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元防衛庁幹部の講演レポート:集団的自衛権を考える
(第1回)
安保法案=米国の要求そのもの
憲法学者の見解:違憲・違憲の疑いあり・98%
(www.magazine9.jp:2014年6月11日より抜粋・転載)
集団的自衛権と自衛隊(その1)
元防衛庁幹部・柳澤協二さん講演レポート
「今国会の会期中に、集団的自衛権の行使容認を閣議決定する」と表明した安倍政権。立憲主義も民主主義も踏みにじる、こんな「解釈改憲」がまかり通ってしまったら、この国はいったいどこに行ってしまうのか。
国会閉幕まであとわずかですが、いろんな角度から考えたいと思います。
まずは、先月開催された「第32回マガ9学校」より、元防衛官僚でイラク自衛隊派遣の実務にも携わった、柳澤協二さんの講演レポートです。
第2部の柳澤協二さん×伊勢崎賢治さん対談のレポートも、次週に掲載予定です。
◆柳澤協二(やなぎさわ・きょうじ):1946年東京都生まれ。大学卒業後の1970年に当時の防衛庁に入庁。防衛大臣官房官房長、防衛研究所所長などを経て、2004〜2009年まで内閣官房副長官補(安全保障担当)。
イラクへの自衛隊派遣などを監督する。2009年の退官後はNPO「国際地政学研究所」理事長などを務める。
著書に『検証 官邸のイラク戦争——元防衛官僚による批判と自省』(岩波書店)、『「国防軍」 私の懸念』(伊勢崎さん、小池清彦さんとの共著/かもがわ出版)、『亡国の安保政策――安倍政権と「積極的平和主義」の罠』(岩波書店)などがある。
◆「邦人保護」は、集団的自衛権とは無関係だ !
私は長年、官僚としてずっと自民党とお付き合いをしてきましたが、かつての自民党の大物政治家には、なんだかんだ言っても「戦争はダメだ」というコンセンサス、物事を判断する前提として持っている共通の価値判断の基準があったと思います。
しかし、戦争体験のある人たちが亡くなったり、引退したりして世代交代が進む中で、その部分が変わってきてしまった。
「戦争はダメだ」ではなくて、「戦争もありだよね」というところから話がスタートしてしまう。
人を殺すこと、死ぬことについてまったく実感のない人たちが、戦争と平和の一番重要な問題を議論しているというところにこの集団的自衛権の問題の一番の恐ろしさがあるように思います。
☆安倍総理は、自分の主張の意味を理解している
のか、疑問であり、非常に危機感を持っている !
僕は、今すぐ安倍さんが戦争をすると思っているわけではありません。
ただ、本当にこの人は自分が言っていることの意味を自分で客観的に理解しているんだろうかと感じることがある。そういう人がリーダーであるということに非常に危機感を持っているんです。
先日の、安保法制懇の報告書提出を受けての記者会見のとき、総理が掲げていたパネルにある、親子の絵を見て、私は「なんだこりゃ」と、本当にのけぞるほどびっくりしました。
海外で有事があったときに、赤ちゃんを抱えた母親、あるいはおじいさんおばあさんがアメリカの船に乗って逃げてくる、それを自衛隊が守らないでいいのか、という話でした。
☆安倍総理の説明・米国船に、乗船している
親子と集団的自衛権と何の関係があるのか ?
もちろん、守らなきゃいけないに決まっています。だけどそれと集団的自衛権と何の関係があるのかということです。
私は5年半官邸にいて、まさにそうした事態にどう対処するかを検討する仕事をしていましたが、どこかの国で紛争やクーデターが起こった場合には、観光客など民間人は民間航空機が飛んでいるうちに帰ってくるのが鉄則です。
最後に残るのは大使館員や、米軍関係の仕事をしている民間の技術者などでしょうが、これについても1997年に改定された日米防衛協力ガイドラインには――これは、私が防衛庁の実務担当者として改定作業に携わったのですが――こうした民間人の脱出(evacuation)には、おのおのの国が基本的には責任を持ってやるんだと書いてあります。
☆日米防衛協力ガイドラインには、民間の日本人の
脱出は、日本国が責任をもって実行する事になっている !
