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(回答先: 復興に要する資金は、20〜30兆円超という膨 大なものになりそうです。その財源ですが、どうすればいいのでしょうか 投稿者 sci 日時 2011 年 4 月 03 日 11:40:29)
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□中空麻奈 :BNPパリバ証券クレジット調査部長
□土居丈朗 :慶應義塾大学経済学部教授
□津田栄 :経済評論家
■今回の質問【Q:1205】
Q:1203への回答によると、復興に要する資金は、20〜30兆円超という膨
大なものになりそうです。その財源ですが、どうすればいいのでしょうか。
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村上龍
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■ 中空麻奈 :BNPパリバ証券クレジット調査部長
予算として転用できるものは転用し、それ以外のところは、議論の対象になってい
る震災国債の発行で賄うしかないと考えます。結局、財源がない中、それでも復興に
関する資金は必要である以上、小手先の帳尻合わせをし続けることは得策ではないと
思います。確かに国債を追加で10兆円単位発行してしまうことは、国債の価値を下
げかねないことにもつながり(かといって、日銀引き受けはやはり禁じ手だと思いま
す)、また、日本の財政赤字再建のための道筋を描くどころか、遙かに遠くなること
だとは思います。
しかしながら、現在は全体のバランスを取って、財政再建の道筋も考えながら、と
いう場合ではありません。必要な資金は莫大です。とはいえ、国および地方の長期債
務残高はすでに870兆円に達しようとしているのであり、ここで10兆円やそこら
増えたところで、もはや何ということもないのではないでしょうか。財政赤字が増え
ることは国の健全化という観点では受け入れ難いものですが、もともとの財政赤字額
を考えれば、増加分自体はたいした額ではありません。むしろ、ここは日本として復
興することを第一番目に考え、政治家はそこに向けた政策を引き、万人の力を集めて
いく指導力を発揮していくこと、国民も秩序正しくその方向性を守っていけることが
示されれば、日本は十分グローバル社会の一員として認められるでしょう。
日本全体が一丸となって復興しようというときに、復興税という名目で消費税を上
げたりすることもあり得る選択ですが、様々な手続きの面倒さや消費税の中での復興
税分をどれほどとするのかということや、また、それだと恵まれない世帯からも一斉
に徴収することになるということ、そうなれば、日本全体が一丸となるモチベーショ
ンを下げかねないということも想定できます。法人税減税は本来なら、日本景気が落
ち込む今こそ、実施すべき時なのに、棚上げすることは方向性が違うと考えますし、
また所得税に対する定率増税10%も、やはり取りやすいところから取る、というい
つものストラテジーに終始している始末です。
日本人としてこの大震災から復興したいと考えることは当然だし、今回は対象区域
では偶々なかったけれど、いつ何時自分のことになるかわからない状況を考えると、
この予算づくりのためには一刻の猶予も許されないと思います。目先転用できる予算
はすべて転用をすること、それで不足する分は、所得税の税率上昇も避けられないで
しょうが、国債の発行をメインとして資金調達すべきではないかと考えます。
では具体的にはどうするか、ですが、用意すべきはもっとも少なく見積もっても2
0兆円と莫大です。まずは、子ども手当や高速道路無料化、高校の無償化などの予算
をすべて特別対策費に振りむけることから始めたいと思います。今の議論は、規模縮
小が焦点で、あくまでもマニフェストとの帳尻合わせに躍起に見えますが、そんなこ
とを言っている場合ではないでしょう。大連立を組もうという提案ができる民主党に
は、マニフェストを撤回する勇気も持ってもらいたいものです。今なら、圧倒的多数
の国民が賛同もするのではないでしょうか。この子ども手当分が2兆9000億円、
