http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/134.html
Tweet |
中国の社会保障システムの整備や、韓国やアラブのインフラ整備は、まだまだ、かなりの投資が必要になりそうだが、日本企業の出る幕はどうかな
日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>日本と韓国の交差点
“雪爆弾”を“援護射撃”に
1メートルを超える雪で被害続出、冬季五輪の誘致には好機
* 2011年2月16日 水曜日
* 趙 章恩
大雪 冬季五輪 平昌
韓国の東海岸沿いを中心に、雪が止むことなく降り続けている。ソウルを含めほとんどの地域が氷点下10〜15度の寒さの中にある。風がものすごく強いため、体感温度は氷点下20度以下。外を歩く人はみんなスキー場にいるかのような防寒状態である。目だけ外に出して歩いている状態だが、目の周りが裂けそうなほど痛い。
筆者の住むマンションはベランダの水道が凍破して洗濯機が使えなくなってしまった。仕方なく、洗濯物は手洗いしている。雪がロマンチックに思えなくなると年をとった証拠と言うが、この寒さを体験すれば年齢に関係なく雪が嫌になるかもしれない。暖かい東京に逃げたい。
2010年の夏は、例年は湿気のない韓国が蒸し暑くなり、記録的な暑さだった。今度は毎日のように雪が降り記録的寒さとなっている。
2月11日には韓国の最東北地域である江原道で、たった1日で1メートルを超える雪が積もった。雪が凍りタイヤが空回りする国道で立ち往生した車が続出し、バスの乗客400人ほどが道路の上で一晩孤立する事故もあった。山で孤立して凍死した人もいるほどである。
江原道のあちこちで、住宅や農作物を育てるためのビニールハウスが雪の重みで壊れた。その他の地域でも大雪による被害は広がるばかりである。口蹄疫で家族のように大切に育てた牛をすべて殺処分したばかりの農家が、今度は大雪で被害を受けている。韓国では「これは“暴雪”というより“雪爆弾”」であると嘆いている。
平昌が冬季五輪の誘致運動を展開
農家の苦しみは残念であるが、雪祭りや山、スキー場は全国から集まった観光客で賑わっている。
江原道では、今回の雪爆弾が災い転じて福となることを願っている。江原道平昌郡(ピョンチャン郡)は2018年の冬季オリンピック開催地に立候補している。
平昌と言えば、ドラマ『冬のソナタ』のおかげで名所となった「ドラゴンバレー」をはじめ、韓国でも有数のスキー場が集まっている。山も多く、高度600 メートルに位置しているせいか空気が澄んでいて、きらきら輝く雪景色はとても有名だ。冬のソナタに感動して日本、中国、台湾、東南アジアから集まった韓流ファンが、今では平昌の景色に感動して毎年観光に訪れるという。
江原道はこの記録的な雪が、2月16日から始まるIOCの冬季オリンピック開催候補地調査に良い影響を与えるのではないかと期待している。最近は雪が少なくなり人工雪に頼る冬季オリンピック競技場が増えている中、平昌は冬季オリンピックに適した積雪量を持ち、どんな大雪でも瞬時に除雪を完了できるという優秀な環境をアピールできるチャンスと見たからだ。暴雪の中、3日間除雪を続け、IOC調査団が訪問する競技場への道路をはじめとする主な道路226キロの除雪作業を終えた。
IOC調査団は2月14日仁川空港に到着し、20日まで平昌に滞在しながら競技場調査、記者会見などを行う予定である。
冬季五輪への3度目の挑戦
平昌のスキー場はリゾートとしては有名であったが、競技場として使える施設ではなかった。予算の無駄遣いという非難を受けつつも、冬季オリンピックを誘致するために研究を重ねてきた。現在の平昌のオリンピックスタジアムと選手村は、選手と関係者が30分以内にどこにでも移動できるよう建設した。新しい高速道路も2017年完工する予定で、ソウルから、車で1時間15分程度で来られるようにする。今はソウルから平昌まで3時間ほどかかる。
