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http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2011100902000017.html
地熱発電 再び脚光 原発20基分、埋蔵世界3位
2011年10月9日 朝刊
ぬかるむ道を車に揺られて山奥へ進んだ。地元通からは「ヒグマに気をつけて」と言われた。九月中旬、北海道小樽市から南へ十数キロ離れた阿女鱒(あめます)岳。訪ねた国有林の一角では、作業着の技師らが地中の電磁波を測定する装置を使い、地下に「天然のボイラー」がないかを探っていた。地熱発電に使える熱水のたまり場のことだ。
地熱発電は温泉と同じように地球内部の熱を利用する。温泉より深い地下一〜三キロまで井戸を掘り、二〇〇〜三〇〇度の熱水のたまり場から噴き上がる蒸気でタービンを回して発電する。
国内では一九九九年以降、商用の地熱発電所は新設されていないが、阿女鱒岳で事業化を目指すエネルギー大手、出光興産と国際石油開発帝石(INPEX)は本気だ。出光の古谷茂継主任技師は「太陽光や風力発電に比べ天候の影響を受けず、昼と夜、季節による変動が少ない。安定的に発電できる再生可能エネルギーだ」と明快に話す。
地熱発電は二酸化炭素(CO2)の排出量も少ない。地球温暖化を防ぐ利点があるクリーンエネルギーで、福島第一原発事故を境に、にわかに代替電源として注目を集め始めた。
地上で進める調査は地熱発電所の建設までの第一段階。集めたデータによって地下の熱や水の流れを示す「イメージ図を作る」(INPEX担当者)ことで、どんな規模の地熱発電が可能かがわかる。出光の後藤弘樹地熱事業総括マネジャーは、結果を分析したうえで「来年度中には、次の段階のボーリング(掘削)調査に進みたい」と期待する。
◇ ◇
火山が百以上ある日本では、地熱資源量は約二千三百万キロワットと試算される。世界でも米国、インドネシアに次ぐ第三位の地熱資源大国だ。原発(百万キロワット級)の二十基分以上に当たる。一九七〇年代のオイルショックで「石油が枯渇する」と危機感が生まれた。政府は当時、輸入に頼らない純国産エネルギーの地熱開発を後押しし、九〇年代半ばの開設ラッシュにつながった。
しかし、調査用に直径八センチの井戸を一本掘ると約二億円かかる。発電所を建てるのに出力三万キロワット級の例で二百六十四億円という高い費用や、発電所が小規模で山中に分散するという特徴が開発の足を引っ張った。国と電力会社は大規模で集中立地できる原発や火力発電を優先した。国内十八カ所の地熱発電所の出力は五十四万キロワットにとどまり、国内電力量のわずか約0・3%だ。
新設へ追い風が吹き始めた地熱発電所だが、国内では実際に運転を始めるまでに十年はかかるのが常識とされてきた。地下水や温泉、動植物など環境への影響を調べたうえ、審査や手続きも長い時間がかかるからだ。潜在力は高いのに控えの座に甘んじている背景に、乗り越えるべき課題が浮かび上がる。 (東条仁史)
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