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2011.01.21 ZAKZAK
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110121/plt1101211536001-n1.htm
政府は19日、税と社会保障の一体改革に関する関係閣僚の準備会合を開いた。
菅政権では、与謝野馨経済財政担当相が「6月には(改革)案をつくりたい」、藤井裕久官房副長官は「消費税率引き上げに向けて社会保障目的税にして来年3月までの2011年度中の法整備」、仙谷由人前官房長官は「消費税率引き上げを急ぐべきだ」などそれぞれ増税に前のめりになっている。増税オールスターズはアクセル全開だ。
そこでは消費税増税を年金など社会保障の財源にあてるという意見がある。逆にいえば財政赤字に使うのではないと。しかし、その話は注意しなければいけない。
カネに色はついていないので、どこに使うというロジックはもともと怪しい。もし本当に社会保障に使うのであれば、税率と社会保障給付水準はリンクしていないとおかしい。
さらに、財政赤字に使うのでないなら、財政再建は放置するのか、放置しないならどのような方策を講じるのかを明らかにしなければいけない。
社会保障は、助け合いの精神による所得の再分配が基本であり、そのために国民の理解と納得が重要だ。というわけで、給付と負担に関係が明確な社会保険方式で運営されている国が多い。
民主党マニフェストでは「最低保障年金は税法式」と書かれていたが、各人の保険料納付記録をもつ保険方式とそれがない税方式では、給付と負担の関係などで天と地ほどの制度の差がある。この点を民主党政権は理解していない。
しかも社会保険方式から税方式へ移行した先進国はない。移行にコストと時間がかかるからだ。社会保険方式を踏襲するなら、税財源は給付と負担の関係を不明確にして、ますます社会保障への信頼を失いかねない。
消えた年金で、年金記録が整備され、年金定期便などで給付と負担が明確になりつつある。IT技術の進展で、個人番号管理で所得税と社会保障を統合化し所得再分配を行っているというのが世界の流れである。
それにより、理想的な社会保険方式での社会保障制度の運営に徐々に近づいている。消費税を社会保障財源にというのは、その世界の流れにも反する。実は、財務省が社会保障を人質にして消費税を増税しただけの屁理屈にすぎない。
ちなみに、消費税は安定財源であるので、分権が進んだ国では地方の税源だ。これは、国と地方の税金について、国は応能税(各人の能力に応じて払う税)、地方は応益税(各人の便益に応じて払う税)という税理論にも合致する。また年金等は国の業務であるので、消費税は財源にできない。
消費税を年金等の社会保障財源にするという話は、世界でほとんど聞かない話だ。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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