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(回答先: 原子力発電の推進の根拠は全て嘘である (Beyond 5 Senses) 投稿者 新世紀人 日時 2011 年 4 月 01 日 06:02:16)
http://tamekiyo.com/documents/W_Engdahl/peakoil.html
掲載2010年9月26日
訳者メモ
『ロックフェラーの完全支配・ジオポリティックス(石油・戦争)編』の予約がアマゾンで始まりましたので、原著者ウィリアム・イングドールが「石油ピーク論」「石油の生物由来説」の嘘を暴いた2007年の記事を紹介します。
著者は、2003年のイラク戦争は、枯渇する石油資源を確保するための米国の行動と考えていましたが、ロシアの非生物起源の石油理論の存在を知り、本当の目的はロシアの分断・封じ込めという地政学的な目的だったという解釈に切り替えたという画期的な論考です。この切り替えにより、原著"A Century of War"もスペイン語版から一部書き換えられており、今回の日本語版も最新内容が反映されています。
新刊書の内容については近日中にご案内します。
戦争と「石油ピーク」〜元「石油ピーク」信者の告白〜
War and "Peak Oil" Confessions of an ‘ex’ Peak Oil believer
F・ウィリアム・イングドール
By F. William Engdahl
(http://engdahl.oilgeopolitics.net/)
2007年9月26日
元「石油ピーク」信者の告白
★良いニュース:もうじき世界の石油が枯渇するという危機シナリオは間違いである。
★悪いニュース:石油価格はまだ上昇する予定である。我々の問題は、石油ピークではない。問題は政治にある。大手石油会社は、高い石油価格を維持したい。ディック・チェイニーたちは、それを喜んで支援するつもりだ。
私個人の経歴としては、1970年代の第一次石油ショックの時から石油の問題を研究してきた。2003年に、石油ピークなるものに関心を抱いた。イラクへの軍事行動というリスクを冒したワシントンの決断を説明する理由はそれ以外にありえないように思えた。
元BPの地質学者コリン・キャンベル(Colin Campbell)やテキサス州の金融業者マット・シモンズ(Matt Simmons)を筆頭とする石油ピーク主張派は、世界は新たな危機を間もなく迎えるとしている。恐らく2012年か、2007年には、絶対的な石油ピークを迎え、安価な石油の時代は終わるというのである。〔訳註:このようにマット・シモンズは、石油利権側の代弁者であったが、今年2010年のBPのメキシコ湾流出事故ではBPの事実隠蔽に対抗して真実を訴えようとしたため8月に暗殺されたようである〕石油は、枯渇すると思われていたのである。この主張を裏付けるものとして、急騰するガソリン・石油価格、北海、アラスカなどの油田の産出量の低迷を指摘していた。
キャンベルは、1960年代後半以来、北海油田規模の油田が新たに発見されていない事実が、この証拠だと言っている。彼は、どうにかしてIEA(国際エネルギー機関)とスウェーデン政府を納得させたと言われている。だが、それは彼が正しいことの証明にはならない。
知的な化石?
石油ピーク派は、その理論の根拠を西側の地質学の教科書に置いている。その多くはアメリカかイギリスの地質学者によるものであり、石油は化石燃料だとしている。生物の残骸で、恐竜かおそらく藻類の化石化したものであり、それ故に、有限だとされる。生物由来は石油ピーク論の核心であり、世界の中でも大昔に地質変動で閉じ込められた一部の地域にのみ石油が発見される理由の説明にもなっている。つまり、死亡した恐竜が圧縮され、何千万年もの歳月をかけて化石になり、地表より4〜6千フィートの地底の貯留層に閉じ込められたということになる。そして、まれなケースとして、巨大な量の生物性の物質が、メキシコ湾、北海、ギニア湾のような浅瀬の沖合地点で岩盤形成中に閉じ込められたとされる。地質学は、こうした地層(貯留層)内のポケットが、特定の堆積盆のどこにあるかを明らかにすることしかできないことになる。
西側では殆ど知られていないが、ロシアには完全に別の石油生成理論が1950年前半から存在していた。それによると、従来のアメリカの生物起源説は非科学的な矛盾であり、証明不可能である。過去1世紀というもの、西側の地質学者は何度も石油には限度があると予測してきたが、いつも新たに石油が発見され、どんどん量が増えている事実を指摘している。
石油・ガスの由来に関するこの代替説は、理論として存在しているだけではない。ロシアなど旧ソ連圏から大きな石油・ガス生産者が出現しているのは、この理論が実用化されてきたためである。これは地政学的に強烈な意味がある。
必要は発明の母
1950年代、ソ連は西側から鉄のカーテンで隔離された。冷戦の最盛期だった。ロシアには、経済に必要な石油がほとんどなかった。自国で十分な量の石油を発見することが、国家安全保障の優先順位として最高だった。
