中国軍を怒らせる米国の戦略http://tanakanews.com/100802china.htm 2010年8月2日 田中 宇 7月25日から28日まで、韓国の近海で、北朝鮮を仮想敵とした米軍と韓国軍の合同軍事演習が行われた。この演習は当初、3月末に韓国の駆逐艦「天安」が沈没した(米韓の主張では、北朝鮮に撃沈された)現場周辺の韓国西岸沖の黄海で、7月初旬に行う予定だった。米軍は、横須賀を母港とする空母「ジョージ・ワシントン」を、この黄海での演習に参加させる予定になっていた。 しかし、黄海対岸の中国が、黄海に空母を入れて演習をすることに猛反対した。米韓は、演習の予定を延期して中国と話し合った結果、譲歩し、演習の主たる実施地域を韓国東岸沖の日本海に移動し、黄海側でも演習は行ったものの、中国に配慮して小規模なものにとどめた。韓国軍は、8月も黄海側で軍事演習を続けるが、それには米軍は参加しない。(The (war) games go on - Donald Kirk) (米国は韓国を同盟国として重視すると言っているが、米国防総省の広報官は「米韓軍事演習を『日本海』で行う」と発表してしまった。韓国では、日本海を『東海』と呼び、日本海と呼ぶと激怒される。韓国を重視していないことをうっかり露呈してしまった国防総省は、日本の自衛隊員も招待した米韓演習で中立的な表現で言い直そうと苦慮し「朝鮮半島の東と西の沖合で行う」と言い直した)(South Korea reels as US backpedals) 米韓は毎年、韓国の周辺海域で北朝鮮との戦争を想定した合同軍事演習を行っているが、その実施海域は主に日本海側だ。中国を威嚇することにならないよう、黄海側で小規模なものしか行ってこなかった。米国は、北朝鮮のミサイル発射実験に対処した1994年以降、空母を黄海に入れていない。94年には、台湾問題などで米中関係も悪化しており、黄海に入った米空母キティホークは、中国軍の潜水艦と接近遭遇し、米中は戦闘機どうしで威嚇しあい、一触即発の事態になった。それ以来、米中関係の好転とともに、米国は空母を黄海に入れないようにしてきた。(米韓共同軍事演習 米国が黄海に空母派遣か) 今回、16年ぶりに米国が空母を黄海に入れようとした理由は、天安艦事件である。もし米韓の主張どおり、北朝鮮の潜水艦が発射した魚雷が天安艦を撃沈したのであれば、米韓が報復威嚇的な軍事演習を沈没現場周辺の黄海で実施することは自然である。それに激怒する中国は過剰に北朝鮮をかばっていることになる。中国の猛反対に対し、米国が譲歩して空母を黄海に入れなかったのは、中国に米国債を買い続けてもらわないと財政破綻するという米国の弱みがあるためということになる。しかし実際には、これらの「定説」の根幹に存在する「天安艦が北朝鮮に撃沈された」という可能性は、どんどん低くなっている。 天安艦は、米軍との合同演習中に間違って同士討ちになって沈没したか、もしくはロシア政府やハンギョレ新聞が主張するように、70年代に韓国軍がペンニョン島周辺に無数に敷設した古い機雷に触れて(天安艦のスクリューが、島の沿岸に多く仕掛けられている定置網の漁網に巻きつき、漁網が機雷を巻き込んで爆発して)沈没した可能性の方が、北朝鮮犯人説より、はるかに高い。(Russia says sea mine sunk Cheonan: report)(西海の緊張に伴い機雷136個設置、10年後、10%も回収できず) 私が聞いたところでは、日本の防衛省の機雷の専門家も、証拠品の魚雷の残骸をめぐる韓国政府の説明は不合理だと言っている。韓国の潜水の専門家は、海中に沈んだ魚雷の残骸は、1カ月という短期間では韓国政府が発表した「証拠品」のように錆び付いた状態にならないことを、仁川の海岸で実際に金属片を海中に沈めた実験によって立証した。韓国政府が発表時に拡大して示した魚雷の設計図は、韓国政府が主張する「CHT-02D」の設計図ではなく、北朝鮮製の別の魚雷の設計図であることもわかった。韓国政府は、5月末の地方選挙を有利にするため、米国にそそのかされ、北犯人説をでっち上げて発表した可能性が高まっている。