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(回答先: 脱原発は生命を奪う 原発の限界費用と外部性 投稿者 sci 日時 2011 年 6 月 21 日 19:19:32)
面白いので、反論してみようと思う。以下、○印で反論する。
脱原発は生命を奪う
経済学の重要な(しかも多くの人が理解していない)概念に、機会費用がある。たとえば、あなたが大学に払う学費が年100万円だとしても、大学4年間に失う所得は400万円ではない。大学に進学しないで働いていれば年収300万円を得られるとすると、大学4年間で失われる機会費用は1200万円である。これと学費を合わせた1600万円が実質的な費用だから、それ以上のメリットがなければ進学することは純損失になる。
こうした間接費用は直観的にわかりにくいので無視されやすいが、直接費用より大きいことが多い。原発を停止する作業にかかるコストは無視できるが、日本エネルギー経済研究所によれば、すべての原発が停止して火力発電で電力需要を代替する場合、1年間で3兆5000億円(18%)のコスト増になり、1ヶ月あたりの標準家庭の電気料金が1049円増加する。これが原発停止の機会費用である。
○ 「原発を停止する作業にかかるコストは無視できる」はそもそも完全に間違い。
原発は停止させることが最も難しい。廃炉できないから危険を承知で今まで
うごかしていた。そのツケが今回の原発事故。
○ 「日本エネルギー経済研究所」は、電力会社が最終的に価格調整をすること
を計算に入れていない。現実問題として、この調整マージンがやたら高いので
日本の電気代はバカみたいに高い。
この試算に対して「月1000円程度の電気代は命に代えられない」と反発する向きがあるが、逆である。脱原発は多くの生命を奪うのだ。OECDによれば、5人以上の死亡する原発事故はOECD諸国では1件も起こっていないが、石炭の採掘事故によって毎年、中国だけで3000人が死亡する。
○ 中国は、現場の管理の杜撰さがそもそもの批判対象である。ウラン鉱にも同
様のリスクがともなうのは、原理的に自明である。また、わざわざ日本では下火
の石炭火力と比較するのはナンセンスである。もちろん、昨年のBPが引き起こ
したメキシコ湾岸の海洋汚染の事例もあり、「いかなる資源を」採掘するにも
一定のリスクがともなうことについては、否定しない。
大気汚染による死者は、さらに多い。Max CarbonはNRDC(自然資源防衛協会)の次のような試算を紹介している:
Burning fossil fuels including coal, natural gas, oil, diesel fuel, gasoline, and wood is the largest single source of these small particles. Coal-fired power plants are the worst offenders by far. The NRDC estimated that approximately 64,000 people may have been dying prematurely each year in 239 U.S. metropolitan areas due to the particles. [...] Nuclear plants would reduce those premature deaths even more; nuclear plants do not emit such particles.
○ "Burning fossil fuels including coal, natural gas, oil, diesel fuel,
gasoline, and wood is the largest single source of these small
particles."とあるように、これは一般的な燃焼にともなう大気汚染につい
て言及している。Max Carbonのバカにわざわざ付き合うまでもない。ちな
みに、日本でばいじんが専ら問題になるのは、自動車で、ディーゼル車
規制があったことは記憶にあたらしい。(火力発電所を含む)工業部門
については、四日市ぜんそくなどの経験から、脱煙・脱硫装置がついてお
り、石炭火力から汚染された空気を垂れ流している中国とは多いに異なる。
まぁ、(付け焼き刃だから)中国の話題から離れられない先生に付き合うと
しよう。
全米239の都市だけで、毎年64000人が化石燃料(特に石炭)による大気汚染で死亡すると推定されている。WHOの推定では、全世界で1年間に大気汚染によって死亡するのは300万人だから、火力発電による死者は全世界で数十万人と見込まれる。いま日本がすべての原発を止めて火力の運転を18%増やすとすると、これによって1年に採掘事故と大気汚染で1500人以上が死亡すると推定される。これが原発停止によって失われる生命の機会費用である。
○ 仮定については、原文追記で言及されているので、そこで反論する。
