http://www.asyura2.com/10/social8/msg/531.html
Tweet |
両親と同居なんて想定外、米国で急増する「サンドイッチ世代」の誤算
2011.12.14(水)
石 紀美子
「サンドイッチ世代」と聞いたら、どんな人たちを想像するだろうか。
ネーミング好きの米国人は、親と同居し、同時に子育てもしている中年夫婦を指して「サンドイッチ世代」と呼んでいる。親と子供に挟まれたサンドイッチ状態で、3世帯同居をしているということである。
ここから派生して、「クラブハウスサンドイッチ型」は、祖父母+両親+夫婦+子供(または、両親+夫婦+子供+孫)の4世帯同居を指し、「オープンサンドイッチ型」は、夫婦、または1人で両親と同居していることを指すという。
ここまでくるといい加減にしろと言いたくなるが、サンドイッチ世代という言葉は辞書に載っているだけでなく、毎年全国的な「サンドイッチ世代月間」まで設定されている。
以前からあったこの言葉が、最近頻繁にメディアに再登場するようになっている。これまでは珍しかった親との同居が、全米で急増しているためだ。
例えば、オバマ大統領。彼は、ホワイトハウスで義理の母親と一緒に住んでいる。いわば、サンドイッチ世代の象徴的な存在だ。
「ブーメラン世代」も加わって話はさらに複雑に
米国で同居が増えている理由は大きく分けて2つある。
1つは、不況で職や家を失い、親族の家に転がり込むケースが増えているということ。もう1つは、以前は老人ホームや介護施設に入れていたが、費用を支払えなくなり、高齢化した親のケアを自宅でする世帯が増えていることだ。
現在、米国全人口の16%、およそ5140万人が2世帯以上の同居をしているという(Pew Research Center 2010)。2007年から2009年にかけての1年余りだけで、500万人が親族との同居生活を始めている。
戦後、急速に進んだ核家族化は今回の経済危機で止まり、米国は複数世帯の同居時代に逆戻りしつつある。
この不況下で両親と子供を養わなければならないだけでも大変なサンドイッチ世代に、「ブーメラン世代」が加わって、話はさらに複雑かつ哀れになる。
ブーメラン世代とは、大学進学などで一度は巣立ちするが、その後就職ができずに実家に舞い戻ってくる現象を指す。
ある調査では、今年の新卒の85%は実家に戻ることを考えているという結果が出ている(Twentysomething Inc.)。25歳以下の失業率は今や54%。600万人の若者が実家で暮らし、両親の世話になっている。
一度は手が離れ、自立したと考え、おそらくそれなりに家計を調整してしまった後に戻ってきた成人の子供は、サンドイッチ世代にとって経済的かつ精神的に大きな負担となっている。
人生計画はどこでどう間違ったのか
サンドイッチ世代が思い描いていた人生は、全く違ったものだった。
両親は十分な年金を受け取り、住み慣れた持ち家で引退生活を謳歌している。老後の蓄えも銀行の利子と投資によって着実に増え続けている。
子供たちは大学をもうすぐ卒業するが、すでに希望通りの業界で内定をもらっており、初任給も一人で暮らすには十分な額だ。
自分たちは、仕事人生で最も脂の乗った時期に達し、給料もこれまでの最高額を得ている。住宅ローンの支払いも終わりに近づき、扶養家族もいなくなるので、10年後の引退生活に向けて、貯蓄額を増やそうと計画している。
これは少し前まで、それほど非現実的な望みではなかった。ある程度の努力をしてきていれば、十分実現できることだった。
それがどこでどう間違ったのか、全員が同じ屋根の下に暮らし、自分たちが親と成人した子供の面倒を見ている。
今回の経済危機は、核家族が当たり前だった米国の家族の姿をも一変させてしまった。
価値観が大きく異なる親世代と子供世代
かくいう筆者もひょんなことから、米国人の義理両親と同居することになった。そしてサンドイッチ世代として親と同居することの難しさを肌で感じている。
親の世代の米国人は「強い米国、強いドル」の中で生きてきた。米国が裕福であり、中産階級の暮らしは安定していた。
彼らは経済的に厳しい状況になっても、子供の家で世話になることになっても、これまでの豊かな生活形式を変えることはできない。
洗濯機でも皿洗い機でも、中に3分の1ほどしか入っていなくても、スイッチを押してしまう。テレビも家中の電気もほとんど24時間つけっぱなしで、冬場は家の中で半袖で過ごせるほど高温に設定して暖房を入れる。しかも、どんな短い距離でも車で行く。
買い物や旅行も、現金がなくてもクレジットカードで支払えるため、実際にお金を持っていなくても無計画に使っていく。
彼らに悪気はないのだ。幼い頃からそのように暮らしてきただけなのだ。しかし子供世代は理解できず、無駄をする両親に怒りをためていく。
豊かな米国しか知らない親の世代と、不安定な経済の中で育ってきた次の世代の米国人。価値観の違いが、各家庭で様々なドラマを生み出すことは必至である。
米国はあと20年で本格的な高齢化社会に突入する。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/32528
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
- ももしきの屁 死ぬまで生きる 2011/12/15 11:16:28
(0)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。