高速道路無料化および高速道路料金の割引制度で2兆1200億円、高校の無償化で
4000億円、が浮いてきます。約5.5兆円です。
そもそも子ども手当の財源のために地震再保険特別会計を、高校無償化のために耐
震補強工事費を取り崩していたわけです。スーパー堤防の費用を100年に一度の大
震災に備える必要がないとの見方で取り崩したことまで、見通しが甘かったという気
はありませんが、本当に必要なものに、予算を振り替えるだけだと考えれば、子ども
手当の財源は地震再保険特別会計に戻し、高校無償化の財源は耐震補強工事費に戻す
だけです。考え方としては至ってすっきりしたものになります。項目名を戻せば、復
旧のための補正予算の際に、転用が楽になるのではないでしょうか。なお、農家の個
別補償制度については、ばらまき4kと非難の対象ですが、被災者には農家の方も多
く、予算全体としても3000億円強であり、私は除外してよいのではないかと思っ
ています。
この5.5兆円に加えて、定率増税を実施し、1兆円程度資金を上乗せすれば
(もっとも所得そのものが更に落ち込むことも考えれば1兆円集められないかもしれ
ませんが)、6.5兆円まで来ます。当面の20兆円の目標まであと足らず分が13
.5兆円です。これは、極端なことを承知で言ってしまいますが、国債発行で賄う分
であると考えます。将来へのつけはないほうがいいに決まっていますが、小手先の予
算の振り替えで捻出できる額ではありませんし、そんな議論を待っているだけの余裕
も、特に被災地域の方々にはないはずです。それこそ、世界に向けて震災国債を発行
して、世界中の投資資金を持ってくるだけのことも考えていいはずです。日本が真に
復興していく力強い姿に共感させることができ、かつ、復興景気による日本の回復や
原子力政策に対する日本のパワーが、きちんと示せるのであれば、震災が起きたから
応援しなければという気持ちから、日本の成長に期待した純粋な投資資金も呼び込め
るのではないでしょうか(もちろん、海外マネーを呼び込むためには、税金などいさ
さか仕組みを考える必要はあるでしょうが)。
超党派で、などと言いながら実は何も動いていない政治や、予算のために細々補正
を組んでみるなどのために、時間を費やしているほどの余裕はないはずです。財政赤
字の削減を棚上げしてでも、先に復興に取り組むべきであることに、日本国民がコン
センサスを持つこと(持たせること)が重要です。復興のためにお金は絶対にいりま
す。選択肢もそれ程多くない中で、財政赤字削減が遅れることなど、たいした問題で
はないように思えます。
BNPパリバ証券クレジット調査部長:中空麻奈
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■ 土居丈朗 :慶應義塾大学経済学部教授
復興のための財源は、その使途に分けて考えるとよいでしょう。復興に要する資金
は、大別して、民間で自律的に実施可能な事業と、国や地方自治体が実施すべき事業
に分けられるでしょう。
被災地には、過疎の市町村もあって、大震災前でも財政に依存する度合いが高い上
に地元の税収だけでは賄えず国からの補助金(他地域や将来の国民の税負担が財源)
に依存する度合いが高かった面がありました。その半面、第1次産業を中心に高い収
益を上げていた民間企業・事業者もあり、(当然ながら)民間で自律的に事業を実施
できていたところも多々ありました。
そこで、被災地では甚大な被害を受けたとはいえ、国や自治体が過剰に関与するこ
となく、民間で自律的に実施できる事業(例えば被災地での産業再生や起業)は、で
きるだけ財政に依存せずに資金を確保することがよいでしょう。もちろん、初期段階
での特例的な税減免等の措置や、財政投融資・政策金融機関による低利融資を活用す
ることは役立つことですが、5〜10年間と時限を区切って実施すると良いでしょう。
恒久的に補助金を投入し続けるなど、財政依存を恒久化すると、収益率が低い産業や
民間企業が被災地に残ってしまい、被災地経済の自立をかえって阻んでしまいよくあ
りません。
高齢化がかなり進んだ被災地では、財政的な支援がなければ、民間企業・事業者が
復興できない、との見方もありますが、手厚い財政資金を投じて高齢化した従業者に
