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厚労省が公表:10 代前半の死因は自殺が最多 ! 国内減でも若者予防進まず !
自殺への識者の見解・詳報は ?
(www.tokyo-np.co.jp:2019年3月22日より抜粋・転載)
東京新聞・ 朝刊:
厚生労働省がまとめた、二〇一七年の人口動態統計で、戦後初めて、日本人の十〜十四歳の死因として、自殺が一位になっていたことが、三月二十一日、分かった。
近年、国内の自殺者数が、大きく減る中で、十〜二十代で改善が進まないことに、懸念が広がっており、若者に焦点を絞った、自殺予防対策の強化が、喫緊の課題となっている。
既に公表されている同統計の確定数によると、二〇一七年に自殺した、十〜十四歳の子は、百人である。この年代の死因の22・9%に達した。
二位は、がんで九十九人(22・7%)、三位は、不慮の事故で、五十一人(11・7%)。
☆二〇一七年の10代全体の自殺数は、560人、年齢全体の自殺者数は、20465人であった。
二〇一三年以降、この年代で自殺者数は、七十一〜百人で推移し、二〇一六年まで、四年連続でがんに次いで、二位だった。
国内の日本人の自殺者数は、三万二千人を超えた、二〇〇三年をピークに減少し、二〇一七年は二万四百六十五人に。しかし、年代別の自殺死亡率(人口十万人当たりの自殺者数)では、十代だけは、横ばい状態のままだ。
また、同統計で、十五〜三十九歳を、五歳刻みにした五区分では、二〇一二年以降、死因の一位を自殺が占め、二十代では、死因の五割近くに及ぶ。
厚労省の自殺対策白書などによると、十代前半の自殺は、他の世代ほど原因の解明が進んでいない。動機不明の比率が、突出して高いほか、未遂歴のない自殺者も多く、周囲が予兆に気付かないうちに、突発的に命を絶つケースが目立っている。
子どもの自殺の問題に詳しく、文部科学省の自殺予防関係の会議で、委員も務める学校支援カウンセラーの阪中順子さんは、「十代前半で自殺が一位というのは、深刻な事態。予防に向け、児童生徒の自殺の実態を、より詳しく把握する必要がある。見えにくいSOSまで、いかに受け止めるか、大人の側が問われている」と指摘している。
(参考資料)
小・中学生の自殺、原因の1位は「学業不振 !」
(style.nikkei.com:2014/12/2より抜粋・転載)
日経DUAL:
統計データを使って、子育てや教育にまつわる「疑問」に答えます。今回は、親にとってはつらいですが、目を背けるわけにはいかない「子どもの自殺」について取り上げます。ここ100年の統計データを読み解くと、日本の子どもの自殺率は急減しましたが、90年代以降はまた上昇傾向にあります。また小・中学生の自殺原因は「学業不振」や「親子関係の不和」「入試の悩み」によるところが大きいのです。
こんにちは。武蔵野大学講師の舞田敏彦です。2014年9月初旬、東京の大田区にて、小学校6年生の女子児童2人が飛び降り自殺するという事件がありました。動機は受験勉強に疲れたとのこと。
自殺とは、自らの意志によって自己の生命を断つ行為をいいます。子どもといえど、10歳くらいになればどういう行いをしたら死に至るかを予測できますので、十分成立する概念です。今回は、子どもの自殺統計をご覧いただきます。それを通して、現代っ子の「生きづらさ」の問題について考えていただければと思います。
■子どもの自殺率は「2 万2000人に1人」
厚生労働省が毎年刊行する『人口動態統計』には、年間の自殺者数が年齢別に掲載されています。最新の資料を見ると、2013年中の10代の自殺者は546人です。同年10月時点の10代人口は約1184万人。よって、10万人当たりの自殺者は4.6人となります。これが昨年の子どもの自殺率です。2万2000人に1人というオーダーですので、出現確率としてはきわめて低いですが、子どもの「生きづらさ」指標と読むことができます。
この値は、過去からどう変わってきているのでしょう。前年比や5年間というスパンではなく、もっと歴史的な視野で見てみます。私は、20世紀以降の子どもの自殺率カーブを描いてみました。1900(明治33)年から2013(平成25)年に至る、100年以上の長期推移です。
総じて、子どもの自殺率は昔のほうが高くなっています。意外に思われた方もいるでしょう。戦前期では、ほぼすべての時期で自殺率10.0のラインを超えています。親や奉公先の主人にこっぴどく叱られた、酷使された、ひもじい…。当時の新聞を見ると、こんな動機での自殺が報じられています。