2018年冬季オリンピックの候補地はフランスのアヌシー、ドイツのミュンヘン、韓国の平昌である。開催地は7月6日、南アフリカ・ダーバンで行われるIOC総会で決まる。
冬季オリンピックはアジアでは札幌と長野でしか開催されたことがない。韓国で冬季オリンピックが開催されれば、日本に続いてアジアでは3度目になる。オリンピック、アジアンゲーム、ワールドカップ、世界陸上選手権大会など、世界的規模のスポーツ大会を何度も誘致したことのある韓国でも、冬季オリンピックだけは縁がなかった。
日本では3度目の正直というが、韓国でも「サムセボン」といって、3度目で本当の勝負が決まるという言葉がある。平昌の冬季オリンピック立候補も「サムセボン」だ。2010年、2014年に続いてこれで3度目の挑戦である。平昌がオリンピック開催地となれば経済的にも文化的にも大きな利益を得られる。
「今度こそは」と願う地元の人の気持ちは分かる。雪爆弾で被害を受けながらも、調査団が乗ったバスが通ると一生懸命手を振る江原道住民の姿を見ると心が痛む。
スポーツマンシップに則った誘致運動を望む
ただし、注意してほしいことがある。平昌には、冬季オリンピックを開催することだけが目的となり、外側だけ立派で、今後、持続的運営することができない競技場になってほしくはない。また、スポーツ精神を忘れた利権争いになることは避けてほしい。監督やコーチが自分の派閥を持続させるために有利な選手だけを起用する、試合で負けた青少年選手へのひどい体罰、過度なスポンサーシップなど、も同時に解決していきたいものだ。恥ずかしいことだが、過去にこうした問題があった。
平昌は、こうしたスポーツ精神を実現するための冬季オリンピックを開催するという点も強調している。
2004年からは、「ドリームプログラム」を運営し始めた。冬季スポーツにかかわる人材を育成し、スポーツの国際的な発展に貢献するプログラムである。世界各国から青少年を集め、冬季スポーツ――スキー、クロスカントリー、ボブスレー――を体験してもらう。韓国観光を通して、韓国文化も体験してもらう。こうしたプログラムを自治体が主催するのは世界でも平昌が初めてという。
これまでに、42カ国806人が参加した。中にはドリームプログラムがきっかけとなり、自国のオリンピック代表になった人もいるという。2011年のドリームプログラムには、障害のある青少年を含め33カ国143人が参加する。
3度目の正直、サムセボンで、平昌で冬季オリンピックが開催できるようになれば、うれしい。それと同時に、雪害の対応をもっと徹底してほしい。雪爆弾で、農業も畜産も大きな被害を受けた。農業ができなくなって物価がこれ以上高くなっては、日々、生きていくだけで大変だ。オリンピックどころではなくなる。冬季オリンピックも誘致できて、物価も下がって、みんなが雪をロマンチックに感じられる日々を送れるといいな。
このコラムについて
日本と韓国の交差点
韓国人ジャーナリスト、研究者の趙章恩氏が、日本と韓国の文化・習慣の違い、日本人と韓国人の考え方・モノの見方の違い、を紹介する。同氏は東京大学に留学中。博士課程で「ITがビジネスや社会にどのような影響を及ぼすか」を研究している。
趙氏は中学・高校時代を日本で過ごした後、韓国で大学を卒業。再び日本に留学して研究を続けている。2つの国の共通性と差異を熟知する。このコラムでは、2つの国に住む人々がより良い関係を築いていくためのヒントを提供する。
中国に留学する韓国人学生の数が、日本に留学する学生の数を超えた。韓国の厳しい教育競争が背景にあることを、あなたはご存知だろうか?
