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私の理想の男性像はのび太である。
大抵の人はこれを聞くと驚く。しかし私は至って真面目である。のび太ほど良い男はいないと思っている。のび太とは、言うまでもなく、ご存じ「ドラえもん」に登場する、何をやってもダメな小学5年生の少年のことである。ジャイアンやスネ夫にいつもいじめられ、そのたびにドラえもんに助けてもらうのだ。確かにこれだけではのび太はただのダメ男だ。しかし、そんなのび太もやがては静香と結婚することとなる。
静香といえば勉強もでき男子のあこがれの的で、のび太には高根の花だった。ではなぜ静香はそんなダメ男を選んだのか。その答は、結婚直前、不安を口にする娘・静香に言う父親の言葉の中にある。
「私…不安なの。うまくやっていけるかしら」「やれるとも。のび太くんを信じなさい。のび太くんを選んだ君の判断は正しかったと思うよ。あの青年は人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ。それが一番人間にとって大事なことなんだからね。彼なら、間違いなく君を幸せにしてくれると僕は信じているよ」(『のび太の結婚前夜』)
私の言いたかったことを静香の父親が、全て言ってしまったので、これ以上説明する必要はない。あえて言うなら、外見にばっかりこだわってチャラチャラした最近の男に比べれば、のび太の方がよっぽど男らしい。
そんなこんなで、男性から「好きなタイプは?」と聞かれたら、迷わずのび太と答える。しかし、のび太に当たる確率はかなり低い。今まで何人かの男性と付き合ったり遊んだりしてきたが、どれもただのダメ男ばっかりだった。私がのび太が好きだと言ったから、皆勘違いしたのだろうとは思うが……
今、私の膝の上でごろんごろんしているこいつも、またはずれのような気がする。(09年、大学3回生A子さん)
確かに「何をやってもダメ男」のび太のイメージと「理想の男性像」とは結びつかない。だが、ドラえもん愛読者の彼女は、その根拠として静香ちゃんの父親の言葉をあげる。
「あの青年は人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ。〜彼なら、間違いなく君を幸せにしてくれると僕は信じているよ」
この言葉には、二つの重要な命題が含まれている。一つは人間の真の幸せとは何か。いま一つは人間の本当の強さとは何かである。そして、この言葉から導き出されるのは、人間の幸せは一人ではなく他人との共感の中で感じられるものであること、また人間の強さとは、他人への優しさから生まれるものであること、である。だからこそ、静香の父親は、これが「人間にとって一番大事なことなんだ」と言い、そしてA子さんもまた、彼を理想の男性像としたのである。
『ドラえもん』は、誕生してからもう40年余りたつが、その人気は高い。だが、昨年の3・11以後、さらにブレークしているらしい。震災をきっかけにこれまでの自分を見直してみよう、その手本としてのび太の生き方が注目されているようである。その根本的要因に、これまでの自己中心的、一方的なまなざしから、人と人とがこだまし合うまなざしへの転換があるだろう。これは、「こだまでしょうか」の詩人・金子みすゞの詩が人々に受容されていることとも響きあう。
東北大震災の2年前、そのことに気づいていたA子さん。その豊かな感性と鋭敏さには脱帽だ。それに対する男たちは……。ただのダメ男からのび太に変身できているだろうか。
毎日jp/京都
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20120223ddlk26070590000c.html
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