今後長期にわたって事業を続けさせることが本当に被災地のためになるかを見極める
必要があるでしょう。場合によっては、職を離れる高齢者には年金給付等社会保障で
対応するとともに、従業者の世代交代や事業転換を促す方が被災地経済の自立につな
がるでしょう。
また、被災地復興支援を銘打った民間の投資ファンドで、民間主導の復興資金を供
給するという発想も重要です。確かに、被災地で投資家が魅力を感じるほどの高収益
を上げられる民間企業や事業がどしどし出てこないかもしれませんが、収益率はさほ
ど高くないかもしれないが被災地復興支援という慈善的要素を持たせたファンドで多
くの資金を供給してもらえれば、被災地経済での財政依存を低くすることができます。
もちろん、被災地復興には財政の役割は重要です。しかし、震災復興支援を口実に
したバラマキ財政支出が横行することは断じて認めてはなりません。そのためには、
支出内容を吟味することは当然として、国や地方自治体が実施すべき事業を、大別し
て、公共インフラの復旧・整備、被災者の生活支援(当事者のみに恩恵)、電力供給
の復旧と原発事故関連の損害補償に分けて、その資金の確保を検討することが良いで
しょう。
道路などの公共インフラの復旧・整備のための支出は、将来世代も恩恵受けるので、
地震がなくとも将来的には維持補修費が必要となったものが、被災したために前倒し
で支出が必要となったと解せば、そのための支出を建設国債で賄うことは正当化でき
ます。
被災者の生活支援として、今生きる被災者のみが受益する給付や補助金は、将来世
代には便益が及ばない支出までも国債で賄って負担をつけ回すべきではありません。
将来世代には便益が及ばない復興関連支出は、原則として今生きる国民で税負担を分
かち合うべきである。
ただ、目下の景況に配慮すれば、今年度から直ちに増税して良いかとの批判もあり
ますし、使途を明示せずに増税することに多くの賛同が得られないかもしれません。
そこで、将来世代には便益が及ばないが被災者が受益する復興関連支出の財源は、予
算の組替えなどにより不要不急の支出を削減して財源を賄うとともに、当面は一般の
赤字国債と区別して「復興国債」を発行して賄い、その後近い将来に「復興目的税」
として徴収してその償還財源を確保することが望まれます。復興国債は、通常の赤字
国債と区別し、将来世代に償還負担をつけ回すべきでないので、償還期限を5〜10
年として借り換えないこととすべきです(60年償還ルールの対象外とする)。
復興期間を仮に10年と見たとき、今年度から不要不急の支出を削減するなど予算
組替えとともに、復興国債によって賄えばよいでしょう。復興関連支出が集中的に投
じる必要が出てくる2013〜15年度頃には、それに加えて復興目的税を徴収して、
まずは復興関連支出の財源に用いればよいでしょう。復興期間後半となる2010年
代後半は、予算の組替えを中心として復興関連支出の財源を工面するとともに、20
11〜2015年度に発行した5年物復興国債の償還に合わせて、復興目的税は復興
国債償還の財源とするとよいでしょう。復興国債償還の負担が特定の年度に集中しな
いように、復興期間が終わった後5年程度(2025年度頃)まで償還財源確保のた
めに復興目的税を課税します。
こうして、復興期間を終えて5年程たった2025年度頃には、復興国債は完済で
きるようにすべきです。高齢化が本格化して社会保障給付がさらに増大する2030
年代を前に政府債務累増を抑制することが不可欠で、一時的には政府債務は累増する
としても2025年度までに大震災前に予定していた政府債務残高の状態に戻すこと
ができます。
復興支援の必要額は予断を許しませんが、金額のイメージとして数値例を挙げれば、
金利が2%なら、2011〜15年度に毎年5兆円(+利払費分)復興国債を発行
(計26.5兆円)し、2016〜25年に毎年度約2.9兆円ずつ復興目的税で返
済すれば、2025年度には完済できます。
復興目的税は、所得税が最有力です。消費税は、必要な財源の規模次第では復興財
源に用いるのも一策ですが、基本的には社会保障給付の財源のために用いることが望
まれます。法人税は、グローバル化する経済の中で日本企業の優位性を失わせてしま
うので、絶対に避けるべきです。復興目的税を所得税で賄うことの利点は、国民が、