⇒ 記事一覧
著者プロフィール
趙 章恩(チョウ・チャンウン)
研究者、ジャーナリスト。ソウルで生まれ小学校から高校卒業まで東京で育つ。韓国ソウルの梨花女子大学卒業。現在は東京大学社会情報学修士。ソウル在住。日本経済新聞「ネット時評」、西日本新聞、BCN、夕刊フジなどにコラムを連載。著書に「韓国インターネットの技を盗め」(アスキー)、「日本インターネットの収益モデルを脱がせ」(韓国ドナン出版)がある。
「講演などで日韓を行き交う楽しい日々を送っています。日韓両国で生活した経験を生かし、日韓の社会事情を比較解説する講師として、また韓国のさまざまな情報を分りやすく伝えるジャーナリストとしてもっともっと活躍したいです」。
「韓国はいつも活気に溢れ、競争が激しい社会。なので変化も速く、2〜3カ月もすると街の表情ががらっと変わってしまいます。こんな話をすると『なんだかきつそうな国〜』と思われがちですが、世話好きな人が多い。電車やバスでは席を譲り合い、かばんを持ってくれる人も多いのです。マンションに住んでいても、おいしいものが手に入れば『おすそ分けするのが当たり前』の人情の国です。みなさん、遊びに来てください!」。
日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
「物乞い子供」の写真が続々アップされている理由
根絶ほど遠い誘拐事件、始まった草の根救済運動
* 2011年2月16日 水曜日
* 福島 香織
中国 物乞い 社会保障 子供 黒社会 微博 誘拐
北京の日本大使館や米国資本の高級ホテル「セント・レジス」などがある建国門街は心優しい金払いのいい外国人観光客が多いこともあってか、夕暮れには垢に汚れた子供の物乞いがいつも、何人かいた。
しかし、私は彼らが近づくとひどくイライラして、焦った。一般に物乞いは組織化されていて、裏では黒社会的な人物が仕切っていることが多い。だから子供に同情して金をやっても、後ろで監視している「母親」役の大人か裏の物乞い組織のボスに吸い上げられるのは分かっている。かといって、か細い手を差し伸べてすがってくる子供を足蹴にすることもできない。どうしたらいいか分からなくなるからだ。
仲間の物乞いには身体障害者もいる
それである日、「シーカイチェン(10元)、シーカイチェン」と声をあげて、まとわりつく男の子の垢だらけの腕をぐっと捕まえて、「あなたはいくつ? お父さんとお母さんはどこ?」と詰問したことがあった。2007年のクリスマスの頃だ。
男の子はさすがに最初おびえていたが、そのあと、コンビニでアイスクリームを買ってやると、少し打ち解けて話すようになってきた。買い与えるものがアイスクリームだったのは理由がある。時間がたてば溶けてしまい、あとで物乞い組織の大人たちに巻き上げられることもないだろうから、と判断したからだ。ただ、今思えば凍えるような夕暮れ、もっと体の温まるものを買ってやればよかった。それでも彼は、白く霜のついたアイスクリームのカップに唇をくっつけるようなしぐさで喜びをにじませ、2、3の質問には答えてくれた。
年齢を聞けば、5歳と答えた。故郷はどこかと聞けば河南(省)と答えた。とりあえず、そう答えろと教えられているのだろう。彼のなまりはどちらかと言えば、山東省なまりだ。私が彼と話しこんでいる様子を遠巻きに眺めている「母親」役について、「本当のお母さんか?」と聞けば違うと答えた。「なぜ、北京にきたの?」「おじさんが、北京で稼いでこいって」「おじさんって血がつながっているの?」「うん」「本当は学校に行く年じゃないの?」「…」
そのあと、顔を見知りになって、会うたびに、アイスクリームやちょっとしたお菓子で釣って、聞き出したことを総合すると、彼は北京市内の撤去予定の空き家に大勢の仲間の物乞いたちと共同生活し、「老板(ラオバン=ボス)」と呼ばれる男の指示に従って、「母親」役とペアで建国門外界隈に物乞いに出ているのだという。
