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足るを知らず、止まるを知らぬ事が、トランプ大統領のリスクだ !
トランプ大統領への識者の見解・詳報は ?
(「植草一秀の『知られざる真実』」:2019/05/06より抜粋・転載)
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1)〜11 )は前2 回投稿済みです。以下はその続きです。
12 )米中貿易戦争等は、米国と中国によるチキンゲームである !
米中協議の着地が実現していないのは、米国が中国に対する要求水準を引き上げているからだと考えられる。米国と中国によるチキンゲームである。
交渉決裂は双方の国に多大な損失を与えることになるだろう。
しかし、決裂ぎりぎりまで強硬な対応を示し続ければ、自国の損失は最小になり、相手国の損失は最大になるとの判断から、きわどい交渉が展開されている。
まったく同じことが米朝協議でも観察されている。
13 )トランプ大統領は、米国にとって、より有利な
決着を目指して、中国との交渉決裂に突進した !
2月末のベトナムハノイでの米朝首脳会談で、何らかの合意を形成することは、不可能ではなかった。
しかし、トランプ大統領は、米国にとって、より有利な決着を目指して交渉決裂に突き進んだ。
最後は北朝鮮側が折れるとの読みに基づいている。
今回の交渉も最後は中国が折れるとの読みで行ったものだが、外交交渉におい
ては、この種の賭けが裏目に出ることもある。
14 )米中交渉決裂は、より大きな代償を必要とすることになる !
交渉決裂は、より大きな代償を必要とすることになるからだ。
私は、トランプ大統領に老子第44章の言葉を提供している。
直接提供したわけではないが、これまでに刊行した著書のなかでも、触れている。
この東洋の価値観を踏まえることが、望ましいものごとの着地をもたらすことを知るべきだ。
老子第44章の言葉は次のもの。
「足るを知らば辱(はずか)しめられず、止(とど)まるを知らば殆(あや)うからず、以て長久(ちょうきゅう)なるべし」
「満足することを知っていれば、辱(はずか)しめを受けず、止まることを知っていれば、危険を免(まぬが)れられ、いつまでも長らえられる」という意味だ。
15 )トランプ大統領が最重視しているのは、自身の大統領再選であろう !
トランプ大統領が最重視しているのは、自分自身の大統領再選だと見られる。
そのために、あくなき株価上昇を追求している。
このこと自体は自然であるとも言えるが、株価が急騰し続けることはない。
上がり過ぎれば下がる。経済も高成長が永遠に続くことはない。
能力を超えた高成長が持続することはない。
16 )トランプ大統領の行動様式は、重大なリスクと背中合わせである !
実力に見合う成長なら持続できるが、実力以上の成長を持続することはできない。
FRBが金利を引き上げるのは、経済活動の余力が小さくなっているためである。
需給がひっ迫しているときに、ひたすら金融緩和を実行しても、生産は増加せず、インフレ圧力が強まってしまう。
2020 年の大統領選を踏まえるなら、2019 年に若干の調整を入れて、2020 年に経済活動が再び高まるシナリオを選択する方が賢明であると考えられる。
すべてにおいて、「足るを知ることなく」、「止まるを知ることのない」ように見える、トランプ大統領の行動様式は、重大なリスクと背中合わせであることを十分に認識しておく必要がある。
(参考資料)
トランプ大統領の頭の中:「本音を言うことはプラスになる」
(limo.media:2017.12.17 06:00より抜粋・転載)
クロスメディア・パブリッシング:
○ピューリッツァー賞受賞ジャーナリストが徹底取材 !
来月で就任から1年を迎える米国のドナルド・トランプ大統領。就任前の同氏に対して、最後にロングインタビューを行ったのが、ピューリッツァー賞受賞ジャーナリストでもあるマイケル・ダントニオ氏です。彼がまとめた書籍『熱狂の王 ドナルド・トランプ』から、トランプ大統領の本質に迫ります。
トランプと握手をしたとき、はたして彼は除菌剤に手を伸ばすのだろうか、それともハンカチを使うのだろうかと、私は疑問を抱いた。
潔癖症で有名なこの男がトランプ以外の人物であれば、私も少しは気を使ったかもしれない。だが、暴言と残酷さをほしいままにするトランプに同情することは難しい。私はトランプの手を強く握り、彼がその後、机の陰でこっそりと、高級スーツの裾で手を拭うのを観察した。
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○なぜ、「嫌いなのに、気になってしまう」のか ?