寄付するが如く被災者を経済的に支援したいと思う気持ちが、所得が多いほど支援額
を多くするなら、所得税として政府が国民から集めることが擬似的に可能でしょう。
ここでは、寄付税額控除を認めて、既に民間団体等に寄付している国民はその分だけ
負担が減免されても良いでしょう。また、現在の所得税は公的年金にはほとんど課税
されないので、高齢の被災者には負担が及ばないという点は、消費税と比した利点と
いえます。
最後に、電力供給の復旧と原発事故関連の損害補償も悩ましい問題です。今は事故
の影響が早期に確定して収束して頂きたいと願うのみで、当然ながら現時点でその規
模は予断を許しません。ただ、電力供給の復旧のための投資資金や事故の損害賠償の
財源の確保も不可避です。事故の責任の所在と財源負担能力次第で、どの手段でいく
らの財源を賄うかが決まってきますが、財源確保の手段としては、次のようなものが
挙げられます。
電気料金引上げ、電力会社での経費節減、電源開発促進税、復興目的税の税収の一
部といったところでしょう。電力会社側が主体的に損害賠償を行わなければならない
部分の財源には、電力会社の収益から捻出しなければなりません。電力料金を引き上
げて利用者に負担を求める前に、経営者の責任や株主責任を問うべきとの主張は当然
出てくるでしょうから、電力会社の役職員の給与削減や減資といったことが行われる
かもしれません。それだけでは損害賠償の財源は賄いきれないと考えられますので、
そうなれば、電気料金の引上げを一種の目的税的な形で引上げ分が電力供給の復旧や
事故の損害賠償に充てられることが明示されるようにする必要があります。
電力絡みで、電力会社だけでなく国も財源負担を求められることになれば、国庫と
してその財源を確保できるようにしなければなりません。ただ、電力に関係する支出
に充てられる財源でありながら、その負担を電力と無関係なものに求めることにどこ
まで理解が得られるか微妙です。こうした負担は、まずは電力関連から負担を求める
となると、電源開発促進税で賄うという方策が考えられます。しかも東日本での電力
供給復旧のための財源を、西日本に住む国民にまで負担を課して良いかという点もあ
りますから、電力会社を限定した電源開発促進税の増税ということも可能です。それ
でも財源が足らない場合は、西日本に住む国民にもご負担をお願いする形の税負担
(例えば前掲の復興目的税の一部を充当)を検討しなければならないかもしれません。
復興財源のための増税は、言語道断という意見や経済学的に考えられないという意
見が出ていますが、誰の追加的負担を強いずに財政を用いた復興財源が確保できるは
ずはありえません。一時的に国債を増発するとしても、震災復興を財政に依存すれば
するほど増税は不可避です。むしろ経済学の視点からは、その税負担をいかに経済活
動を歪めないように確保するかという見方が有用と考えます。
慶應義塾大学経済学部教授:土居丈朗
( http://web.econ.keio.ac.jp/staff/tdoi/ )
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■ 津田栄 :経済評論家
復興にかかる費用は、どのくらいかかるか見当がつきません。地震と津波の災害を
直接受けた青森、岩手、宮城、福島、そして茨城の広範囲の沿岸部は、生活の場だけ
でなく、働く場をも一瞬にして跡形もなく奪い去ってしまった被災状況になっていま
す。その直接的な被害額は、政府試算では16〜25兆円としていますが、今後の福
島原発事故による原発の処理や放射能汚染の除去、農業・漁業被害への補償や避難民
への補償など間接的な被災を加えると、その被害額は20〜30兆円超、あるいは計
画停電、物流の混乱、消費の自粛などの間接的な被害も考えると、一般会計の半分ほ
どの40兆円も可能性としてありうるかもしれません。
では、復興資金の財源はどうするのかといわれると、難しいところですが、その前
に、復興費用をいくらに見積もるかです。復旧・復興費用には10兆円強という意見
が多いですが、最初から抑制的では、資金の小出しの逐次投入となり、それではこれ
までの経験から効果が小さく、むしろ費用が膨らむことになりますから、当初から多