彼は血のつながったおじさんから、家が貧乏だから両親を助けるために北京でお金を稼いでこいと言い含められて、その老板に預けられた。老板は「いい人」らしい。つまり虐待などはなく、可愛がってくれるようだ。彼は老板に褒められたくて、毎日物乞いしている。仲間の物乞いには身体障害者もいること、彼自身は農村の暮らしより、北京の暮らしを結構気に入っているようなことを言っていた。
彼は意外に頭の回転がよく、おそらく本当は5歳より年を食っているだろう。外国人観光客にお菓子などをよく買ってもらっており、それが楽しいようだ。
私はある時、遠巻きに私たちを見守っている「母親」役の女物乞いに聞こえないように、雅宝路の物乞い組織のアジトに案内してくれとか、老板に故郷から訪ねてきたおばさんといって会わせてくれないかとか、彼に交渉を持ちかけた。物乞い組織の正体を見極めたいと考えた。100元あげるよ、とささやくと、彼はその気になったようだが、結局その親子物乞いは春節前には姿を見かけなくなった。北京市が五輪に向けた市内の管理を強化し、ホームレスや物乞いたちは市外へと追い払われてしまったらしい。
なぜ、その物乞いの男の子のことを急に思い出したかというと、今、中国で子供の物乞いの問題が急にクローズアップされているからだ。
発端は社会科学院農村発展研究所の于建嵘教授が1月17日に受け取った1通の手紙だという。福建省のある母親からの手紙で、わが子が2009年に誘拐され、2010年にたまたま、ネットの上で見かけたアモイの街角の写真の中にわが子を見つけた。体に障害を負わされた上、物乞いにさせられていたという。
于教授はこの手紙の内容を微博(マイクロブログ=前回参照)上で発表したところ、大反響を呼んだ。そこで、こういう子供たちを救う方法をネットユーザーたちと話し合い、街で見かける子供の物乞いの写真を携帯電話などで撮って微博上にアップし、両親が子供を探す手掛かりにしてもらおうという活動を1月25日から開始したのだった。
多くのネットユーザーがこれに協力し2月上旬の段階で2000枚以上の写真のデータベースができ、6人の子供の物乞いが、誘拐されて売られていた子供と判明し、救出された。公安当局もこれに協力して、微博に上げられた情報をもとに捜査しているという。
保護し採血してそのDNAをデータベース化
この事件にあわせて、新聞・雑誌メディアらがこぞって「子供の物乞い」特集記事を発表している。例えば海峡都市報(2月12日付)が掲載した「物乞い村」潜入ルポでは、記者が福建省福州市の街角で見かけた幼い姉妹の物乞いの跡をつけてある集落を発見した。そこでは、物乞いを専業とする貴州省出身の出稼ぎ者が固まって暮らしており、戸籍のない子供の物乞いたちが20人余りいたという。
もちろん、親子、家族の形態をしてはいるが、この取材後に警察が来て、誘拐された子供の可能性があるとして保護した。報道によれば、福州市警察ではローラー式に子供の物乞い捜索をしており、見つけ次第保護し、採血してそのDNAをデータベース化し、子供たちの身元確認の手掛かりとする、子供の物乞い救出作戦を始動しているらしい。
中国では、子供の誘拐は身代金目的よりも販売目的の方が圧倒的に多い。子供の売り先はおもに闇工場や闇売春窟、それに物乞い組織だ。哀れを誘う子供の物乞いにすがられれば、多少なりとも金を払ってしまう人は少なくない。幼い子供は物乞いの「必須アイテム」だ。
2009年4月当時の公安当局が行った第5回全国誘拐根絶行動で摘発された子供の誘拐事件は4595件で6785人の子供が救出された。ちなみに女性の誘拐事件はもう少し多く、6574件で救出人数は1万1839人だ。女性も誘拐されては、売春窟に売られたり農村の嫁に売られたりする。
これほど深刻な中国の子供の誘拐問題に対し、微博などを使って大きな世論を喚起できたことはよかった、と言えるのだが、この一見世論に支持されているように見える于教授のこの活動や、警察の子供の物乞い保護の動きには、批判の声も少しある。
1つは、子供の物乞いの写真を勝手に撮って微博にアップすることも、強制的に保護して血液を採取しDNAを調べることも、プライバシー侵害ではないか、という声だ。
