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9月14日に決まった民主党代表選に向け、党内がザワザワしてきた。動きが本格化するのはお盆過ぎからとみられているが、ジリジリとした神経戦が始まっている。出馬をにおわせて存在感をアピールし、菅執行部を牽制する動きが目立つのだ。菅首相は代表選出馬を決めている。前原国交相や野田財務相のグループを味方に付けて再選を目指すスタンスだ。それに対し、菅の政権運営に批判的な「反菅」一派は、結束を確認する会合やグループを超えた勉強会を開き、候補者擁立を探っている。新人議員を囲い込む動きも活発だ。
それでも菅の再選は堅そうである。政治評論家の有馬晴海氏が言う。「現状では菅首相に代わる人材が見当たりません。確かに勉強会や会合は連日のように開かれています。立候補への布石という側面はあるでしょう。敗軍の将である菅首相への不満も根強い。ただ、だれも本気で菅首相を引きずり降ろそうとはしていません。政権交代から1年間で首相は3人目となると、さすがにみっともない。小沢グループと鳩山グループが組めば、数の上では圧倒するといわれていますが、鳩山前首相も『国益を考えれば、首相がコロコロと代わるのは良くない』と続投支持を表明しています。菅首相は再選し、対抗馬を幹事長に据え、内閣改造で出直す可能性が高いのです」
代表選候補者を取り立てて挙党一致を図るという姿もなんだか自民党に似てきたが、いまのところ海江田衆院財務金融委員長や樽床国対委員長が対抗馬に挙がっている。いずれも小沢グループに近く、小沢の子分みたいなものだ。菅が党内をまとめようと考えれば、小沢の存在を無視できない。最大の実力者に幹事長ポストを握らせる一方で、国民向けには内閣改造で目先を変えて支持率回復を図る。そんな戦略だろう。
臨時国会は政権安定のチャンス。
しかし、なんとか再選できたとしてもイバラの道だ。国会はねじれ、野党はソッポを向いている。法案は一本も成立しない恐れが濃厚だ。菅は政策ごとに野党と連携する部分連合を見据え、「イラ菅」を封印した。野党の追及に「ぜひ参考にさせていただきたい」「傾聴に値するテーマを掲げている」とリップサービスを連発。低姿勢を続けながら、衆院は再可決に必要な3分の2に届かず、参院は少数という地獄のような状況をかいくぐるのに必死だ。
「菅政権の運命は、本格的な論戦の舞台となる秋の臨時国会にかかっています。ここで公明党を取り込むことができれば、政権運営はグッと安定する。連立に加えられれば文句なしでしょうが、閣外協力でも、がんじがらめで身動きがとれない現状の打破は可能。恥も外聞もなく全方位外交で、これでもかとおべんちゃらを繰り返す必要はなくなります」(政治評論家・山口朝雄氏)
しかし、いくら秋波を送っても、色よい返事が得られる見込みは薄い。公明党の支持母体である創価学会は菅を嫌っているし、参院選では政権10年の腐れ縁で自公協力が復活した。民主党との連立は簡単ではないし、公明の参加で相対的に発言力が低下する国民新党も黙っているとは思えない。下手に動けば、たちまちデッドロックの危険性は高そうだ。
自民が狙う地方選との同日選
秋の臨時国会は、いつ何が起きてもおかしくないが、野党が目の色を変えて倒閣に動き出すのはまだ先だ。本番は来春である。「いまは本気じゃないですよ。自民党の谷垣総裁は『もう少しパンチを利かせてもよかったかな』と予算委での自身の質問を反省していたのも、余裕の表れでしょう。いまはジャブを繰り出して牽制しているだけ。自民党は予算と解散を取引するシナリオを描いているはず」(民主党関係者)
いくら野党が参院を押さえても、予算は衆院の優越で成立する。それに、国民生活に直結する法案を止めるのは世論の反発を招く。この“人質”を最大限有効活用するには、成立させる代わりに解散するよう迫ることだ。自民党が描いているのは、来年4月の統一地方選との同日選である。地方議会はいまだに自民党が多数だ。業界団体は民主に雪崩を打っているが、フル稼働する地方議員の後援会や支援組織に相乗りで選挙を戦えば、落ち目の自民党にも浮上の目が出てくる。
小沢が動けば政界ビッグバン
こうなると民主党は分裂だ。そこから政界はビッグバンに突入する。「小沢前幹事長は間違いなく動きます。菅執行部の幼稚な政権運営にイライラしているし、党内の反小沢もヘキヘキしている。代表選後に幹事長ポストを押さえていたとしても、いまの民主党で政策実現は困難です。なにより参院で少数だから、ニッチもサッチもいかない。目指すのはガラガラポンです。民主党を飛び出し、国民新党の亀井代表と新党を立ち上げる。亀井さんは、すでに自民党の国会議員を精力的に口説いているし、小沢新党が与党を取れるなら、乗るのは大勢いますよ。新党大地の鈴木宗男代表も合流するから、衆参で過半数を占める可能性はある。小沢さんは、そこまで見通していますよ」(政界事情通)
菅や前原、野田のグループも、こぼれ落ちた連中を拾い集めて対抗しようとするだろうが、しょせん頭でっかちの青二才の集まりである。百戦錬磨の小沢にかなうわけがない。反小沢だ何だと権力闘争をできるのも解散前までだ。政界再編の波にのみ込まれて右往左往し、気が付けば野党になっている恐れは強い。一度の政権交代ぐらいでは政治は変わらなかった。もっと大きな衝撃がなければ、この国の沈没は食い止められないようだ。(日刊ゲンダイ 2010/08/06 掲載)
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