(海難救助専門家 "天安艦 魚雷推進体は捏造された証拠")(Investigators admit using wrong blueprint to show N. Korean torpedo that attacked Cheonan) (日本のマスコミは、韓国政府の発表に疑いを抱かせる報道を、おそらく意図的に避けている。たとえば7月9日、米国のジョンズホプキンス大学の助教授らが、根拠をあげつつ韓国政府の発表に疑問を呈する記者会見に行ったが、日本のマスコミはほとんど無視した。外務省など日本政府は、天安艦事件後に米韓が北朝鮮と対峙する姿勢を強めたことを、東アジアにおける米国の覇権巻き返しととらえ、日本が対米従属策を延命できる好機だと喜んで、マスコミを動員し、日本人に天安艦事件の「北犯人説」以外の情報を伝えないようにしているのだろう。911事件に対する報道官制と同じ趣旨である)(US Professors Raise Doubts About Report on South Korean Ship Sinking)(天安艦事件検証(37)「魚雷説は実験結果に反する」) 天安艦沈没の北犯人説が米韓の濡れ衣だとすると、天安艦事件を口実に黄海で米韓が軍事演習をすることは、米国が意図的に中国や北朝鮮を過剰に威嚇していることを意味する。韓国は、北朝鮮との対立をいたずらに煽っていることになる。中国が、黄海に米空母が入ることに猛反対したのは当然だということになる。 ▼黄海は第1列島線の中国側 米国の右派メディア(共和党系のWSJ)は「今回、オバマ政権が中国の反対を受けて譲歩し、空母を黄海に入れなかったことは、悪しき前例を作ってしまった。今後、中国が了承しない限り、米国は空母を黄海に入れないだろう。黄海は、中国の海になってしまった」と米政府を非難している。(A Sea Change in U.S.-China Naval Relations?) 実は、黄海を「中国の海」にしたのは、米政府の今回の一回限りの譲歩だけが原因ではない。米国は昨年、中国に対して「米中で世界を二分する覇権体制を作ろう」と「米中G2体制」を提案した。中国は「わが国はまだ発展途上で、そのような体制に参加するには早すぎるし、世界覇権も狙っていない」と断った。だが中国は、G2体制の初期的な第一歩として、自国周辺の台湾、チベット、新疆ウイグル(トルキスタン)という、中国が「国内」と主張する3つの地域「3T」と、東シナ海と南シナ海という、中国が経済水域権(大陸棚)や領有権(南沙群島)を主張する2つの海域において、中国だけが国家主権(覇権)を行使する体制を容認してほしいと米国に求めた。 米国はこの要求を容認したらしく、中国は今年初めから「3T地域における中国の国家主権を認めない言動に対し、中国は今後容赦なく攻撃し、潰すことにする」と宣言した。同時に中国は、東シナ海(琉球列島の西側)と台湾東部沖、フィリピンの西側、南シナ海(ボルネオ島からベトナムの沖合)をつなげた海域の境界線を「第1列島線」として設定し、第1列島線から中国の海岸の間は、中国の影響海域であり、他の国々の領有権主張や軍事進出、資源探査を許さないという方針を打ち出した。(消えゆく中国包囲網) 「第1列島線」と同時に、伊豆諸島、小笠原諸島、グアム島(北マリアナ諸島)、ミクロネシアの西側を南下してニューギニア島沖に至る「第2列島線」も制定された。従来、第1列島線の西に位置する台湾までを影響圏にしていた米国は、第2列島線の東にあるグアム島まで撤退し、それと同時に中国が第1列島線の西側のすべてを自国の影響圏として設定し、2つの列島線の間に位置する日本やフィリピン、インドネシアなどは米中の緩衝地帯として機能するという、将来的な米中の影響圏の取り決め構想である。(第1列島線、第2列島線のの地図) 米国では、中国が2つの列島線の構想を出したと説明されている。だが、G2を時期尚早と断った新参者の中国が、将来的な米中の影響圏の設定を、まだ世界最強の古参覇権国の米国に話を通さず、勝手に独自に設定するはずがない。