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「脱」元年振り返る 原発事故分析を発信・大沼安史さん@こちら特報部
http://blog.livedoor.jp/ryoma307/archives/5567270.html
2011年12月18日 東京新聞 こちら特報部 :Nuclear F.C : 原発のウソ
今年を歴史に刻む言葉を選ぶとしたら「3・11」だろう。大地震や大津波などによる多くの犠牲や痛みは現在進行形だ。
中でも福島原発事故は世界に衝撃を与え、情報隠しと放射能による地球汚染は日本不信を植え付けた。この危機を、来る年に乗り越えていけるのか。国内外の原発事故報道を分析してきた仙台在住のジャーナリスト、大沼安史さん(62)を訪ねた。(野呂法夫)
被災した東北の最大都市仙台。駅前ビルの喫茶店に入ると、友人同士や老夫婦、子連れのお母さんらでにぎわい、一見して平穏にも見える。
「いや。それぞれが胸に震災の傷や不安を押し込んでいる。断固として日常生活を続けている強さを知ってほしい」
そう話す大沼さんも地震後は一時避難所で過ごした。原発事故が起きると、何が起きているのか、政府や東京電力の発表情報に不信を募らせ、インターネットで海外発のニュースを丹念に読んで真相を分析。ブログ「机の上の空」で発信してきた。
まず行く年の最大のニュースは何か。「米ウォール街の格差デモや欧州金融危機、中東の民主化旋風もあった。だがマイナス面を乗り越えて、まだ何かが拓(ひら)けもする」
「それだけに、世界最悪の出来事は大地震に続く“原発震災”。来月、来年…半永久に続く地球の汚染事故だ」と話し、被災者をおもんぱかる。
「年忘れができない。この間汚染は広がり、福島の人たちの被ばくも進行中。古里を追われたまま年も暮れていく。つらい年の瀬でしょうに」
では、大沼さんが選ぶ今年の世界の顔は誰か。迷わずに口にしたのがメルケル首相だ。「忘れられているが、ドイツの脱原発を決断した。物理学者であり、政治指導者でもあるが、命にもっと近い女性でもあった」
さらに“もう一人”の名も挙げた。「経済産業省前に座り込み、取り囲んだ福島の女たちです」
東京・霞が関の経済産業省前。10月27日から、「原発いらない福島の女たち」が座り込んだ。29日までの3日間で2400人近くが参加し、その動きはニューヨークまで広がった。
続く3・11から8カ月後の11月11日午後6時すぎ。小雨が降る経産省を再び女たちが包囲した。「再稼働反対!脱原発全国アクション実行委員会」が呼びかけた「人間の鎖」行動だ。
経産省と原子力安全・保安院は事故を過小評価し、原子力政策の転換にあらがい、ムラの利権を守り、定期点検中の原発の再稼働をもくろむ。
対して権力も社会的立場もない市民が自らの意思で集まった。原発事故で暮らしを奪われ、子どもや労働者の被ばくに心痛する福島の女たちもいた。できることは体を張って声を出すだけだ。
「原発よりいのちが大事。原発いらない」。そう訴えて、節電で街路灯が消えたたそがれの闇にキャンドルやペンライトを高々と掲げた。そして、一周約900メートルある庁舎を取り囲み、手と手をつないだ。その絆の輪は約1300人に上った。
政府の事故炉「冷温停止状態」宣言や高い被ばく許容線量の設定とともに、脱原発の灯を消そうという動きも荒れ狂う。
「子どもたちが被ばくしているから、女たちは『座り込み』から動かないし、どんな風が吹いても明かりは消えない」と大沼さんの目には映る。
「未来こそ暗闇で、希望も閉じ込められている。だけど、どんな過酷な状況でも生きることを諦めない福島のお母さんたちの中に光がある。彼女らが前に進むことで、希望を拓く明かりは燃え続けるでしょう」
その先例として反核平和運動の前面に立ち続けた「グリーナムの女たち」に言及する。
グリーナムとは英国ロンドン郊外のグリーナムコモン米軍基地。米ソが対立する冷戦状態が続く1981年、巡航ミサイルの配備に反対して、女性たちが立ち上がった。
運動では基地の周りに住み込んで座り込み、警察官の強制退去にもめげずに歌い踊って、応戦し
続けた。82年12月、2万人以上が人間の鎖で基地を囲んだ。草の根の非暴力抗議行動は、18年後に基地の軍事機能の消滅として実を結ぶ。
この取り組みは84年に記録映画となり、福島原発の事故後に各地で上映会が開かれて、女性たちを勇気づけている。
話は原発事故後に東電が言い張った「想定外」から再びメルケル首相へ。
地震も津波もないドイツでの脱原発について、週刊発行の全国紙「ツァイト」の首相会見の一部を紹介する。「想定外=残余」のリスクを問われ、メルケル首相はこう述べたという。
「商売の取引でリスクに気付くことはよくあること。しかし原発のリスクが現実となったとき、自分の身体や個人の人生の中で終えてしまうことができない。欧州全体に広がってしまい、取り返しがつかない。想定外をなくすためには、原発をやめる選択しかない」
ドイツの新聞は、原子炉3基の爆発を「ズーバーガウ」(想像できる限りでの最大の事故)といった造語で表現した。
膨大に散らされた「死の灰」の闇は見えず感知できない。「フクシマで恐ろしさ」を確信したメルケル首相と、県民を汚染地に囲い込んで被害を小さく見せようとする日本政府は「真逆」と手厳しい。「チェルノブイリの例を見ても帰郷は難しい。ところが、きれいにすれば高汚染地にも帰れるとの新たな『除染神話』がまかり通る。マスコミも加担している」
もう一つのノーベル賞といわれるスウェーデンの「ライト・ライブリフッド賞」。主に環境保護や人権問題、健康などの分野で活躍した人物や団体に贈られる。日本では市民科学者の故高木仁三郎氏らが受賞している。「来年には福島の女たちが候補となりえる。メルケルと同時受賞してほしい」
若者たちの動きも忘れてはならないという。ブログや投稿サイト「ツイッター」を見て、「俺たちのために」とデモに参加した。「彼らに芽生えたライフスタイルの心は脱原発。経産省エネ庁が広告代理店を使い、ネット狩りをしても無駄。この流れは止められない」
みんな「風下の人間」になってしまったのです−。大沼さんは事故後に語られる言葉を引用し、最後にこう呼びかけた。「わたしたちはここで生きていくしかない。としたら、最も過酷な『風下』にいる福島の子どもたちを助けることをぜひ来年はやってほしい」
おおぬま・やすし 1949年、仙台市生まれ。東北大卒。北海道新聞の記者や論説委員を経て、東京医療保健大学特任教授を務めた。震災後に「世界が見た福島原発災害−海外メディアが報じる真実」と続編「死の灰の下で」(緑風出版)を出版。
<デスクメモ>
政府は汚染地域の除染を進めると繰り返すが、現実感は薄い。それでも被災者は「故郷に帰りたい」と言わざるをえない。「もう結構。あきらめた」と口にしたとたん、ハシタ金と引き換えに被害を清算されてしまう。そんな恐怖を捨てきれないからだ。弱みにつけ込む手口。何と狡猾か。(充)
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