また、教師の体罰を恐れての自殺もあったとか。なるほど。教師が殴ったり蹴ったりして児童を死に至らしめる事件も頻繁に起きていたようです。戦前期の子どもの自殺は、こうした理由が大きかったと言えるでしょう。
1930年代の後半になると自殺率が急落しますが、戦争が始まったことで、正確な自殺統計が取れなくなったのかも知れません。しかし、別の説もあります。フランスの社会学者、エミール・デュルケムは、名著『自殺論』において「自殺率は社会の統合の度合いに比例する」と述べています。国民が一体となって共通の敵と戦う戦争期は、人々の連帯が非常に強くなり、このことが子どもの自殺を減少せしめたのではないでしょうか。人間は社会的動物であり、他者とつながっていることに安心感を抱く生き物です。
■高度成長期には自殺率が下落、1990 年代から上昇傾向に !
さて1945(昭和20)年に戦争が終わるや、子どもの自殺率は再びうなぎ登りに上昇し、1955(昭和30)年には15.6とピークに達します。映画などで美化されることも多い時代ですが、子どもにとっては最も「生きづらい」時代だったようです。
はて、どういう自殺が多かったのか。当時の自殺統計を見ると、10代の自殺原因のトップは「厭世(えんせい)」です。世の中が厭(いや)になったということです。戦前と戦後という新旧の価値観が入り混じり、苦悩する青少年も多かったそうな。また、青年男女の無理心中も多発していました。相思相愛にもかかわらず、旧来の「イエ」の価値観から交際や結婚を反対されての心中…。これなども、時代の過渡期にあった当時の悲劇と言えるでしょう。
その後、高度経済成長により社会が安定するのに伴い、子どもの自殺率は下がってきます。なお1986(昭和61)年がポコっと突き出ていますが、私と同世代の70年代生まれの人なら事情はご存じでしょう。この年の4月に某女性アイドルが飛び降り自殺したのですが、それを悲しんだファンの後追い自殺が頻発したのでした。いわゆる「群発自殺」ですが、自我が未熟な子どもの場合、こうした模倣に傾きやすくなる弱さを持っています。一つの教訓として特記しておくべき事件です。
あと一つのエポックは、1990年代から現在までの時期です。90年代以降、子どもの自殺率は上昇に転じています。「失われた20年」は、子どもの「生」にも影を落としていることが知られます。
■主な原因は「学業不振」や「親子関係」「入試の悩み」
近年の子どもの自殺は、どういう理由によるものなのでしょう。2011〜13年の自殺原因の内訳を調べてみました。
この3年間の統計に記録されている自殺原因の延べ数は、小・中学生が209、高校生が681、大学生が1432です。一人の自殺原因が複数にわたることもありますので、この数は自殺者数とは一致しません。私はめぼしい10の原因を取り出し、それぞれが全体に占める割合を出してみました。図2はそのグラフです。発達段階ごとの変化も分かるようにしています。
小・中学生の原因上位3位は、学業不振、家族の叱責、親子関係の不和です。この段階では主な生活の場は家庭ですので、家族関連の原因が多くなっています。ちなみに原因4位の「友人との不和」には、恐らくいじめも含まれるでしょう。
原因の「入試の悩み」の比重が、高校生や大学生より、小・中学生のほうが大きいことにも注目。冒頭で紹介した小6女子2人の自殺は、まさにこれでした。早期受験が広まっていますが、年少の児童にとって過酷な受験勉強は、心身に大きな負担となります。回を改めて述べますが、子どもが望まぬ早期受験の強制は児童虐待に相当するという見方もあります。
発達段階が上がると、進路の悩みやうつ病の比重が高くなってきます。高校生では前者がトップです。大学生では学業不振が最も多く、全体の2割近くを占めます。日本の大学生は遊びほうけて勉強しないといいますが、深刻に考える学生さんもいるようです。
就職失敗が上位に挙がっているのも、今日の状況をよく反映しています。「お祈りメール」(不採用通知)なるものを何十通、何百通も受け取るうちに「自分は社会に必要とされない人間だ」と思い込み、自らをあやめる大学生…。こうした就職失敗自殺が社会問題化していますが、それは自殺統計にも表れています。新卒至上主義のニッポン固有の現象であるようにも思います。
■男子、女子の自殺原因には違いがある !
