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「デジタル化バブルを引き起こした電気通信の進化とは」
ここ20年の電気通信の進歩はまさに目を見張るものがある。その技術的進化に追いつくだけで精一杯といった感もあるだろう。
通信を振り返る上でエポック・メイキングな年が8つほどある。
1888年 電話サービス開始(東京−熱海 間)
1985年 通信の自由化開始「NTT独占体制の終焉」
1993年 インターネット接続及びIP通信サービスの開始(厳密には1992年)
大手企業でイーサネットによるLAN構築が顕在化
PCのOSとしてMacとWindowsが顕在化
1995年 PHSブーム
Windows95によりウインドウズOSがシェア拡大(寡占化)
1999年 NTTドコモのiモードにより携帯メールとモバイルインターネットの開始
「通信のユビキタス化」
2001年 ADSL顕在化 (厳密には1999年から東京メタリック通信によりADSL開始)
「ブロードバンド元年」
電気通信役務利用放送法の制定
2003年 光接続サービス顕在化(よりブロードバンド化と低価格化が進む)
IPTVサービス開始
2008年 NGN商用化開始(NTT)
これらのできごとにより、通信の質が時代背景と共に以下のように変化していく。
アナログ → デジタル → デジタルによるIP化 → オールIP化
1) 分割多重伝送の進歩 → WDM(光波長分割多重)技術
→ ブロードバンド化(高速広帯域化)
同時に下記の要因も寄与
メタリック → 同軸 → 光ファイバー(FTTH化)
2) WDM技術 → 通信キャリアのバックボーンにかかるコスト低減化
→ 低価格化
3) 携帯通信方式と携帯端末の進化
→ ユビキタス化(機動性)
4) IPとLAN規格イーサネットとWindows-OSの組み合わせは相性が良くシナジーが大きいため、それらの出現によって通信にオープン性とシンプル性をもたらした
→ 汎用化
以上の4要因によって、デジタルが「より多く」「より広く」「より速く」「より俊敏に」動くことのできる通信環境が整備され続けている。
そして通信環境が整えば整うほど、デジタル化される対象は多くなり、さらにデジタルデータは増え続ける。増殖し続ける。
通信によるデジタル化バブルである。それは 「デジタル革命」ともいえる。
最近の事例では、「デジタルフォトフレーム」「デジタルサイネージ」「電子ブック」などがそれに該当する。そして、デジタル化されていないものは未だ多く私たちの社会に存在する。
その一方で、インターネット(分散・共用型ネットワーク)の出現により、通信は放送に近いものへと変質していく。
・通信:1対1の双方向コミュニケーション、高い機密性が求められる
(「通信の秘密」の保持)
・放送:1対多の一方向コミュニケーション、高い公共性が求められる
結果として、通信と放送の融合が進む。
以上の流れの中で、現在のデジタル通信に欠けているのは何だろうか?
それは加入電話サービスと同等の「安全性」と「信頼性」であるが、IPやインターネットを前提にした今の通信では仕方が無いことだ。 なぜなら、IPやインターネットは「ベストエフォート」であり、通信品質を保証しないというネットワークであるからだ。
インターネットは、複数の通信キャリアやISPが相互に接続することで成立するネットワークであり、混雑の程度によって利用可能な通信速度は変動する。また、送信されるIPパケットは優先および非優先が区別されずに全て同等に扱われる。
結果として、IPやインターネットを使って映像を見ていると途中で途切れたりする。
そのような唯一の弱点を払拭しようとするのがNGNであるが、NGNとはどのようなものなのか?
特徴を以下のとおり4つにまとめてみた。
1) IPを用いたメディア統合 → 通信と放送のメディアミックス
2) 固定網と移動網の融合 → FMC(Fixed Mobile Convergence)
3) オープン・インターフェース → NNI & UNI & SNI(ANI)
4) 帯域制御による通信品質の保証 → SIP(セッション制御)技術
さて、NGN上でSaaSと共に大いに期待されているのがIPTVサービスだが、それはNGN上での通信と放送の融合に他ならない。
公共性を求められる放送(ここでは電気通信役務利用放送)では通信品質すなわち高い帯域制御技術が必須になるためNGNでなければ真のIPTVは実現できない。
そこで、通信と放送の融合に関する問題点を見てみる。
2001年 「電気通信役務利用放送法」制定
2003年 IPTV登場
2008年 NGN上でNTT「ひかりTV」& NHK「オンデマンド」の登場
ひかりTVでは、
1) 配信プラットフォーム運用 → 「NTTぷらら」(電気通信事業者)が担当
2) 放送サービス運用 → 「アイキャスト」(電気通信役務利用放送事業者)が担当
以上のように、電気通信役務利用放送では伝送ネットワークと放送コンテンツとに分離せざるをえない。
日本では、元々TV局が伝送NWも放送コンテンツも一人で抱え込む垂直統合型モデルである。そのため、通信ネットワークを利用する電気通信役務利用放送が本格的に導入されることにより分離されれば放送コンテンツの著作権問題でこじれるのは必至である。そのためのノウハウの蓄積がいままで無いのだから致し方ない。
しかし、分離することによってよりオープンで公正なビジネスが可能になり、それが市場を活性化する。問題なのは、いままで分離の議論が日本でされてこなかったということである。ある意味では、それはメディアにおけるタブーだったのかもしれない。
だが、ようやくその議論が行われようとしている。遅まきながらも良いことだと思う。
余談だが、携帯通信市場でも同様のことがいえる。日本の携帯市場は大手3キャリアによる垂直統合型ビジネスモデルにより成り立っている。そのため、端末・アプリケーション・コンテンツなど殆どが携帯キャリアの支配下にあるため、ベンダーにとって自由な開発のできない土壌がある。
そのため、ここ数年において携帯市場ではMVNO(仮想移動体通信事業者)に大いに期待が集まっているが、大手3キャリアに風穴を空けるまでには相当の時間がかかりそうである。
一方、米国では、初めから分離していたために通信と放送の融合がスムーズに進行した。特に2006年以降では、例えば放送事業者「CBS」と通信事業者「ベライゾン」とインターネット事業者「Google」とCATV事業者「コムキャスト」によるアライアンスなどが挙げられる。
また、インターネット上で流される映像コンテンツとして「You Tube」の存在も大きい。
今後、日本で通信と放送の融合を進める上で求められることは、「コンテンツ」/「プラットフォーム」/「伝送インフラ」の3つのレイヤ間で自由な組み合わせが可能になるようなオープンなネットワークとビジネススキームの創造であり、そのための法整備である。
それもいずれNGN上で実現されるはずである。
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- Re: テスト 秀五郎 2010/10/29 15:56:22 (6)
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