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2010/11/29(月) 21:28:38
日刊ゲンダイ 2010/11/26 掲載
[海外ニュース] 北朝鮮を残しておきたい<米中ロ韓日>の本音と打算
「軍事衝突拡大」はあり得ない
「危機」を煽る日本のテレビの大騒ぎとは裏腹に、北朝鮮と韓国の砲撃事件は一気に終息の方向だ。そのウラにあるのは周辺国の本音と打算。どの国にとっても、北朝鮮は生き永らえさせておいた方が得だから、軍事衝突が拡大するはずないのだ。
●米国――その気になれば北朝鮮を武力で潰すのは簡単なこと。イラク戦争のように手間取ることもないが、その気はない。朝鮮半島の緊張は米国民にとって遠い遠い国のどうでもいい話。しかもオバマ政権の当局者や米軍は「北朝鮮の不安定こそが東アジアでの米国の軍事覇権に不可欠」と考えているから、“火ダネ”がなくなっては困るのだ。
元外務省の孫崎享氏はこう言う。
「韓国には米国の民間人5万人と軍人2万5000人がいますし、戦争になればソウルを中心に多くの犠牲者が出る。“人質”が多すぎるのも、強硬手段に出られない事情です」
●中国――北朝鮮の最大の後ろ盾として同盟関係を深める中国の意図は簡単だ。
朝鮮半島情勢に詳しい河信基氏が言う。
「多くの国と隣接する中国にとって、北朝鮮は一番安心できる国で、国境を警備する必要がない。それに旧満州地帯の経済復興に、北朝鮮の羅津港を使っている。現状のままでいいという考えが中国にあるのです」
こんな事情もある。前出の孫崎享氏が言う。
「朝鮮有事になれば、何十万という難民が中国に押し寄せてくるから、それは困る。さらに、戦争後に予想される南北統一国家は韓国が中心になり、中国との国境の最前線にまで米国の手が伸びることになる。それを避けるためにも、北に損存続して欲しいのです」
●ロシア――中国と事情は同じで、北朝鮮カードは米国の東アジア支配への牽制になっている。
「ロシアはもともと北朝鮮と旧同盟関係ですし、シベリア鉄道の延長で、観光旅行など人の交流も活発。北朝鮮からは森林伐採でロシアに出稼ぎに行っている労働者も多い。それに不凍液港の羅津港の使用許可がロシア極東部開発に不可欠なのです」(河信基氏=前出)
北朝鮮のバックにロシアと中国がついている以上、米軍もヘタに手出しはできないのだ。
●韓国――テレビを見ていると、韓国内は「北朝鮮をやっつけろ」の一触即発のようにも見えるが、そうじゃない。
今回の砲撃行動直後、韓国のウォンと株が下落したように、北朝鮮との緊張は韓国経済へのダメージが大きすぎる。また韓国国内では安保意識が薄れ、北寄りの世論も多いから、慎重な対応を取らざるを得ないのです」(コリア国際研究所所長・朴斗鎮氏)
経済最優先の韓国にとって、北朝鮮とのドンパチはデメリットの方がはるかに大きい。仮に、北朝鮮を潰して統一したとしても、その莫大なコストや混乱を考えれば、即発というバカなことは考えようもないのだ。
●日本――テレビや一部メディアが北朝鮮危機に火を付けたいのは分かるが、米国などにその気がない以上、本格的な軍事衝突は起こり得ない。日本の経済界もそれが望みだし、防衛省に自衛隊、在日米軍も右寄りの言論人も「北の脅威」があるから、大きな顔をしていられる。北朝鮮が消えたら、それこそ商売上がったりだ。
――かくして、金正日王朝は適度に暴発、挑発を繰り返しながら、国際政治の中でワガママいっぱいにこれからも生き延びるというわけである。
(日刊ゲンダイ 2010/11/26 掲載)
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大新聞・TVも将軍サマに利用されているだけ
北朝鮮の砲撃に、例によって、大新聞・TVもバカ騒ぎだが、これも愚かな話だ。
ヤクザ国家の脅し、挑発に「大変だ!」と騒げば、相手の思うツボだ。北の狙いは危機をあおって、米国や韓国を話し合いのテーブルにつけさせること。本気で戦争を始める気などさらさらない。それなのにメディアが騒げば、北の瀬戸際戦略を後押しするようなものだ。
中でもTVのワイドショーは朝から晩まで延坪島の炎上シーンや、着の身着のままに仁川港に逃げてきた韓国民の映像を垂れ流し、“ああだ”“こうだ”と解説者が分析、推測している。北朝鮮はほくそ笑んでいるのではないか。
軍事評論家の神浦元彰氏はこう言った。
「砲撃に使われたのは射程20キロ程度の榴弾砲です。高く打ち上げ、山などを越えて、正確に頭からピンポイントで落下させることができる。射程の誤差は10メートル程度で、2、3発打てば、必ず目標に命中させることができますが、被害は限定的です。北朝鮮が狙ったのはガソリンスタンドや暖房用の石油備蓄基地で、もうもうと煙があがることを計算して撃ってきたわけです。北朝鮮の主力は多連装のロケットで、これだと相当なダメージを与えることができる。ロケットではなく、榴弾砲を使ったということは軍事的ダメージよりも視覚的効果を狙った攻撃だったことになります」
つまり、本気で「無慈悲な攻撃」を加える気はなく、周到に練られた“挑発”ということになる。
日本のテレビは、将軍サマのプロパガンダにまんまと“利用”されているわけだ。
「北朝鮮の狙いは脅威論を煽ることで、ヤクザ国家のいつものパターンです。多少のことをやっても韓国は自重するし、米国には戦争をする気がない。それらを見越して寸止めの挑発をしているのが、今回は度を越した。危険なのは北のこうした行動に対して、菅政権が自動的に過剰反応し、メディアも無責任に危機を煽っていることです。こうした反応が北朝鮮を図に乗らせていることを知るべきです」(元内閣情報調査室長・大森義夫氏)
(日刊ゲンダイ 2010/11/26 掲載記事より)
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「軍事衝突拡大」はあり得ない―、のは分かったけれど、気の毒なのは拉致被害者の家族。解決は絶望的でしょうか…。
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【ゲンダイネット】
◆警視庁マッ青 流出した「公安テロ情報」の単行本化に文句をつけられないジレンマ
◆「地政学的リスク」をしのぐ「カネ余り」
【高橋乗宣の日本経済一歩先の真相】(11/26)
東アジアの海域で島をめぐる争いが激しくなっている。日本は尖閣諸島と北方4島で中国とロシアに振り回されているが、韓国の延坪島は北朝鮮から砲撃された。ずいぶんと乱暴で非道なやり方だ。
戦争を避けようと領土問題をウヤムヤのままにした20世紀のツケが一気に表面化し、南北朝鮮の間は武力衝突にまで発展した格好である。小さな島とはいえ、自国領とすれば、周辺海域の良質な漁場や海底に眠る資源も手に入る。国益を考えれば、目の前の海洋資源を放っておくわけにはいかない。むろん、力でねじ伏せようとするのは許されない。だが、目の色を変えて奪いに出る気持ちも分からないではない。
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