付き債券と交換すること――も議論されていると筆者は理解している。これが実行されれば、既発のギリシャ国債を保有するすべての投資家(もちろんECBも含まれる)への返済は後回しになるだろう。
また、欧州金融安定機関(EFSF)の債券と周縁国の国債を交換するという選択肢は、ドイツ政府がこれを明確に拒否している。これは恐らく最も安上がりな選択肢なのだろうが、ドイツとしては、ユーロ圏共通債の匂いがするものの芽をすべて小さなうちに摘んでおきたいのだ。
問題はソブリン債の大きさではなく、政治的能力の欠如
ユーロ圏危機の核心は、周縁国が抱えるソブリン債務の大きさではない。ユーロ参加国の国内総生産(GDP)の合計に比べれば、これは大した額ではない。実際、ユーロ圏のソブリン債務総額のGDP比は英国や米国、日本のそれよりも低いのだ。マクロ経済の観点から見る限り、これはコップの中の嵐と言える。
真の問題は、他の国々にも伝染して大変な付随的損害をもたらす恐れを秘めた危機に対処する政治的能力がユーロ圏に欠けていることだ。欧州理事会が3月にユーロ圏のソブリン債務について取りまとめた一連の合意「グランドバーゲン」は、現在の危機の解決に取り組むものではなかった。この取り組みは今ようやく始まるところだ。
その任に当たる政治家たちは、どの債務管理方法を選択しても納税者に巨額の負担がのしかかることを理解している。このような巨額の財政移転を、極端に厳しい条件を互いに課すことなく各国が受け入れる公算は非常に小さい。
この危機が悪化した政治的な理由は、集団行動の問題が解決されていないことに求められる。
落ち度は南北の両方にある。北の国に住む、財布のひもが固くて経済に疎い議員も、南の国に住み、自分の裏庭のことしか考えない首相も、同じくらい悪い。ギリシャ政府は比較的誠実に対応したが、ポルトガルの危機管理は今に至っても非常にまずい。
ポルトガル、EUに金融支援要請へ
ポルトガルのジョゼ・ソクラテス首相の危機管理は、お粗末だった〔AFPBB News〕
ポルトガルのジョゼ・ソクラテス首相は、金融支援パッケージの要請を最後の最後まで引き延ばす策を取った。首相が先週行った発表は、この危機の悲喜劇的なハイライトとなった。
自国が金融破綻の瀬戸際にあるにもかかわらず、国営テレビを通じて演説した首相は、アイルランドやギリシャよりも良い条件を交渉で確保したとご満悦だったのだ。
おまけに首相は、この合意なら痛みはさほどないだろうとも述べていた。
数日経って合意の詳細が明らかになった時、首相の話はどれも正しくないことが分かった。支援パッケージには厳しい歳出削減策、公務員賃金と年金の凍結、増税、そして向こう2年間は深刻な景気後退になるという見通しが盛り込まれていたのである。
政治統合なき通貨統合はうまくいかない
ソクラテス氏のような人たちとは、あるいは離脱の噂をまき散らすような財務大臣たちとは通貨同盟など運営できない。欧州政治のエリートたちは経済史家がずっと前から知っている真実、つまり、政治統合なき通貨統合はうまくいかないということを口にするのをためらっている。
そう、これは債務危機ではない。政治危機なのだ。ユーロ圏はほどなく、政治統合に向けた想像を絶する一歩を踏み出すか、同じくらい想像を絶する後ずさりを受け入れるかという選択を迫られるだろう。
ドイツのショイブレ財務相は後者の選択肢を熟考したうえでこれを退けたことは、もう分かっている。また、財務相が前者の選択肢の方が良いと考えていることも分かっている。今こそ、はっきりそう言うべきだ。
By Wolfgang Münchau
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/7188?page=3
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