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   2017年の経済展望 世界経済を見る上での4つのポイント  !  (第1回)
http://www.asyura2.com/10/nametoroku6/msg/7397.html
投稿者 青木吉太郎 日時 2017 年 1 月 04 日 19:45:59: jobfXtD4sqUBk kMKW2Itnkb6YWQ
 


2017年の経済展望 世界経済を見る上での4つのポイント !

        (第1回)


(blogos.com:2016年12月26日 より抜粋・転載)

◆OECD経済見通し:2016年の世界実質GDP成長率は、

伸びが鈍化して2.9% !

2016年も残すところ1週間を切った。11月28日に公表されたOECD(経済協力開発機構)経済見通しによると、2016年の世界実質GDP成長率は2015年の3.1%から伸びが鈍化して2.9%である。
低成長には、米国の予想外の失速、日本、欧州各国の低成長の持続といった日米欧の動きと、原材料価格の急落の影響を大きく受けた資源輸出国の低迷、そして中国に代表される新興国の成長率の鈍化といった要素が作用している。

OECDの経済見通しによれば、2017年および18年の世界経済成長率は、3.3%、3.6%と、2016年からやや加速することが見込まれている。
本稿では4つのポイントに分けて2017年の世界経済を展望してみたい。


◆「長期停滞」の可能性を示唆する2016年の先進国経済

日本は「課題先進国」と言われて久しい。バブル崩壊後、総需要の停滞が持続する中でデフレが続き、名目成長率はゼロ近傍に留まり、度重なる小出しの財政・金融政策は総需要の停滞を打破するには至らず、デフレの持続も相まって政府債務を未曾有の水準にまで拡大させた。

*補足説明:大企業・高額所得者優先、官僚主導、政官業癒着・長期自民党・自公政権の

悪政・失政の証明である。自公政治家・NHK等は、誤魔化す事であるが。

こうした総需要の停滞は、非正規雇用の拡大や労働参加率の低下といった労働の「質」の低下や、維持更新主体の設備投資の常態化といった投資の「質」の低下につながることで、生産性の低迷をもたらしている。


◆長期停滞が持続したのが、1990年代以降の日本経済の姿 !

つまり、総需要の停滞の固定化が、総供給の悪化をもたらすという「履歴効果」を伴いながら、長期停滞が持続したのが、1990年代以降の日本経済の姿であった。


*補足説明:自公政治家・NHK等が隠す「日本経済・20余年低迷」の実態 !

「株価」と名目GDPの実態は、日本だけの20余年超長期低迷 !


換言すれば、2016年は、1990年代以降の日本経済の動きを、米国や欧州といった先進国が、トレースしつつあるのではないかとの懸念が深まった年であり、こうした懸念が、転換するか否かが、2017年の先進国経済先行きの第一のポイントだ。

状況を整理しておこう。金融危機に見舞われた後の、先進国経済の動きをみていくと、米国は、大胆な金融緩和策からの転換を図ることが、可能な程度には回復したものの、金融危機前の成長経路への復帰を果たせてはいない。


◆欧州経済は、低成長と低インフレが続いた !

欧州経済も、英国のEU離脱、問題が棚上げされたままの、ギリシャ債務問題、不良債権問題が顕在化しつつある、イタリア経済、といった様々なリスクを抱えつつ、低成長と低インフレが続いた。

日本経済も安倍首相による、大胆な経済政策が実行されているものの、消費税増税に踏み込んだ、2014年以降の国内需要は、低迷し、デフレ脱却も道半ばの状況にある。


◆日米欧の経済状況は、長期停滞論に沿った姿である !

こうした日米欧の経済状況は、ローレンス・サマーズ元米財務長官(米ハーバード大学教授)が、指摘する「長期停滞論(secular stagnation)」に沿った姿であると解釈することも可能である。

図表1から図表3は、日米欧を含む先進国経済の特徴を整理している。
図表1は、OECD平均、日本、米国、ユーロ圏に分けてGDPギャップの動きをみているが、
リーマン・ショックが生じた、2008年以降に総需要が大きく減少することで、デフレギャップが拡大し、その後、解消が進んでいない事が読み取れる。

*補足説明:新自由主義・グローバリズムの美名の下で、実態は、弱肉強食・格差拡大の政治・経済政策が実施されたのであり、1%の巨大財閥・高額所得者が、巨利を獲得し、99%の大衆の大部分は、所得が減少・低迷して、格差拡大が増大してきた。

図表1 解消が進まない先進国の需要不足(省略)

◆財政支出の拡大は、総需要の力強い

 拡大の呼び水にはならなかった !