く見積もって、質問にあるように20〜30兆円超とし、資金投入を大規模で迅速に
行うべきです。もちろん、全額を使う必要はありませんし、すぐに全てを投入すべき
だとは言いません。規模が大きければ大きいほど、スピードが早ければ早いほど効果
が大きく、結果としてその半額で済むかもしれないからです。
そして、復興においては、期限を設定して行うべきです。逐次の資金投入による復
興では10年もかかるかもしれませんから、それを規模、スピードを上げて5年で行
うという意志を表明して行うべきです。そうすれば将来への不安が消え、夢を持つこ
とができ、被災者だけでなく国民全体も連帯して、この難局を乗り越える力を得るこ
とができるといえます。その上で、緊急的に今すぐ行うべき救済や復旧などの短期と
新しい東北を作りだす復興という中長期に分けて、復興資金を使うべきです。
まず、短期は、被災者の救済と仮設住宅の建設、他の地域への集団避難、破壊され
たガソリン、灯油、電気などのエネルギー関連、水関連、鉄道やバスなどの交通関連、
そして電話や携帯、ネットなどの情報関連などの生活に必要なインフラ設備のライフ
ラインの復旧など、もっとも優先すべき応急的な対策です。短期の措置が終えた上で、
中長期は、農水産業だけでなく製造業その他において未来志向型の産業地域として再
生させ、しかも効率的で一段と住みやすい新しい東北のグランドデザインを持った復
興計画です。
短期の復旧対策を行うには半年ほどかかるでしょうから、その間に中長期の復興計
画を作るようにすればいいでしょう。ただし、ハコモノを作るだけの復興であれば、
ムダの再生産であり、日本が耐えられるものでありません。また、この際各省庁の縦
割り行政を排して、統合的な行政として従来の日本の行政区域から外して東北を特別
地域として東北復興庁を作り、そこで復興計画を執行していくというやり方で、効率
的な復興事業を行うのがいいのではと思います。そうしたことを踏まえれば、総額2
0〜30兆円のうち、まず短期の復旧対策を中心に5〜10兆円、その後の中長期に
15〜20兆円というように分けて復興資金を考えてみるのがいいのではないでしょ
うか。
そう考えると、まず短期の復旧対策の復興資金は、予算の組み替えと赤字国債(震
災国債)の発行で賄うべきかと考えます。その後、経済が落ち着いて成長が見えて収
入や所得が増えてくれば、中長期的な復興資金は、国債(復興国債)と特別税(復興
税)により賄うべきかと思います。まず短期の復興財源における予算の組み替えは、
民主党のマニフェストの修正により「バラマキ」予算といわれる子ども手当、高速道
路無料化実験、高校授業料無料化、農業戸別所得補償を復興財源に振り向けて約3.
3兆円、10年度、11年度の予備費などの約1.4兆円を加えて4.7兆円が確保
できますから、最低限の資金は確保できます。
しかし、今の民主党政権は、子ども手当の見直しで増額分は検討していても月1.
3万円を止めるまでには至っておらず、高校授業料無料化、農業戸別所得補償は見直
し対象外としていますから、それらを除くと約1.6兆円で、必要財源からは程遠い
金額になります。足りない部分を(震災)国債で賄うとして、3.4〜8.4兆円を
新規の赤字国債を発行することになります。もちろん、今年度の一般予算の公共事業
費の一部をこの復興費に回せば、その分赤字国債の発行額が減ります。また検討して
いる法人税減税の取り消しによっても発行額はその分は減りましょう(個人的には法
人税引き下げは、企業の競争力を考えると実行すべきだと思います)。それでも、一
般予算での新規国債発行が44兆円ですから、それだけ復興のための国債発行分が発
行増となって国債利回りの上昇になり、財政負担は重くなるかもしれません。
ただし、最近国会で(震災)国債の日銀引き受けを求める声が出ていますが、これ
を許してしまえば、無限に発行したいという誘惑にかられ財政規律が崩れてしまい、
信認を失ってハイパーインフレを招き、ひいては国民に重い負担を強いてしまいます
ので、やるべきではなく、借換債の前倒し発行や日銀の国債の市中買い入れなどの手
法を使えば、増発分を市中に発行することが可能です。今の債券市場は、じゃぶじゃ
ぶの資金が滞留している状況から、10兆円ほどの増発分は消化できるはずです。そ