米国の外交戦略を考案する奥の院である「外交問題評議会」が発行する雑誌「フォーリン・アフェアーズ」は今年「米国が第2列島線まで後退し、中国が第1列島線まで進出してくるのは、不可避のことだ」と主張する論文を載せている。2つの列島線は、米中が合同で話し合って決めたものに違いない。(米中は沖縄米軍グアム移転で話がついている?) 東シナ海の奥に位置している黄海は、第1列島線の西側にある。上記の米中影響圏の構想に基づけば、黄海は今年から中国単独の影響圏(覇権海域)である。米国(などあらゆる外国勢)が黄海に勝手に入って資源探査したり、無断で空母を航行させることは、米中の了解事項に反する。米軍が空母を黄海に入れなかったのは、第1列島線をめぐる米中の取り決めに沿っている。 (中国人は「覇権」という言葉を嫌う。中国政府は「覇権を求めない」と宣言している。こうした主張は、中国古来の政治学における「覇」という言葉が「軍事圧政」を意味するところに依拠している。中国では、道徳政治である「王道」と、武断政治である「覇道」が対立項になっており「王」が正しく「覇」は悪である。一方、日本語や中国語の訳語としての「覇権」の原語である欧米の「ヘゲモニー」は「直接的な領土支配(国内化)をせず、国外の地域に影響力を行使する」意味だ。そこには、武力による威嚇で従わせる中国古来の「覇道」の手法も含まれているものの、それ以外に「資金を出したり資源を安く提供して、相手に喜んでもらって影響力を強める」とか「わが国と親しくした方が得ですよ」と説得する「王道」的な外交戦略も「覇権」の中に含まれている。資金を出して相手国を丸め込むのは、中国が最も好み、得意とする「ウィンウィン」の外交戦略であるが、これは欧米概念では、まさに「覇権(ヘゲモニー)」の範囲内である。「覇権を求めない」という中国政府の宣言は、正しくは「武力による覇権を求めない【平和理な覇権は積極行使する】」と言うべきである)(Chinese think-tank asked to handle a delicate challenge) ▼南シナ海でも中国の激怒を誘う米国 3月末に天安艦が沈没したのも黄海だから、中国の影響圏の海である。天安艦の沈没当時、米韓はこの海域で、北の潜水艦の潜入を想定した軍事演習をしていたが、中国軍はその様子を150キロ離れた対岸の山東省などから観察していたはずで、中国は誰が天安艦を沈没させたか把握しているはずだ。当日は、韓国の潜水艦が「鬼」(北朝鮮の潜水艦の役)をして、他の米韓軍の艦船が鬼を探し出す、鬼ごっこ的な軍事訓練をしており、米韓軍の艦船はちゃんと鬼の探知に成功していたと、AP通信が6月5日に報じている。本物の北朝鮮の潜水艦が近くにいたら、米韓はすぐに探知できる状況だった。「なぜか探知できなかった」という韓国政府の説明はウソだ。(Sub Attack Was Near US-South Korea Drill) 米国は、昨年秋に中国が黄海を影響圏にすること認めた後になって、今年3月に起きた天安艦の沈没を濡れ衣で北朝鮮のせいにして、それを口実に米韓軍が黄海で北朝鮮と戦うことも辞さずという態度をとった。このように、いったん「貴国の影響圏です」と言っておいて、その後になって、そこで戦争を扇動する米国のやり方は、中国を怒らせるものだった。 米国は、第1列島線によって中国の傘下に入ることを認めた他の地域でも、あとから中国を怒らせる言動をしている。その一つは、オバマ政権が今年1月末、台湾に武器を売る話を蒸し返し、米議会に対し、台湾への64億ドル分の武器売却を建議したことだ。中国側は激怒し、米国との軍事交流を全面的に凍結した。5月末、米国のゲーツ防衛長官が中国訪問を希望したが、中国側に断られている。(China protests US arms sales, warns of 'serious' impact)(China delays Gates trip in apparent snub for Taiwan) もう一つは、南シナ海の南沙群島の領有権問題で、7月25日に米国のクリントン国務長官が、ベトナムで開かれたASEAN地域フォーラム会議の席上「南沙群島の問題が平和的に解決することは、米国にとって重要な国益だ」と発言したことだ。