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熊本豪雨:1人死亡、15人が心肺停止 ! 球磨村の特養ホームが浸水 !
(www.chunichi.co.jp:2020年7月4日 23時54分)
熊本県南部を襲った豪雨で、県は、7月4日、球磨川の氾濫などで、計15人が心肺停止になったと明らかにした。9人が行方不明で、1人が重体である。
球磨川は、上流から下流にわたって氾濫し、道路が寸断され、広範囲で冠水した。
芦北町と消防によると、県の公表分とは別に、同町で女性の死亡が確認された。
警察や消防、陸上自衛隊が、救助活動を本格化させた地域がある一方、複数の自治体で住民が孤立している。
山間部を中心に、救助が届かない地域が出ており、さらに被害規模が拡大する可能性がある。
県によると、球磨村渡乙の球磨川支流近くにある、特別養護老人ホーム「千寿園」が浸水し、14人が心肺停止で見つかった。
県は当初、津奈木町で、2人が心肺停止で見つかったと発表したが、1人に訂正した。
熊本県内17市町村で、非難所が109カ所開かれ、少なくとも431世帯、871人が身を寄せた。
気象庁は、5日にかけ西日本や東日本で非常に激しい雨が降る恐れがあるとして、土砂災害などへの厳重な警戒を引き続き呼びかけた。
○熊本豪雨:目を覚ましたら家に水… ! 「暴れ川」氾濫、未明の恐怖 !
(mainichi.jp:2020年7月4日 22時53分)
未明の街や集落を濁流が襲った――。九州南部を襲った4日の記録的豪雨で熊本県南部を流れる1級河川・球磨川が氾濫し、流域の同県人吉市や球磨地方など広い範囲で浸水被害が出た。「あっという間に水が迫ってきた」。住民らは声を震わせた。あふれ出た泥水はたちまち川沿いの町並みをのみ込み、同県球磨村で浸水した特別養護老人ホームから14人が心肺停止状態で見つかるなど被害が広がった。同県芦北町や津奈木町など山間部では土砂災害が相次ぎ、安否が分からない人たちの捜索が続いた。【山口桂子、白川徹、栗栖由喜、高橋広之】
続く懸命の救助、特養ホームで14人が心肺停止の球磨村
球磨川の支流の氾濫で浸水した千寿園(手前)=熊本県球磨村で2020年7月4日午前11時44分、本社ヘリから田鍋公也撮影
熊本県人吉市の下流の球磨村では、球磨川の支流に近い特別養護老人ホーム「千寿園」や住宅が浸水した。園では入所者ら14人が心肺停止となったが、周辺の道路も冠水したため、自衛隊などがヘリコプターやボートで救助に当たった。
千寿園などが浸水した球磨村渡(わたり)地区では球磨川の水位が4日未明から急激に上昇し、平常時の10倍を超えた。
ボートによる救助拠点となったのは、約3・4キロ離れたコンビニエンスストアの駐車場。自衛隊や地元のラフティングクラブの有志らが、川のようになった道路にボートをこぎ出し、被災地との間を往復した。
午後6時ごろ、ボートで救助された住民の女性は「朝5時ぐらいに水が迫ってきたので、高台にある公民館に避難して過ごした。あっという間に水が迫って怖かった」と振り返った。
午後7時すぎには、千寿園の利用者らも続々と救助され、中には車いすごとボートに乗せられた高齢者も。前日にショートステイで利用し、大雨のため帰れなくなっていた堤正通(まさみち)さん(91)は妻ミサヲさん(90)と一緒に助け出された。迎えに来た息子の俊介さん(59)に背負われてボートから下りた堤さんは「怖かった。救助に来てもらってありがたい」とホッとした表情を見せた。
【山口桂子】
◆目を覚ました時には家の中に水、堤防決壊の人吉市
避難所に着の身着のまま避難した伊達さん=熊本県人吉市下城本町の人吉スポーツパレスで2020年7月4日午後4時8分、白川徹撮影
中心部を流れる球磨川の堤防が決壊し、市内の広い範囲が浸水した熊本県人吉市。球磨川から約1キロ離れた家に一人で住む伊達政憲さん(84)が午前10時ごろ目を覚ました時には、既に家の中まで水が入っていた。