子供の物乞いのすべてが誘拐され売られてきた子供ではない。本当の親子の物乞いであれば、強引に子供を親から引き離して保護するのはかわいそうではないか、という意見もある。数の上でいけば、冒頭で紹介した例のように、親自身や親せきが子供を「売る」あるいは「貸す」などして関与している場合の方が多い、とする見解は公安関係者もメディア上で述べていた。
派手な手術跡を見せ、涙ぐんで訴える父親
私がもう1つ思い出すのは、やはり2007年のクリスマス前後に、北京市三里屯界隈で出会った親子3人の物乞いだ。クリスマスの電飾で飾られたバー街の酔客を相手にしていたその親子の物乞いは本当の親子で、証拠に7歳という娘の顔が父親にそっくりだった。聞けば、山東省済南市郊外の農村出身だったが、父親が病気で腎臓を1つ摘出するような大手術を受け、農作業に従事できる体力がなくなり、親戚友人に大きな借金も負ってしまった。食うに困って、思いついたのが北京に「物乞い」の出稼ぎに行くことだったという。
村には他にも物乞いに出稼ぎに行く人があり、実はその前に娘を「貸した」ことがある。その時にもらった「貸し賃」が意外に多かったので、意を決して、自ら親子で北京に出てきたという。彼らはいわゆる物乞い組織には属していないが、同じ村から「出稼ぎ」に来ている仲間ら十数人で簡易宿舎の1室で身を寄せ合っているとか。
寒空の下でわざわざ服をめくって派手な手術跡を見せながら涙ぐんで訴える父親の言葉は嘘ではないと思ったが、100元札を渡しながら「いくらぐらい稼げるのか?」と聞くと「そんなに多くはない、先月は2000元ぐらいだ」という言葉には信じられない気持ちだった。そのぐらい稼げるものならプロの物乞いになろうという農民も出ようものだ。
彼らのようなケースを考えると、確かに子供の物乞いがすべて悪徳組織に利用され搾取されているというわけでもないのだろう。もちろん、どんな理由であれ、子供に物乞いをさせるような社会がいいわけがない。建国門外のあの男の子が例え、農村生活より都会の物乞いライフを気に入っていたとしても、彼の将来はあのままでは絶望的だ。
だが于教授の提案ですべてが解決できるほど単純な問題ではない。子供の物乞い救出作戦がホットなテーマとして社会の注目を集めている間は、金をねだって足元にまとわりつく幼い子供の姿が街から消えていくだろうが、それは物乞いをせざるを得ない貧困、子供を売らざるを得ない貧困がなくなったと言う意味ではない。極端な言い方をすれば、于教授のやり方で、視界に入る街角の子供の物乞いは減るかもしれないが、闇売春窟や闇工場に放り込まれる子供は増えるかもしれない。
突き詰めていくと格差、体制の問題
中国の社会問題は、突き詰めていくと格差の問題になり、体制の問題となってくる。GDP世界第2位の国なのに、どんなに貧しくとも子供を売らずに済み、物乞いをしなくて済む最低生活保障の設計がなぜできないのか。なぜここまで富が偏在するのか。中国の言論や報道の統制をあざやかに突き抜けて情報や議論を広めるといわれる微博ですら、そこの部分になってくるとなかなか矛先が鈍ってしまう。
しかし、そういうことを机上で考える私は、北京の真冬の空の下で、「10元!」と甲高い声をあげてまとわりつく男の子に面と向かっては、アイスクリームを買う以上のことができなかった。今、北京の街角で彼と同じような子供と出会えば、私はやはり携帯電話でその子の写真を撮り、于教授のデータベースに送るに違いない。しかしたぶん、あの垢じみた男の子にまとわりつかれたときの、イライラした気持ちはまだ、どうしようもないのだ。
■変更履歴
3ページ最後の行、「イライライ」は「イライラ」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです [2011/02/16 11:55]
福島香織さんの近著
『潜入ルポ 中国の女』
(文藝春秋、1500円=税込)
モンゴル人に扮してのエイズ村取材、都市の底辺で蠢く売春婦たち、華やかなキャリアウーマン…。女を取り巻く驚愕の実態が今明らかに!