ただし、以上の総需要の急減と持続に対して、先進国は、何もしなかったのではない。
図表2は、先進国の政府債務残高GDP比の推移を、みているが、2009年から2013年にかけて、先進国の政府債務残高GDP比は、急増した。これは、各国が協調して、財政支出を増加させたことを意味する。

だが、財政支出の拡大は、先進諸国の総需要の下支えにはつながったものの、総需要の力強い拡大の呼び水にはならずに、低成長と政府債務残高が、固定化することで、2015年には110%に及んだ。

図表2 先進国政府債務残高の拡大(省略)


こうした政府債務残高の拡大に対して、しばしば懸念されたのは、財政悪化懸念を背景とした、長期名目金利の急騰である。だが、図表3にある通り、先進国の長期名目金利は、急騰ではなく低下を続けている。

長期名目金利は、予想インフレ率、潜在成長率、リスクプレミアムが、上昇すれば上昇し、逆にこれらが、下落すれば低下する。財政悪化懸念は、リスクプレミアムの上昇を通じて、長期名目金利の上昇圧力として、作用すると考えられるものの、実際のデータからは、こうした長期名目金利の上昇圧力よりも、予想インフレ率や潜在成長率の停滞を通じた、長期名目金利の低下圧力の方が、大きいことが示唆される。

図表3 先進国(OECD諸国)の長期名目金利の推移(省略)

◆2016年の先進国経済は、総需要不足

 に基づく低成長が続いている !

つまり、2016年の先進国経済は、日欧を中心に大規模な金融緩和策は継続しているものの、総需要不足に基づく低成長が続き、政府債務残高GDP比が縮小しないために大胆な財政出動に踏み切ることができず、その結果低成長や低インフレ率が持続して、長期金利の低下が進んだとまとめることができるだろう。

政府の財政状況は、政府債務残高の大小ではなく、一国が毎年生み出す名目付加価値(名目GDP)で見た政府債務残高GDP比が、中長期的に横ばいないし低下していくと見込まれるか否かで判断する必要がある。

政府債務残高を、横ばいないし低下させるためには、政府財政赤字から過去の債務に伴う利払い負担を除いたプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化させること、名目GDP成長率を長期国債金利よりも高い状況で維持することが求められる。

わが国のプライマリーバランスは、赤字ではあるものの縮小が続いており、名目GDP成長率は長期国債金利よりも高い状況が続いている。つまり、政府債務残高GDP比は、悪化ではなく着実に改善に向かっているということだ。


◆2017年の先進国経済の先行きは、総需要不足を解消して

成長につなげる試みが広がるかどうかが鍵となる !

2017年の先進国経済の先行きは「誇張された財政深刻化仮説」というべき通念を乗り越えて大胆な財政支出を行い、総需要不足を解消して成長につなげる試みが広がるかどうかが鍵となるはずだ。

図表4は、政府債務残高GDP比が発散しないという条件下で、2016年から17年にかけて新たに支出可能な財政余地を試算したOECDの結果を示しているが、イタリアを除く主要先進国では新たな財政支出の余地がある。この財政支出の余地をうまく使うことが先進国には求められるだろう。

図表4 中期(2016年〜17年)における各国財政余地(省略)


(出所)OECD(2016), OECD Economic Outlook, Volume 2016,Chapeter2.

◆トランプ新大統領は先進国経済停滞の起爆剤となるか?

先進国経済は総需要不足、深刻な政府債務、長期金利の低下にさらされる中で「誇張された財政悪化」に縛られて、大胆な財政政策を行うことができず低成長が続いた。こうした先進国経済の現状を良い意味で打破する可能性を期待させるのが、筆者を含む多くの人々にとって予想外であったトランプ候補の大統領選勝利と、来年本格始動するトランプ氏の経済政策である。

トランプ氏の大統領選勝利が確定した11月9日以降の米10年物国債利回りは2%を突破し、米ドル高と株高が進んだ。米長期金利上昇の理由は、トランプ氏が選挙戦で主張した大規模な財政政策の実行への期待が米景気の改善を予想させ、そのことが予想インフレ率を高めたためである。