水圧で玄関のドアが開かなかったため窓から脱出したが、あまりの水量で身動きがとれず、車の屋根の上へ。水位はみるみる上がり車も完全に水没、約20分で足首まで達した。「助けてくれ」。声をからして叫ぶと幸い近くにいた消防署の職員に発見され、投げられたロープにつかまり助かった。「家はだめだと思うが、命が助かってよかった」
市内には15カ所に避難所が設置され、約1000人が避難した。球磨川から約200メートルのアパートに住む田原慶一さん(36)が午前5時半に市の防災メールで目が覚めた時には、家の前の路地に水があふれていた。
妻の友里恵さん(32)と3〜10歳の3人の娘を起こし、車2台で避難所の一つへ。「娘たちのことが心配。今は興奮しているが、長く避難所で暮らすことになればストレスもたまるだろう」と話した。
一時は膝上まで水があふれ、川のようになった市内の国道219号は夕方には水は引いていたものの、ガードレールには流された机やゴミなどが引っかかっていた。高さ50センチ程度まで浸水した国道沿いの仏具店では、暗くなるまで従業員がホースで水を流すなどして片付けに追われた。
社長の山口直樹さん(47)は「店にいたが、いきなり水が上がってきた。土のうを用意していたが準備する時間もなかった」と泥まみれの店内を見ながら嘆いた。【白川徹、杣谷健太】
◆ごう音と衝撃、崩れ落ちた1階、芦北町と津奈木町
小崎清一さん、峰子さんが行方不明になった熊本県芦北町女島地区の捜索現場=2020年7月4日午後4時26分、高橋広之撮影
熊本県芦北町と津奈木町の山間部では土砂災害が相次ぎ、甚大な被害が出た。
県などによると、芦北町では民家が土砂にのみ込まれて80代女性1人が死亡し、6人が行方不明、1人が重体になった。
同町女島地区では小崎清一さん(69)と妻峰子さん(68)が行方不明になった。2階建ての自宅で同居する三女奈美さん(40)によると、午前5時ごろ、近所に住む姉から「雨がすごい」と電話があり、1階で寝ていた清一さんと峰子さんを起こした。奈美さんが2階に上がった直後、ごう音と共に突き飛ばされるような衝撃を受け、1階部分が崩れ落ちた。
奈美さんは姉や消防に電話で助けを求めて救助されたが、1階部分は土砂に押し流されてつぶれてしまっていた。消防団が清一さんと峰子さんを助け出そうとしたが重機が入れず、午後になって自衛隊などが駆けつけた。奈美さんは「生きていてほしい」と祈るように救助活動を見守った。
同町田川地区では90代の堀口ツギエさんと、隣に住む娘で70代の入江たえ子さん、入江さんの長男竜一さん(42)の3人が行方不明。現場では山肌が数十メートルの高さから広範にわたって崩れ落ち、のみこまれた民家の上に大量の土砂や倒木が折り重なった。同県菊陽町から駆けつけた入江さんの次男純二さん(39)は「何とか見つかってほしい」と沈痛な表情を浮かべた。
津奈木町福浜でも土砂崩れで民家が押しつぶされ、一家3人の行方が分からなくなった。土砂の中からこの家に住む丸橋勇さん(85)が見つかったが心肺停止状態で、妻ミチ子さん(83)と息子貴孝さん(58)の捜索が続いた。【高橋広之、城島勇人、栗栖由喜、一宮俊介】
◆孤立する避難住民「物資は届かない」、八代市
記録的な大雨で氾濫した球磨川。水没した坂本支所付近=熊本県八代市坂本町坂本で2020年7月4日午前11時13分、本社ヘリから田鍋公也撮影
熊本県八代市坂本町地区では球磨川に架かる深水(ふかみ)橋が流失。周辺で住民が孤立し、孤立した住民らはツイッターなどで助けを求めた。球磨川と支流に囲まれた地区にある崇光寺には高齢者や小学生を含む近くの住民約20人が避難。1人暮らしの女性は取材に「朝、近所の人の声かけで避難した。
家の中には川の水が流れ、ものすごい状態」と振り返った。避難している崇光寺は水、電気が止まった状態といい「物資は届かないし、ピーク以上に水かさが上がればお寺も危険」と一刻も早い救助を求めた。