ロシア科学アカデミーの地球物理研究所とウクライナ科学アカデミーの地質学研究所の科学者は、1940年後半に「石油はどこから来るのか?」という根本的な調査を始めた。
1956年に、Vladimir Porfir’yev教授が結論を発表した。
原油と天然石油ガスには、地表面近くを起源とする生物性の物質とは本質的に関係がない。大深度から噴出する始原物質である。
ソ連の地質学者は、西側の正統派地質学を覆していたのである。彼らはその理論を、西側の生物由来説と区別するために「非生物」説とした。
もしこの理論が正しいならば、地球の石油供給は、地球が形成された時期に地球の奥深くに存在していた有機的な炭化水素成分の量に限定されることになる。石油の採掘可能性は、超深度の油井を堀り、地球の内部を探索する技術に依存することになる。彼らは、古い油田が復活して生産を続けることも発見した。いわゆる自己補充油田である。ダイヤモンドの生成に必要とされるような、超高温・超高圧状態の地球の奥深くで石油が生成されるのではないかと議論した。「石油は地球深部の始原物質であり、『低温』噴出プロセスを通じて高圧で地殻に運ばれる」とPorfir’yevは述べた。彼のチームは、石油が動植物の化石の生物的残留物であるという考えを退け、石油供給量には限界があるという神話を定着させるための意図的な捏造だとした。
従来の地質学を一蹴する新理論
この石油開発に関するロシアとウクライナの斬新なアプローチにより、それまで西側の地質探査論では石油の存在には不適当とされた地域で、ソ連は巨大なガス・石油を発見することができた。この新石油理論は、ソ連解体後しばらく経った1990年代前半に実用化され、45年以上も地質的に不毛な地域と信じられたいたドニエプル・ドネツ盆地(ロシアとウクライナに挟まれた地域)で石油・ガスの掘削がなされた。
石油の起源は地球深部にあるとする非生物(非化石)理論に従い、ロシアとウクライナの石油・地球物理学者・化学者は、ドニエプル・ドネツ盆地の結晶基底の形成経緯と地質構造の詳細分析に着手した。深部構造・形成分析の後に、地球物理学・地球化学の調査を実施した。
合計で61箇所の油井が掘られたが、その内37箇所が商用生産可能だった。ほぼ60%という大変素晴らしい成功率だった。発見された油田の規模は、アラスカのノーススロープ油田に匹敵していた。対照的なことに、米国のヤマ勘的な掘削では10箇所掘って9箇所は「空井戸」であり、成功率は10%だった。
こうした石油・ガス発見に関するロシアの地球物理学的知見は、冷戦時代に一般的だったソ連の国家機密のヴェールに厳重に包み隠され、西側の地球物理学者に知られることはほとんどなかった。西側の地球物理学者は、石油の起源は化石であり、石油資源は物理的に極めて限られていると、従来通り教え続けていた。ペンタゴン内外の戦略家たちが、ロシアの地球物理学者が何やら深遠な戦略的重要性に関わることを握っているかもしれないと、緩慢ながらも気付き始めたのは、2003年のイラク戦争からしばらく経ってからだった。
もしも、ロシアに科学的なノウハウがあり、西側の地質学にないならば、ロシアには地政学的に驚異的な重要性を持つ戦略的切り札があることを意味した。そうすると、ワシントンが、ロシアの周囲に「鉄の壁」(軍事基地と弾道ミサイル迎撃網のネットワーク)を築き、ロシアと西欧・中国などユーラシア大陸各地を結ぶ港湾・パイプラインを切断しようと乗り出すのも不思議ではなかった。ハルフォード・マッキンダーの最悪の悪夢(経済成長の燃料となる石油の必要性など経済的必然性から生じたユーラシア諸国間の互恵的な協力関係)が現実になろうとしていた。皮肉なことに、従来ユーラシア大陸で敵対していた中国とロシアに緊密な協力関係をもたらし、西欧諸国に選択肢が狭まっていることを気付かせる触媒の働きをしたのは、イラク(さらにイランも)の広大な石油資源を露骨に略奪した米国の行動であった。
ピーク理論の王様
石油ピーク理論は、テキサス州でシェル石油のために働いていた地質学者の故マリオン・キング・ハバート(Marion King Hubbert)が書いた1956年の論文に基づいている。彼は、石油の油田は、正規曲線(釣り鐘曲線)状に生産量が推移し、一度「ピーク」に達すると、その後の産出量低迷は不可避であると主張した。そして、米国の石油生産は1970年にピークを迎えると予測した。控え目な人間だった彼は、自らが発明した産出量の曲線を「ハバート・カーブ」と名付け、ピークのことを「ハバート・ピーク」と名付けている。米国の石油生産が1970年前後にピークを迎えて落ち始めると、ハバートはそこそこの名声を得た。
だが問題なのは、米国の油田の枯渇・減耗のためにピークを迎えたわけではなかったことである。シェル、モービル、テキサコなどサウジ・アラムコの提携社が、中東の石油を関税無しの異常な安値で米国市場に流し込んだため、カリフォルニアやテキサスの生産者には勝ち目がなく、油井を閉鎖するしかなかったのである。これが米国の石油産出が「ピーク」を迎えた理由だ。
