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自民党憲法草案の条文解説実は、憲法改悪草案です !
(第2回)
自民党憲法草案へ、知識人からの批判 !
(satlaws.web.fc2.comより抜粋・転載)
◆自民党憲法改正草案、 実は、憲法改悪草案です !
2012年4月27日発表(2015年現在最新版)の自民党憲法改正草案は、日本国憲法を全面的かつ本質的に変更するものであり、全ての政策に関わる極めて重要なものです。
◆立憲主義、権利と義務、個人の尊重、公共の福祉といった自由な生活を
支える概念が、大きく変容 !
総論(概要)
1 憲法とはなんだったのか ?
2 全体にかかわる変更点
(1) 国民の義務が増える !
(2) 個人の尊重がなくなる !
(3) 「公共の福祉」ではなくなる !
(4) 同じ文言でも解釈が変わる !
3 特に目立つ誤解 !
(1) 草案に否定的な方の一部にみられる誤解
(2) 草案に肯定的な方の一部にみられる誤解 !
以上は、前回投稿済みです。以下はその続きです。
4 各論への招待 !
以上を踏まえて、それぞれの条文をみていきたいと思います。なお、解説は、適宜加筆・修正していきます。
とりあえず現行憲法自体の勉強をしたいという方にとっては、ここはあまり親切な書き方でないかもしれませんが、ほかに素晴らしいサイトがたくさんあります。
例えば、法学館憲法研究所サイト内「逐条解説」、「中高生のための憲法教室」や、日本国憲法の基礎知識などがわかりやすいと思います。現行憲法の解説ですから、現行憲法を大切に思っている方が書いたものの紹介になることはご容赦ください。
このサイトで逐一ソースを挙げていない理由としては、特定のソースを示さなくても様々な文献に載っている事柄であること、膨大でかえって見にくくなると思われること、自民党Q&Aがソースを示していないことが挙げられます。
知識的な部分の裏付けはとってあるので、憲法関係の書籍、判例、政府資料等で容易にご確認頂けると思います。メジャーな文献にないことまで幅広く言及しているものとして、芹沢斉ほか編『新基本法コンメンタール憲法』(日本評論社、2011年)があります。
草案の各条文には、表題があります。現行憲法の条文には、親切な六法では表題がつけてありますが、正式な条文ではないので、このサイトには記載していません。
条文で太字になっているのは、基本的には自民党が草案のpdfファイルにおいて太字にしている文言と、それに対応する現行憲法の文言です。
ただし、草案で削除されていて、したがって太字にされることはないけれども明らかに重要である、という箇所などもあるので、完全に一致しているわけではありません。
☆憲法は、国家統治の基本を定めている事と、国家権力を制限し人権を保障
することと両立する事が当然 !
※1 そうではなく国家統治の基本を定めた法だ、との主張もみられますが、国家統治の基本を定めていることはもちろんであり、国家権力を制限し人権を保障することと両立しているのは言うまでもありません。
国家が存在する以上、統治の基本は何らかのルールによっているわけで、その意味での「憲法」は、法典や判例が存在するか否かにかかわらず、いかなる時代のいかなる国家にも存在しますから、日本国憲法という法典を議論するにあたりあまり意味のある概念ではありません。
むしろ、国家統治の基本を定めた法としての「憲法」は、日本の場合、国会法や公職選挙法の中にも含まれているので、憲法は、国家統治の基本を定めた法だという側面を強調する場合、日本は、何度も憲法改正しているといえます。
☆立憲主義と国民の義務は、 両立している !
※2 現行26条、27条、30条に義務が定められていますが、26条(教育を受けさせる義務)、27条(勤労の義務)は、権利と関連付けられていること、30条(納税の義務)は、国家を存在させる以上不可欠である上、税金をとるには、法律によらなければならないという意味で、84条とともに国家を縛っていることから、国民が国家に守らせるという(現行)憲法の本質から逸脱するものではありません。
また、立憲主義と国民の義務が全く両立しないわけではありません。
☆国民の義務に関する条文 !
※3 個数は数え方によりますが、少なくとも義務的な性格を帯びているものを条文順に列挙しておきます。
1国・郷土保全義務、2人権尊重義務、3和を尊ぶ義務、4互助・国家形成義務、5自由・規律尊重義務、6国土・自然環境保全義務、7教育・科学技術振興義務、8国を成長させる義務、9伝統・国家継承義務、10国旗国歌尊重義務、11国際平和誠実希求義務、12国防協力義務、13自由・権利保持義務、14自由・権利を濫用しない義務、15責任・義務自覚義務、16公益及び公の秩序服従義務、17身体拘束しない義務、18個人情報適正利用義務、19通信の秘密を侵さない義務、20宗教参加を強制しない義務、21家族間助け合い義務、22婚姻維持義務、23環境保全協力義務、24教育を受けさせる義務、25勤労の義務、26児童を酷使しない義務、27納税の義務、28逮捕しない義務、29両議院議員を兼職しない義務、30地方自治負担分担義務、31緊急事態下指示服従義務、32憲法尊重義務
☆生命そのもの(13条)や 生存権(25条)などが守られる !
※4 侵略されてやむを得ず闘わせられる場合や、原発からやむを得ず避難させられる場合が、誰の人権のためにもならないが、公益にはなる事例だとの主張がみられますが、この事例では生命そのもの(13条)や生存権(25条)などが守られています。
もっとも、そもそもこの事例を「公共の福祉」や「公益及び公の秩序」の問題としてとらえるかどうかは意見が分かれます。
☆自民党の改憲草案では、何を許さない
のかが、憲法上決まっていません !