このコラムについて
中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。
⇒ 記事一覧
著者プロフィール
福島 香織(ふくしま・かおり)
ジャーナリスト
松田 大介 大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002〜08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。著書に『潜入ルポ 中国の女―エイズ売春婦から大富豪まで』(文藝春秋)、『中国のマスゴミ―ジャーナリズムの挫折と目覚め』(扶桑社新書)、『危ない中国 点撃!』(産経新聞出版刊)など。
日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>時事深層
アラブ版「ベルリンの壁」崩壊
* 2011年2月16日 水曜日
* 大竹 剛
民主化ドミノ 独裁政権 自由 GDP(国内総生産) インフレ 民主化デモ 欧州・中東・アフリカ 民主化 ベルリンの壁
チュニジアで始まったアラブの「民主化ドミノ」が止まらない。もはや民意を反映しない体制の存続は困難になりつつある。独裁政権を支援してきた欧米も外交戦略の見直しを迫られる。
14カ月間、食料はタダ――。2月1日、オイルマネーで潤う中東の小国クウェートで、壮大なバラマキ政策が始まった。独立50周年の記念行事として、移民を除く約110万人のクウェート人に約30万円の祝い金に加え、食料を1年以上にわたって無料にするというのだ。
だが、それを単なる記念行事と受け止めた専門家は少ない。英国際戦略研究所(IISS)バーレーン事務所のアラノウド・アルシャレク氏は、「エジプトのような暴動を未然に防ごうとする動きが中東に広がっている。クウェートの取り組みはその1つ」と指摘する。
北アフリカで民主化デモが勃発した契機の1つが、食料価格の高騰。産油国のクウェートは1人当たりのGDP(国内総生産)が3万ドルを超え、エジプトの同2771ドルよりも圧倒的に豊かな国だ。それでも、国王が食料の補助金政策に踏み切るほど、国民の不満をガス抜きする必要に迫られている。
インフレより自由の抑圧に怒り
ヨルダンでも、相次ぐデモの沈静化を狙い国王が首相を解任して政治改革の推進を約束。イエメンでは、大統領が次期大統領選には出馬しないと公約した。シリアの大統領も、米ウォールストリート・ジャーナルのインタビューで、政治改革を実行すると表明した。
多数の死傷者を出したエジプトと比べれば、すべての中東アラブ諸国が深刻な事態に陥っているわけではない。だが、英ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)・中東研究所のハッサン・ハキミアン所長は、「大規模なデモが起きていなくても、アラブ諸国で国民の声を反映する政治体制に向けた改革の流れは止まらない」と断言する。それは、ベルリンの壁が崩壊した時と状況が似ているという。
1989年のベルリンの壁の崩壊は、東欧で連鎖的に民主化革命を引き起こし、ソビエト連邦の崩壊へとつながった。チュニジアで起きた「ジャスミン革命」も同様に、エジプトに飛び火し、北アフリカ諸国から中東の産油国へと伝播している。
1人当たりGDPで見れば、産油国にはまだ余裕がある。しかし、より問題なのは、「インフレなどの経済問題より、自由が抑圧され、閉鎖的な環境に国民が置かれている状況だ」とハキミアン所長は指摘する。
例えば、サウジアラビアでは、選挙で議員が選ばれる国会はない。国王が議員を任命する諮問評議会はあるが、立法権は限定され、民意が十分に反映されているとは言い難い。メディアが国王を批判するのも皆無で、言論の自由は厳しく制限されている。
アラブ諸国で民意が政治に反映されるようになると、皮肉にも民主主義を主唱する米国をはじめとする西側諸国が懸念する事態を招くかもしれない。エジプトではムバラク政権崩壊後、イスラム教勢力のムスリム同胞団が議会で多数派を占めれば、「イスラエルとの和平条約の正当性が疑問視される可能性もある」(IISSのアルシャレク氏)。米国はエジプトをイスラエルとアラブ諸国の仲介役と位置づけてきただけに、外交戦略の見直しは必至だ。
今、西側諸国は、民主化を求める国民の側に立ち、独裁政権との関係を見直してアラブ諸国との新たな秩序形成を推進することができるか、政治的な岐路に差しかかっている。「西側、特に米国は、民主主義が大切と言いながら、非民主主義的で独裁的な国と親密な関係を築いてきた。しかし、もう二枚舌は許されない」(ハキミアン所長)。
民主化が進み、政策決定過程で多様な意見をくみ取る必要が出てくると、混乱が生じて経済開発が停滞する可能性が高い。それは、北アフリカや中東を次代の成長地域として捉えてきた西側諸国や日本の企業にとっても、手痛い事態だ。だが、それは民主化を進めるうえで、避けて通れない代償である。
このコラムについて
時事深層
日経ビジネス “ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。
⇒ 記事一覧
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
- 「中国が日本を買いまくる」虚像に怯える日本社会 tea 2011/2/18 11:17:25
(1)
- 中国、「不動産バブル」続く tea 2011/2/19 11:15:56
(0)
- 中国、「不動産バブル」続く tea 2011/2/19 11:15:56
(0)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。