つまり日本人の救出については自衛隊機が行くんだということですよね。
であれば、それは単に自衛隊として行けばいいのであって、集団的自衛権は一切関係ない。日本人を守るのだから、警察権か、個別的自衛権の範疇です。
万が一アメリカの船飛行機が運ぶのを自衛隊が守ることになったとしても、守る対象は船や飛行機ではなくて中にいる日本人なんだから、その場合の理屈はやはり警察権か個別的自衛権でしょう。
さらに言えば、そもそも襲われる心配があるような危険な経路で民間人を逃がさなくてはならないようなことになったとすれば、それはすでに官邸の危機管理の失敗、総理大臣の責任だと私は思います。
☆安倍総理がパネル説明で、言ったような
ことは、まったく「あり得ない想定」だ !
だから、安倍総理が言ったようなことは、まったく「あり得ない想定」だ。本来は全然違う話なのに、「親子の絵」のような、聞く人がすんなり受け入れられるようなシンボルを使って説明していく――というよりは売り込んでいく。
これは典型的な、シンボル操作による世論誘導です。戦前の日本も含め、戦争をするときの国のリーダーはみんなそういうことをやりました。中でも、一番それが得意だったのがナチスドイツだったわけですけれども。
◆政治は「情念で動かす」べきものではない
昨年ごろから、メディアからもよく「安倍さんはそもそも、一体何がしたいんですか」と聞かれます。そんなのこっちが聞きたいよというところですが(笑)、私が考えた末に行き着いた結論は「やりたいから」なんだろう、ということです。
安倍総理は、2004年に『この国を守る決意』という対談本を出されていますが、その中で、「祖父の岸信介は、60年安保を改定してアメリカの日本防衛義務というものを入れることによって日米安保を双務的なものにした。
☆安倍総理:軍事同盟というのは血の同盟であって、
日本人(安倍総理以外の人)も血を流さなければ
アメリカと対等な関係にはなれない」、戦争になる
事をいとも簡単に使うこと自体がどうか ?
自分の時代には新たな責任があって、それは日米同盟を堂々たる双務性にしていくことだ」という話をしています。ちなみにその後で、「軍事同盟というのは血の同盟であって、日本人も血を流さなければアメリカと対等な関係にはなれない」とも言っているんですが、この「血」というのは、当然自分の血ではなく人の血です。そんな言葉をいとも簡単に使うこと自体がどうかと私は思いますね。
ともかく、それを読んで私は、ここに安倍総理の一番の動機があったんだなと思いました。つまり、「安保環境が厳しくなった」というようなことを言うけれど、実はそれとは関係なしに、自分がそういう価値観を持ってそのとおりに物事を進めたいから行使容認をやろうとしているのではないか。
私はよく「情念で政治を動かすな」という言い方をするのですが、政治というのはやはり客観的に、全体の国益を幅広く見てやらなければいけないものです。
もちろん背後には一定の哲学や理念がなくてはいけないけれど、それをむき出しにしてはいけない。むき出しにして戦争をしたのがイラク戦争のときのブッシュJrだったわけですけれど、それはもはや利害の調整という意味での政治ではないだろうと思います。
そもそも、アメリカが日米関係において求めているのは完全な双務性ではありません。日本にもっと子分として言うことを聞いてほしいとは思っているかもしれませんが、対等であってほしいとは思っていないでしょう。
私も、40年の防衛官僚の人生を通じて、アメリカから集団的自衛権が行使できないから困ると言われたことは一度もありません。
よく、日本政府は、アメリカの言いなりだと言われますし、正直なところ歴代内閣はそうだったのではないかと思うのですが、実は安倍総理の特殊なところは、アメリカの言いなりじゃない部分を持っているというところなんですね。
―この続きは次回投稿します―
(参考資料)
T 山本太郎議員の主張:
米国の要求は、安倍政権が、提案している安保法案そのものだ !