同市によると、球磨川沿いにある市役所坂本支所は1階部分が浸水。職員は隣の坂本コミュニティセンター3階に避難した。
支所のそばに営業所がある大和タクシー本社では、道が寸断されているため従業員が営業所に近づくこともできず、被災状況の確認すらできていない。同社役員の男性(72)によると、営業所は平屋で支所より低地にあり、屋根まで浸水している可能性が高いという。
男性は「あの辺りは高速道路の工事の際にかさ上げした地区。まさか浸水するとは」と驚きを隠せない。一帯は携帯電話も通じないため、早朝に「自宅が浸水した」と連絡してきた従業員ともその後連絡がつかず、心配していた。【青木絵美、谷由美子】
◆「暴れ川」の球磨川、過去にも度々洪水被害
球磨川の氾濫で押し流された道路や線路=熊本県球磨村で2020年7月4日午後3時54分、本社ヘリから田鍋公也撮影
日本三大急流の一つといわれ「暴れ川」の異名を持つ1級河川・球磨川は過去にも度々洪水被害をもたらしてきた。
水系ではかつて治水など多目的の国営川辺川ダム計画が進められ、計画が止まった2009年からは国と熊本県、流域自治体がダムによらない治水協議を続けているが、抜本的対策を見いだせないまま今日に至る。専門家は「もともと氾濫しやすい構造の川。今回はそのリスクが大きな規模で表面化してしまった」と分析している。
球磨川は熊本県南部の山間部を大きく蛇行しながら流れ、八代海に至る。標高が高い山間部に源流があるため流れが速く、多くの支流が流れ込み流量も多いことから最上川(山形県)、富士川(長野県、山梨県、静岡県)と共に日本三大急流と呼ばれる。水害が繰り返される一方で舟下りやラフティングの名所として親しまれてきた。
球磨川の治水は流域市町村にとって長年の課題だった。1965年7月には梅雨の大雨による氾濫で6人が死亡し1281戸が損壊、流失する戦後最大の被害が出た。
国は66年、球磨川水系川辺川の川辺川ダム計画を発表。しかしダム水没地の同県五木村など流域で反対運動が起こり、2008年9月、蒲島郁夫知事が計画反対を表明。09年9月には政権交代してまもない民主党政権の前原誠司・国土交通相が計画中止を表明した。
国交省と熊本県、流域市町村は09年1月、ダムに代わる治水策の協議を開始。19年6月の会合では国と県が治水策10案を提示したが、完成までの費用が最も安いものでも約2800億円で最高は約1兆2000億円に上り、景観を損ねる恐れのある案や工期が50年以上かかる案もあった。
流域市町村はかねて国に「スピード感」を求めていたが10年以上たっても現実的な治水策は出てこず、一部の首長は「自民党政権に戻った国は本心ではダムを造りたいのではないか」と不満を募らせていた。
九州大の島谷幸宏教授(河川工学)は「球磨川は下流域が山に囲まれて狭く、水位が上がって氾濫しやすい構造がある。特に今回は線状降水帯が川の南側に重なったため流量が急激に増え、多くの地点で越水したのではないか」と治水の難しさを指摘している。【平川昌範】
◆球磨川の主な氾濫被害と出来事
1965年7月 梅雨の大雨 1281戸が損壊・流失
1966年 球磨川水系川辺川で国が治水ダム計画発表
1971年8月 台風19号 209戸が損壊
1972年7月 梅雨の大雨 64戸が損壊
1982年7月 梅雨の大雨 47戸が損壊
1992年 熊本県人吉市などでダム反対運動始まる
2004年8月 台風16号 49戸が浸水
2005年9月 台風14号 119戸が浸水
2006年7月 梅雨の大雨 80戸が浸水
2008年6月 梅雨の大雨 33戸が浸水
2008年9月 蒲島郁夫・熊本県知事がダム計画反対を表明
2009年1月 国、県、流域市町村のダムなし治水協議始まる
2009年9月 前原誠司・国土交通相がダム計画中止を表明
2011年6月 梅雨の大雨 8戸が浸水
※八代河川国道事務所ホームページなどから作成
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