南沙群島は南シナ海の小島群で、中国のほか台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが、全部ないし部分的に領有権を主張している。米中影響圏の第1列島線は、南シナ海の南沙群島をすべて取り込んで中国の傘下(領土とは限らないかも)に入れるべく、U字型に引かれている。(Chinese foreign minister warns US on South China Sea)(Spratly Islands From Wikipedia) 中国は02年にASEAN諸国との間で、南沙群島の領土問題を平和裏に解決する協約を結んだ後、東南アジア諸国と個別に交渉し、経済協力と引き替えに、南沙群島における中国の影響力拡大を模索してきた。クリントンは、そこに横やりを入れ、この問題でASEANが団結した態度をとって、中国と交渉し直すべきだという新たな構想を打ち出した。これまで中国との個別交渉で弱い立場に置かれていたASEANを団結させ、強化するのが米国の狙いだ。中国は、南沙群島を含む第1列島線の内側の地域と3Tを「中核的国益」と呼び、この呼び名がキーワードとなっているが、クリントンは「南沙群島問題の平和的解決は、米国にとっても『重要な国益』である」と発言し、あえて中国と対決する用語使いを放った。(Reining in China's Ambitions) 中国は激怒し、楊潔チ外相が「この問題を国際化することは許さない」と表明した。これは説明不足だった。右派のWSJ紙は「南沙問題は、まさに国際問題だ。それを国際化するなとは、中国は何と傲慢なのか」と非難した。中国が言うところの「国際化するな」とは、多極型の世界体制をふまえた言い方であり、南沙群島問題は東アジアの「地域的問題」であり「全世界の問題」ではないので、東アジア地域の外にいる米国は入ってくるなという意味だ。しかし今の国際社会は、まだ多極型世界を前提にしておらず「地域的問題」は公式には存在しない。中国外相の言い方は外交的に下手くそであり、WSJなどに揚げ足を取られて当然だった。(South China Sea Ructions) ▼米国の翻意の理由 米国はなぜ、いったん中国の傘下に入れて良いと認めた3つの地域について、あとから「やっぱり中国の勝手にはさせない」という意味の敵対的な言動を発するのだろうか。一つの考え方は、米国内部の「単独覇権主義」(米英中心主義、軍産複合体)と「多極主義」(NY資本家?)との暗闘の観点から見るもので、多極主義の勢力が、中国に第1列島線までの進出を認めた後、単独覇権主義の勢力が巻き返しの言動をやり出したという構図だ。 もう一つは、全部が軍産複合体の謀略で、最初から米中の敵対関係を作り出すため、中国を第1列島線まで誘い出しておいて、その後で対立激化のための諸問題を、天安艦沈没、台湾への武器輸出、南沙群島問題の対立扇動によって作り出したという見方である。 そして三つ目の考え方は、すべてが多極主義者の謀略で、中国を第1列島線まで誘い出した後、中国上層部(特に中国軍)の反米感情を煽り、もともと覇権拡大に消極的だった中国を、積極的に米国をアジアから追い出そうという気にさせて、世界の多極化を加速させる策略ではないかという見方だ。 上記の、黄海(天安艦)、台湾、南シナ海(南沙群島)の3つの地域の、中国に対する米国の戦略に関する、暗闘説、軍産説、多極化説という3つの仮説のうち、私からみて最も可能性が高いのは、3番目の多極主義の考え方だ。 米国は、3つの地域のすべてにおいて、中国に対峙する姿勢をとったものの、それはほとんど口だけの姿勢の表明で、具体的な策になると腰が引けている。中国の批判を受けて、黄海に空母を入れるのをやめたことが好例だ。台湾への武器売却についても、今年1月の米政府の売却表明に中国が強く反対すると、米政府は姿勢を後退させ、最近では「今年中は台湾への主要な武器の販売はない」と予測される状況に変わっている。(Experts see no big U.S. arms sales to Taiwan in 2010) そもそも今年1月、米政府が台湾への武器売却を発表した段階で、台湾が強く要望していたF16改良型戦闘機(C、D型)が売却の候補から外され、既存のF16(A、B型)を改良する計画にとどまっていた。