トランプ新大統領の経済政策が期待を裏切らない形で本格稼働するか否かが、2017年の先進国経済先行きの第二のポイントである。

トランプ新大統領の経済政策の先行きを考えるには、トランプ氏が主張する経済政策がどのような影響を米国経済にもたらすのか、またトランプ氏が主張する経済政策は政治的な観点から見て実行可能であるのかを検討する必要があるだろう。

まず、トランプ氏が主張する経済政策の中身について検討しよう。図表5は、トランプ氏が主張している財政政策の年あたり規模とGDPへの影響をまとめている。

図表5 トランプ新大統領の財政政策の規模と効果(省略)


(出所)Gavyn Davies, “Trump and the markets: good,bad or (very) ugly”, Financial Times.

https://www.ft.com/content/fc0ddf1b-571f-33bc-bd2d-26b0cb520305

財政支出の規模をみると気づかされるのが、トランプ新大統領が、行う予定の財政支出(年6500億ドル)のうちの大半が、所得税減税・法人税減税であるということだ。


◆トランプ新大統領が、行う予定の、所得税減税の恩恵は、

高所得層に偏っている事が特徴である !

所得税減税を行うことで、賃金所得への負担は平均2.3%軽減されるが、所得階層別にみると、所得下位20%未満の層への負担は、0.6%削減、所得中位層への負担は1.7%削減、所得上位20%の層への負担は、3.2%削減、所得上位0.1%の層への負担は、7.3%削減と、減税の恩恵は高所得層に偏っていることが特徴である。

法人税減税(35%から15%への引き下げ)は米国企業の競争力を高めることにつながるだろうが、経済に与える影響は減税の規模と比較して大きくはない。こう見ていくと、減税策により米景気は確かに刺激されるが、懸念されている米国の格差はさらに深刻化することが予想される。

インフラ投資の規模は年1,000億ドルと大きくは無いが、GDPへの影響は1,200億ドルと所得税減税に次いで大きい。道路の改善、橋梁の修理、学校改修・航空交通管制システムの近代化といった、短期的な利益は低いが米経済の生産性を長期的に押し上げると期待される事業が行われれば、さらに経済効果は大きくなるだろう。

だが、民間部門への税額控除を通じた形で事業の大半が行われることになれば、こうしたインフラ投資ではなく、短期的な利益を目的とした事業が行われる公算が高まる。

図表4からは、米国の財政余地は名目GDP比0.2%程度の規模であるとの結果が得られている。年6,500億ドルの財政支出(名目GDP比3.6%程度)を赤字財政で賄おうとすれば、
米国の財政赤字を深刻化させ、長期債務残高GDP比を発散させることにつながるだろうし、米長期金利の上昇が行き過ぎると、大規模な財政政策は長期金利の上昇やドル高によって打ち消されることにもつながるだろう。

トランプ氏が、大統領選に勝利する前の10月14日に、イエレン米FRB議長は、緩やかな回復が続くものの、金融危機前の成長経路に復帰できていない、米国経済の動向を踏まえ、こうした、金融危機に伴う損失からの修復を図るためには「高圧経済(high-pressure economy)」政策が、唯一の方策となりうるとの考えを示した。

これは、中央銀行の利上げペースを遅らせることで、経済への刺激と雇用の改善を持続させ、景気のさらなる改善を図ることで、金融危機前の成長経路から外れた、米経済の回復を後押ししようという意図を含んでいる。


◆米FRBの金融政策は、トランプ氏の経済政策が、最大限効果

を発揮する形で進められる公算が、高い !

米FRBの金融政策は、トランプ氏の経済政策の効果とインフレ率の動向を見ながら、引き続き慎重に運営されることになるだろう。2%を上回る、やや高めのインフレ率を許容しつつ、長期金利の急上昇を抑制するに足る、最低限の利上げを行うことで、トランプ氏の経済政策が、最大限効果を発揮する形で進められる公算が、高いのではないか。

トランプ氏の経済政策はこれまでにふれた財政政策に加え、通商政策、金融規制、医療、エネルギー・環境、移民といった分野に渡る。上下院ともに共和党が多数派を形成した現状を踏まえると、トランプ氏の経済政策の「現実味」は、共和党の経済政策との相違をどう乗り越えるかにかかっている。

−この続きは次回投稿します−



 

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