れよりも、財政規律を失う日銀引き受けはするべきではないでしょう。むしろ、重要
なのは、正当な仕組みで素早く復興資金を集めて、至急被災者救済などの短期の復旧
対策に使うことです。
次に、中長期の復興計画に沿って行われる事業に必要な復興資金ですが、復興国債
を発行すると同時に、先の震災国債とともに返済計画を綿密に立て、復興税として年
限を区切って特別税を新設することを考えるべきかもしれません。もちろん、その前
提として、経済が回復して、国民の所得が増えて増税に耐えられる状況になっている
ことです。その条件として経済の立て直しを行うヴィジョンが必要です。そのために
は、今の非効率な制度を見直して、大胆な規制緩和・廃止を伴った構造改革を行うべ
きでしょう。また、特別税は、あのように多くの募金が集まりますから、復興支援税
という形で、使えば使うほど税金の支払いが増え、それが復興につながるという明確
な目的を持った税にしたほうが、国民の広い支持を得ることができるのではないかと
思います。それは特別消費支援税なのか、エコへの喚起につながるかもしれませんが、
電力使用量に比例して納税するエコ復興支援エネルギー税なのか、いろいろなアイデ
アがあるかもしれません。
それにしても、現実は、菅民主党政権がバラマキ政策を変えない限り、東北の復興
は容易に進まないのではないかと恐れています。しかも、依然として与野党の対立が
響き、復興にスピード感がありません。しかも出てきた補正予算を見ると、4月の第
一次の2兆円と小出しであり、その後の第二次も7月と遅い上に予算額が見えません。
これでは、最初に述べた小出しでスピードのない復興資金となり、思うような効果が
得られるか、不安をもって見ています。
しかも、直接の沿岸部の被害だけでなく、東北、関東北部の自動車、電気、機械な
どの部品や素材の工場も被害を受けています。しかも、最近の計画停電で、思うよう
な生産もできなくなっています。それに加えて、物流が滞っています。こうした状態
が長期に続くようなことがあれば、世界の部品、素材の供給体制の変更につながり、
これまで、国際競争力のあった部品・素材が、国際的なサプライチェーンから外され、
日本の強みを失ってしまうことになります。それは、また国内の製造業も、西日本な
どから部品・素材を調達して国内にとどまるべきか、海外に移転すべきかの選択に迫
られる可能性もあります。それは、貿易黒字の縮小にもつながり、むしろ貿易赤字に
なれば為替でも円安に振れ、エネルギーや非鉄金属・農産物などの価格上昇も相まっ
て、景気悪化の中の物価上昇につながりかねません。しかも、雇用の悪化も進みます。
その点で、被災者及び被災地域の短期的な復旧だけでなく、経済的な復旧において
も、早く問題の福島原発事故の収拾をはかった上で、計画停電から脱却し、電力の確
保をはかるとともに、物流の回復を至急行うようにすべきでしょう。また、国内の閉
塞感を強めているのは、今回の大震災での消費自粛ムードです。これは、経済を一層
冷え込ませ、復興を一段と困難にさせます。その点でも計画停電を1日も早く解消す
るように務めるべきですし、国民は、被災者を慮って消費を控えるのは逆に被災者救
済を難しくすると考え、消費することで支援するという気持ちを持って経済の回復に
貢献すべきではないでしょうか。そういった意味で、民主党は、大事の前の小事を捨
てて、被災地だけでなく経済においても、今持っている日本の実力を回復できるよう
に、エネルギーや物流、消費が円滑に回る素早い対策を行うべきでしょう。
最後に、復興においてまた住んでもらうことが必要です。しかし、被災者はすべて
を失っていますから、彼らが新しい生活に踏み出していくための資金がほとんどない
かもしれません。それを救うには、復興基金を設けて融資などを検討していますが、
個人的には、被災された地域全体をすべて国が買い上げて被災者に資金を提供し、そ
こを貸し付ける形で被災者に利用してもらい、再び住宅や生活、生産の場にしてもら
うという考えもあってもいいかもしれません。もちろん、再び国から買い戻す権利も
付与しての話ですが。
経済評論家:津田栄
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