台湾が戦闘機の分野で中国にかなわなくなっている流れを逆転させるものではなく、米政府の姿勢は最初から腰が引けていた。「軍産複合体の巻き返し」と考えるには弱すぎる。 しかも、オバマ政権の台湾に対する武器売却構想は、台湾の馬英九政権が経済関係から順番に中国との関係を急速に改善しつつある中で発せられており、台湾政府にとって米国の提案は、ありがた迷惑だった面がある。台湾側が消極的なのを見て、米国は「台湾の馬英九政権は親中国なので、米国から買った軍事技術を中国に教えてしまう懸念があり、武器を売れない」とも言い出し、武器売却を遅らせる口実に使っている。かといって米政府は、馬英九の国民党と対立する野党民進党の台湾独立派を支援するかといえばそうではなく、台湾で汚職疑惑で裁判にかけられている民進党の陳水扁元総統一族の在米資産を、最終審の判決前に早々と米当局が没収したりしている。米政府は、以前からの、どちらかというと親中国的な曖昧戦略を変えていない。(The US worries about Taiwan's military transfer to China)(US moves on Chen Shui-bian properties) 南沙群島問題をめぐる話も、ASEAN諸国と中国が経済関係を近年いちじるしく緊密化しているため、米国が「南沙群島問題でASEANは中国を許さない方向で団結しよう」と呼びかけても、ASEAN諸国が呼応して反中国の方向に動くとは考えにくい。中国は、ASEAN諸国のインフラ整備事業に巨額の資金を出している。財政難の米国は、これを肩代わりできない。ASEANが、中国との関係を切って米国依存に戻れない以上、米国の誘いは効果が薄い。 米国が、いったん中国に対して認めた南シナ海や台湾に対する影響力の拡大を、あとになって反故にするような敵対的なことを言い出すので、中国の中枢では、特に人民解放軍の幹部が米国に対して怒りを強めている。 1948年の中国白書、50年の朝鮮戦争、72年のニクソン訪中など、米中枢の軍産複合体と多極派との暗闘によって米国の対中政策が激変し続けるのを見てきた中国共産党の中枢は、米国の気まぐれや引っかけに慣れており、大して驚かない。だが、台湾や東シナ海などで米国の台中包囲網が解かれて軍事的フリーハンドを得たと喜んでいた中国軍の現場幹部としては、米国がやっぱり対中包囲網は解きませんと言い出すと、当然ながら怒りを扇動される。米国は「米中は対等です」と言って米中G2を提案したのに、米国が中国を対等に扱わないので、中国軍幹部は面子を潰されて怒っている。(Time not ripe to restart China-US military exchanges) そして中国軍部は、米国が再強化しようとする対中包囲網が口だけの張り子の虎であることを発見し、党中央に対し「米国の傲慢なやり方を泰然と容認するのではなく、米国を第1列島線の東側に出て行かせるような毅然とした態度をとるべきだ」と突き上げた。5月24日に北京で行われた米中戦略対話では、米側の高官ら65人を前に、関友飛という海軍准将が、米国から台湾への武器売却を強く非難する予定外の演説を3分間にわたって展開し、米国に対する中国軍内の怒りをぶちまけた。中共は「うちの軍人は怒ってますよ」と米国に警告を発したのだった。(PLA admirals speech raises questions in the US) 解放軍は中共の党傘下の軍隊であるが、党中央は軍の意見に引っ張られる傾向になっている。実際に、中国政府が毅然とした態度をとるだけで、米空母は黄海に入らず、米国から台湾への武器売却も見送られた。こうなると、トウ小平の遺言「24文字教訓」を守って米国の挑発に見ないふりをして頭を低くしている必要はないという話になってくる。このように中国が外交軍事面で自信をつけ、米国を特別視しなくなることこそ、米国の隠れ多極主義者たちが以前から狙ってきた「中国の覇権への引っぱり出し」の策略であると見える。 |