(news.infoseek.co.jp:2015年8月21日より抜粋・転載)
★中谷防衛相:アメリカの要請に応えるかたちで
安倍政権は国のかたちを変えようとしている !
★「アーミテージ・ナイリポート」を持ち出してきた !
★憲法違反の閣議決定から憲法違反の安保法制まで、
米国側の要求によるものだ !
★米軍は、自衛隊と日本の集団的防衛を行うことは、
法的に禁止されている !
★3年前・「アーミテージ・ナイリポート」に昨今の国会での
安倍フレーズが、ソックリそのまま出ている !
★安倍首相や安倍政権の「ネタ元」が、米国・
「アーミテージ・ナイリポート」だ !
★米国の要求:ホルムズ海峡に、日本は、単独で
掃海艇を同海域に派遣すべきだ !
★米国の要求:
明らかに特定秘密保護法の制定を促した文言もある !
★米国の要求文書:安倍政権が、提案している
安保法案そのものではないか ?
★「これら(米国の要求)はほとんどすべて、今回の
安保法制や日米の新ガイドラインに盛り込まれている」 !
U 憲法学者の見解:違憲・違憲の疑いあり・98%
安保法制「合憲」わずか3人(2%)、
「報道ステーション」が、憲法学者151人にアンケート
(弁護士ドットコム 6月16日より抜粋・転載)
◆憲法学者の見解:
違憲・違憲の疑いあり・98%、合憲・2%
アンケートは6月6日から12日まで、代表的な判例集「憲法判例百選」(有斐閣)の執筆者に名を連ねている憲法学者198人を対象に実施された。
判例百選は、法律を勉強する学生必携の判例解説書で、国内の有名大学の研究者が数多く執筆している。今回のアンケートでは、151人から回答があった。
「今回の安保法制は、憲法違反にあたると考えますか?」という問いには、84%(127人)が「憲法違反にあたる」と答え、13%(19人)が「憲法違反の疑いがある」と回答した。
一方、「憲法違反の疑いはない」と回答したのは、2%(3人)だった(残り2人は、未記入)。
◆安保法案は、法的にも政治的にも誤っている !
●「一旦廃案にすべき」「憲法学者の多数決で決めるものではない」
報道ステーションのウェブページでは、今回の安全保障法制についての意見を自由回答欄に記述した学者のうち、実名で公開してもいいとした80人の見解を公表している。
慶応義塾大学の小林節名誉教授は、安保法案が、法的にも政治的にも誤っていると指摘したうえで、「戦争経済で疲弊・破綻した米国の二の舞で、いずれにせよ、わが国を自殺に導くような歴史的愚策である」と断じた。
また、九州大学法学部の南野森教授は「一旦廃案にして議論をやり直し、その上で集団的自衛権行使や他国軍隊への非・非戦闘地域での恒久的後方支援が本当に必要だということになれば、憲法9条の改正を正面から国民に問うべき」と手続き上の問題点を強調した。
一橋大学大学院法学研究科の阪口正二郎教授は、中谷元(なかたに・げん)防衛大臣が、安全保障関連法案について「現在の憲法をいかにこの法案に適用させていけばいいのか」と発言した点に触れ、「立憲主義とは、政治を法に従わせるものであって、法を政治に従わせるものではない」と指摘した。
一方で、九州大学大学院法学研究院の井上武史准教授は、「憲法には、集団的自衛権の行使について明確な禁止規定は存在しない。
それゆえ、集団的自衛権の行使を明らかに違憲と断定する根拠は見いだせない」「ある憲法解釈が妥当か否かは、憲法学者の多数決や学者の権威で決まるものではない」と沸き起こる反対論に否定的な見解を寄せた。:弁護士ドットコムニュース編集部
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