性別の違いも見ておきましょう。小・中・高校生で見ると、最近3年間の自殺原因の延べ数は、男子は551、女子は339です。各原因が全数に占める割合を出し、グラフにしてみました。横軸に男子、縦軸に女子の数値を取った座標上に、それぞれを位置付けた図3です。
斜線は均等線であり、これよりも下にあるのは「男子>女子」、上にあるのはその逆を意味します。どうやら男子型と女子型の原因があるようで、男子では学業や進路など「将来展望」に関わるものが多く、女子では家族関係や友人関係など「対人関係」に関連する原因が目立っています。なるほど、肌感覚に照らしてもうなずけるデータです。
子どもの自殺率は最近上昇の傾向にあること、自殺原因(動機)として何が多いかをデータでみてきました。個々の動機は実に様々ですが、それらの下にある共通の地盤、すなわち今の子どもの「生きづらさ」をもたらす現代的状況とはどういうものでしょう。一言でいうなら、「逃げ場がない」ことだと思います。
私が前に教えた学生さんで、高等学校卒業程度認定試験(昔でいう大検)を経由して入ってきた子がいました。高校で手ひどいいじめを受け、1年の冬で中退。その後は、予備校のネット授業で独学し、上記の試験に合格したのだそうです。幸い、親がこういう道を快く許してくれたからよかったが、そうでなかったら「本当に死んでいたかもしれない」と語っています。
■インターネットの活用で、教育はどう変わる ?
小・中・高の12年間の学校生活を振り返ってみていかがでしょう。朝から夕方まで教室という四角い空間に閉じ込められ、気の合わない人間と同居し続けなければならない。反りの合わない他者とうまくやっていくすべを学ぶのも、学校の重要な教育機能ですが、いじめという犯罪行為を受けてまで、そこに居続けることを強いられることはないでしょう。
最近は義務教育段階でも、学校外の教育施設での学習、ないしはITを活用した自宅学習を出席扱い(条件付き)にしてくれるなど、柔軟な措置が取られるようになっています。わが子が「学校に行きたくない」と口にしたとき、事情を十分に吟味のうえ、必要とあらば上記のようなオルタナティヴな選択肢を積極的に活用すべきかと思います。
1970年代、イヴァン・イリイチという学者は『脱学校の社会』という著作において、「情報化が進んだ社会では学校の領分は縮小し、代わって人々の自発的な学習ネットワークが台頭するであろう」と予言しました。21世紀の日本は、まぎれもなく情報化が進んだ社会です。新たな知識はインターネットからも享受できます。これから先、学校だけが教育の場であり続けることはできなくなるでしょう。まさに現在は時代の過渡期なわけですが、こうした時期に子どもの自殺が多発することは、図1でも見た通りです。その意味で、近年の子どもの自殺増加は、過渡期の反映とも考えられます。
○ 舞田敏彦さん
1976年生まれ。東京学芸大学大学院博士課程修了。博士(教育学)。武蔵野大学、杏林大学兼任講師。専攻は教育社会学、社会病理学、社会統計学。著書に『教育の使命と実態』(武蔵野大学出版会)、『教職教養らくらくマスター』(実務教育出版)など。
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