なお、福島原発の影響で死亡すると考えられる人の数は、チェルノブイリと比
較して見積もれば、1500人より少なくとも一桁は多い。
エネルギー消費は必ず環境を汚染するので、まったく無害なエネルギーは存在しない。相対的に害の少ないエネルギー源を選ぶしかないのだ。
○ これには、全く同意。
少なくとも死亡率でみるかぎり、Carbonもいうように原子力はリスク最小のエネルギーである。特に石炭はきわめて危険なkiller energyであり、その燃焼を増やすべきではない。「反原発」デモでその即時停止を求めている人々は、環境を汚染して数千人の生命を奪うテロリストに等しい。
○ Carbonの論理的なミスについては指摘済みで、これにより、「少なくとも死亡
率でみる...」という結論は破綻している。
追記:「石炭火力」を「火力」に修正し、運転増をエネルギー経済研のデータに合わせて18%増とした。NRDCによると、全米の大気汚染による死者は年間10万人以上なので、化石燃料の使用量がその2割の日本の死者は2万人以上。その18%が増えたとして3600人。採掘事故の死者は世界で毎年5000人以上で、日本の消費量は世界の約5%だから、その18%で45人。化石燃料のすべてが発電用ではないが、石炭のほとんどは発電用なので1500人程度が妥当だろう。
○ "small particles"だからばいじんに限定するけれども。政府統計*によると、
電気業のばいじん排出量は、全業種の15%である。これが2割弱増えると
すれば、全体からみて3%のばいじん排出量の増加になる。「日本の死者は
2万人以上」は仮に正しいとしても、2万人x3%=600人である。
*http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001012978&cycode=0 の表4
○ 「採掘事故の死者は世界で毎年5000人」と仮定しているが、そのうち、中国
の死者が3000人を閉めている。中国の石炭生産量は、世界の生産量の半
数にも満たないため、これは安全管理上の問題であって論外であることがわか
る。
○ そもそも、比較対象のアメリカより遥かにばいじん処理については進歩している
ことを認識するべき。
参考:http://www.jpower.co.jp/bs/karyoku/sekitan/sekitan_q02.html
原発の限界費用と外部性
もう原発の話はやめるつもりだったが、専門家も問題を誤解しているようなので、少し補足しておく。林貴志氏の次のようなつぶやきを齊藤誠氏がRTしている。
「原発がなくなって電気料金が高くなったら産業の競争力が落ちる」という類の意見がTLに流れてきているが、外部不経済を内部化した結果そうなるならば、それは所与の条件から得られるものが高々そういうものでしかなかった、ということなのだろう。
これは短期と長期の問題を混同している。長期(設備投資を含めた投資の回収)を考えると「原発がなくなって電気料金が高くなる」かどうかはわからない。核燃料サイクルなどの外部性のコストを内部化すると、原発の発電単価は火力とあまり変わらないので、向こう40年で原発をゼロにしたとしても、それを徐々に化石燃料で置き換えれば、長期の電力コストはそれほど変わらないだろう。
○ ここは、正しい。(原発が火力にくらべてトータルで2桁3桁コストが高くない限り
は電力コストは「それほど」変わらないといっても、まぁ、いいだろう。)
ただし原発は固定費が大きく燃料費が小さいため、短期の限界費用は小さい(おそらく1円/kWh以下)。だから「反原発」デモが主張しているように、すべての原発を即時停止すると、火力の燃料費で電力会社の営業利益が吹っ飛ぶ(中部電力では年間2000億円、東電では1兆円の損失)。したがって短期的には、原発を夏までに再稼働しないと電力不足と電気料金への転嫁が起こることは明らかだ。
○ 前半は正しい。「火力の燃料費で電力会社の営業利益が吹っ飛ぶ」かどうか
は保留するとして、東電に関しては、原発事故のため、「原発を夏までに再稼
働」させたとしても、電力不足と電気料金への転嫁をするだろう。
このようなコスト上昇によってトヨタやNTTデータが海外に拠点を移すと、将来安くなっても日本には戻ってこない。もともと日本のインフラや規制や法人税のコストはアジアでは最高だから、電力不足というきっかけで空洞化が起こってしまうと、その流れは不可逆なのだ。さらに原子力を再生可能エネルギーで代替することは、きわめて大きな問題をもたらす。
○ なぜ「もともと日本のインフラ......のコストはアジアでは最高」なのか、考えれば
いい。電力不足なら、電力会社の契約を切り替えて自前で調達すればいい。
そもそも、現時点で電気代などの「コストはアジアでは最高」なのに、企業はと
どまっている。電力不足があろうが、なかろうが、こういう不利な状況では企業
は出ていく。根本的に電力問題ではない。以下、バカバカしいので反論すら
する気が失せる。
(以下略)
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