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(回答先: 日曜討論で田中均が「東アジア共同体にはプロセスが見えない」 (ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報 ) 投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 12 月 20 日 12:23:38)
日本の戦前、戦後の歴史にかつてないような、充実したシンクタンク・有識者・経済人のネットワークが、ここに初めて誕生した。「東アジア共同体」という21世紀への展望を控え、日本の各界の代表が、この課題に正面から取組むための大事な基礎工事が行われたのだ。我々はその責任を背負ってスタートしたのである。
私は政治家として、かねてより「東アジア経済協力機構」、あるいは「東アジア経済共同体」といった構想を提唱してきた。今日の国際関係を見渡すと、東アジア地域統合を目指す、各国の積極的な外交姿勢が顕著になってきている。ASEAN諸国、韓国はもとより、かつて多国間協調に消極的であった中国でさえ、近年急速に「東アジア新思考外交」とも呼ぶべき洗練された外交を展開している。ASEAN+3の下で形成された東アジア・シンクタンク・ネットワーク(NEAT)を設立する際にも、中国が先に手を上げてその取りまとめを引き受けるなど、非常に早いスピードで東アジア政策を展開している。
日本はこれまで、東アジアの地域統合問題にアンビバレントな対応をとってきた。それは、日本が先進国の一員であると同時に、日米関係を機軸とした太平洋国家であり、そして東アジア国家でもあるという複数のアイデンティティの上に成り立つ国家だからである。しかし、「東アジア共同体」はすでに不可逆的なうねりとして我々に迫ってきている。この展望を正面から捉え、我々日本がいかなる戦略を構築するかを、今こそ問わなければならない。このような問題意識から、我々は「東アジア共同体評議会」と銘打ったのである。
実際に「東アジア共同体」を実現していくための道のりは、容易ではない。安全保障の側面からいえば、東アジアには朝鮮半島問題や台湾海峡の問題があり、また社会・文化の側面では、EUとは異なり各国の違いは著しい。しかし、それにも関わらず、この構想に熱意を持って取組む意識が今ほど高まった時期はかつてない。韓国政府および中国政府も、東アジア共同体構想を真剣に推進しようとしている。
我々の近隣諸国に眼を向ければ、日本・中国・韓国の三カ国の首脳会談は定期的に開催されなければならない。「共同体」の実現は、北東アジア三カ国の定期協議からはじまると言っても過言ではない。現在のように、ASEANが開催する諸会合の場を借りて、三カ国が集うという状態に甘んじることなく、我々のイニシアティブでトップ会談を開催する必要がある。さらに拡大して、現在の北朝鮮をめぐる六カ国協議を、中長期的には北東アジアの地域枠組みとして育てていく。こうした日本にとって最も身近な、北東アジアにおける協力枠組みを、日本も積極的に構築していく努力を怠ってはならない。
「東アジア共同体」を考える際、安全保障の問題も重要である。地域安全保障の枠組みとしては、ASEAN地域フォーラムがあるが、その進展は遅々としたものである。しかし、FTAのネットワークを積み重ねることにより、結果的に政治的安定に寄与するかもしれない。域内の金融協力の進展が、各国の内政の安定に寄与し、良いガバナンスを実現するツールとなっていくかもしれない。こうした様々な仕組みを重層構造とすることによって、「東アジア共同体」の仕組みができていくのではないかと展望している。その時に安全保障問題もさらに前進して順次結実していくだろう。こうした課題は、本評議会の研究段階で検討されるだろう。
東アジア共同体評議会が、シンクタンク・有識者・経済人を繋ぐ大きなネットワークとして誕生したことは、日本にとって誠に喜ばしいことである。我々にとっての責任も重大である。本評議会の活動を密にすることにより、日本に一番不足している戦略情報体制を補うことを狙いとしたい。 本評議会議員の皆さんと一緒に努力して、よい成果をあげてゆきたいと思う。
2004年5月
東アジア共同体評議会会長
中曽根康弘
http://www.ceac.jp/j/purpose.html