ベトナムでの成功例
1960年代に、アメリカの多国籍石油企業が、サウジアラビア、クウェート、イランなど、採取しやすく安価で豊富な石油資源の支配・管理に忙しかった頃、ロシアは新たな理論の試験に忙しくしていた。不毛と考えられていたシベリアの採掘を始めていたのである。深層「非生物起源」の地質学的想定に基づき、シベリアで11の大きな油田と1つの巨大油田を開発した。結晶基底の岩盤に穴をあけ、アラスカのノーススロープ油田に匹敵する規模の「黒い金(石油)」を掘り当てた。
そして、1980年代にベトナムに行き、新たな地質学理論が有効であることを示すために掘削コストを資金提供すると申し出た。ロシア企業Petrosovは、ベトナムのホワイト・タイガー沖合油田の玄武岩を約17,000フィート掘削し、日量6,000バレルの石油を採取して、エネルギーに飢えていたベトナム経済に供給した。非生物起源説で教育されたロシアの地質学者が理論を完成させ、ソ連は1980年代中頃に世界最大の石油生産国になった。西側でその理由を理解していた者はほとんどおらず、知ろうともしなかった。
J・F・ケニー(J. F. Kenney)博士は、巨大なドニエプル・ドネツ盆地を開発したVladilen Krayushkinの下で学びながら、ロシアで教育・研究に携わった数少ない西側の地球物理学者の1人である。最近のインタビューでケニーは、「現在まで(サウジアラビアの)ガワール油田で産出された石油の量だけ考えても、100%の変換効率でもって、19マイルの深さ、幅、高さの恐竜の残留物が存在しなければならないはずだ」と著者に語っている。つまり、馬鹿げているということだ。
西側の地質学者には、化石起源の確たる科学的証拠を提供する気はない。ただ単に神聖なる真実として当然のことと思っている。一方でロシア人は大量の学術論文(ほとんどロシア語)を書いている。西側のメジャーな専門誌は、そんな革命的な見解を出版することに関心がない。結局のところ、出世や学者生命そのものが危うくなる。
扉を閉めたロシア
ユコス石油のホドルコフスキー(Mikhail Khodorkovsky)が2003年に逮捕されたのは、彼がディック・チェイニーと密談してユコスの支配的株式をエクソンモービルに売却しようとしたときだった。エクソンがこの支配権を手に入れることは、非生物起源理論の深部掘削技術で教育を受けた地質学者・技師の世界最大の人的資源を手に入れることを意味していた。
2003年以来、ロシアは、急激に科学的知識の共有を制限するようになった。この問題にかかわったアメリカの地球物理学者らによると、ロシアは1990年代前半に米国などの石油地球物理学者に知識の共有を申し出たが、冷たく拒絶されたそうである。
それなら、何故、高いリスクをおかしてイラクを支配する戦争をするのか?過去百年、米国を中心とした西側の石油巨大企業は、サウジアラビア、クウェート、ナイジェリアの支配を通じて、世界の石油を支配してきた。現在、多くの巨大油田が低迷する中、石油企業は、安価で採掘の簡単な石油資源として主に残っているのは、イラクとイランの国家管理下にある油田だと思っている。中国そしてインドからも大きな石油需要がある中、米国にとって可能な限り早期に中東の資源を直接軍事支配することが、地政学的に必須になっている。ディック・チェイニー副大統領は、世界最大の石油地球物理サービス企業であるハリバートン社の出身である。米国の石油支配を脅かす可能性があるとすれば、それはロシアにあり、いまやロシアの国家管理下になったロシアの巨大エネルギー企業にある・・・。
ケニーによると、西側の地質学者がようやく1960年代に「発見」したドイツの科学者アルフレッド・ウェゲナー(Alfred Wegener) の理論を、ロシアの地球物理学者はそのはるか30年前には活用していたそうである。ウェゲナーは、1915年に独創的な著作『大陸と海の起源』を発表している。その中で、2億年以上昔の原初の単一の陸塊「パンゲア」が、「大陸移動」により、現在の諸大陸に分離していったことを述べている。
1960年代までフランク・プレス(Frank Press)博士(ホワイトハウスの科学顧問)などの米国の科学者と思しき人々は、ウェゲナーのことを「狂人」扱いしていた。
だが、北海の広大な石油資源の発見を説明する理論は、ウェゲナーしかなかったため、1960年代末には前言を撤回せざるをえなくなっている。おそらく数十年後には、西側の地質学者も化石起源という神話を再考することになり、ロシア人が1950年代から知っていたことに気付くことになるのだろう。そんな状況で、モスクワはエネルギーの大きな切り札を握っていることになる。
(翻訳:為清勝彦 Japanese translation by Katsuhiko Tamekiyo)
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