何度かの世論調査で、半数以上のアメリカ人がドナルド・トランプを嫌っていることがわかっている。2014年のニューヨークの住民を対象にしたウォール・ストリート・ジャーナルとマリスト大学の世論調査では、61パーセントがトランプに批判的な印象を抱いていた。
インターネット上でも、リベラル派は、富裕層と一般人の格差拡大の問題を訴える際に、その象徴としてトランプの画像を使っている。
それにもかかわらず、多くの人がトランプの出演するテレビ番組を見たり、トランプ・ブランドの商品を買ったりすることによって、彼の富を増やすことに加担している。
◆「少数でも熱烈な支持者」こそ重要 !
オバマのことを「頭がおかしい」と言えば、それによって気分を害する人がいる一方、反対に自分に近寄ってくる人もいるということを、トランプはよく知っている。いまや3億人に達するアメリカの人口を考えれば、20パーセントの支持者でもマーケットとしては大きい。彼にとっては、自分を好きな人がそれだけいれば十分だ。
これは、FOXニュースが番組を編成するときに、どれほどの数の視聴者をターゲットとするのか計算する手法と同じである。膨大な選択肢がある世界では、比較的少数でも熱烈なリピーター(視聴者)を確保するほうが、中途半端な支持を得るより有利なのだ。
トランプにインタビューした際、取材協力者であったマーク・ディアゴスティーニが「本音で語ることは、政治的に損になりませんか?」と尋ねた。
「それはプラスになるね。私が思うに、ポリティカル・コレクトネスというやつには誰もが飽き飽きしている。『太陽は昇る、太陽は美しい』とか、あたり前のことを言う人間にうんざりしているのさ」
◆結局は、みんな金持ちになりたがっている !
もう一つ、トランプが理解していることがある。「アメリカ人は、この国の経済の仕組みが金持ちに有利にできているのではないかと疑っていたとしても、結局はみんな金持ちになりたがっている」ということだ。
彼が有名になった1978年は、それまでの平均賃金の伸びがストップし、それとともに長者番付に名を連ねる人々の所得は大きく増大した時期にあたる。同じころ、マスコミは富や名声への欲望をあおり立てるような、有名人のゴシップで持ちきりだった。
世間がそうしたスキャンダリズムの供宴にいそしんでいたころ、トランプの顔は金で買えるあらゆる欲望を象徴するものとなった。そしてトランプの本当の生活や本当の考え方は、彼が放つ大言壮語の陰にかすんでしまった。だから、トランプの「本当の姿」を知ろうと思っても、たいていはうまくいかない。
◆「絶え間ない注目」を求めるトランプ !
近年のナルシシズムに関する書籍の多くは、クリストファー・ラッシュの画期的な著作『ナルシシズムの時代(Culture of Narcissism)』(ナツメ社)の分析を受け継いでいる。
ラッシュの指摘によれば、アイデンティティの希薄な若者たちは、自己肯定のために、絶え間ない注目や物質的な快適さ、刺激的な体験を求めるようになる。トランプは、ラッシュが憂慮したことを最も生き生きと体現している人物と言える。
また、ある研究によれば、アメリカ人は他の国の人々より個人主義を重んじ、常に自分自身に注目を引きつけたがるという。大きな成功を求めてリスクを取る者は、たとえ失敗したとしても尊敬され、富や健康や寿命の大きな不平等を容認してでも、成功者になれるチャンスのある社会を好む。
またアメリカ人は、外国に行くと下品に思われるぐらいお国自慢や自己宣伝をしがちだ。トランプは、誰から批判され、嫌われようが、自分はアメリカの理想を背負って果敢に挑戦しているのだと胸を張るだろう。
◆あれは演技じゃありません !
トランプは、アメリカ社会の移り変わりにぴたりと歩調を合わせて生きてきた。その一貫した生き方を見てきたドナルド・ジュニアは、「トランプが人格を装っている」という見方を否定し、こう強調する。
「あれは演技じゃありません。35年間も毎日、ドナルド・トランプを演じるなんてことはできませんよ。数週間なら可能でも、35年は無理です」
(マイケル・ダントニオ『熱狂の王 ドナルド・トランプ』をもとに編集)
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