※5 ドイツの戦う民主主義と同じだという主張もみられますが、異なります。例えば、戦う民主主義では、民主主義を否定することを許さないのに対し、草案では何を許さないのかが憲法上決まっていません。
※6 従来の通説を批判し、人権を擁護しつつ、理論的に再構成しようとする試みもありますが、そうした見解の根幹には個人の尊重(13条前段)の理念があり、それのない草案の下で説明することは困難であると思われるため、詳細な検討は、省略しています。
☆改憲草案は、「公益及び公の秩序」 が人権相互の衝突以外の何を
指すのかは明確でない !
※7 Q&Aに「公の秩序」についての説明がありますが、「公益」についての説明がないため、結局「公益及び公の秩序」が人権相互の衝突以外の何を指す(と自民党が考えている)のかは明確ではありません。
※8 解釈するのは、裁判所だから何も変わらないとの主張もありますが、草案下で何か事件が起こり、当事者が最高裁まで争って違憲判決がでた事項以外は、行政の解釈によって運用されます。
また、裁判所もあえて改正したことの趣旨に照らして解釈します。
立案担当者の説明はもちろん、改正という事実自体の意味も解釈上考慮されますから、単純に新旧を比較した場合に「ある解釈をどちらの文言でもとり得るか」ということと、「あえて変えた場合にその解釈が維持されるか」ということは異なります。
自民党憲法改正推進本部顧問も「公共の福祉という言葉だけでは……最高裁の判決が……個人に重きを置いてしまった……。最高裁が判断するとき……憲法の改正によって……影響を与えていく……ことを目指している」としています(動画『船田元:憲法草案に道徳は書き込まざるを得なかった』25分前後)。
☆法律が違憲であれば、その法律が無効なので、デモが禁止
されていない事になる !
※9 「合憲」というのは、その法律や規制が、憲法に反しておらず許されるということで、「違憲」というのは、その法律や規制が憲法違反だということです。
そのため、多くの場面で、「合憲」な規制が多いほど、国民の行為は「違法」になりやすく、人権保障は薄くなり、「違憲」な規制が多いほど、国民の行為は「合法」になりやすく、人権保障は厚くなるという関係にあります。
例えば、反原発デモを禁止する法律ができたとして、その法律が合憲であれば、デモを行ったら法律違反なので違法であり、一方その法律が違憲であれば、その法律が無効(現行98条1項、草案101条1項)なのでデモが禁止されていないことになり、デモを行っても合法になります。
―この続きは次回投稿します―
(参考資料)
自民党の憲法改正案についての鼎談 第1弾
(iwj.co.jp/wj/open/前夜 : 2012/12/28より抜粋・転載)
特集 憲法改正|特集 前夜
2012年12月28日(金)14時30分から、東京都内で、澤藤統一郎弁護士と梓澤和幸弁護士を迎え、「自民党の憲法改正案についての鼎談 第1弾」を行った。現行の日本国憲法と自民党憲法改正草案を対比しつつ、前文から第20条まで、各条文をひとつずつ検証していった。
■出演 澤藤統一郎氏(弁護士)、梓澤和幸氏(弁護士)、岩上安身
☆現行憲法で強調されている人類普遍の権利が、自民党案では
見事に落とされている !
はじめに、現行憲法と自民党改憲案の前文を読み上げた岩上は、国民主権を第一に、平和主義を謳った現行憲法と異なる自民党案について、解説を加えた。
それに対して、澤藤氏は「人類の叡智が到達した共通のものとして、現行憲法で強調されている人類普遍の権利が、自民党案では見事に落とされている。これは『普遍的なものを顧みない』と宣言している印象を受けざるを得ない」と指摘した。
☆国家主義の、天皇を中心とした戦前
の国体思想とほとんど変わらない !
また、『日本国は天皇を戴く国家であって』という文言に注目し、「国家主義の、天皇を中心とした昔の国体思想とほとんど変わらず、現在の憲法に相応しくない印象を与えている」と疑問視した。
梓澤氏は、自民党案に対して、「世界的な流れの中のひとつとして、理想を高く謳った日本国憲法の、腰骨を折るという印象を持った」と述べた。
☆国民の権利根拠規定が、自民党案では、まったくなくなっている !
第9条について、澤藤氏は「ひとり一人の国民が、平和的生存権を侵害された時、しかるべき訴訟を提起、異議申し立てすることができなければならない」とし、その国民の権利根拠規定が、自民党案では、まったくなくなっている点を問題視した。
続いて、天皇を日本国の元首とする第1条については、天皇の政治利用を断固として拒否するべき姿勢が、自民党にはまったくない、と指摘した。
また、第3条を解説する中で、国旗、国家、元号が天皇制強化のための道具であることを解説し、自民党による国家主義の方向性が、ファシズム社会の到来を近づける可能性を危惧した。
☆米国の要求通り、自衛隊を国防軍に変えるということは、専守防衛の組織
から、普通の軍隊へ変わることを意味する !
国防軍の規定については、現在の自衛隊についても憲法違反と言える、とする自身の立場を表明し「アーミテージ・レポートでも、露骨に、アメリカの意図として、自衛隊という制約を取り払って、ちゃんと戦える体制を整えておけよ、と言っている。
今までの自衛隊を国防軍に変えるということは、専守防衛の組織から、普通の軍隊へ変わることを意味する」とし、「アメリカの好戦性は、ますます際立ってきている。
日本で、9条を守れという運動が起きてしかるべきである」と語った。
梓澤氏は、自民党案9条の5項、『国防軍に裁判所を置く』という文言
を取り上げ、国防軍裁判所が、軍人だけでなく、市民に対しても
日常的に監視の目を向け、審判が市民に及ぶ危険性を説明した。
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